前回は、身寄りのない高齢者様のおひとりさまの中で、運用や管理を必要とする資産をお持ちの方に便利な「民事信託」という制度をご紹介いたしました。
本日は、その民事信託と後見制度を組み合わせて用いる相続・終活の方法をご紹介いたします。
仮に、おひとりさまが不自由になった場合を想定します。
困難なことは、いつ何時やってくるか分かりませんよね。
そんな時、民事信託の準備をしておらず、後見制度にひっかかってしまうと、ご自身の、運用・管理を必要とする資産は、スムーズに処理できなくなってしまいます。
そこで相続や終活に役に立つのが、第三者に必要な運営・管理を委託し、その成果を自分が受益するという民事信託制度でした。
けれども、その民事信託制度の弱点は、後見制度と違って身上監護が含まれていないことです。
まさかの時、資産は守ってくれるけど、肝心のご自身が放ったらかしにされると不安ですよね。
そんな方には、この民事信託と一緒に後見制度の準備をすることをおススメします。
そうすると、たとえ後見制度にかかったとしても、資産は既に民事信託で第三者に移してあるので、ご自身の財産と認められず、厳しい管理下に置かれることもありません。
ですから、民事信託を契約するときに、まさかの時はこの資産を売却し、老人ホーム代などご自身の費用に充てるよう決めることもできます。
こうして資産を受託している者は大きな権限を持つことになります。
そうしますと、時にこの人は本当に私のために運用してくれているのだろうかと不安になることもありますよね。
そんな方には、おひとりさまご本人様の代理人として、受益者代理人を設定することができます。
そしてこの方に、後見人も兼ねてもらえば安心できるでしょう。
更に一言付け加えると、民事信託を契約する時に、自分が亡くなった時の財産の帰属先を決めておけば、或る種、遺言と同じ役目を果たすことができます。
まさかの時のために、資産管理から身の回りのお世話、そして亡くなった後の資産の行く末までカバーできるなんて、これでもう相続や終活は大丈夫ですね。
ただし民事信託には費用がかかることを忘れないでください。
これからますます終活や相続に活用されていく制度でしょうから、その内容を理解し、専門家に相談し試してみることをおススメいたします。
まとめ
- 民事信託と後見制度を併用して、民事信託では対象外の身上監護もカバーする
- 委託された財産を処分できるなど受託者は大きな権限を持つので、それを監視するめに受益者代理人を決め、その方に後見人も兼ねてもらう
- 亡くなった後の財産の帰属先も決めておけば、遺言のような役割になる