
★★★記事執筆者のご紹介★★★
この記事は障害福祉事業専門で、国家資格者である行政書士の戸根裕士が作成しております。多数の顧問先様との仕事から得られた、実務に役立つ注意点をまとめました。
戸根行政書士事務所のプロフィールはこちらですので、よろしければ弊社の支援方針や独自の強みなどご覧ください。

児童発達支援と放課後等デイサービスの福祉事業を多機能型で運営しております。利用者のお子さんが学校等でトラブルを起こすようで、連携先との調整に時間を取られています。
そこで「関係機関連携加算」に興味があるのですが、詳しく教えていただけますでしょうか?
「関係機関連携加算」は、障害を持つお子様の関係機関と連絡調整をして支援を行うことで取得できる加算です。
ただ取得条件を守らない事例が多く、自治体とトラブルになる可能性があります。
この記事では事業者様の理解の一助になるように以下の内容を説明いたします。
- 「関係機関連携加算」の取得条件がわかります
- 「関係機関連携加算」の間違えやすいポイントがわかります
- 「関係機関連携加算」のミス防止対策がわかります
「関係機関連携加算」とは?取得条件やミス防止もしっかり解説?

令和6年度の報酬改定により、児童発達支援や放課後等デイサービスの「関係機関連携加算」は増えて、関係機関と連携して個別支援計画を作成したり、連絡調整を行ったりした場合に取得することができます。
(種類) | (単位) | (条件) |
関係機関連携加算(I) | 250単位/回(月1回) | 保育所/学校と連携して個別支援計画を作成 |
New 関係機関連携加算(II) | 200単位/回(月1回) | 保育所/学校と情報連携 |
New 関係機関連携加算(III) | 150単位/回(月1回) | 児童相談所/医療機関/保健所等と情報連携 |
関係機関連携加算(IV) | 200単位/回(月1回) | 就学/就職先と連絡調整 |
※まとめ:児発・放デイの相談支援系の加算の一覧
1 「事業所間連携加算」とは?取得条件や活用法を解説
「関係機関連携加算」について、相談支援系の加算の全体像を踏まえて概要を理解できました。
ただ「関係機関連携加算」を自治体とのトラブルなくミスなく算定したいのですが、どのような点に注意すれば心配なく「関係機関連携加算」を取得できるでしょうか?
「関係機関連携」は、ただ関係機関と連絡調整するだけで算定できる加算ではありません。
「関係機関連携加算」の(I)~(IV)にそれぞれの取得条件を理解して、しっかり根拠資料をしっかり残すことがポイントになります。
以下では具体的な例を示しつつ「関係機関連携加算」についてわかりやすく説明いたします。
関係機関連携加算(I)の取得条件

児童発達支援や放課後等デイサービスの「関係機関連携加算(I)」は、関係機関と連携して個別支援計画を作成することが条件になりますが、その実行に当たって様々な点に注意しないと実地指導でトラブルになります。
<「関係機関連携加算(I)」を算定する留意事項>
・連携先の関係機関は、保育所/幼稚園/認定子供園/特別支援学校/小学校/放課後児童クラブなどであり、他の障害児通所事業所は対象でない
・個別支援計画のための担当者会議を、連携先の関係機関と共に実施する(※電話による情報交換のみは認められません)
・個別支援計画に、障害児の状態を踏まえ、連携先の関係機関と如何に支援するか具体的に記す
・「関係機関連携加算(I)」と「関係機関連携加算(II)」は同一月に算定できない(=どちらか1回のみ)
・「関係機関連携加算(I)」は(III)と同一月に算定できる(※会議参加者が同一でない場合のみ)
<実地指導の際のよくあるトラブルの例>
1 個別支援計画のための担当者会議の記録がなく、連携先が出席していない
2 個別支援計画に、連携先との関係が記されていない
3 連携先と日常的に障害児の状態や支援方法が共有されていない
4 電話による情報交換のみで加算請求を行なっている
「関係機関連携加算(I)」の算定に関して、関係機関と電話等でよく連絡していることから記録が残っていないことが多いです。
また共生型の児童発達支援事業では児発管がいないと加算を算定することはできませんのでご注意ください。
できる限り連携先との担当者会議には保護者も出席することを求め、家族と共に連携体制を作ってください。
関係機関連携加算(II)と(III)の取得条件

令和6年度に新設された児発/放デイの「関係機関連携加算」(II)と(III)は、保育所/学校/児童相談所/医療機関との連絡調整の実施により取得できる新加算であり、その連絡調整を適切に行い記録を残すことが大切になります。
<「関係機関連携加算」(II)と(III)を算定する留意事項>
・事前に保護者から、連絡調整における情報共有の同意を得ておく
・連携調整の記録に、出席者/開催日時/内容を記録する
・必要に応じて個別支援計画を見直す
・計画相談支援事業所によるサービス担当者会議の参加では加算算定できない
・児童相談所との「関係機関連携加算」(III)の連絡調整は、個別サポート加算(II)と併給できない
「関係機関連携加算」(II)と(III)の要件である連絡調整は、既に日常的に実施している場合が多いので記録さえ残すことができれば積極的に取得しましょう。
その記録を日々のサービス提供記録内に記入するのではなく、加算用のシートを用意して記録しておけば整理できてミスが減ります。
また「関係機関連携加算」の(III)と個別サポート加算(II)を併給してしまうトラブルは散見するのでご注意ください。
関係機関連携加算(IV)の取得条件

児童発達支援や放課後等デイサービスの「関係機関連携加算(IV)」の算定は、就職時や就学時など限定的な場合にのみ可能であり、日常的に算定することができなことをご留意ください。
<「関係機関連携加算(IV)」を算定する留意事項>
・就学時には小学校や特別支援学校と連絡調整を行う
・就職時は企業や官公庁と連絡調整を行う(※就AやBは認められません)
・障害児の状態や支援方法についての書類を就学先/就職先に渡す
・連携先との連絡調整や相談支援に関する記録を書面で残す
<実地指導の際のよくあるトラブルの例>
・就学時や就職時に関係なく連絡調整を行い加算を算定してしまっている
・就労継続支援A型やB型などに勤める場合に算定してしまっている
・連携先との連絡調整や相談支援に関する記録を書面で残す
「関係機関連携加算(II)」は、就職や就学というライフステージが移行する際に切れ目なく支援を継続するために創設されました。
確かに就労継続支援A型でも就職なのですが、「関係機関連携加算(II)」の対象にはならない点にお気をつけください。
日常的に支援する障害児の方が、いつ就学/就職するか予め予測されておくと加算の取得が容易になります。
「関係機関連携加算」取得のミス防止対策

児童発達支援や放課後等デイサービスで算定できる「関係機関連携加算」は、届出が不要で容易に取得できると思えるために実地指導の時にトラブルになる可能性があります。
<「関係機関連携加算」の取得のミス防止対策>
・加算(I)の個別支援計画に、予め関係機関との連携体制を記す欄を作っておく
・加算(I)の会議記録に、予め関係機関との連携体制を記す欄を作っておく
・加算(IV)の連絡調整の担当者会議の場を予め月に1度、決まった日にしておく
・加算(IV)の連絡調整の記録と日々のサービス提供の記録を分けておく
「関係機関連携加算」を算定している場合、実地指導の時にサービス提供実績記録の記載事項の存否を確認されることが多いです。
保護者さんから確認の印鑑をもらう場合は、事前に関係機関と連携した旨を説明いたしましょう。サービス提供実績記録と連絡調整記録との整合性にもお気をつけください。
「関係機関連携加算」は儲かる?

児童発達支援や放課後等デイサービスで「関係機関連携」を取得しても収益が上がるというよりは、関係機関と連絡調整を行った時間の人件費の回収+α程度の金額になることを覚えておきましょう。
<「関係機関連携加算」の加算額と人件費の関係>
関係機関連携加算(I):250単位 = 約2,500円(1時間)
⇅
1時間の人件費:約1,560円(1時間の残業:月給20万円の場合)
↓
収益:2,500円 - 1,560円 = 940円
「関係機関連携加算」の連絡調整は営業時間外でも行うことができます。
仮に営業時間外に残業代を払って、スタッフに連絡調整をしてもらう場合、加算額はほとんど人件費に消えて残りは僅かです。
それゆえを「関係機関連携加算」を取得して売上を上げるというよりは、手厚い支援を行ってサービスを充実させるコスト負担とお考えください。


よくある質問

学校が実施した担当者会議に参加した場合であっても、「関係機関連携加算」の算定要件を満たしますか?
答:事業所が開催した会議でないと算定要件は満たされません。ただしその会議の後の別の時間帯に事業所主体の会議を開催すれば算定できます。
「関係機関連携加算(I)」の算定要件にある担当者会議は、どこでも開催していいのでしょうか?
答:どこでも開催することができます。ただし個別支援計画に関する会議であることにご留意ください。
「関係機関連携加算」の連絡調整や電話等でも大丈夫ですか?
答:電話やzoomでも問題ありません。ただし記録は残しましょう。
まとめ

児童発達支援や放課後等デイサービスで活用できる「関係機関連携加算」について分かりました。ありがとうございます。
加算を取得するための記録資料と請求資料を適切に残し、不正のないよう体制を整えたいと思います。
「関係機関連携加算」は、月に1回限り算定できることを踏まえ、事前から連携先と計画を立てて実施することがポイントです。
特にサービス提供実績記録への記入漏れなどの事例も散見するので、「関係機関連携加算」の根拠記録の日付と請求資料の日付の整合性に注意致しましょう。「関係機関連携加算」に必要な記入事項を、日々のサービス提供記録や個別支援計画に独自で作っておくと間違えが減って安全です。
ミスなく「関係機関連携加算」を取得することが事業所の経営の安定につながるので、ぜひ要件をしっかり守ってご活用ください。
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