障がい者の就労継続支援事業所を運営していますが、利用者の獲得のために計画相談支援事業所の併設を検討しています。。ただ計画相談支援事業所の経営経験がなく収益が本当にアップするのかわかりません。
そこで就労継続支援事業所に計画相談支援事業所を併設すれば、収益アップの可能性があるのか、またその際の注意点など詳しく教えてもらえるでしょうか?
就労継続支援事業所の利用者は計画相談支援事業所からの紹介が多いので、自社で計画相談も持てば利用者獲得に有利と考えられるかもしれません。
ただ自社で就労施設と計画相談を同時に運営するには様々な制約があり、もしその制約を破っていると実地指導でトラブルになります。
この記事では事業者様の理解の一助になるように以下の内容を説明いたします。
- 計画相談支援事業所がそもそも儲かるのかがわかります
- 就労継続支援と計画を併設した際の利用者紹介の注意点がわかります
- 就労継続支援と計画を併設した際の職員兼務の注意点がわかります
目次
【就A/B】計画相談支援事業所を併設して収益アップ?間違えやすい注意点を解説
計画相談支援事業所は、障がい福祉サービスを希望する利用者に対して必要な支援の利用計画を作成し、継続して状況確認をすることで持続的な利用支援をサポートいたします。
<計画相談支援事業所の経営ポイント>
・平均の売上は約580万円
・平均の給与支出は売上の約80パーセント
・収支差率の分布で客体数が多いのは20〜25パーセント
・収支差率の分布で約半数の50パーセントは赤字の事業所
障がい者事業の計画相談支援事業所の経営状況の概略について理解いたしました。
ただ計画相談支援事業所は赤字が多く、就労継続支援事業所と併設したいのです、就労と計画の両方を併設する際にどの点に注意すればよろしいでしょうか?
計画相談支援事業所の半分程度が赤字なのは構造的な理由があり、まずはその原因を理解することが大切です。
また就労施設と計画相談の両方を併設する場合は、利用者さんの自己決定権の尊重と中立性の確保のために様々な制約があります。
以下では就労継続支援事業所に計画相談支援事業所を併設する際のポイントについてわかりやすく説明いたします。
ポイント1:計画相談事業所はそもそも儲かるのか
就労継続支援A型やB型と計画相談支援事業所を併設するにあたっても、「計画相談支援事業所だけで経営が成り立つのか」と気になるところですが、現状だと月に約40件の支援をしない経営が成り立たない厳しい状況です。
<1人の計画相談支援員が対応できる業務量について>
計画相談支援員は、利用計画の作成やモニタリングのために、家庭や関係施設等に訪問して丁寧に状況確認をする必要があり、15件から20件程度の作成が標準と考えられています。つまり経営に必要な40件までには大幅に足りません。
つまり相談支援員1人だけの配置では、計画相談支援事業所単体の経営はとても難しいと言えます。
経営安定に必要な支援件数だけ見れば2人から3人の支援員がいれば確保できますが、そのための人件費もかかるのでご注意ください。
計画相談支援事業所の報酬単位が低いという声も少なくないので、今後は待遇改善されるか注目すべきポイントです。
ポイント2:自社施設に有利なプランは作成できない
就労継続支援A型やB型に併設する計画相談支援事業所は単体で採算が十分に取れないことがわかるとなると、自社の就Aや就Bに繋げて会社全体の利益を高めることが考えられますが、それは利用者の自己決定権を阻害しているので認められません(=利益収受等の禁止)。
<「利益収受等の禁止」として認められる事例>
・利用計画内で他社と比較し利用者に最適のプランを選ばす自社の就労施設だけを書く
・計画相談の利用者に対して自社の就労施設を希望するよう指示する
・利用計画内に記載した就労施設の事業所から何らかの名義で金品等を受ける
計画相談による自社の就労継続支援事業所への一方的な誘導は認められませんが、必ずしも自社計画相談から自社就労施設への移行を禁止したものではありません。
利用計画書内に、なぜ自社の就労継続支援事業所が利用者にとって最適化を説明することが大切です。
利用者さんに対しても自社の就労継続支援事業所でも問題がないか、きっちり説明をして同意を得ましょう。
ポイント3:自社の就労継続支援事業所の職員と兼務できない
就労継続支援A型やB型と併設する計画相談支援事業所で連携が可能となれば、常勤配置が求められない計画相談支援員を就労事業所と兼務する方が効率がいいかもしれませんが、プラン作成の計画相談事業所の職員が、利用者支援する就労継続支援事業所の職員と兼務することはできません。
<「兼務不可」として認められる事例>
・計画相談支援員と、利用者が通う就労継続支援事業所の職員を兼務する
・就労継続支援事業所の職員が兼務している計画相談の職員として自社就労施設への利用計画を作成する
※自社計画相談と就労施設の職員兼務が認められる例外
・身近な地域に計画相談支援事業所がない
・支給決定や内容変更により著しく変動がある(3ヶ月以内)
・市町村がやむをえないと認める
計画相談支援員が、自身が兼務する就労継続支援事業所への通所を計画した場合は、中立性の確保や異なる視点の欠如といった観点から両者兼務は容認されません。
利用者の「囲い込み」といって業界では厳しい目を向けられる行為なのでご注意ください。
やむを得ないと考えられる場合は事前に自治体に問い合わせて可否を伺っておきましょう。
まとめ
就労継続支援事業所と計画相談支援事業所の併設の注意点とポイントについて詳しく分かりました。ありがとうございます。
まずは計画相談支援事業所から就労施設への紹介で、中立性を害さず、利用者さんファーストで対応できるよう注意したいと思います。
就労継続支援事業所の利用者増を見込むために、計画相談支援事業所を併設することは規模拡大のために大事な戦略です。
計画相談支援事業所の多くは赤字経営ですが、就労継続支援事業所と併設すれば経費も抑えることが可能で便利です。しかし利用者の自己決定や中立性を阻害しないために、計画相談から就労施設への紹介は慎重に行いましょう。
「利用者の囲い込み」をせずに利用者さんの支援に必要なサービスを計画できる存在になって、地域社会や関係機関からも信頼される事業拡大を行なってはいかがでしょうか。
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