障がい福祉事業のグループホームで活用できる「医療連携体制加算」とは?
近年の動向では、重度の障がいの方や高齢者を受け入れるグループホームが評価されて加算が手厚く付く傾向にあります。
・夜間支援等体制加算とは?注意点・活用事例も紹介
・重度障害者支援加算とは?注意点や活用事例あり
・強度行動障害者体験利用加算とは?取得条件や活用事例も紹介
ただ重度の障害の方や高齢者には医療ケアが必要な場合があり、そのような体制を整えていないとトラブルになるリスクがあります。
そこでグループホームが医療機関と連携体制を取っていれば、特別に「医療連携体制加算」という制度があります。
この記事を読めば、医療連携体制加算について何も知らなくても、その取得方法や運営上の注意点、それにオススメの活用事例が分かります
これまで多くの障がい福祉関係のグループホームの事業者さまのサポートをしている中で、「医療機関と連携したいけど費用などが気になる」「体制の整え方がわからない」という声を聞いてきました。
そこで本日は「医療連携体制加算」の種類や注意点など細かい点にも触れて説明いたします。
目次
医療連携体制加算とは?
障がい福祉事業のグループホームが対象になる「医療連携体制加算」は複雑で、7つの種類に分かれております。
それら7種類を大きく分けて4パターンに分類できます。
(種類) | (概要) |
I・II・III型 | 非医療ケアの提供 |
IV型 | 医療ケアの提供 |
V・VI型 | 喀痰吸引の提供 |
VII型 | 体制の整備 |
令和3年度の報酬改定で非医療ケアと医療ケアの区分が明確になり、単価に差がつきました。
それでは、
このような多くの種類で複雑そうな「医療連携体制加算」を、どのように選んでいけばいいのか
という疑問が浮かぶと思います。
そこで「医療連携体制加算」の各要件についてお伝えしていきたいと思います。
I・II・III型:非医療ケアの提供
「医療連携体制加算」の非医療ケアとは、看護職員が事業所を訪問して行う「健康観察などの処置」を言います。
そして「医療連携体制加算」のI・II・III型を分ける条件は、
非医療的な看護の提供時間
によって変わります。
(種類) | I型 | II型 | III型 |
(提供時間) | 1時間未満 | 1時間以上2時間未満 | 2時間以上 |
(単位) | 32単位/1日 | 63単位/1日 | 125単位/1日 |
よくある質問
提供時間は1日の合算でいいですか?
答:合算で大丈夫です。
IV型:医療ケアの提供
「医療連携体制加算」のVI型は、看護職員が事業所を訪問して行う「一般的な医療ケアの提供」を前提としています。
※基本的に医療的ケアの指示は主治医から受けて内容を書面で残してください(情報共有が十分にされている場合他の医師でも可能です)。
そして医療ケアを必要とする利用者の数に応じて3種類に分かれ、それぞれ単位が異なります。
利用者が1名 | 利用者が2名 | 利用者が3名以上8名以下 |
800単位/1日 | 500単位/1日 | 300単位/1日 |
【注意】「医療連携体制加算」のVI型を算定する場合は次の点にお気をつけください。
※ 【注意】「医療連携体制加算」のVI型を算定する場合は次の点にお気をつけください
・医師の指示を受けた具体的なケアの内容を個別支援計画等に書くように努めてください
・主治医に対して医療的なケアの実施状況を定期的に報告するよう努めてください。
V・VI型:喀痰吸引の提供
「医療連携体制加算」のV・VI型は両方とも喀痰吸引に関する加算です。
※基本的に医療的ケアの指示は主治医から受けて内容を書面で残してください(情報共有が十分にされている場合他の医師でも可能です)。
V型
- 看護職員を事業所に配置or病院・訪問看護ステーションと連携している
- 従業者に喀痰吸引等にかかる指導を行う
- 看護師に対して報酬を算定する
VI型
- 従業者が医療機関等と連携して喀痰吸引を行う
- 利用者に対して報酬を算定する
(種類) | V型 | VI型 |
(単位) | 500単位/1日 | 100単位/1日 |
(届出) | 届出が必要 | 届出が不要 |
(「看護職員配置加算」) | 併用ができない | 併用が可能 |
<「医療連携体制加算」のV型の算定の注意点>
・看護職員を事業所に配置している場合は、資格証明書等を管理する
・看護職員を病院・訪問看護ステーションと連携して確保している場合は、各施設との契約書を作成する(※指導の費用を定める)
・看護職員の勤務状況についてシフト表などで管理する(※基準勤務時間数はない)
・重度化した場合の対応に係る指針を定め、入居の際に、入居者・その家族に対して、当該指針の内容を説明し、同意を得る
・医師の指示を受けた具体的なケアの内容を個別支援計画等に書くように努めてください
・主治医に対して医療的なケアの実施状況を定期的に報告するよう努めてください
<「医療連携体制加算」のVI型の算定の注意点>
・支援記録で喀痰吸引を行った記録を残す
・連携先の医療機関の名称・所在地・連絡先を記録しておく
・医師の指示を受けた具体的なケアの内容を個別支援計画等に書くように努めてください
・主治医に対して医療的なケアの実施状況を定期的に報告するよう努めてください
よくある質問
グループホームに配置する看護職員は兼任でも大丈夫ですか?
答:大丈夫です。
「医療連携体制加算」のI・II・IIIを算定している場合でも、喀痰吸引をすれば「医療連携体制加算」のVは算定することができますか?
答:同時に算定することができます。但し医師の指示に従ってください。
グループホームの利用者なら誰でも対象にあたりますか?
答:医療行為を受ける必要があると個別支援計画に定められた方のみです。
喀痰吸引の備品費用は誰が負担しますか?
答:グループホーム事業者が負担します。
VII型:体制の整備
「医療連携体制加算」のVII型のポイントは、
グループホームに住み続けられるよう、日常的健康管理 や、医療ニーズに対応できる体制を整備する
ことにあります。
要件
- 事業所で配置するor訪問看護ステーション等と連携して、看護職員を1名以上確保
- 24時間の連絡体制を整える
- 重度化した場合における対応に係る指針を定める
具体的なサービス内容
- 利用者に対する日常的な健康管理
- 利用者の健康に関する医療機関との連絡調整
単位
- 39単位/1日
重度化した場合の指針とは?
- 急性期における医療機関との連携体制
- 入院期間における家賃、職材料費の扱い
<「医療連携体制加算」のVII型の注意点>
・准看護師では要件を満たさない
・同一法人他事業所の看護師を配置することも可能
・「看護職員配置加算」や「医療的ケア対応支援加算」を算定していれば不可
・看護師により24時間の連絡体制を整えること
・算定不可になる利用者以外の利用者全員が算定対象になります
・体制を整備し日常的な健康管理をすれば毎日算定できます
・入院時や帰省時は算定することができません
医療連携体制加算の活用事例
障がい者グループホームでの「医療連携体制加算」は基本的に、次の4パターンに分かれます。
(種類) (概要) I・II・III型 非医療ケアの提供 IV型 医療ケアの提供 V・VI型 喀痰吸引の提供 VII型 体制の整備
そして「医療連携体制加算」を算定する時にポイントは、
提携先の医療機関の看護職員を確保すること
にあります。
ただこちらの障がい者グループホームからお願いをして、看護職員を派遣してもらい支援体制を築くのは大変です。
そこで気になるのは、
「医療連携体制加算」を上手に活用できるオススメの活用事例はありますか?
といったことではないでしょうか。
そこで「医療連携体制加算」のオススメの活用事例をご紹介いたします。
看護職員を雇用する
最初の「医療連携体制加算」のオススメの活用事例は、看護職員をスタッフとして直接雇用することです。
障がい者グループホームは「配置すべきスタッフ数」が多いので、看護職員を雇用し職務にあたってもらうと、運営側としては助かります。
・【必見】グループホームに配置する人員について総まとめ
実は障がい福祉事業所が看護職員を雇用して、医療的ケア又は喀痰吸引等に係る指導を行った場合、「医療連携体制加算」の加算の対象となります。
ただ「看護職員配置加算」との関係にはご注意ください。「看護職員配置加算」の単位は70/日ですので、「医療連携体制加算」のVIIより多く、又8人以上対象者がいれば「医療連携体制加算」のVI以上の給付を得られます。
<看護職員を雇用する注意点>
・「看護職員配置加算」をしている場合、「医療連携体制加算」のVとVIIは算定できないこと
・看護行為をしている間は、配置されている職務の基準上必要な常勤換算の時間数に含めない
・「看護職員配置加算」とは?要件やオススメの活用事例など解説
グループ内の医療法人等より派遣
次に「医療連携体制加算」のオススメの活用事例は、グループホームと同じ法人から看護職員を派遣してもらう場合です。こちらの場合の利点は何よりも連携のスムーズさです。
障がいをお持ちの方はそれぞれに特性があり、支援にもコツがあってそれを共有するのは中々難しいものです。
そこで同じ法人内だと支援対象者の情報共有が簡単になり、シフトの融通もききます。
特に精神の方は医療拒否など不測の事態が起こりやすいので、医療機関と連携して体制を作ることは支援の安定につながります。
まとめ
「医療連携体制加算」は、グループホームで重度の方や高齢者を受け入れる時に役立つ加算です。
「医療連携体制加算」は非医療行為も含み、様々なパターンで活用することができるので、ぜひ自分のグループホームでどのパターンが適切かご確認ください。
看護職員の雇用や医療法人でグループホーム開設を検討されている場合、「医療連携体制加算」を活用して事業拡大を目指してください。
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