★★★記事執筆者のご紹介★★★
この記事は障害福祉事業専門で、国家資格者である行政書士の戸根裕士が作成しております。多数の顧問先様との仕事から得られた、実務に役立つ注意点をまとめました。
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共同生活援助を経営していますが、令和5年度から新しく「身体拘束廃止未実施減算」が制度化されると知って不安です。ただ「身体拘束廃止未実施減算」を回避する要点がはっきりとわかりません。
そこで障害福祉事業の「身体拘束廃止未実施減算」を回避するポイントを、詳しく教えていただけますでしょうか?
令和5年度より義務化される「身体拘束廃止未実施減算」とは、ただ身体拘束をしないことではなく、身体拘束を慎重にかつ適正に実施する体制づくりを促すものです。
近年ニュースで障害者への虐待が多い中、実地指導でも身体拘束に関する項目はしっかり確認されます。
この記事では事業者様の理解の一助になるように以下の内容を説明いたします。
- 令和5年義務化「身体拘束廃止未実施減算」の要点がわかります
- 「身体拘束廃止未実施減算」を回避するポイントがわかります
- 身体拘束適正化委員会の開催方法や指針の作成方法がわかります
目次
「身体拘束廃止未実施減算」とは?回避するためのポイント解説
就労継続支援A型事業所や就労継続B型事業所、共同生活援助(GH)などの障害福祉事業所で、利用者さんへの身体拘束等の廃止や適正化の取り組みが適正に実施されていない場合に、令和5年度より「身体拘束廃止未実施減算」が適用されます。
<減算要件「廃止や適正化の取り組みが適正に実施されていない」とは?>
1 身体拘束に関する記録が適正に行われていない
2 身体拘束適正化の委員会が開催されていない(=年に1度以上も開催されていない)
3 身体拘束に関する指針の整備がされていない
4 身体拘束に関する研修が実施されていない(=年に1回も開催されていない)
<「身体拘束廃止未実施減算」の減算の単位について>
適正に実施されていない事実が生じた月の翌月から改善が認められた月までの間、利用者全員の単位数から5単位を減算します。
※複数の減算が適用されても5単位は引かれます
令和5年度から義務化される「身体拘束廃止未実施減算」についての概要はわかりました。
ただ身体拘束に関する委員会の開催や指針の作成で悩んでいるのですが、「身体拘束廃止未実施減算」にならないための押さえておくべきポイントはどこでしょうか?
「身体拘束廃止未実施減算」は令和5年度から義務化されて以降、実地指導の時にしっかり確認されるポイントになるでしょう。
ただ委員会の開催や方針整備など、きっちりと書類整理をしておけば「身体拘束廃止未実施減算」は怖れるものではありません。
以下では「身体拘束廃止未実施減算」を回避するポイントについてわかりやすく説明いたします。
「身体拘束適正化委員会」の設置から実施への方法
就労継続支援A型B型事業所などの障害福祉事業所で「身体拘束廃止未実施減算」にならないためには、身体拘束の適正化の対策のための委員会(=「身体拘束適正化委員会」)を1年に1度以上開催しなければいけません。
<委員会への手順1:組織体制図を作る>
・事業所職員の全員が参加する必要はありません
・事業所単位ではなく法人単位で組織することも可能です
・「虐待防止委員会」と一体的に運営することも可能です
<委員会への手順2:開催して議事録を作成する>
・テレビ電話やZOOMを活用して委員会を開催することもできます
・障がい者が参加される場合は、その障がい特性に配慮した実施が求めらます
・個人情報の保護に気をつけましょう
<委員会への手順3:委員会決定事項の通知文書を作る>
・全職員に向けて通知文章を作成いたしましょう
・事業所に掲示しても問題ではありません
・個人情報の保護には気をつけましょう
「身体拘束適正化委員会」の実施には、組織体制図の準備から決定事項の事後的な通知まで手順が必要になります。
年度ごとに委員会の開催が求められますので、その都度事業所で起こり得たヒヤリハット案件を題材として議論すれば、事業所の信頼は高まります。
実地指導の時に提出しやすいように、組織体制図から議事録、通知文章と順に整理して保存いたしましょう。
身体拘束等の適正化の指針をまとめる
就労継続支援A型B型などの障害福祉事業所で「身体拘束廃止未実施減算」にならないためには、身体拘束の適正化に関する指針を作成しておくことが大切です。
<「身体拘束等の適正化の指針」のポイント>
・「できる限り身体拘束を行わない」と明記する
・身体拘束の適正化の委員会と研修の開催とその頻度を記す
・事案発生後の報告義務と家庭等への連絡手段を詳細に記しておく
・指針の作成後は従業員だけでなく利用者さんにも見えるよう掲示しておく
令和5年度までの実地指導でよく指摘されているのが、この「身体拘束等の適正化の指針」の作成です。
様式等は特に定まっていないので、事業所の組織体制に合わせて適正な指針を定めてください。
もし利用者さんから指針に対して疑問の声があがれば、その都度改定して適正な対応を取りましょう。
まとめ
令和5年度から義務化される「身体拘束廃止未実施減算」のポイントついて詳しく分かりました。ありがとうございます。
「身体拘束廃止未実施減算」を回避するために、しっかり指針を作成し、委員会の開催と研修の実施を行なっていきたいと思います。
「身体拘束廃止未実施減算」を回避するために、常日頃から身体拘束への関心と書類整理の習慣があれば問題なく対応できるでしょう。
「身体拘束」は、利用者さんがリストカットをしようとして止めた場合にも適用されるように、思っているより身近なものです。 私たちの知らない間に身体拘束事案が発生していて、それが発覚し自治体とのトラブルになれば指定取り消しにつながる危険もあります。
「身体拘束廃止未実施減算」を回避するための対策を講じることで、利用者さんや自治体からも信頼される組織体制を作っていきましょう。
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