
障がい者グループホームを開業しようとしているのですが、適正な人員配置の基準や計算の仕方がよくわかりません。
そこで質問なのですが、どれくらいのスタッフを配置すればよろしいでしょうか?
また教えていただきたいのですが、開業後の人員配置はどのように計算していけば良いでしょうか?
障がい者グループを経営するにあたって人員配置は最も大事なポイントの一つです。
人員配置の基準や計算を間違えると自治体との間でトラブルになり、返金の可能性もできてきます。
この記事では障がい者グループホームの人員配置のポイントを理解できるように、以下のような内容を説明いたします。
- 障がい者グループホームの類型ごとの人員配置がわかります
- グループホームのスタッフ配置の見直し時期と基準がわかります
- グループホームのスタッフ配置の独自の注意点がわかります
グループホームの人員配置とは?


障がい者グループは3つの類型に分かれています。グループホームの各類型ごとに特徴と対象者の特徴があるので、事業者の組織や理念に基づき開業時に選択する必要があります。
・【基本】グループホームの設立の要件/運営のポイントを徹底解説
障がい者グループホームの類型の選ぶ際の注意点など理解できました。ありがとうございます。
ただ知りたいのですが、グループホームの類型が違えばスタッフの配置の基準や計算方法も変わるのでしょうか?
障がい者グループの類型はそれぞれにサービスの特徴があるので、各々のグループホームの支援に相応しい人員配置を実現させる必要があります。
特に日中支援と夜間支援のスタッフの要件に注意を致しましょう。
包括型のスタッフ配置

(職種) | (配置数) | (常勤要件) | (備考) |
1.管理者 | 1名以上 | アリ | 管理業務に支障がないなら兼務可 |
2.サービス管理責任者 | 1名以上 | 無し | 利用者30人に1人 |
3.生活支援員 | (※1) | ||
4.世話人 | 利用者数÷ 6 以上 | 基本報酬単位を選択するために必要な基準もあり※2 |
※1『「区分3」の利用者数÷9+「区分4」の利用者数÷6+「区分5」の利用者数÷4+「区分6」の利用者数÷2.5』の数以上
※2世話人を「4人に1人の割合」、もしくは「5人に1人の割合」、もしくは「6人に1人の割合」で配置するか選べます。それにより基本報酬の単位が変わります。

注意していただきたいのは「サービス管理責任者」は常勤である必要がない点です。
また間違えやすいポイントは「世話人」の配置基準が「利用者数÷6以上」を満たしつつ、世話人を「基本報酬単位を選択する際の基準」に合わせて配置する必要がある点です。
「世話人」の数は基本的に「生活支援員」より多くなる点を頭に入れておきましょう。
日中サービス支援型のスタッフ配置

(職種) | (配置数) | (常勤要件) | (備考) |
1.管理者 | 1名以上 | アリ | 管理業務に支障がないなら兼務可 |
2.サービス管理責任者 | 1名以上 | 無し | 利用者30人に1人 |
3.生活支援員 | (※1) | (※3) | 常に1人以上配置※2 |
4.世話人 | 利用者数÷ 5 以上 | (※3) | 常に1人以上配置※2 |
5.夜間支援員 | 1人以上 | (※3) | 共同生活住居ごとに配置 |
※1『「区分3」の利用者数÷9+「区分4」の利用者数÷6+「区分5」の利用者数÷4+「区分6」の利用者数÷2.5』の数以上
※2生活支援員or世話人のどちらかは常に配置する必要あり
※3生活支援員or世話人or夜間支援員の誰かは常勤でなければならない
<注意>
・同時に「短期入所(併設型or単独型)」のサービスを行わないといけません。
・常に1人以上の従業者を介護or家事等に従事させる必要があります。
・協議会等に実施状況を報告しないといけません。
日中サービス支援型は手厚い人員配置が必要であり、「生活支援員」or「世話人」or「夜間支援員」の誰かは常勤でなければいけません。
忘れがちなポイントは常時スタッフの1人が介護や家事をする必要がある点です。
夜間の支援員を必ず置く必要があることも日中サービス支援型の特徴です。
外部サービス利用型のスタッフ配置

(職種) | (配置数) | (常勤要件) | (備考) |
1.管理者 | 1名以上 | アリ | 管理業務に支障がないなら兼務可 |
2.サービス管理責任者 | 1名以上 | 無し | 利用者30人に1人 |
3.世話人 | 利用者数÷6 以上 |
<外部委託先との連携の注意点>
・外部に委託する「介護サービス事業者」と業務委託契約を締結し、運営規定に記す必要があります。
・委託した「介護サービス事業所」に業務の実施状況を定期的に確認して記録する必要があります。
・共同生活住居にて介護サービスを行う場合、事業所との役割分担に関する利用者の同意が必要です。
外部サービス利用型は「生活支援員」や「夜間支援員」の配置を必須にしておりません。
ただし外部の委託先と障がい者グループホームの連携関係の書類等の整備に不備がないように注意致しましょう。
外部の委託先との契約書の作成や運営規程への記載、それに定期的な連絡などを行っているか定期的に確認することが大切です。
グループホームの人員配置と利用者数の計算

障がい者グループホームを開業して半年経つと、人員配置の基準が実績の「利用者数」に応じて変化していきます (※定員ではありません)。
・【障がい福祉事業の基本】利用者数計算の基本となる「常勤換算」とは?

常勤換算の基礎となる「利用者数」の計算の仕方は開業からの時期によって以下のように変わります。
(開業からの時期) | (計算の仕方) |
6ヶ月未満 | 定員の90パーセント |
6ヶ月から1年未満 | 直近6ヶ月間の「全利用者の延べ数」を、「6ヶ月間の開所日数」で割った数 |
1年以上 | 直近1年間の「全利用者等の延べ数」を「1年間の開所日数」で 割った数 |
開業から実際に利用者が来なくても定員の90パーセントで計算していましたが、半年後から実績に応じてスタッフ数を減らすこともできるのですね。
こうした利用者数に応じた計算に関して、障害者グループホームの人員配置で特に注意する点はありますでしょうか?
障がい者グループホームの場合は特に入居者の障害区分にお気をつけください。障がいの重さで人員配置が変わってきます。
グループホームは基本的に日々の継続的な利用になりますので「利用者数」の変動はあまりありません。入院等の緊急時はどう扱うのかご注意ください。
これから以下のグループホームの実績の例で人員配置の計算方法をご説明いたします。
(月) | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 |
(区分3の利用者数) | 1 | 2 | 2 | 3 | 3 | 3 | 3 |
(区分4の利用者数) | 0 | 0 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 |
(総利用回数) | 30 | 62 | 90 | 124 | 124 | 120 | 124 |
(備考) | 開業 | 6ヶ月 |
世話人の計算の仕方

障がい者グループホームの世話人の人員配置は、開業してから半年が経過するとその半年間の利用者数によって左右されます。
<利用者数の計算>
各月の総利用回数:30+62+90+124+124+120+124=550
÷
半年間の営業日 :30+31+30+31+31+30=183
≒3. 1
<世話人の必要配置(常勤換算)の計算>
包括/外部:3.1÷6≒0.6
日中 :3.1÷5≒0.7
仮に定員が5名のグループホームだとすると90%の見込みの4.5の常勤換算数で人員配置を考えますから、上記の実績だと半年後には人員配置が緩和されることがわかります。
ただしこのような計算を開業後の半年間は毎月する必要があるのでご注意ください。
生活支援員の計算の仕方

障がい者グループホームの生活支援員の人員配置の計算の仕方は、次から次に入居して来る利用者の障害区分によって変化する点にご留意ください。
<区分3の利用者数の計算>
各月の総利用回数:30+62+62+93+93+93=433
÷
半年間の営業日 :30+31+30+31+31+30=183
≒2.4
<区分4の利用者数の計算>
各月の総利用回数:30+31+31+30=122
÷
半年間の営業日 :30+31+30+31+31+30+31=214
≒0.6
<生活支援員の必要配置(常勤換算)の計算>
2.4÷9+0.6÷6=0.4
グループホーム設立時には見込み利用者として簡便のために同じ区分利用者を想定している場合が多いので、半年後の計算では区分ごとに計算し直す必要がある点にご注意ください。
お気をつけいただきたいのは、障害の区分認定が変わるとその都度計算の方法も異なる点です。
利用者数に左右されない人員配置

障がい者グループホームの人員配置の中で「生活支援員」と「世話人」の必要配置基準は利用者数に応じて変化しますが、他方でどれだけ利用したかの実績に左右されない配置があることをもお忘れないようにしてください。
<利用者数に左右されない人員配置>
・日中支援型だと「世話人」か「生活支援員」のどちらかは常に配置
・日中支援型だと「世話人」か「生活支援員」と「夜間支援員」の誰かを常勤にしてください
・「管理人」は常勤にしてください
グループホームの利用者数の変化によって人員配置数を減らせるからといって、利用者数に関係のない人員配置を疎かにしないよう注意致しましょう。
開業時にはこうした「利用者数に左右されない人員」を誰にするかが、今後の経営に大きく関わってきます。
グループホーム勤務の経験が長く、どのような利用者にも対応できる福祉関係者を配置すると安心です。
グループホームの人員配置と支援時間帯の設定

障がい者グループホームのスタッフの必要人数と計算方法が分かれば、経営をしていく上で次に問題になってくるのが支援時間帯の設定になります。
<グループホームの支援時間帯>
・介護サービス包括型:深夜以外の活動終了時刻から開始時刻までの時間帯
・日中サービス支援型:深夜以外の時間帯
・外部サービス利用型:深夜以外の活動終了時刻から開始時刻までの時間帯
それぞれのグループホームの支援時間帯に、これまで説明していただいた常勤換算の計算に合うよう必要な人員を配置すればいいわけですね。
ただ「活動終了時間」は利用者さんによってバラバラであるので、利用者さんが揃わない時間帯があると思います。その支援時間帯はスタッフの常勤換算の計算に含まれるのでしょうか。
支援時間帯と常勤時間の関係についてわからないことが多いので教えてください。
障がい者グループホームの支援時間帯とスタッフの配置時間帯を区別することが大切です。
もしスタッフの配置時間帯を間違えれば、人員欠如が起きて実施指導の時にトラブルになるでしょう。
これから、経営者なら気になるグループホームの人員配置と支援時間帯の関係をご説明いたします。
土日に支援しなくても良い

介護サービス包括型か外部サービス利用型に限りますが、障がい者グループホームの支援を土日祝日などは実施しないでいい場合があることにご注目ください。
<土日に支援を実施しない際の注意点>
・定款に記し付票に明記して自治体に届出をする
・事前に利用者さんに同意をもらっておく
・土日にサービス提供のための給付の請求を行わない
・利用者さんがサービス利用を継続できるよう必要な準備をしておく
グループホームのスタッフの不足はどこでも問題なので、働きやすい環境を作るために土日に支援を行わないことも可能であります。
特に障がいが比較的軽い人が多い施設では有効な方法でしょう。
ただし土日をお休みする際は利用者さんやご家族に同意を得ることを忘れずにいたしましょう。
スタッフがいない支援時間帯があり得る

同じく介護サービス包括型か外部サービス利用型に限りますが、グループホームのスタッフが配置されていない支援時間帯があっても問題ありません。
(種別) | 5 | 7 | 9 | 12 | 14 | 16 | 18 | 20 | 22 |
利用者 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ||
スタッフ | ● | ● | ● | ● |
<支援時間帯と配置時間帯がズレる際の注意点>
・スタッフの配置時間帯の1日の合計は常勤の勤務すべき時間数以上にいたしましょう
・スタッフがいなくて支援に不具合が生じないように準備しておきましょう
・スタッフがいない時間帯を利用者とご家族に説明し、事前に同意を得ておきましょう
常勤の勤務すべき時間は基本的に8時間ですが、下限の6.4時間以内に変動できるので、その設定した時間数は少なくともスタッフを配置しましょう。
早朝と深夜を除けばパートのスタッフも出勤しやすい時間に勤務できるので、求人が順調にいく可能性があります。
ただし事業の途中から配置時間を変更する場合は利用者やご家族への説明を丁寧に行ってください。
<配置時間帯の設定のポイント>
・利用者さんの服薬管理で支援する必要があれば注意しましょう
・利用者さんの生活リズムを整えるための支援を忘れずにいたしましょう
「活動時間」の設定と人員配置

介護サービス包括型か外部サービス利用型の利用者に想定される、グループホームにいない「活動時間帯」ですが、利用者さんおひとりごとの事情に合わせて設定することが可能です。
(利用者) | 5 | 7 | 9 | 12 | 14 | 16 | 18 | 20 | 22 |
aさん | ○ | ○ | ○ | ||||||
bさん | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||
cさん | ○ | ||||||||
dさん | - | - | - | - |
<「活動時間帯」における人員配置の注意点>
・事業所ごとに誰か1人を基準にして任意に設定できます
・病気等を理由に日中活動に行かない人がいても、活動時間を設定してスタッフも不在で問題ありません
・一人でも支援が不十分にならないように支援不在の活動時間帯を設定しましょう
日中活動の時間帯は利用者さんの体調に左右されることがあるので、支援が不足にならない程度に柔軟に対応することがポイントです。
ただ日中も支援が必要な方になれば障がいの区分も上がり、日中サービス支援型に移行することになるでしょう。
ひとたびグループホームで基準となる活動時間帯を設定すれば、病気により外出できない利用者さんがいて、常時の支援がなくても問題ではないのでご注意ください。ただしその場合は日中支援加算の取得の可能性があるのでご留意ください。

よくある質問

利用者数や常勤換算の計算で割り切ればい場合はどうすればいいですか?
答:小数点の第2位を切り上げてください。
グループホームの体験利用者の数も人員配置の計算に必要な「利用者数」に含まれますか?
答:体験利用者の数も含まれます。
半年後からの利用者数の計算で、開業月が月末の場合は不利になりませんか?
答:不利にはなりません。1ヶ月あたりの日数でなく、その月の開業日数が計算の基本になるので、実態と離れる計算になることはありません。
雇用するパートの雇用体系を見直すということですが、具体的にどうすればいいですか?
答:雇用契約書と労働条件通知書の契約期間を半年と定めて契約内容を見直す旨を記してください。
半年後から勤務体系を再考するとのことですが、特に気を付けるポイントはありますか?
答:できる限り各週のスタッフ配置が均等になっていることが望ましいです。あと1時間だけなど極端な短時間の配置もやめましょう。
利用者さんが入院した場合の利用者数の計算はどうなりますか?
答:入院日と退院日以外の入院期間中は利用者数の計算に含めることはできません。
世話人などは派遣社員で補うことは可能ですか?
答:派遣社員で補うことは難しいと考えられます。雇用契約を派遣元と結び、労働環境が直接雇用の社員と異なるからです。
まとめ

障がい者グループホーム特有の利用者数と人員配置の計算の仕方のポイントがわかりました。ありがとうございます。
特に「世話人」と「生活支援員」の計算の仕方には注意して、利用者の障害区分に気をつけつつ、適正な人員配置を心がけたいと思います。
障がい者グループホームの利用は入所型のため基本的に変動が少なく、人員配置の変化はあまりないのが特徴です。
ただ障害区分に応じた配置の変化や、スタッフ配置を変えてグループホームの基本時間帯のサービスが手薄にならないようにご注意ください。
戸根行政書士事務所からのお知らせ

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