
令和3年度の報酬改定により新設された「地域協働加算」とは何でしょうか?
「利用者の就労や生産活動等への参加等」をもって一律に評価する報酬体系において、各 利用者に対して、地域住民その他の関係者と協働して支援(生産活動収入があるものに限 る。)を行うとともに、その活動の内容についてインターネットの利用その他の方法により 公表した場合に、当該支援を受けた利用者の数に応じ、1日につき所定単位数(※筆者註:30単位)を加算する。
就労継続支援B型向けで、基本報酬体系を選択して役所に報告する時、この「地域協働加算」という欄を見て疑問に思った方もおられると思います。
令和3年度の報酬改定を迎えて、弊所にも多くの問い合わせがあり、その中で就労継続支援B型の方から「地域協働加算」について、よく分からないという声がありました。
実はこの「地域協働加算」について知っておけば、報酬改定における役所の動向も分かり、これからの就労継続支援B型の生き残りに役に立ちます。
目次
地域協働加算とは?

基本報酬のサービス費(III)又は(IV)の選択

令和3年度の報酬改定において、就労継続支援B型は基本報酬について、「月平均の工賃額による基本報酬」とは別に、「就労や生産活動等への参加を基準にした報酬」(サービス費(III)又は(IV))も選択できるようになりました。

つまり、平均工賃額ではなく、就労や生産活動への参加を基準にした報酬体系を選択すると、「地域協働加算」を取得することができるのです。
条件1:地域住民その他の関係者と共同して支援

「地域協働加算」の条件の一つ、「地域住民その他の関係者と共同して支援していること」って何でしょうか?
正解はありませんが具体的な例を示しますのでご検討ください。
・農福連携による施設外での生産活動
・請負契約による公園や公共施設の清掃業務
・飲食業・小売業な地域住民との交流の場と なる店舗経営
・高齢者世帯への配食サービス等
ただ注意したいのは、「生産活動収入が発生しない地域活動等」はこの条件に含まれないことです。
・レクリエーションを目的とした活動
・生産活動収入の発生には結びつかないような単に見学や体験を目的とした施設外の活動等
条件2:インターネットの利用その他の方法で公表

「地域協働加算」の別の条件である、「インターネットの利用その他の方法で公表」とは何でしょうか?
・「その他の方法」とは、広報誌に掲載したり、事業所内外に掲示したりすることを意味します。
オススメ活用事例

月額平均工賃額が低い事業所

就労継続支援B型の利用者様への工賃は、働いてもらった分の売り上げから支払わないといけません。
つまり国保連からの給付金をその工賃に充当してはいけないのです。
しかし全国的に問題になっているのは、就労継続支援B型における生産活動の売上が伸びない事業所が多いことです。
特にご利用者さまが作った手作りの製品は、コロナの感染拡大の影響もあって売れにくい傾向にあります。
そこで行政が考えたのは、製品の「売上の実績」ではなく、「製品の売上を伸ばす活動そのもの」をしている事業所を支援することです。
実績は「1万円未満」でもそれ以上の基本報酬

具体的に検討するため、基本報酬を平均工賃額で評価する一番下の「1万円未満」(7.5:1の場合)を想定してみると、次の通りになります。
パターン1
・平均工賃月額「1万円未満」 < 基本報酬(III or IV)+「地域協働加算」+「ピアサポート加算」
566単位/日×20日 < 556単位/日×20日+30単位/日+100単位/月
・平均工賃月額「1万円以上1.5万円未満」 < 基本報酬(III or IV)+「地域協働加算」+「ピアサポート加算」
590単位/日×20日 < 556単位/日×20日+30単位/日+100単位/月
パターン3
・平均工賃月額「1.5万円以上2万円未満」 > 基本報酬(III or IV)+「地域協働加算」+「ピアサポート加算」
611単位/日×20日 < 556単位/日×20日+30単位/日+100単位/月
つまりたとえ平均工賃額が1万円未満という現状であったとしても、実質的にはそれより上の区分「1万円〜1.5万円未満」を超える基本報酬を手に入れることができるのです。
アイディア・企画が得意な事業所に有利

即ち就労継続支援B型で、地域活動に関するアイディアが豊富で、企画して実行していける事業所であれば、工賃の実績が伴わなくても評価されます。
これまでの障がい福祉サービスの提供で、地域とも様々な繋がりがあり、町おこしなどに参加している事業所が有利です
ホームページなどの広報は多くの事業所でもされているので心配はないでしょう。
むしろビジネスライクな活動が苦手だけど堅実な事業所さまが、この「地域協働加算」の創設を通して有利になることが、令和3年の報酬改定の要点の一つであります。
まとめ

「地域協働加算」で得する事業所さま
・アイディアや企画が得意な事業所さま
・ビジネスライクな活動が苦手な事業所さま