★★★記事執筆者のご紹介★★★
この記事は障害福祉事業専門で、国家資格者である行政書士の戸根裕士が作成しております。多数の顧問先様との仕事から得られた、実務に役立つ注意点をまとめました。
戸根行政書士事務所のプロフィールはこちらですので、よろしければ弊社の支援方針や独自の強みなどご覧ください。
児童発達支援と放課後等デイサービスの福祉事業を多機能型で運営しています。利用者のお子さんに行動障害をお持ちの方がいて、その子の通所時はスタッフを増やして対応しなければいけません。
そこで「強度行動障害時支援加算」に興味があるのですが、詳しく教えていただけますでしょうか?
「強度行動障害児支援加算」は、強度行動障害をお持ちのお子様への支援体制を備えていて支援を行う場合に取得できる加算です。
ただ届出が必要でなく、行動障害というだけで加算を算定すると自治体とトラブルになる可能性があります。
この記事では事業者様の理解の一助になるように以下の内容を説明いたします。
- 「強度行動障害児支援加算」の取得条件がわかります
- 「強度行動障害児支援加算」の間違えやすいポイントがわかります
- 「強度行動障害児支援加算」のミス防止対策がわかります
目次
「強度行動障害児支援加算」とは?取得条件やミス防止もしっかり解説?
児童発達支援や放課後等デイサービスは、「強度行動障害障害支援者養成研修」(実践研修)の修了者を配置し、強度行動障害の障がい児(20点以上)に対して支援を行った場合に「強度行動障害児支援加算」を取得することができます。
※児童発達支援センター等にて重症心身障害児に対する支援の場合は算定できません。
(加算名) | (単位数) | (備考) |
強度行動障害児支援加算(I) | 200単位/日 | 算定90日以内は+500単位 |
(加算名) | (単位数) | (備考) |
強度行動障害児支援加算(I) | 200単位/日 | ・20点以上の児童 ・算定90日以内は+500単位 |
強度行動障害児支援加算(I) | 250単位/日 | ・30点以上の児童 ・算定90日以内は+500単位 |
<「強度行動障害児支援加算」の条件とは>
・強度行動障害の「実践研修」の修了者を配置する(※配置していない日でも加算算定はできます)
・強度行動障害実践研修の修了者は非常勤でもよく、管理者や児発管でも問題ありません
・実践研修修了者が「支援計画シート」を作成する
・「支援計画シート」に基づく支援を、実践研修修了者は2回に1回確認する
・実践研修修了者は「支援計画シート」を3ヶ月に1回見直す
・90日以内の+500単位は同じ事業所で複数回算定できない
・90日以内の+500単位は、R603月以前に同加算を取得していても、要件を満たせばR0604月から付きます
※「支援計画シート」について
「強度行動障害児支援加算」の算定条件である「支援計画シート」の作成は、「重度訪問介護の対象拡大に伴う支給決定事務等に係る留意事項について」(障障発 0331 第8号 平成 26 年3月 31 日)の、以下で示す「支援計画シート」と「支援手順書兼記録用紙」を参照することが定められています。
※まとめ:強度行動障害の重い児童に対する支援の加算
・個別サポート加算:ケアニーズの高い児童や要保護の児童に対して支援を行う
・強度行動障害児支援加算:強度行動障害の障がい児に対して支援を行う
・集中的支援加算:広域的支援人材による相談助言のもとで支援を行う
児発や放デイで算定できる「強度行動障害児支援加算」の概略を理解することができました。
そこで「強度行動障害児支援加算」を取得して、行動障害の利用者でも万全に支援できるよう体制を整えたいと思うのですが、どのような点に注意すれば安全に加算を取得できるでしょうか?
「強度行動障害児支援加算」はよく「個別サポート加算」と混同されますが、専門的な研修修了者を配置する点で違います。
「強度行動障害児支援加算」を算定する上では受給者証をチェックすることも大切なポイントです。
以下では具体的な例を示しつつ「強度行動障害児支援加算」についてわかりやすく説明いたします。
条件1:加算対象の児童か確認する
児童発達支援や放課後等デイサービスで「強度行動障害児支援加算」を算定するには、まず障害を持つお子様の受給者証を確認して、「強度行動障害児支援加算」の対象者である記述があるか確認いたしましょう。
<「強度行動障害児支援加算」と受給者証の関係>
「強度行動障害児支援加算」は、あくまでも市町村が行動障害が一定程度以上あると認めて受給者証を発行した障害児に対してしか適用されません。
厚生労働省が定めた表で20点以上または30点以上の行動障害が認められることが加算の前提となります。
「強度行動障害児支援加算」は事業所側の任意で取得できず、あくまでも市町村が受給者証に記した障害児のみ加算の対象となります。
受給者証の発行前に相談に来られた場合、該当可能性があれば計画相談事業所にその旨を伝えて、事前に精神科医等と相談し、厚生労働省が定めた基準を満たすか確認しておきましょう。
利用途中から行動障害の程度が大きくなった場合も受給者証の更新のタイミングで、行動障害の認定をもらえるよう調整しましょう。
条件2:「強度行動障害支援者養成研修」の修了
児童発達支援や放課後等デイサービスで「強度行動障害児支援加算」を算定するには、支援を行う従業者が「強度行動障害支援者養成研修」(実践研修)を修了しておく必要があります。
<「強度行動障害支援者養成研修」(実践研修)とは>
強度行動障がいの状態を示す者に対し、適切な障がい特性の評価及び支援計画の作成ができるよう、また他の従事者に支援方法の伝達ができるよう従事者を養成いたします。
※令和6年度報酬改定の変更点
「強度行動障害児支援加算」の算定要件が、基礎研修を経た職員配置から実践研修が必要な職員配置へと変わりました。
「強度行動障害児支援加算」を算定する時には、必ずこの「強度行動障害支援者養成研修」の修了者の配置が必要になります。
実践研修だけでいいので、強度行動障害児がいなくても今後のためにスタッフに研修を受けてもらっておくと安心です。
処遇改善加算等を取得されている場合、年間の研修計画で「強度行動障害支援者養成研修」を設定されておくのをお勧めいたします。
「強度障害児支援加算」は儲かる?
児童発達支援や放課後等デイサービスで「強度障害児支援加算」を取得しても収益が上がるというよりは、障害児への支援の基本報酬単位が上がる程度であり、特定の経費と相殺できるものではないことを覚えておきましょう。
<「強度障害児支援加算」の加算額と人件費の関係>
強度障害児支援加算(I):200単位 = 約2,000円/日
↓
20日通所の場合:2,000円/日 × 20日 = 40,000円
「強度障害児支援加算」の算定には研修修了者が必要ですから、1ヶ月分の加算額は研修修了者への特別手当程度と言えるかもしれません。
ただ加算対象となる児童の支援にのみ算定されるので、全体的な収益の拡大にはあまり寄与しないでしょう。
それゆえを「強度障害児支援加算」を取得して売上を上げるというよりは、強度行動障害のスペシャリストを配置する負担とお考えください。
よくある質問
「強度行動障害支援者養成研修」の修了者はサービス管理責任者でも問題はないでしょうか?
答:研修を修了したサービス管理責任者を配置していても加算を取得できます。
「強度行動障害児支援加算」と「個別サポート加算」は同時に算定できますか?
答:同時に算定することが可能です。
「強度行動障害支援者養成研修」の修了者は常勤職員である必要がありますか?
答:常勤職員でなくても問題ありません。
「訪問支援特別加算」はサービス提供時間内に行っても算定できますか?
答:算定できますが、基準職員が事業所本体に配置している必要があるので、人員配置の欠如の減算に気をつけましょう。つまり基準職員しか本体にいないならサービス提供時間内は訪問支援をすることができません。
まとめ
児童発達支援や放課後等デイサービスで活用できる「強度行動障害児支援加算」について分かりました。ありがとうございます。
加算を取得するための記録資料と請求資料を適切に残し、不正のないよう体制を整えたいと思います。
「強度行動障害児支援加算」は、重い行動障害の児童に支援することで基本報酬単位が上がるという感覚が適切です。
加算を取得するための届出も必要ではないので、定期的な受給者証のチェックと研修修了者の確保を意識しておきましょう。 「強度行動障害支援者養成研修」(基礎研修)は従業員の今後のキャリアにもなりますので、加算対象者がいなくても受講してもらうことをお勧めいたします。
「強度行動障害児支援加算」を取得して、重度の行動障害の児童でも受け入れられる体制をしっかり作り、事業所の経営の安定につなげていきましょう。
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