
他事業種から児童発達支援など児童系の障がい福祉サービスを開業することになりました。。
保護者の仕事の関係や学校の休暇等で営業時間外に対応することがあります。
そこで「延長支援加算」について気になっているのですが、詳しく教えてもらえるでしょうか?
児発や放デイは営業時間内に事業所を空けていて、その内のサービス提供時間内にサービスを提供するのが基本です。
ただし利用者が児童だと、体調や家庭環境、保護者の事情が理由となって営業時間外に対応することがしばしばあります。
そんな時に事業所様の支えになるのが「延長支援加算」です。
この記事ではグループホームの事業者様の理解の一助になるように以下のような内容がわかるように説明いたします。
- 「延長支援加算」を算定するための要件がわかります
- 「延長支援加算」でいくらの報酬がもらえるかわかります
- 「延長支援加算」のおすすめの活用法がわかります
目次
延長支援加算の要件とは?

児童発達支援や放課後等デイサービスで、営業時間外に利用者のお子様にサービスを提供する際に「延長支援加算」を活用することができます。
<「延長支援加算」とは>
運営規程に定められている営業時間(送迎時間を含まない)が8時間以上あり、営業時間の前後(=延長時間帯)において支援を行なった場合に、1日の延長支援に要した時間に応じて算定する。
(時間数) | (単位/1人1日) |
1時間未満 | 61単位 |
1時間以上2時間未満 | 91単位 |
2時間以上 | 123単位 |
<「延長支援加算」のポイント>
・営業時間が8時間以上あること(※送迎時間は含まない)
・延長時間によって報酬単位が変わること
・前月15日までに延長支援加算の体制届出書を提出すること(※利用者変更の都度必要)
「延長支援加算」は運営規程の営業時間が基準に満たないと、そもそも算定できないとのことに驚きました。
それではその営業時間外の延長時間帯で支援を行うわけですが、人員の配置や記録などどうすればよろしいでしょうか?
営業時間が8時間以上ということは、短い営業時間の事業所には延長しても加算は取れないということです。
ご注意いただきたいのは、ただ延長支援したら「延長支援加算」を取得できるというわけではなく、こうした誤解ゆえに自治体とのトラブルが多いです。
「延長支援加算」を適正に算定するために、これから細かい要件をご説明して参ります。
児童指導員または保育士を1名以上配置する

児童発達支援や放課後等デイサービスが「延長加算」を取得するためには、営業時間外の延長時に直接支援をするスタッフを1名以上配置してください。
<延長時に配置するスタッフの注意点>
配置するスタッフは児童指導員もしくは保育士の方に限られます。
※管理者や児童発達管理責任者を配置しては「延長加算」を取得できません。
「延長支援加算」のポイントは、延長時にはサービス提供時に必要とされる人員の量を配置する必要はなく、1名以上で問題ない点です。
注意点としては、直接支援の保育士は送迎に行っていて管理者が残り支援をしていることは不可であることが挙げられます。
送迎の時間帯になって「延長支援加算」を取るつもりならシフト管理をしっかり見直しましょう。
営業時間外のサービス提供の実態がある

児童発達支援や放課後等デイサービスで「延長支援加算」を算定するときは、営業時間外にサービス提供をしている実態があると記録に残しておきましょう。
<営業時間外の支援の記録のポイント>
・支援者である保育士または児童指導員の名前(1名以上)
・支援を行なった時間帯
・支援を行なった内容
・保護者への対応
・児童の体調等
「延長支援加算」を適正に算定するために、何時から何時まで支援したのかは正確に記録しておきましょう。
請求の基準とした時間数と支援記録の時間数が相違した場合、実地指導の時にトラブルになるおそれがあるのでご注意ください。
長時間の事業所の滞在になると、児童の体調も変化するかもしれないので、児童の様子も記録をすることも忘れずにいてください。
臨時的な対応であること

児童発達支援や放課後等デイサービスで「延長支援加算」を算定するとき、その延長の営業時間外の支援はあくまで例外的な措置である必要があります。
<「例外的な措置である」ことの意味>
「延長支援加算」を毎日取得することは加算の趣旨から外れてしまいます。営業時間を変更して対処するように指導が入る可能性にご注意ください。
「延長支援加算」を度々取得して常態化していれば、運営規程を変更しない事業所の過失と判断されることもあるので注意致しましょう。
単に事業所側の都合で臨時的な対応でないとみなされた場合は自治体との間でトラブルになるのでご注意ください。
やむを得ない事由を障害児支援利用計画に記載

児童発達支援や放課後等デイサービスで「延長支援加算」を算定するとき、児童の障害児支援利用計画の中に延長支援をす「やむを得ない事由」を記しましょう。
※個別支援計画の中にも延長支援加算の必要性を書いておくと万全です。
※「障害児支援利用計画」とは
児童発達支援や放課後等デイサービスを利用するために受給者証の発行を自治体に依頼する時に必要となる支援計画のことです。基本的には相談支援事業所が作成することになります。
<「やむを得ない事由」の具体例>
・保育園などを利用しても通所が必要
・保護者の就業によりお迎えに行けない
・他の手段によっても児童の受け入れができない
・自治体のサービスを利用しても児童の受け入れができない
「延長支援加算」を取得するには、延長支援をせざるを得ない状況を児童の障害児支援利用計画に記載する必要があります。
延長支援を行う頻度を予測し、児童の日中活動に加えて支援可能な内容を準備してサービス提供を行うことが求められます。
延長支援加算の活用法とは?

「延長支援加算」は臨時的な対応として、障害児支援利用計画や個別支援計画にもしっかり記録して、人員も配置しないと取得できません。
<注意点>
「延長支援加算」を算定するには、障害児支援利用計画と共に役所に届出することが必要です。
「延長支援加算」の算定基準については理解することができました。
それでは事業所の経営の上で、どのような点に注意すれば効率よく「延長支援加算」を取得して事業が安定するでしょうか?
「延長支援加算」を効率よく取得するには、パターンごとの加算額や人件費のバランスを見ないといけません。
加算の報酬単位から計算して「延長支援加算」を行っても経営的に大丈夫かどうか判断する必要があります。
それでは「延長支援加算」の加算の給付額から説明して参ります。
3パターンの加算体系

「延長支援加算」は支援する時間数が3パターン想定されており、それぞれで報酬単位が異なってきます。
(時間数) | (単位/1人1日) |
1時間未満 | 61単位 |
1時間以上2時間未満 | 91単位 |
2時間以上 | 123単位 |
つまり1時間と2時間という単位が基準となって、時間数に応じて報酬単位が変わってきます。
それゆえに「延長支援加算」を取得する場合は、サービス提供記録に時間数を正確に記す工夫をしてください。
例:月に3回/夜40分/各2人

この例の場合だと「延長支援加算」で取得できるのは40分の延長支援なので報酬単位は61になります。
<給付額の計算方法>
61(加算単位)×10(地域単価)×2(人数)×3(回数)=3,660円
つまり1回あたり1,220円を受け取り、2人の子どもに対して40分の延長支援をするというわけです。
延長時間が伸びれば伸びるほど加算額は増えていきますが、最高でも123単位、つまり1,230円/1人になります。2人だと2,460円の加算額を受け取ることができます。
加算給付額=人件費?

「延長支援加算」を算定する上でのポイントはこの給付額1,220円は、その延長時に配置されるスタッフ1名の時給と殆ど変わらないと想定できる点です。
<「延長支援加算」の要点>
「延長支援加算」の給付は事業所への報酬ではなく、延長支援時に配置する人件費の補填に実質相当いたします。
それゆえに場合によっては、例えば40分の延長で1人の利用だった場合、基本的に赤字になることは覚悟しておいてください。。
「延長支援加算」を取得するかどうかの検討事項には人件費とのバランスで判断していただくのが基本になります。
その他の例1
条件:月に3回/夜40分/1人:月に3回/夜70分/1人
61(加算単位)×10(地域単価)×1(人数)×3(回数)+91(加算単位)×10(地域単価)×1(人数)×3(回数)=4560円
その他の例2
条件:月に3回/朝40分/1人:月に3回/夜70分/1人
61(加算単位)×10(地域単価)×1(人数)×3(回数)+91(加算単位)×10(地域単価)×1(人数)×3(回数)=4560円
延長支援加算の運営上の注意点

「延長支援加算」の要件と給付額を確認すると、この加算は延長時に配置する人員の人件費の補填と基本的に考えられることがわかります。
<「延長支援加算」のまとめ>
直接支援員をパートで雇用している場合、延長時にも支援してもらうことでその人件費を事業所が負担しなくて済むというわけです。
※「延長支援加算」を取得しても利益は基本的に上がりません。
「延長支援加算」の算定について誤解していたところもあり安心いたしました。
それでは「延長支援加算」を取得している事業所で、実地指導の時に注意する点など教えてもらえるでしょうか?
「延長支援加算」を取得する事業所で実施指導の時にトラブルになり指導されたという例をしばし聞きます。
これから「延長支援加算」を取得する注意点を説明して参りますので、参考にしていただければ幸いです。
労働環境への配慮

児童系の障がい福祉事業所で延長時のサービスを行う必要がある場合は、急な要請であることが度々であり、「延長支援加算」には労務管理がポイントになります。
<「延長支援加算」の労務管理のポイント>
・パートの直接支援員を配置する場合、延長時も勤務表に記し、労働条件通知書を確認して、必要なら時間外労働の賃金を払いましょう
・常勤スタッフであれ延長時に支援することで、他の業務に遅れをきたして通常の営業時間内に退勤することができなくなるかもしれません
時に延長時間帯の支援は、スタッフによって勤務外時間労働になる可能性もあります。
事業所のスタッフの労務管理に注意しつつ延長時も賃金を払って正式に配置していたことを証明できるようにしておきましょう。
サービス提供記録への明記

「延長支援加算」を請求するための延長時のサービス提供を行う場合、もちろんサービス提供記録を作成する必要があります。
<サービス提供記録の記載のポイント>
・延長支援をした時間数や人員名を記載する
・障害児支援利用計画や個別支援計画に則した支援を行う
・やむをえなく延長支援した理由を記載する
延長時間帯の支援にもサービス提供記録は必ず必要であり、「延長支援加算」を取得している場合は自治体にチェックされる可能性が高いです。
「やむをえなく延長した理由」の記載は特に忘れやすいので、必ず担当者が曖昧な表現でなく記載するようにいたしましょう。
延長支援加算のまとめ

「延長支援加算」の算定基準・活用法・注意点を詳しく理解することができました。ありがとうございます。
「延長支援加算」を利益を上げるためではなく、延長時も人員を配置して対応できる事業所の体制づくりのために利用しようと思います。
「延長支援加算」の取得で、やはり間違えやすいのが「やむをえない理由」がないのに取得するケースです。
また実施指導の時にトラブルにならないように労務管理やサービス提供記録はしっかりと整備致しましょう。
「延長支援加算」を利用して、利用者さんのご家族の緊急時の対応も行える信頼ある事業所になれば幸いです。
・臨時的な対応であること
・やむを得ない事由があること
・労働環境への配慮
・サービス提供記録への明記





