就労継続支援A型事業所を運営していて、先日の実地指導で就労事業会計に余剰金が存在することが指摘されました。「積立金」を設定して処理してほしいと指導を受けましたがよく分かりません。
そこで就労支援事業会計の「積立金」について詳しく教えていただけますでしょうか?
就労継続支援A型やB型などは生産活動を行い、その収益から賃金や工賃を支払いますが、その際に余剰金を出してはいけません。
もし生産活動の収益を適正に利用者さんに還元していないと、適正な障害者支援が実行できていないと見做されます。
この記事では事業者様の理解の一助になるように以下の内容を説明いたします。
- 就労支援事業会計の積立金の概要がわかります
- 就労支援事業会計の積立金の会計処理がわかります
- 就労支援事業会計の積立金の崩し方がわかります
・【必見】就労支援事業会計とは?会計区分や按分処理のポイント解説
就労支援事業の積立金とは?余剰金を発生させない会計処理
就労継続支援A型や就労継続支援B型の事業所は、就労支援事業で余剰金(≒利益)を発生させない原則がありますが、一定の条件の下でその余剰金を積立金として会計処理することができます。
<余剰金を「積立金」として計上する基本的な条件>
・将来にわたって安定的に賃金/工賃を支給するため
・安定的かつ円滑に就労支援事業を継続するため
(種類) | (内容) | (各年の限度額) | (上限額) |
工賃変動積立金 | 将来の賃金/工賃を補填するための積立 | 過去3年の賃金平均の10%以内 | 過去3年の賃金平均の50%以内 |
設備等整備積立金 | 生産活動の設備等の導入のための積立 | 就労支援事業収入の10%以内 | 就労支援事業収入の10%以内 |
就労支援事業会計の積立金について理解いたしました。
ただ就労継続支援事業所の会計で積立金を計上することは複雑に思えますが、どのような点に注意すれば就労支援事業会計で適正に処理することができますか?
就労支援事業会計の積立金の注意点は、目的と限度額を守ことです。
特に近年、就労支援事業会計の積立金が適正に管理されていない事例が多いのいでご注意ください。
以下では就労支援事業会計の積立金についてわかりやすく説明いたします。
積み立ての際の注意点
就労継続支援A型や就労継続支援B型の事業所の積立は、「就労支援事業活動計算書」の当期末期の増減差額にその他の積立取崩額を加算した額の範囲内で計上いたします。
※注意:賃金・工賃を支払っても余りのお金があってはいけません
生産活動による収入はその全額を賃金・工賃として支払う必要があり、生産活動で余剰金が生じることは認められておりません。
<積み立ての注意点>
・積立金の計上時期は、余剰金が生じた年度の計算書類に反映させます(=会社の会計年度ではありません)
・積立金を計上できるのは、当年の賃金/工賃の支払額が前年より上回る場合のみです
・積立金を計上する場合は、同額の積立資産を固定資産に計上する必要があります
就労支援事業の積立金の処理で忘れがちなポイントは、同額の積立資産を固定資産に計上しておく点です。
主に積立金の使用目的に充てる財源を確保するために積み立てれる現預金等を指します。
就労支援事業活動計算書だけでなく貸借対照表も合わせて確認いたしましょう。
取り崩す際の注意点
就労継続支援A型や就労継続支援B型の積立金の取り崩しは、過去3年間の最低工賃を下回った年度に/設備更新をした年度に、積立から補填して利用者に支給します。
<取り崩しの注意点>
・最低賃金を下回るか設備更新をしない限り、その他の目的で取り崩すことは認められません
・例外的に国保連からの給付が2ヶ月以上遅れる場合は、一時繰替使用をすることができます(※後で国保連からの給付で補填する必要があります)
よく実地指導の時に注意されるのは、目的外で積立金を取り崩した場合です。
積立金を取り崩した場合は使途が明確になるように、お金の流れを説明できる記録をまとめておきましょう。
請求ミスで給付が受けられない場合も積立金を取り崩すことができますが、後で必ず給付から補填してください。
まとめ
就労継続支援A型や就労継続支援B型に適用される就労支援事業会計の積立金について詳しく分かりました。ありがとうございます。
積立金の計上と取り崩しの注意点をしっかり守り、生産活動の実態が基準に適合しているよう証明し、自治体や利用者さんに信頼してもらえる体制を作りたいと思います。
積立金のよくある間違いは、積立を事業年度で行い、会計年度を考慮しないことです。
また限度額もあるので日頃から積立金の残高が限度を超えていないか確認しておきましょう。 積立金を取り崩す時は使用目的などを報告書類として作成しておくと安全です。
就労支援事業会計の積立金の処理を適切に行うことは事業所の経営の安定につながるので、ぜひ会計処理基準をしっかり守って組織を作ってください。
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