★★★記事執筆者のご紹介★★★
この記事は障害福祉事業専門で、国家資格者である行政書士の戸根裕士が作成しております。多数の顧問先様との仕事から得られた、実務に役立つ注意点をまとめました。
戸根行政書士事務所のプロフィールはこちらですので、よろしければ弊社の支援方針や独自の強みなどご覧ください。
就労継続支援A型事業所を運営していますが、特開金のルールが複雑でわかりません。特に「就労移行支援体制加算」の算定対象となる一般就労をして、特開金が受給できなくなる話も聞きました。
そこでお尋ねしたいのですが、「就労移行支援体制加算」も算定することができる一般就労と、特開金の関係について詳しく教えていただけますでしょうか?
就労継続支援A型の訓練を経て一般就労させると、かなり報酬額が高くなる「就労移行支援体制加算」を算定することができます(※加算のために一般就労を斡旋することは利用者本意でないのでダメなことです)。
そこで一般就労を容易にするために関連会社に就職させたものの、特開金の受給が続かず困ったケースも散見されます。
この記事では事業者様の理解の一助になるように以下の内容を説明いたします。
- 「就労移行支援体制加算」と特開金の受給との関係がわかります
- 一般就労させた場合に特開金が継続受給できない要件がわかります
- 「就労移行支援体制加算」と特開金の受給をどうするかの戦略がわかります
目次
【就A就B】「就労移行支援体制加算」の注意点!特開金を受給する注意点を解説
令和6年度より、就労継続支援A型等の収益を支える「就労移行支援体制加算」を活用して、利用者を一般企業に就職させる戦略は、就A利用者を関連企業等に就職させる場合、特開金の受給が厳しくなる点に注意が必要です(※加算のために一般就労を斡旋することは利用者本意でないのでダメなことです)。
(加算名) | (単位) | (条件) | (備考) |
就労移行支援体制加算 | 人員配置、定員、スコアによる ☟以下の表を参考に | ・就Aを経て企業等に就職 ・6ヶ月間の勤続結果 | 同一人物で複数回その加算を算定する場合、3年間の期間をあける(NEW) |
<就労継続支援A型事業所で受給する特開金とは>
就労継続支援A型の事業会社が受給できる「特定求職者雇用開発助成金」(=特開金)とは、ハローワークや民間の職業紹介事業者を通じて、利用者である障害者を継続して雇用した場合に受け取ることができます。
<就A受給要件1:他の利用者で1年雇用された人が75%以上>
前提1:対象労働者の雇用(11/1)前に特開金の受給者(X)がいる場合
前提2:その以前の受給者(X)が雇われてから1年の日(Y)が5/1~4/30にある場合
条件 :Xに当たる方が5人以上いて、Yの日付でXの継続就職者が75%いる
注意 :就Aを経て一般就労する方はこの離職者として扱われません
<就A受給要件2:他の利用者で助成終了から1年後も雇用されている人が75%以上>
前提1:対象労働者の雇用(11/1)前に特開金の受給者(X)がいる場合
前提2:その以前の受給者(X)の助成期間終了の翌日から1年の日(Y)が5/1~4/30にある場合
条件 :Xに当たる方が5人以上いて、Yの日付でXの継続就職者が75%いる
注意 :就Aを経て一般就労する方はこの離職者として扱われません
「就労移行支援体制加算」と特開金の概要についてわかりました。
令和6年度から「就労移行支援体制加算」と特開金を積極的に活用していくには、どのような点に注意して活用すればよろしいでしょうか?
障害者を雇用して特開金を受給できることは、就労継続支援A型の経営の大きなメリットの一つです。
ただ「就労移行支援体制加算」の使い方次第では、その特開金の需給の継続が難しくなる可能性も出てきます。
以下では「就労移行支援体制加算」を活用する時に直面する特開金の受給のと戦略をわかりやすく説明いたします(※加算のために一般就労を斡旋することは利用者本意でないのでダメなことです)。
注意:一般就労して特開金の継続受給が認められないケースについて
就労継続支援A型で「就労移行支援体制加算」を適用することで収益を拡大した戦略がありましたが、もし一定の要件に該当する会社への就職は、特開金の継続受給ができなくなる点にご注意ください(※加算のために一般就労を斡旋することは利用者本意でないのでダメなことです)。
<就A利用者を就労させて、特開金の継続受給が認められない注目事例>
過去3年間に、雇用や請負や委任の関係があった会社と、資本的・経済的・組織的関連性等からみて関係事業主と密接な関係にある事業主が当該対象労働者を雇い入れる場合
☞つまり「就労移行支援体制加算」を算定したいがために、就A実施会社と関係する会社に就職させた場合は継続受給となりません
「就労移行支援体制加算」を算定したいがために、自社と関係のある会社に就A利用者を斡旋することは、特開金の継続受給を難しくさせます。
自社の関連会社という定義も「資本的・経済的・組織的関連性等」という曖昧な表現なので、その都度の確認が大切です。
また「密接な関係」という要件も、どの程度まで許容されるか不明確な部分があるので慎重に検討いたしましょう。
今できること:特開金の受給期間の確認と加算額の把握
就労継続支援A型の利用者を関連会社に就職させて、上記のように特開金の継続受給ができなくなったからと言って、正直なところ「就労移行支援体制加算」の加算額の方が大きいので、「受給期間が残っていて可能であれば特開金も継続して受給する」といった判断が合理的かもしれません(※加算のために一般就労を斡旋することは利用者本意でないのでダメなことです)。
<特開金と「就労移行支援体制加算」の金額の比較>
特開金:800,000万円(助成期間は2年)
就労移行支援体制加算:1,044,000円/月
(定員20名/7.5:1/昨年度就労実績人数3人/スコア160点/1ヶ月延利用者数400人)
「就労移行支援体制加算」の継続算定を戦略とする就労継続支援A型は、加算額と特開金の受給金額を比較すると、加算額を優先するでしょう。
対象障害者の助成金の受給期間を把握して、助成金残りの支給額を考慮して、特開金の取得を優先するかご判断ください。
別の見方をすれば特開金の受給のために、一般就労のチャンスを逃すことは避けた方が良いです。
まとめ
令和6年度の「就労移行支援体制加算」と特開金について詳しく分かりました。ありがとうございます。
就A利用者の特開金の受給のルールをしっかり勉強して、加算算定と事業拡大の戦略を再検討いたします。
「就労移行支援体制加算」のために安易に関連会社に一般就労させると、特開金の継続受給ができなくなってしまいます。
ただ関連会社かどうかの判断は、個別具体的な事例が対象になるので、その都度相談協議をすることが大切です。 しかしながら「就労移行支援体制加算」の受給額と比較すると、特開金の額は大きくないので、どちらを優先するか検討いたしましょう。
「就労移行支援体制加算」と特開金のルールをしっかり守り、自治体や利用者さんから信頼される組織を作ってください。
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