障がい福祉事業の人員配置を正しくして経営拡大するポイントは何でしょうか?
事業の支出の大きな割合が人件費なので気になります。
利用者数の計算を適正にすることがポイントです。。
特に開業時から1年は細かくチェックしないと障がい福祉事業の足場は作れません。
この記事では以下のような内容がわかります。
- 人員配置の常勤換算の計算に必要な「利用者数」の計算がわかる
- 開業時から「利用者数」の計算をどのようにすれば良いかわかる
- 適正な人員配置をして経営拡大するためのポイントがわかる
利用者数の計算の仕方のポイント!
障がい福祉事業のスタッフを配置する基準になるのは「利用者数」の計算と常勤換算です(※定員ではありません)。
・【障がい福祉事業の基本】「常勤換算」について知りたい
常勤換算の基礎となる「利用者数」の計算の仕方は開業からの時期によって以下のように変わります。
利用者数の計算の基本
(開業からの時期) | (計算の仕方) |
6ヶ月未満 | 定員の90パーセント |
6ヶ月から1年未満 | 直近6ヶ月間の「全利用者の延べ数」を、「6ヶ月間の開所日数」で割った数 |
1年以上 | 直近1年間の「全利用者等の延べ数」を「1年間の開所日数」で 割った数 |
※計算にあたっては小数点第2位を切り上げです
こうした「利用者数の計算」は役所の開業手引きにも記されていると思いますが、これから実務上で注目するポイントを解説していきます
開業から半年:人員を削れない
開業直後は「定員の90パーセント」という設定値なので、これはほぼ定員全てが埋まるという厳しい人員配置基準が敷かれます。
それゆえに開業直後に利用者が集まらない場合はかなり厳しいものとなります。
つまり利用者は増えず、給付額も少なく、しかし人件費は削れない状況が続きます。
開業から半年のポイント
・開業後の半年は人件費の支出を抑えられないので開業資金に余裕を持たせておく
・可能な限りパートを活用し正規職員の割合を減らす
・雇用するパートに関しては半年後に契約内容を見直す旨を記しておく
開業6ヶ月から1年:人員配置の徹底した見直し
「利用者の計算の仕方」は開業してから半年して、利用者の実態に合わせた「利用者数」の見直しが可能になります。
利用者数の計算
:直近6ヶ月間の「全利用者の延べ数」を、「6ヶ月間の開所日数」で割った数
例:就労継続支援(10:1型)の11月の常勤換算の基礎となる「利用者数」の計算
(月数) | (人数) | (開所日数) |
10 | 69 | 21 |
9 | 98 | 22 |
8 | 129 | 22 |
7 | 129 | 23 |
6 | 151 | 22 |
5 | 138 | 23 |
(合計) | 714 | 133 |
利用者数 :714 ÷ 133 ≒ 5.4
人員配置数:5.4 ÷ 10 ≒ 0.6
こうした計算からわかるのは、利用者集めがうまくいかない事業所様にとって半年後から人員配置の改善のチャンスが訪れることです。
上記の例で仮に定員を最低の20名とすると、
半年まで必要な人員配置 : 1.8(20 × 0.9 ÷ 10)
半年から1年までの人員配置: 0.6
そう、利用者集めがうまくいっていない事業所様ほど、半年からは実態に即した人員配置が可能になります。
半年以上から1年未満のポイント
・毎月必要な人員配置の計算を欠かさず行う
・半年後の見直しにしていたパートのスタッフを実態に即した配置にする
・基礎報酬の区分や、人員に関する加算の見直しを行う
1年以上:急な増減に注意
開業後の半年から1年未満の間に、毎月実態に即した「利用者数」を計算していれば、その事業所にあった人員配置は実現するはずです。
従って、実は開業して半年から1年の間の「利用者数」の計算と常勤換算を正確にしておくことが重要です。
そして1年経ってからは基本的に「前年の9割」という基準は続きます。
気を付けるポイントとしては利用者の急な増減です。
1年以上のポイント
・利用者が急増した場合、次年度から追加の人員配置が必要になりますので早めにご準備を
・利用者が急減した場合、次年度から人員配置が減りますのでパートのスタッフを調整してください
定員が増えた場合の計算
障がい福祉事業の定員数が増えた時も「利用者の計算の仕方」は振り出しに戻ると思ってください。
(定員増からの時期) | (計算の仕方) |
6ヶ月未満 | 定員の90パーセント |
6ヶ月から1年未満 | 直近6ヶ月間の「全利用者の延べ数」を、「6ヶ月間の開所日数」で割った数 |
1年以上 | 直近1年間の「全利用者等の延べ数」を「1年間の開所日数」で 割った数 |
つまり事業所の定員を増加させれば、これまでご説明した「半年未満のポイント」や「1年未満のポイント」を守って経営すれば大丈夫です。
定員が減った場合の計算
定員を減らしてから実績が3月以上ある場合
:減少してから「3ヶ月間の全利用者数」を、「3月間の開所日数」で割った数
この計算の仕方は定員を減らしてから1年経つまで続きます。
それゆえに3ヶ月が経ってからは毎月の「利用者数」のこまめな計算とスタッフ配置の見直しが必要になり、前述の「1年未満のポイント」を参照してください。
よくある質問
利用者数や常勤換算の計算で割り切ればい場合はどうすればいいですか?
答:小数点の第2位を切り上げてください。
利用者数と常勤換算の見直しで、1人の常勤配置義務で既に基準を満たしている場合は他の職種を置かなくていいですか?
答:他の職種の人員も配置してください。
(参考)
就労継続支援B型では職業指導員と生活指導員のうち、どちらかを常勤で配置しないといけないが、例えば必要配置基準が常勤換算0.7になると、片方の常勤1でその数値を満たしてしまうが、もう片方の職種を配置する必要があります。
上の質問の続きで、既に常勤基準は満たしているが配置すべき他の職種は、どの頻度であればいいのか?
答:現在の利用者の支援に必要な範囲で配置をしてください(※各自治体に確認することをお勧めいたします)
半年後からの利用者数の計算で、開業月が月末の場合は不利になりませんか?
答:不利にはなりません。1ヶ月あたりの日数でなく、その月の開業日数が計算の基本になるので、実態と離れる計算になることはありません。
雇用するパートの雇用体系を見直すということですが、具体的にどうすればいいですか?
答:雇用契約書と労働条件通知書の契約期間を半年と定めて契約内容を見直す旨を記してください。
半年後から勤務体系を再考するとのことですが、特に気を付けるポイントはありますか?
答:できる限り各週のスタッフ配置が均等になっていることが望ましいです。あと1時間だけなど極端な短時間の配置もやめましょう。
人員配置を見直す注意点
開業からの期間ごとに「利用者数の計算」を行い、人員配置を見直して適正な経営をするポイントをお伝えいたしました。
特に障がい福祉事業の経営拡大のためお勧めなのが、
基本報酬の設定がある障がい福祉事業は基本報酬の設定も見直す
ことです。
特に就労継続支援B型などその例ですが、基本報酬まで見直してしまう際の注意点をご説明いたします。
例:就労継続支援B型(定員20名以下、平均工賃1〜1.5万円)
(基本報酬) | (単位) |
I型(利用者7.5人に1人の支援者) | 611 |
I型(利用者10人に1人の支援者) | 541 |
福祉専門職員配置等加算(III)との関係
仮に「利用者数」の計算の見直しで、常勤の職員をパートに転換し、基本報酬をIIからIに変更したといたします。
まず基本報酬が変わるので利用者さんお1人(1日)につき
:541→611
つまり(1単価10円とすると)700円単価が上がります。
ただ常勤職員をパートに転換する際に気にするポイントは、
・福祉専門職員配置等加算(III)が算定できなくなる
という可能性です。
福祉専門職員配置等加算(III)(6単位/日)
:直接支援の常勤職員を 75パーセント以上配置(※常勤換算方法で計算する)
又は
「勤続3年以上の常勤職員」が 30パーセント以上配置セント以上配置
ここで分かるのは、
福祉専門職員配置等加算(III)6単位=60円 < 基本報酬増加分(II→I)70単位=700円
ですので常勤職員をパートに転換して、福祉専門職員配置等加算(III)を辞めても、基本報酬の単位を変えた方が経営上都合が良いことです。
ただし福祉専門職員配置等加算(III)の算定をやめる手続きを忘れないように気をつけてください。
給与支払いとの関係
常勤で勤務する職員に支払う給与は、例えば時給1000円で計算すると、
1000円/時間 ×8時間/日 × 5日/週 × 4週/月 = 160,000円
(常勤換算=1)
だといたします。
そのかたをパートで給与を次のように、
1000円/時間 ×8時間/日 × 3日/週 × 4週/月 = 160,000円
(常勤換算=0.6)
転換すると、約64万円の人件費が削減できます。
ただしこの場合、障がい福祉事業所では次のポイントに注意してください。
- 年金、健康保険の見直し
- 雇用保険の見直し
- 処遇改善加算を取得している場合はその規定との見直し
常勤からパートに転換すると保険料支払いも削減できますが、利用者が増えず実態に即した人員配置をして経営を安定させることに主眼を置いてください。
よって長期的に見て雇用が安定したスタッフがいた方が安全ですので、その点にはご注意管ください。
まとめ
利用者数と人員配置の計算の仕方のポイントがわかりました。ありがとうございます。
開業時から利用者数に応じて経営の仕方を変えていくコツが理解できました。
ありがとうございます。ただ利用者数に合わせて勤務形態を変える時は労働条件や雇用関係にご注意ください。
それとあくまで「利用者の支援が優先」なので無理に利益のために人員配置を切り詰めないようお気をつけください。
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