就労継続支援B型事業所を運営していますが、利用者さんの体調が不安定で継続的な通所がなかなか見込めません。そこで「医療連携体制加算」を取得して医療機関と連携を図っていきたいと思っています。
ですので「医療連携体制加算」の条件から活用方法まで詳しく教えていただけますでしょうか?
「医療連携体制加算」の特に軽度の方対象の種類(I~III)は、就労継続支援B型で活用すれば効果が抜群です。
医療機関と連携し利用者さんの体調が安定すれば、通所回数が増えて報酬単位も大きく上がります。
この記事では事業者様の理解の一助になるように以下の内容を説明いたします。
- 「医療連携体制加算」の活用方法がわかります
- 「医療連携体制加算」の加算額の活用と費用の設定がわかります
- 「医療連携体制加算」の書類整備のポイントがわかります
医療連携体制加算の活用方法とは?要件や間違えやすい点も解説
就労継続支援B型の「医療連携体制加算」は、主治医による指示書に基づき医療機関等に属する看護職員が事業所を訪問して支援や指導をすることにより算定できます。
※内容や支援時間により単位数が異なります。
(種類) | (単位数) | (内容) |
医療連携体制加算I | 32単位/日 | 1時間未満の看護 |
医療連携体制加算II | 63単位/日 | 1時間~2時間未満の看護 |
医療連携体制加算III | 125単位/日 | 2時間以上の看護 |
医療連携体制加算IV | 63単位/日(1人) 500単位/日(2人) 400単位/日(3人~) | 医療的ケアの対象者への看護 |
医療連携体制加算V | 500単位/日 | 喀痰吸引等の指導 |
医療連携体制加算VI | 63単位/日 | 喀痰吸引等の実施 |
<「医療連携体制加算」の算定手順>
1 主治医から指示書を発行してもらう(※理由、内容、回数の記載が必要)
2 訪問看護ステーションやクリニックと業務委託契約をする
3 利用者の個別支援計画を変更する + 個人情報提供の同意書をもらう
4 定期的に看護職員による医療支援の記録をもらって保管する
5 サービス提供記録やモニタリングで医療ケアの効果を検証する
「医療連携体制加算」の各種類の単位数や内容について理解いたしました。
ただ弊社の就労継続支援事業所の利用者さんに通所中の医療まで必要ないように思えますが、どのように「医療連携体制加算」を活用することが可能でしょうか?
「医療連携体制加算」の活用ポイントは、利用者さんが毎日通所できて利用回数を増やすことに貢献する点にあります。
特に「医療連携体制加算」のI,II,IIIは軽度の方でも対象になり、使い勝手が良い加算制度になります。
以下では重度の方がいない就労継続支援B型を想定して、「医療連携体制加算」の活用方法についてわかりやすく説明いたします。
継続的な体調管理により通所回数の増加
「医療連携体制加算」(I~III)を活用して訪問看護が定期的に来れば、利用者の日々の適切な体調管理により健康状態が安定し、その結果継続して事業所に通所できる可能性が高まります。
<訪問看護が定期的に来所してよかった例>
・利用者の体調管理により個別支援計画を詳細に書けるようになった
・欠席時対応加算の時に適切に相談援助ができた
・生活支援を効果的に行うことができた
・作業の集中力が上がった
就労継続支援B型の事業所のスタッフは医療に関して知識が十分でないケースが多いです。
そこで医療の専門家が訪問して指導すれば、利用者支援が一層充実し、利用者が継続して通える体制ができるでしょう。
特に就労継続支援B型の利用者さんは体調管理をすることが通所に影響するので、「医療連携体制加算」(I~III)を活用しましょう。
加算額と訪問看護への支払
「医療連携体制加算」(I~III)を算定することで事業所は加算額を得ますが、その加算額を基準に医療機関等や訪問看護会社に費用を支払うことが一般的です。
※「医療機関等」には病院だけでなく診療所も含まれます
<就B型事業所と訪問看護会社で折半する場合>
対象者が7名で1時間未満の看護を週に1回行う場合
= 32単位 × 10円/単位 × 7人 × 4 週 (=8,960円/月)
↓
就b型事業所 :4,480円
訪問看護会社 :4,480円
<「医療連携体制加算」(I~III)の金銭的メリット?>
・就b事業所側:収益アップというより日常的支援の効率化
・訪問看護会社:派遣看護職員の時給の相殺
訪問看護会社にとって、訪問看護を通じて利用者個人と契約して収益を上げることにメリットを感じていることもあります。
「医療連携体制加算」(I~III)の加算額はそれぞれの収益に寄与するということではないでしょう。
「医療連携体制加算」(I~III)の魅力は各々の事業の安定化と発展のきっかけになる点にあります。
注意点:事業所の書類整理のポイント
就労継続支援B型事業所で「医療連携体制加算」(I~III)を取得する注意点は、加算の根拠となる書類をきっちり整理して保存しておくことです。
<「医療連携体制加算」(I~III)の記録の注意点>
・日時と該当利用者と看護時間を記録する
・訪問看護の対象者が8人を超えないようにする
・個別支援計画に訪問看護による支援も記載する
・訪問看護会社と情報共有のミーティングの記録をとる
・サービス提供実績記録の該当日に支援の存否を記入する
・医師からの指示書を保管しておく
※看護を提供する時間の計算のポイント
「医療連携体制加算」(I~III)では「実際に看護を提供した時間」だけ計上します。つまり「看護はしないが滞在した時間」は計上しません。
「医療連携体制加算」(I~III)の種類を間違わないように、訪問看護の時間数は正確に記録する必要があります。
加算対象者が8人を超えないことにも注意し、月ごとの実施日と利用者の割り当てを事前に決めておけばスムーズに進みます。
よくある質問
「医療連携体制加算」(I~III)は、バイタルチェックだけで算定できますか?
答:算定できます。
事業所で雇用した看護職員が行った場合に、「医療連携体制加算」(I~III) は算定きますか?
答:算定できます。
「医療連携体制加算」(I~III)の上限8人は、多機能型事業所の場合は合計人数ですか?
答:加算の対象となる、各事業の合計人数が、8人を超えてはいけません。
「医療連携体制加算」(I~III)は医者の指示書が必要でしょうか?
答:医者の指示書が必要です。
「医療連携体制加算」の算定の上限は決められているでしょうか?
答:決められていません。医者の指示書通りです。
まとめ
就労継続支援B型で取得できる「医療連携体制加算」の活用法について詳しく分かりました。ありがとうございます。
事業所運営に医療機関等や訪問看護等の支援を取り入れていき、利用者さんが安心して通所できる体制を作りたいと思います。
就労継続支援B型で収益を上げるには通所回数を増やす必要があり、そのために利用者の体調管理は必須です。
「医療連携体制加算」(I~III)を活用すれば、リスクを冒すことなく相手の訪問看護会社に損をさせなく連携することが可能になります。 「医療連携体制加算」(I~III)の加算額で収益を上げるというより、継続的な通所を見込める体制づくりに活用いたしましょう。
利用者の体調管理の仕組みを作ることは事業所の経営の安定につながるので、ぜひ要件をしっかり守って組織を作ってください。
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