障がい者を対象向けのグループホームを開業して順調に利用者さんが集まっています。
そこで2棟目のグループホームを建てて定員を増やそうと思っています。
障がい者グループホームで定員を増やす際にどのような点に注意すればいいでしょうか?
定員を増やせば今より多くの利用者さんを受け入れることができるので収入アップになります。
ただ定員を増加させることや人員配置や加算の請求で注意点がいくつもあります。
グループホームに限らず児童系の福祉事業でも相談を受けることが多いです。
この記事では事業者様の理解の一助になるように以下のような内容がわかるように説明いたします。
- 利用定員増加に関する人員配置の注意点がわかります
- 利用定員増加に関する国保連への請求の注意点がわかります
- 利用定員増加をするか新規指定を取得するかの検討事項がわかります
目次
【GH・児童系】定員増加の注意点とは?
障害福祉事業は各サービスで設定されている上限まで利用者の定員数を増やすことができます。
※ただし定員数を超えて利用者を受け入れた場合、減算の可能性があります。
開業当初は利用者が集まるか不安で定員を少なくしていました。
定員数を変えるのは届出だけで出来る簡単なものと思っているのですが、利用者定員の変更の注意点など教えてもらえるでしょうか?
利用者定員を増やすことは支援体制側にとっても、また請求の際にも変更が求められます。
十分に注意せず定員増加を進めると自治体との間でトラブルになる可能性があるのでお気をつけください。
それでは定員増加の注意点についてしっかり説明したいと思います。
人員配置の増員:スタッフ確保と人件費
障害福祉事業で利用者の定員を増員する場合、サービス支援のための人員配置が実績ではなく「増加した定員数の9割」になるので急なスタッフの確保が必要になります。
<グループホームの定員増員の例:5名→10名>
実績として4人で人員配置等を計算している場合、定員を10人に増やした段階で10×0.9=9人の人員配置が求められます。
※つまり実際の利用の存否にかかわらず従来の倍のスタッフ確保が必要になります
利用者定員を増加する背景には、現在より多くの利用者が見込める計算があると思いますが、定員を変更した段階で実態に関係なく、制度上は倍近いスタッフの確保が求められます。
気を付けるポイントは、非常勤スタッフの採用には時間がかかることです。人件費の増大も経営上は忘れてはいけない点です。
利用者増による収入の見込みと、人件費などの支出の増加のバランスをとって定員増加の検討を致しましょう。
(応用)基本報酬や加算の額の変更
障害福祉事業で利用者の定員を増員する場合、1人あたり請求する基本報酬の額や加算の額が定員の増加に伴い減額される傾向にあります。
<児童発達支援の定員増加の例:10名→20名>
基本報酬単位 :754単位 → 513単位
児童指導員等加配加算(保育士):187単位 → 125単位
※センター外で非医療的ケア児童の支援の場合。
<グループホームの定員増加の例:5名→10名>
夜間支援等体制加算:224単位 → 113単位
※区分3の支援の場合。1人で定員全員を支援する場合。
利用者を増員すると1人あたりの報酬単位の減額の可能性があり、単に今の報酬が倍になるという計算は経営上難しいことにご注意ください 。
ただ障害福祉サービスによってはグループホームなど基本報酬単位は変わらず、利用者が増えるたびに等しく増加します。
忘れがちなのは加算の報酬請求も変更になる点です。実地指導の時に指摘されやすいので注意致しましょう。
検討事項:定員増加か新規指定か?
障害福祉事業で利用者を増員する場合、基本報酬単位や加算額の減額の可能性もあるので同じ人件費がかかるなら、定員増加ではなく別で新規指定を取得した方が経営上は便利なこともあります。
<「定員増加」or「新規指定」:検討事項の例>
・定員が増加すると基本報酬の減額がされるサービスかどうか
・新規指定の場合に追加で配置するサビ管の人件費を考慮して利益が出るか
・新規指定にかかる時間・費用を考慮しても利益が出るか
・複数の事業所番号に伴う請求事務の増加に耐えられる体制になっているか
利用者数の増加が見込まれる時、定員数を増やすことが唯一の解決策ではない点にご注意ください。
サービスの種類や人件費などを検討すると、定員数を増やすことより新規で別の指定番号を取得した方が長期的にみて得策であることもあります。
規模の拡大が障害福祉事業の安定のポイントですが、その方法は現状をよく分析して慎重になりましょう。
定員増加のための事業所側の届出変更
障害福祉事業で定員を増加する場合、事業所で常備する体制に関わる書類や規程を変更して、必要があれば利用者から同意をもらう必要があります。
<定員増加に向けての書類整備の手順>
・運営規程に新しい利用者数を記し、変更から10日以内に届け出をする
・重要事項説明書を変更して新定員数と人員配置を記し、利用者から同意を得る
・従業員に定員増加を説明し、次月からのシフト調整をする
利用者数の変更は、支援に必要な職員を確保するシフト表の変更にもなるので、月初の1日から変更すると手続きが簡便になります。
特に定員数の9割が人員配置の基準になるので、非常勤の方には出勤数の増加を相談し、新しいスタッフには業務連携を早期から確認いたしましょう。
よくあるミスが変更した運営規程を掲示し忘れることなので注意致しましょう。
まとめ
本日は障害福祉事業の定員増加のポイントをご説明いただきありがとうございました。勉強になりました。
ただ定員を増加させたら良い訳ではなく、新規指定の取得の方が経営的な面で良いのか再度検討したいと思います。
利用者定員を増加させると、実態による利用者数の計算から離れ推定値になり、人員配置基準が厳しくなることが注意点です。
また加算の請求額は変更をする必要がありますので、忘れず対応して報酬単位を取り逃さないようにいたしましょう。
その他にも定員増加に関する自治体への届出も10日以内なので、しっかりと定員増加に向けたスケジュールに入れて計画を立ててください。
戸根行政書士事務所からのお知らせ
※まとめ:児発・放デイの相談支援系の加算の一覧
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2 家庭連携加算:自宅訪問をして本人/家族に相談援助を行う(月に4回)
3 関係機関連携加算:関係機関と連携して相談援助を行う(月に1回)
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