これから児童発達支援と放課後デイサービスを多機能型で開業しようと考えています。ただ多機能型は人員配置や請求単位が複雑でよくわかりません。
そこで児童発達支援と放課後デイサービスの多機能型について、その人員配置のポイントや請求単位の選び方を教えていただけますでしょうか?
多機能型による開業は、従業者の配置/設備/利用定員/報酬請求に関して特別な措置を受けることができます。
ただ特に従業員の配置や利用定員は複数のパターンが考えられ、それに伴い請求単位も変化するのでミスをすると実地指導の時にトラブルになります。
この記事では事業者様の理解の一助になるように以下の内容を説明いたします。
- 児発と放デイの多機能型の人員配置のポイントがわかります
- 児発と放デイの多機能型の各パターンのメリット/デメリットがわかります
- 児発と放デイの多機能型の請求単位を間違えません
多機能型の人員配置と請求単位の徹底解説!各パターンの詳解
まず「児童発達支援」と「放課後等デイサービス」を多機能型で運営すると、どのような特例があるか概略をまとめましょう。
<児童系の多機能型の特例の概略>
・各サービスごとに専従の職員を配置する必要はない
↔︎ それぞれのサービスに児発管と保育士又は児童指導員2名以上(1名常勤)が必要
・設備を兼用することができる
↔︎ それぞれのサービスに独立した設備が必要
・各サービスの合計で利用定員を10名以上とすることができる
↔︎ それぞれのサービスに定員10名以上を設定する必要がある
・報酬を各サービスの合計利用定員に応じて請求できる
↔︎ それぞれのサービスの利用定員の報酬単位で請求する
児童発達支援と放課後等デイサービスを多機能型で運営する概略について理解いたしました。
けれども多機能型で利用定員や報酬単位の設定も、いろいろなパターンが仮定できると思うのですが、それぞれの利用定員のパターンの詳細とそのメリットやデメリットを詳しく教えてもらえるでしょうか?
多くの多機能型の事業所は多機能型で利用定員10名以上で開業されていますが、それだけが選択肢ではありません。
ただ児童系の多機能型で利用定員を10名超にすると、人員配置と報酬請求で詳細な注意が必要になります。
以下では障害福祉事業のハラスメント防止の対策のポイントについてわかりやすく説明いたします。
パターン1:定員10名/請求単位10名以下
児童発達支援と放課後等デイサービスの多機能型の中で、多くの事業所が選ぶ最もポピュラーなパターンは、この1日の同じ時間帯に利用定員10名でサービス提供をする場合です。
※例1:10時から17時に児発と放デイを一体で行う(定員10名)
請求単位は「10人以下」で行うことができます。児発管は1名、従業員は保育士もしくは児童指導員を2名、そのうち常勤は1名になります。
<メリット>
・児童から就学児まで同じ設備で支援できる
・児発と放デイに、それぞれ基準職員を配置する必要がない
・児発と放デイに、それぞれ児発管/管理者を配置する必要がない
・報酬単位を一番高い「10人以下」で請求できる
<デメリット>
・利用定員が10名と限定されるので学校休日に定員超過のリスクがある
・児童から就学児と、年代の違う利用者を同時に相手する必要がある
多機能型の利用定員10名のパターンは、定員も埋めやすく、人件費も過度にかからないので経営しやすい多機能型と言えるでしょう。
ただ成人系の障害福祉事業と比べて利用者が児童なので、家族との連絡調整や児童への教育など、想像以上に支援に時間が取られてしまいます。
開業時に児童発達支援や放課後等デイサービスの経営の経験がない場合は、まずこの利用定員10名をお勧めしています。
パターン2:定員20名/請求単位11〜20名
児童発達支援と放課後等デイサービスの多機能型の中で、利用者が段々と増えてくる事業所が採用するのが、請求単位は下がっても、1日の同じ時間帯に利用定員20名でサービス提供をするパターンです。
※例2:10時から17時に児発と放デイを一体で行う(定員20名)
請求単位は「11〜20人」で行うことができます。児発管は1名、従業員は保育士もしくは児童指導員を4名、そのうち常勤は1名になります。
<メリット>
・児童発達支援管理責任者は兼務できる(=1人で大丈夫)
・保育士/児童指導員の常勤職員は1名で足りる
・定員超過の減算のリスクが少ない(→多くの児童を受け入れられる)
・児童から就学児まで同じ設備で支援できる(=それぞれに場所代がかからない)
<デメリット>
・請求単位が「11〜20人」というカテゴリーで低い金額になる
・常勤職員1名がいなくなれば人員欠如の減算のリスクが上がる
・同じサービス提供時間帯に4名の職員を同時配置するシフト管理が大変である
多くの利用定員を抱える見込みがありながら、常勤職員や児発管の求人に苦戦している事業所は、この20名定員(報酬単位「11〜20名)のパターンをお勧めいたします。
確かに報酬単位は低いですが、サービス提供時間を短くすれば、その時間帯に配置する非常勤職員の人件費は低く抑えられます。
ただし多くの非常勤職員を曜日ごとに管理するのは大変なので、しっかり事前にシフト表を作っておきましょう。
パターン3:定員20名/請求単位10名以下
児童発達支援と放課後等デイサービスの多機能型の中で、高収益を狙う事業所が採用するのが、多機能型の従業員の配置に関する特例によらず、高い報酬単位で利用定員20名にサービス提供をするパターンです。
※例3:10時から17時に児発と放デイを一体で行う(定員20名)
請求単位は「10人以下」で行うことができます。児発管は2名、従業員はそれぞれに保育士もしくは児童指導員を2名、そのうち常勤は1名になります。
<メリット>
・請求単位が「10人以下」というカテゴリーで高い金額になる
・それぞれに営業時間とサービス提供時間を別で設定する必要がない(=「開所時間減算」を避けられます/「延長支援加算」も取得しやすい)
・児童から就学児まで同じ設備で支援できる(=それぞれに場所代がかからない)
・定員超過の減算のリスクが少ない(→多くの児童を受け入れられる)
<デメリット>
・児童発達支援管理責任者が兼務できない(=2人は必要)
・保育士/児童指導員の常勤職員は2名も必要になってくる
・児発と放デイの職員は兼務できない(=それぞれに専従職員が必要)
この20名定員(報酬単位「10名以下」)の多機能型は、実際は多機能型ではなく、ほとんど各々のサービスを独立して行う形態と変わりません。
ただし多機能型に設定すると、営業時間/サービス提供時間を共有できるので開所時間減算のリスクが減ることがポイントです。
また別の見方をすれば延長支援加算も取得しやすいのも忘れてはいけない大事な点です。
よくある質問
管理者が児童指導員を兼務している場合は、多機能型の人員配置についてどのように考えれば良いですか?
答:管理者以外の時間を算定して下さい。
「送迎」や「休憩」時はどのように考えればよいですか?
答:それ以外のスタッフで人員配置2名を割らないようする必要があります。
ボランティアも人員配置に含むことができますか?
答: 有償であっても人員配置に含みません。
サービス提供時間が8時間を超える場合は、どうすればよいですか?
答:別人員が必要になります。残業を基本とした配置はできないので、8時間勤務以内での配置となります。常勤は原則連続5日(週40時間)までなので、残業を前提にした勤務体制は不可です
有給を取得した場合はどうなりますか?
答:基本的に常勤の方の有休取得は人員配置に含めることを認めています。
まとめ
児童発達支援と放課後等デイサービスの多機能型に関する人員配置と請求単位の要点が詳しく分かりました。ありがとうございます。
自社の現状を再度整理して、どの多機能型のパターンを選べばいいのか考えたいと思います。
多機能型のポイントは、従業員の配置/設備/利用定員/請求単位で特例措置を受けられることです。
特に児童系は開所時間減算にならないために時間帯をコントロールすることが大切で、2つの単位にするより多機能型でした方がリスクは少ないでしょう。 ただ準備できる従業員の量と利用者の推測により、多機能型のパターンを柔軟に変えることが大切です。
多機能型のメリットを最大限に活かして、障害児に対する支援を充実させて、ご家族からも信頼される体制を作っていきましょう。
戸根行政書士事務所からのお知らせ
※まとめ:児発・放デイの相談支援系の加算の一覧
1 事業所内相談支援加算:事業所内で個別/グループに相談援助を行う(月に1回)
2 家庭連携加算:自宅訪問をして本人/家族に相談援助を行う(月に4回)
3 関係機関連携加算:関係機関と連携して相談援助を行う(月に1回)
<スタッフ配置のパターンを解説>
・【基本】これだけは覚えておきたい!児童系の人員配置の基本
・【基本】基準職員「営業時間を通じての配置」とは?
・【必見】児童系多機能型の人員配置について
・【確認】児童指導員等加配加算と適正なスタッフの配置について
<常勤換算について>
・【必読】常勤換算の計算総まとめ!減算にならないためのポイント
・【基本】常勤換算について徹底解説!計算方法/注意点/よくある質問まで
・【必見】利用者数の計算の仕方のポイント!人員配置の注意点まとめ
<スタッフ配置に関する加算>
・【基本】児童指導員等加配加算とは?取得条件や注意点も解説
・【注意】児童指導員等加配加算と従業員シフト配置の可否について解説
・【確認】特別支援加算とは?条件やおすすめ活用法も解説
・【お勧め】専門的支援加算とは?条件や注意点も解説
<配慮を必要とする児童支援の加算>
・【新設】個別サポート加算とは?条件や注意点を解説
・【基本】「事業所内相談支援加算」とは?取得条件やミス防止もしっかり解説
・【基本】「家庭連携加算」とは?取得条件やミス防止もしっかり解説
・【基本】「関係機関連携加算」とは?取得条件や間違えやすいポイントも解説
・【応用】「強度行動障害児支援加算」とは?取得条件やトラブル事例も解説
<監査指導のトラブルにならないための対策>
・【注意】開所時間減算とは?ポイントや注意点を解説
・【注意】定員超過利用減算とは?条件や気を付ける点を解説
・【基本】延長支援加算について徹底解説!条件や注意点など
・【まとめ】放デイ特有の送迎加算とは?学校送迎の注意点も解説
・【注意】放デイ限定の欠席時対応加算とは?利用時間30分以内でもOK
・【基本】放デイの学校休日等の支援の注意点!トラブル回避のポイント
・【義務化】虐待防止委員会とは?運営規程の書き方から記録書類まで解説
<実地指導のための対策>
・【基本】実地指導、ここがチェックされる!間違えない対策を解説
・【基本】実地指導、ここがチェックされる!②気になる論点の解説
<処遇改善加算を適正に取得する>
・【基本】福祉・介護職員処遇改善加算とは?条件・注意点を解説
・【基本】福祉・介護職員「特定」処遇改善加算とは?条件・注意点を解説
・【注意】処遇改善加算・特定処遇改善加算の対象職種とは?注意点も徹底解説
・【注意】処遇改善キャリアパス要件を満たすとは?記述例・失敗例あり
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<事業所管理の健全化に努める>
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<年度ごとの義務化への対応>
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