児童発達支援と放課後等デイサービスを運営していますが、医療的ケア児を受け入れることが数日あります。その場合に医療的ケア児を支援した基本報酬を算定したいと思うのですが、看護職員の人員配置など複雑で不安が多いです。
そこでお尋ねしたいのですが、児発と放デイで医療ケア児支援の基本報酬を算定するポイントと注意点を、詳しく教えていただけますか?
医療的ケア児を支援する場合、①医療的ケア児支援の基本報酬を算定するか、他方で②通常の基本報酬+医療連携体制加算のどちらかを算定することになります。
この①の医療ケア児の基本報酬の要件は非常に複雑で、実地指導でも度々トラブルになるポイントです。
この記事では事業者様の理解の一助になるように以下の内容を説明いたします。
- 児発/放デイの医療ケア児の基本報酬の概要がわかります
- 医療ケア児の基本報酬の人員配置がわかります
- 医療ケア児の基本報酬と医療連携体制加算の関係がわかります
★★★記事執筆者のご紹介★★★
この記事は障害福祉事業専門で、国家資格者である行政書士の戸根裕士が作成しております。多数の顧問先様との仕事から得られた、実務に役立つ注意点をまとめました。
戸根行政書士事務所のプロフィールはこちらですので、よろしければ弊社の支援方針や独自の強みなどご覧ください。
目次
医療的ケア児の基本報酬の条件は?人員配置や他加算を解説
児童発達支援と放課後等デイサービスで支援対象となる医療的ケア児とは、スコアに応じて医療的ケア区分が判定され、区分が高いほどに看護職員配置基準も高くなり、その分報酬単価も高くなります。
(区分) | (スコア) | (看護職員の配置割合) | (放デイ:3h以上/10名) |
3 | 32点以上 | ケア児 1 : 看護職員 1 | 2,604単位 |
2 | 16点以上 | ケア児 2 : 看護職員 1 | 1,604単位 |
1 | 3点以上 | ケア児 3 : 看護職員 1 | 1,271単位 |
<医療ケア児の基本報酬の条件>
1ヶ月を通して、
医療的ケア児が利用する日に配置した合計人数 > 必要看護職員数
の場合に「医療ケア児の基本報酬」を算定できます。
※報酬例:区分3の1人が5日、区分2の1人が8日、区分1の2人が合計31日利用
区分3:1人×5日×看護職員1人=看護職員5人
区分2:1人×8日×看護職員0.5人=看護職員4人
区分1:(1人×15日+1人×16日)×看護職員0.33人=看護職員10.23人
⇨必要な看護職員数=5人+4人+10.23=19.23人
※医療ケア児の基本報酬の請求上の注意点
必要看護職員数を満たせば1ヶ月を通して、医療的ケア児は区分に応じた基本報酬、医療的ケア以外は通常の基本報酬を請求できます。ただし、医療的ケア児へサービス提供時間を通じて全く配置できなかった場合は請求できません。
児発/放デイの医療ケア児の基本報酬の概要についてわかりました。
ただ実際に実地指導に向けて間違いなく、児発と放デイの医療ケア児の基本報酬算定を適切に行うために、どのようなポイントに注意したら良いでしょうか?
上記の医療ケア児の基本報酬の概要を見ると算定は容易そうですが、「1人」の考え方や基準人員の配置にもポイントがあり要注意が必要です。
また必要看護職員数を満たせなくなった場合や医療的ケア区分を変更する場合もあり、特例が多いのも医療ケア児の基本報酬が難しい点です。
以下で複雑な児発/放デイの医療ケア児の基本報酬算定の注意点などをわかりやすく説明いたします。
ポイント1:「1人」の考え方について
児童発達支援と放課後等デイサービスの医療ケア児の基本報酬を算定するために、「配置看護職員数」を計算する必要がありますが、看護師配置「1人」とは医療的ケア児が利用するサービス提供時間を通じて配置した場合に「1人」と数えます。
<「1人=サービス提供時間を通じた配置」の注意点>
・複数の職員が医療的ケア児が利用するサービス提供時間を通じて配置した場合も「1人」とみなします
・医療的ケア児に対して医療的ケアをしなくても配置していれば「1人」とみなせます。
・医療的ケア児が利用するサービス提供時間の半分だけ配置は「1人」ではない
・医療的ケア児が利用するサービス提供時間に度々不在であれば「1人」ではない
医療ケア児の基本報酬の算定のためには、ただのサービス提供時間ではなくその内の医療的ケア児の利用時間を通じた配置で1人と数えます。
なので勤務体制一覧表は、医療的ケア児の利用時間とその内の配置時間数を分かるように工夫いたしましょう。
一部の時間帯のみ看護職員を配置しても、例えば0.5人とカウントできないことにご注意ください(※ただしその一部の時間帯のみ配置の日でも医療的ケア区分の請求は可能です)。
ポイント2:基準職員配置の考え方
児童発達支援と放課後等デイサービスで医療的ケアを行う場合、サービス提供時間帯を通じて配置した看護職員は基準職員の児童指導員等に含めますが、しかし医療ケア児の基本報酬を算定するために看護師は含めることができません。
<医療ケア児の基本報酬を算定する時の基準職員について>
医療ケア児の基本報酬を算定するための「配置看護職員数」に入れる看護職員は、基準職員の児童指導員等に含まれませんが、その他の看護職員は基準職員に入れることができます。
この医療ケア児の基本報酬の算定の時に看護職員を無条件に基準職員に入れる間違いはよく見るケースです。
医療ケア児の基本報酬を算定する時にどの看護職員を「配置看護職員数」に入れて、どの看護職員を基準職員に入れるか分類する必要があります。
間違えて看護職員を配置して基準職員が不足した場合は減算も考えられますのでご注意ください。
特例:看護職員が不足した場合の対処法
児童発達支援と放課後等デイサービスで医療ケア児の基本報酬を算定する場合、「配置看護職員数」が「必要看護職員数」を上回ることが条件ですが、もし上回らなかった場合でも、特別な対処をすれば「必要看護職員数」が緩和し医療ケア児の基本報酬を算定できる可能性が出てきます。
<特例1:必要看護職員数を減らす>
・医療的ケア児の利用日で必要看護職員数に対する不足が大きい日を、1月の計算の合計から省き、「配置>必要看護職員」になるまで繰り返す
↓
・合計から省かれた日にち以外を医療ケア児の基本報酬で請求する(※合計から省かれた日は医ケア以外の基本報酬で請求する)
<特例2:医療的ケア区分の扱いを変更する>
・看護職員の配置を多く求められる医療的ケア区分3などを、保護者の同意を書面で得て区分2又は1として少なく扱い、少ない看護職員配置とする
↓
・同意を得て少なく扱った医療的ケア区分で請求する(※実際の医療的ケア区分ではありません)
特例として「必要看護職員」を減らすための計算は、四捨五入を行わず小数点以下も含めて行います。
他にも医療的ケア区分を合意を得て変更して扱う場合、その時だけに限らず恒常的に扱うことも可能です。
ただし指定権者に医療的ケア区分の報告をその都度行うよう注意いたしましょう。
注意:医療連携体制加算との関係
児童発達支援と放課後等デイサービスを医療ケア児が利用する場合、その数が3人未満であれば、前述の医療ケア児の基本報酬を算定するだけでなく、他に通常の基本報酬+「医療連携体制加算」の算定の選択肢があります(※逆に言えば3人以上ならありません)。
<医療的ケア児に「医療連携体制加算」を算定する際の注意点>
・医療的ケア児が3人以上かどうかは、一ヶ月の利用実績で確認します(=総利用回数÷総開所日数)
・ある医ケア児童は医療ケア児の基本報酬、他の医ケア児童は医療連携体制加算という扱いはできません
・医療連携体制加算の算定区分の提供時間は、医ケア児への見守り時間も含める
・医療連携体制加算の算定区分の提供時間は、医ケア児がいない時間は含めない
・医療連携体制加算の算定区分の提供時間は、複数の医ケア児の利用合計時間となる
<医ケア以外の児童に「医療連携体制加算」を適用することについて>
・「医療連携体制加算」は医ケアかどうか/人数/提供時間で種類と単位が変わる
・医療ケア児の加算と、それ以外の児童の加算は別々にそれぞれの種類の加算を算定する
・医療連携体制加算の算定区分の提供時間は、医ケア以外の児童への支援時間は含めない
医療的ケア児の基本報酬算定をしていて、間違えて「医療連携体制加算」も請求している間違いを散見いたします。
また「医療連携体制加算」の算定のための看護職員配置は、地域の訪問看護ステーションからの派遣でも認められるのでご留意ください。
医療的ケア児が3人未満かどうかは月毎に変わるので、どちらか不明瞭な時は各月での確認作業が必要です。
まとめ
児発/放デイの医療ケア児の基本報酬について詳しく分かりました。ありがとうございます。
医療ケア児の基本報酬を算定するための「必要看護職員数」を毎月計算し、確かに必要な看護職員を配置して算定したいと思います。
児発/放デイで医療ケア児の基本報酬を算定する場合は、条件を間違って理解していたり、必要な看護職員の計算を誤っていたりする例が多いです。
1月の利用する医ケア児の数に応じた看護職員を必ずしも配置する必要はなく、請求日数を減らせば医療ケア児の基本報酬の請求チャンスは残るので各月できちんと見直しましょう。 その他にも「医療連携体制加算」を算定する時、その提供時間の計算間違いも多いので間違えていないかチェックする必要があります。
医療的ケア児を受け入れる児発/放デイは貴重な社会資源なので、定められた基準を守って運営のトラブをなくし、自治体や利用者さんから信頼される組織を作ってください。
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