★★★記事執筆者のご紹介★★★
この記事は障害福祉事業専門で、国家資格者である行政書士の戸根裕士が作成しております。多数の顧問先様との仕事から得られた、実務に役立つ注意点をまとめました。
戸根行政書士事務所のプロフィールはこちらですので、よろしければ弊社の支援方針や独自の強みなどご覧ください。
児童発達支援と放課後等デイサービスを運営していますが、令和6年度の報酬改定への対応が不安です。特に「支援プログラム未公表減算」が新設されましたが、減算の算定要件がわかりにくく心配になっています。
そこでお尋ねしたいのですが、令和6年度の児発と放デイの「支援プログラム未公表減算」を回避するためのポイントを教えてもらえますか?
令和6年度の報酬改定により児発と放デイは、支援力の向上と透明化に力を入れる事業所が評価されるようになりました。
もし事業所ごとの「支援プログラム」を公表していなければ、「支援プログラム未公表減算」になり、報酬請求が大幅に減額する可能性があります。
この記事では事業者様の理解の一助になるように以下の内容を説明いたします。
- 令和6年度の児発と放デイの「支援プログラム未公表減算」の概要がわかります
- 「支援プログラム未公表」の要件と根拠書類の残し方がわかります
- 「支援プログラム」の作成方法と「5領域」の具体例がわかります
目次
【令和6年報酬改定】児発/放デイ「支援プログラム未公表減算」とは?要件や対策を解説
令和6年度報酬改定で新設された、児発・放デイ「支援プログラム未公表減算」とは、5領域との繋がりを明確化した事業所全体の支援内容を示す「支援プログラム」の作成・公表・届出をしていない場合に減算が適用されます。
(種類) | (減算割合) | (備考) |
支援プログラム未公表減算 | 15%減算 | ・令和7年4月1日から適用 ・届出がされていない月から解消した月まで適用 |
<児発放デイの支援と「5領域」について>
・令和6年4月1日より児発/放デイのサービス提供は「5領域」に則する必要があります。
・個別支援計画の支援内容も「5領域」全て網羅する必要があります。☞詳しくはこちらの解説へ
・「5領域」とは、以下の5つのカテゴリーです
⇨1健康・生活、2運動・感覚、3認知・行動、4言語・コミュニケーション、5人間関係・社会性です。
<「支援プログラム」の参考様式の注意点>
・必ずしも児発管だけが作成する書類ではありません
・各々の個別支援計画の内容と矛盾しないようにしてください
・「移行支援」は保育所等との連携だけでなく、地域住民や施設との交流も含みます
・「主な行事等」は行事形式だけでなく季節の活動も含まれます
令和6年度の児発/放デイの「支援プログラム未公表減算」の概要についてわかりました。
ただ実際に5領域支援を手探りで始めている場合、どのようなポイントに注意して「支援プログラム」を作成すれば良いのでしょうか
令和6年度の報酬改定は児発/放デイの支援の質を向上させる方向で調整されています。
そこで大事なのは、事業所の個性を反映させた「支援プログラム」を作成し、それを個別支援計画を通じて現場の支援の指針にすることです。
以下では児発/放デイの「支援プログラム未公表減算」を回避するための「支援プログラム」作成のポイントをわかりやすく説明いたします。
手順1:「5領域」の支援内容を具体的にイメージする
児発/放デイの「支援プログラム未公表減算」の回避のために「支援プログラム」の作成が必要ですが、まず大切なのは「5領域」それぞれの支援内容を具体的にイメージして、事業所ごとの特色ある支援内容を整理していくことです。
<1:「健康・生活」の具体例について>
・手洗いうがいの衛生力を高める
・服の整理や着替え、道具の出し入れの整理整頓ができるようにする
・時計を見て意識を5分前に動けるようにする
・時計を見て片付けができるようにする
・おやつのゴミの分別や片付けをする
・切符の買い方や電車の乗り方を学ぶ
<2:「運動・感覚」の具体例について>
・トレーナーにより体感プログラムを実施する
・バランスボールを使い体を動かしバランス感覚を養う
・キックボードを使って腰や足の力の強さを理解する
・イヤマフをつけて感覚過敏を調整する
・義足や身体不具合の方の移動能力を高める
<3:「認知・行動」の具体例について>
・季節の飾り付けを作成し形、色、重さの感覚を養う
・こだわりや偏食をなくすために色々な食べ物や環境に挑戦する
・怒りの感情がある時に自分をコントロールできるようにする
・部屋ごとで何をするかを理解して空間能力を高める
・役所の展覧会の作品に出品するために絵を描いたり習字をしたりして五感を刺激する
<4:「言語・コミュニケーション」の具体例について>
・本を共に読み、場面ごとの登場人物の感情を理解する
・絵カードを使ってコミュニケーション力を高める
・文字を覚えてもらって文章を書く練習をする
・ちくちく言葉、ふわふわ言葉により他人に対する言語コミュニケーションを養う
・誕生日の時に何をしたいか、皆に伝えられるコミュニケーション能力を高める
<5:「人間関係・社会性」の具体例について>
・複数人でカードゲームをしてルールを覚えたり役割分担を理解したりして他人と遊べるようにする
・当番制度を使って役割を決めてやってもらう
・今日あったことを皆の前で発表してもらう
・帰る時間など一人の方に声掛けしてもらって役割を担って責任感を育てる
・お店屋さんごっこをして、お金の使い方や購入行動を練習し、社会性を養う
「支援プログラム未公表減算」を回避するために「支援プログラム」を作りますが、5領域以外の内容を埋めることは難しくないでしょう。
その「5領域」の支援内容をまとめる時は、自分たちの実践的な経験だけではなく、他者の例や設定の意図を理解することが大切です。
「5領域」の各々の領域の支援内容の個数は設定されていませんが、5つは書けるように内容を練っておけば安心です。
手順2:ステップごとに「支援プログラムの作成」を進める
児発/放デイの「支援プログラム未公表減算」の回避のために「支援プログラム」の作成が必要ですが、作成のステップごとに内容を整理してスタッフと協議を行い、既存の個別支援計画と矛盾しないよう調整することが大切です。
<「支援プログラム」作成のためのステップの例>
ステップ1:児発管と管理者が「支援プログラム」の5領域以外を埋めてしまう
↓
ステップ2:保育士や児童指導員等の直接支援員も会議に入れて、現在実施するサービス内容を5領域に分類する
↓
ステップ3:「5領域」に関する他者の事例や領域設定の意図を確認し、「5領域」とは意識せずに行なっているサービスがどの領域かに該当するか確認する
↓
ステップ4:現在の利用児の個別支援計画を参照し、「支援プログラム」の「5領域」の記述と矛盾していないか確認する
「支援プログラム」作成においては「5領域」の記述を整理することに時間が一番かかります。
ただスタッフ一同と共にサービス内容の質を振り返る機会にもなり、無駄なサービスは取りやめ、伸ばすことができる支援内容への気づきを促進することが大切です。
その他、現在の個別支援計画の内容と矛盾していると、公表結果を見た保護者の信頼を失うのでご注意ください。
まとめ
令和6年度の報酬改定による児発と放デイの「支援プログラム未公表減算」について詳しく分かりました。ありがとうございます。
障害児支援支援の内容を見直し、充実したサービス提供体制を整えたいと思います。
児発/放デイの令和6年度の報酬改定は、サービス内容の質の向上と透明化に力を入れています。
「支援プログラム」を未公表のままにすると15%減算になり、200万円の売り上げがあれば減算適用後に170万円になってしまいます。 その「支援プログラム」の作成で「5領域」部分の整理は時間と労力がかかりますが、自社のサービス内容を見直すきっかけにして支援力向上を計画してください。
令和6年度の報酬改定にもしっかり対応し、自治体や利用者さんから信頼される組織を作ってください。
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