障害福祉事業の加算の一つである「障害福祉サービス体験利用支援加算」とは何でしょうか?
よく弊所にいただく質問で、
「事業所に体験に来てもらっても取れるみたいな加算ですよね?」
というご質問をいただきます。
「体験利用してもらって付き合ったのだから給付が欲しい!」という気持ちもわかります。
けれども実態は自社の事業所の体験に対する加算ではありません。
もし間違えていると国保連への請求を過大にしている可能性があるのでご注意ください。
この記事のポイント
・障害福祉サービス体験利用支援加算について正確に理解できる
・国保連への請求を過大にしているかチェックできる
・代わりに体験利用の時に何をしておけばいいか分かる
目次
障害福祉サービス体験利用支援加算とは?
「障害福祉サービス体験利用支援加算」とは、
定義:利用者が障害福祉サービス事業の体験利用をおこなった場合に15日以内に算定
単位(初日から5日目) :500単位/日(+50単位/日:地域生活支援拠点等の場合)
単位(6日目から15日目):250単位/日(+50単位/日:地域生活支援拠点等の場合)
というように整理できます。
主に、
- 就労移行支援
- 就労継続支援A型
- 就労継続支援B
が対象になります。
それでは間違えやすいポイントを中心に「障害福祉サービス体験利用支援加算」について確認していきましょう。
自分の事業所の体験利用ではない
よくある間違いは次の通りです。
×:自分の事業所を体験利用した時に加算を算定
○:自分の事業所の利用者が他の体験利用をした時に算定
「障害福祉サービス体験利用支援加算」という名前からして、新しい相談者が体験利用した時に加算できると考えてしまうかもしれませんが、間違いです。
指定地域移行支援の障害福祉サービスの体験的な利用支援を利用する場合に加算を算定することができます。
加算の算定のために必要な支援
「障害福祉サービス体験利用支援加算」は、自分の事業所の利用者が他の障害福祉サービスを体験利用した場合の加算です。
しかし自分の事業所でも、加算の算定のために必要な支援を行わなければなりません。
・体験的な利用支援の利用の日において昼間の時間帯における訓練等の支援を行った場合
もしくは
・体験的な利用支援に係る一般相談支援事業者との連絡調整その他の相談援助を行った場合
そしてこれらの支援の状況や内容を記録することも忘れないでください。
国保連へ過大請求をしているか?
「障害福祉サービス体験利用支援加算」について正確な内容と誤解がわかったと思います。
ポイントは、
- 自分の事業所の利用者が他の障害福祉サービスを体験利用する
という点にあります。
そこで勘違いをしていて、
・自分の事業所の体験利用に加算を算定していた場合
・過大な請求をして返金しないといけない場合
はどうすればいいでしょうか。
請求記録を確認する
まず間違えて「障害福祉サービス体験利用支援加算」を算定したと思われる利用者の請求書類を確認いたします。
特に重要なのが「訓練等給付費等明細書」を確認してください。
そこに記されている「サービス内容」という欄に「障害福祉サービス体験利用支援加算」が記入されていれば加算が算定されています。
もし前述のような「障害福祉サービス体験利用支援加算」の規定と違う形で加算をつけていれば、すぐに修正の手続きに入る必要があります。
間違えた請求を修正する
「障害福祉サービス体験利用支援加算」を間違えて申告し請求した場合、修正する手続きをしないといけません。
そして修正のタイミングごとに手続きが異なるので場合分けしてご説明いたします。
※間違えた請求を放置すると監査指導の時にトラブルになるのでご注意ください。
〜10日
請求月の10日までなら電送の請求を修正または取り下げて対応いたします。
11日〜20日
請求月の11日からは「返戻依頼書」を提出して修正をいたします。
21日〜
この時点で支払いは実行されているので過誤処理を行い、請求金額を合わせます。
サービス体験利用の時には何をすればいいのか?
「障害福祉サービス体験利用支援加算」は、自分の事業所の体験利用に対する加算ではないと思います。
つまり自分の事業所の体験利用をしてもらっても給付は支払われず、それに対する対価はありません。
言い換えれば、体験利用者を本当の利用者につなげないと体験利用の労力は報われないのです。
そこで障害福祉サービスの体験利用時に、今後のために何ができるのかをお伝えいたします。
体験利用の日数を決める
まず自社の障害福祉サービスを体験できる日数を設定いたしましょう。
おすすめは1日か2日です。
もし仮に体験利用者が長く体験利用をして、その分、常勤配置している支援員の方達がサポートしないといけない場合、本当の利用者への支援が不十分になってしまう危険があります。
ですからお一人ごとに利用できる日数、できれば時間帯も設定して体験利用は最小限にしましょう。
体験利用記録と個別支援計画
ある程度、今後も利用が見込める方には体験利用時に「体験利用記録」を作成し、今後の個別支援計画の作成に役立てます。
自社の障害福祉サービスの体験利用時に、
・利用者の体調
・利用者の得意なこと/不得意なこと
・利用者の楽しいこと/楽しくないこと
・利用者のできること/できないこと
・利用者と性格が合う支援者/相性の悪い支援者
などを把握しておけば、のちにアセスメントから個別支援計画を作成する際、被支援者への支援の計画を的確に立てることができるでしょう。
まとめ
「障害福祉サービス体験利用支援加算」とは、その名前から自分の事業所の体験に対して加算できると誤解しがちなものです。
ポイントは、「自分の事業所の利用者が他の障害福祉サービスを体験利用する」という点にあります。
ですので、体験利用者が来た場合は、日数や時間を定めて速やかに契約につなげるようにいたしましょう。
戸根行政書士事務所からのお知らせ
<常勤換算について>
・【必読】常勤換算の計算総まとめ!減算にならないためのポイント
・【基本】常勤換算について徹底解説!計算方法/注意点/よくある質問まで
・【必見】利用者数の計算の仕方のポイント!人員配置の注意点まとめ
・【まとめ】グループホームの人員配置の計算とは?初歩から注意点まで解説
・【必見】サービス管理責任者の兼務を徹底解説!間違えやすい点も説明
<減算について>
・【基本】人員欠如の減算とは?計算方法や注意点も解説
・【詳解】人員欠如の減算:基準や緊急対応・防止策をご説明
・【詳解】サービス管理責任者欠如減算と個別支援計画未作成減算とは?
<事業所管理の健全化に努める>
・【注意】利用者紹介のために紹介料を払う?利益供与の問題点と対策
・【基本】土曜日開業の注意点とは?人員配置等の問題を解説
・【必読】常勤換算の計算総まとめ!減算にならないためのポイント
・【必見】サービス管理責任者の兼務を徹底解説!間違えやすい点も説明
・【必見】就労支援事業会計とは?会計区分や按分処理のポイント解説
・【注意】就労支援事業の積立金とは?余剰金を発生させない会計処理
・【注意】サービス管理責任者の更新研修の条件とは?
・【基本】サービス管理責任者の実務経験おすすめルートとは?
・【基本】「一体型」と「多機能型」の違いとは?事業拡大のチャンス!
・【大注目】令和5年サービス管理責任者の実務経験が6ヶ月に変更!
・【大注目】令和5年サービス管理責任者不在の猶予期間が2年に!
<工賃上昇のための体制づくり>
・【高収入】施設外就労支援の注意点とは?基本から間違えやすいミスまで説明
・【推奨】就労移行連携加算とは?オススメ活用事例あり
・【注目】就労移行支援体制加算とは?オススメ活用事例あり
・【注目】就労継続支援事業所に計画相談支援事業所を併設して収益アップ!
<工賃支払いを適正に管理する>
・【基本】就労継続支援B型:工賃支払いの注意点は?月ごとの手続き解説
<現状に応じた適切な事業所体制を作る>
・【基本】平均工賃月額の計算の仕方は?解説と注意点とは
・【重度】「重度者支援体制加算」とは?よくある間違いも解説
<工賃支払以外の参加・共感型の新体制を目指す>
・【令和3年】ピアサポート体制・実施加算とは?オススメ活用事例あり
・【令和3年】地域協働加算とは?オススメ活用事例あり
<処遇改善加算を適正に取得する>
・【基本】福祉・介護職員処遇改善加算とは?条件・注意点を解説
・【基本】福祉・介護職員「特定」処遇改善加算とは?条件・注意点を解説
・【注意】処遇改善加算・特定処遇改善加算の対象職種とは?注意点も徹底解説
・【注意】処遇改善キャリアパス要件を満たすとは?記述例・失敗例あり
・【基本】賃金改善の方法をわかりやすく解説:トラブル防止の注意点もあり
<事業所管理の健全化に努める>
・【注意】利用者紹介のために紹介料を払う?利益供与の問題と対策
・【基本】土曜日開業の注意点とは?人員配置等の問題を解説
・【必読】常勤換算の計算総まとめ!減算にならないためのポイント
・【必見】サービス管理責任者の兼務を徹底解説!間違えやすい点も説明
・【義務化】虐待防止委員会とは?運営規程の書き方から記録書類まで解説
・【義務化】身体拘束適正化委員会と「身体拘束廃止未実施減算」とは
<ここが知りたい!実地指導対策:就労継続支援A型編>
・実地指導、ここがチェックされる①!間違えやすいポイント解説
・実地指導、ここがチェックされる②!間違えやすいポイント解説
<ここが知りたい!実地指導対策:就労継続支援B型編>
・実地指導、ここがチェックされる①!間違えやすいポイント解説