
悩み
「グループホームの夜間支援体制のスタッフ配置の仕方はどうすればいいでしょうか?」
障がい者グループホームを経営するときに、「夜間支援体制等加算」の取得は事業拡大に欠かせません。
・【最新版】夜間支援等体制加算とは?注意点・活用事例も紹介
ただスタッフを配置するにあたり「勤務時間や休憩をどのように設定すればいいのか」など弊所にも多くの質問が寄せられています。
もし間違えれば監査指導の対象でもあり、ただ労働法とも絡み合って複雑な問題になっています。
この記事のポイント
・障がい者グループホームの夜間スタッフの休憩時間の考えについて理解できます
・障がい者グループホームに夜間スタッフを適正に配置する際の対策がわかります
目次
勤務時間と休憩時間との関係の処理

障がい者グループホームで「夜間支援体制等加算」(I)を取得するには、基本的に22時から5時の間にスタッフを配置する必要があります。
ただし労働基準法で6時間以上の労働には45分以上の休憩を与えないといけないルールがあります。
「それでは22時から5時の間に休憩を入れてしまうと夜間支援体制等加算(I)は取得できないのではないか?」
という疑問が浮かんできます。
そこで「令和3 年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ &A VOL. 1」を参考に解決策をお伝えいたします。
必要な体制が整っていれば休憩でも可

夜間スタッフが夜間に休憩する場合、利用者に対して必要な介護等の支援を提供できる体制を確保していれば、「夜間支援体制等加算」(I)を算定できます。
この「必要な介護等の支援を提供できる体制」の条件とは、
実態としてその配置されている共同生活住居内で休憩時間を過ごす
ことです。
つまりグループホームで夜間支援のスタッフに労働基準法上の休憩を与えても、支援体制さえあれば障害福祉の加算条件を満たしていると考えられます。
業務が発生しない時間帯の設定

これから夜間支援スタッフに休憩を与えても「夜間支援体制等加算」(I)を算定できる支援体制のポイントをお伝えいたします。
まず第一に夜間のグループホームで業務の発生しない時間帯を設定することです。
利用者の人数や状態像、これまでの支援の実態等を考慮し、基本的に業務 が発生することがない時間を休憩時間と定め、夜間スタッフが労働から離れることを 保障いたします
その「業務の発生しない時間帯」とは、例えば次のような場合が想定できます。
- 完全消灯時刻での全ての利用者の入眠確認後
- 深夜の定期巡回による異常がないことの確認後
夜間支援の状況を家族に説明する

夜間支援スタッフに休憩を与えて「夜間支援体制等加算」(I)をするために忘れてはならないポイントは、夜間支援の状況を家族に説明することです。
・夜間スタッフの休憩時間中は、 原則として入居者からの連絡・ 相談等へ の対応は行わないこと
こうした夜間支援の家族への説明を踏まえてスタッフへ次のような指示も出しておきましょう。
・夜間スタッフの休憩時間中に、入居者から連絡・ 相談等があった場合、 休憩時間終了後に対応する旨を伝え ることで足りる旨を事前に夜間支援従事者に伝達しておく
グループホームの休憩時間に関する注意点とは

夜間のグループホームにおける勤務時間や休憩に関する基本的な論点はご説明いたしました。
しかし実務にあたると様々な疑問・問題が噴出してきます。
そこで障がい者グループホームの夜間支援に関する、特に労働状況からみた注意点をご説明していきます。
事業所を離れることはできるのか

「夜間支援体制等加算」(I)をするために必要な体制を作らないといけませんが、労働基準法で、休憩時間中に事業所を離れることをスタッフに禁止することはできません。
それゆえに仮に「夜間支援体制等加算」(I)を算定していてスタッフが休憩中に事業所から離れる時には、次のような対処が必要になります。
・あらかじめ、十分な時間的余裕をもって、スタッフから「事業所を離れる意向」を伝えてもらう
・事業所を離れている時間帯に必要な交代要員を当該事業所内に確保する(「夜間支援体制等加算」(V)を活用できます)
・【参考】夜間支援体制等加算(v)とは?
就業規則を作成する

「夜間支援体制等加算」(I)を算定するために夜間スタッフに「休憩時間」を設定しないといけませんが、そうするとその「休憩時間」を就業規則に明記する必要が生じます。
常時10人以上の労働者を使用するグループホームは、 就業規則において、夜間及び深夜の時間帯のうち、休憩時間をあらかじめ明示的に定めておく必要があります。
※10人未満の事業所でも就業規則の作成が推奨されています。
ただし「休憩時間」を一義的に設定できない場合は、次のような対応が求められます。
- 基本となる休憩時間として夜間及び深夜の時間帯のうち休憩時間とする時間帯をあらかじめ明示的に定める
- 休憩時間について、各人に個別の労働契約等で定める旨の規定を就業規則に設ける
- 個別の労働契約等で具体的に定める場合、 書面により明確に定める
夜間を含む個別支援計画を作成

夜間スタッフの休憩時間を定めて「夜間支援体制等加算」(I)を算定して、利用者支援をする場合、個別支援計画にも注意が必要です。
休憩時間中に業務が発生 することがないように、利用者の状態像や支援の必要な時間帯等を配慮した夜間及び深夜帯における具体的な支援計画を作成するよう努めてください。
休憩時の緊急対応はどうする

夜間スタッフの休憩時に利用者に急変が起こり対応すれば、その時間帯は休憩とは見なされず、別途休憩を与える必要があります。
こうした緊急対応をした場合、 記録を残して実際に取得した休憩時間など明記する方針を定めてください
「断続的な労働」と見なされるのか

障がい者グループホームによっては、夜間における介護等の業務を常態的にほとんど行う必要がないケースもあります。
その場合の夜間スタッフの労働は「断続的な労働」と見なされ、労働基準監督署長の許可を受けることで、労基法上の休憩時間や労働時間に関する規定が適用されなくなります。
それゆえに所轄の労働基準監督署に相談し、「断続的な労働」と許可を受ければ夜間スタッフの労働と休憩の問題は解決されます。
※(参考)断続的な労働の許可基準
断続的労働に従事する者とは、 勤務時間の中で、 実作業時間が少なく、 手 待時間が多い者のこと
※( 参考2) 断続的な宿日直の許可基準
本来の業務の終了後などに宿直や日直の勤務を行う場合がこれに当たり、 社会福祉施設の場合、 以下のすべてを満たす場合に許可することとされている。
1:通常の勤務時間の拘束から 完全に解放された後のものであること
2:夜間に従事する業務は、 一般的な宿日直業務である定時巡視、 緊急の電話などの収受などのほかは、 少数の入所児・ 者に対して行う夜尿起こし、 おむつ 取替え、 検温等の介助作業であって、 軽度(身体に負担がかからない範囲)かつ短時間(10分程度)の作業に限ること
3:夜間に十分睡眠がとれること。
4:上記以外に、 一般の宿直許可の際の条件を満たしていること。
まとめ

障がい者グループホームの経営に「夜間支援体制等加算」は欠かせませんが、問題は労働と休憩時間の関係です。
夜間スタッフに休憩時間を与えても加算は算定できますので、その例外的な条件を満たす体制づくりに注意いたしましょう。
また所轄の労働基準監督署と相談し、「断続的な労働」と認めてもらってクリアする方法もあるのでご検討いただければと思います。
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