就労系の障がい者福祉事業を経営しておりまして利用者が少ないことが現状の悩みです。
できれば他の事業所に通所している利用者さんを紹介して欲しいのですが、その紹介のお礼にお金などお支払いすることはできるのでしょうか?
相手の事業所にもメリットがあれば、利用者さんを紹介してもらい自社でも増える気がするのですが大丈夫でしょうか?
近年、就労継続支援などの事業所の利益供与等の問題が大きな課題の一つとして挙げられております。
もし他事業所から利用者さんを紹介してもらったとして利益を供与すれば、送る側も受け取る側も自治体に厳しく指導されることになります。
実はあまりこの利益供与等の問題についてあまり自覚しておられないケースもあります。この記事では事業者様の理解の一助になるように以下のような内容がわかるように説明いたします。。
- 就労系の障害福祉サービスの利益供与等の規制内容がわかります
- 利益供与等の各種条件を理解することができます
- 利益京都等の具体的な事例を知ることができます
目次
紹介料を払ってはダメ!利益供与等の禁止とは?
就労継続支援など就労系の事業所間で、紹介料等の支払いや利用者への便宜は最近大きな問題とされ、監査指導の際に重要なチェック事項になりました。
※自治体によっては取り消しを示唆するところもあります
<令和元年からの規制の強化>
平成26年の厚生労働省社会・擁護局障がい保健福祉部長通知を令和元年に改正し、居宅介護の利益供与等の禁止の項目が援用されるようになりました
<利益供与の規制強化の背景>
①:利用者がどの事業を選ぶかは各事業所のサービス内容や質に基づき自発的に選ぶべきで、それを歪める誘因行為は不適切である
②:事業所間で紹介に対する金品授与があれば、就労の準備がない障害者を就労させたり、受け入れ準備のない企業へ就労を助長するおそれがある。
しっかりと就労系の障害福祉事業のサービスでも利益供与等が禁止されていることを知りませんでした。
利益供与等に無自覚で自治体とのトラブルになりたくないので、利益供与にあたる具体的なパターンを教えてもらえるでしょうか?
利益供与等に対する規制は年々厳しくなっており、中には指定の取り消しを示唆する自治体まで見受けられます。
仰るように利益供与の禁止の徹底が信頼ある事業所として経営する上で大事なポイントです。
それでは利益供与等のパターンについてしっかり説明したいと思います。
パターン①:利益供与をする場合
就労系の障害福祉事業所が、紹介料等として他の事業所/計画相談事業所に金品その他の財産の利益を供与することは禁止されています。
<利益供与パターン1の具体例>
・利用者の紹介を斡旋したことにより、事業所に対して金品の授与を行うこと
・利用者を他事業所と掛け持ちさせることで、事業所に対して金品の授与を行うこと
自社の利用者が少ないからといって利益を上げるために他事業所に利益を与え利用者を誘導することは、国の給付で成り立つ福祉事業にはふさわしくないということです。。
もちろん計画相談事業所からの利用者の紹介は一般的ですが、そこに金銭に限らず何らかの利益が介在して利用者の利益を歪めることにならないよう注意致しましょう。
パターン2:利益供与を受ける場合
就労系の障害福祉事業所にとって、利益供与をするだけでなく利益供与を受けるだけで自治体から指定取り消しの可能性を示唆されるかもしれません。
<利益供与パターン2の具体例>
・利用者の紹介を斡旋したことにより、他事業所から金品の授与を受ける
・利用者を他事業所と掛け持ちさせることで、他事業所から金品の授与を受ける
自社と合わない利用者がいた場合、他事業所に紹介することもありますが、その時に金銭に限らず何らかの利益を受けてしまうと問題になります。
仮に他事業所からの営業で「紹介料を払いますから」と言われても必ず受け取らないように気をつけましょう。
パターン3:利用者の意思決定を歪める場合
次が最も大事な利益供与等の禁止の規定ですが、利用者の意思決定を歪めるような金品の授与による利用者誘因行為/就労斡旋行為が禁止されるという規定です。
<利益供与パターン3の具体例>
・利用者が友人を紹介した際に、利用者と友人に金品を授与する
・サービス利用により就職した場合、利用者に祝い金を授与する
・サービスの利用開始に伴い、利用者に祝い金を授与する
・教材費や就労支援均等の名目で利用者に対して一律に金品を授与する
・無料の昼食提供をする
・資格取得費全額負担と広報する
「ここの事業所に通えばお金がもらえるから」と言う理由で利用者が通所することは、本人の状態に則した就労支援とは見做されず、本人の利益が損なわれております。
このような事態を防ぐために、広い意味で意思決定を歪めると考えられる誘因行為や斡旋は厳しい目で見られます。
けれども就労系の事業所で利用者を就職させるために、何らかの紹介サービスを利用することもあると思うのですが、そのような場合も利益供与等に見なされるのでしょうか。
どのようにすれば利用者さんの意思決定を歪めていないと考えられるのか、その基準などあれば教えてもらえるでしょうか?
仰るように特に就労系の事業所では「就労斡旋行為」に関して費用がかかることも実際にはあります。
ただし一律にそのような斡旋行為が全て利益供与と見做され規制されるかというとそうではありません。
以下では自治体からの問い合わせがあっても障がい者の意思決定を歪めていないと証明できるポイントをご説明いたします。
<利用者の意思決定を歪めないためのポイント>
・個別支援計画に記した利用者の現状や性格と矛盾しない就労先を斡旋する
・サービス提供記録に記録した利用者の能力に相応しい就労先を斡旋する
・利用者に対して斡旋先でない就労先を説明し選択の自由を与える
まとめ
本日は就労系の事業所の利益供与等の問題とポイントついて詳しく説明していただき、ありがとうございます。
自分があまりにも利益供与等に対して無自覚になっていたので事例を見て注意したいと思います。
他事業所との利益供与の関係はわかりやすいですが、利用者の意思決定を歪めていないかは細心の注意が必要です。
特に就労実績がある方が報酬単位も大きくする国の方針があるので、実績を作るために就労を斡旋するケースが目立ちます。
しかしその就労の斡旋に利用者の意思が介在せず、不当な金品が授与されていれば大きな問題になりますのでお気をつけいただければと思います。
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