令和3年度の報酬改定で新設された「地域居住支援体制強化推進加算」とは何でしょうか?
主な「地域居住支援体制強化推進加算」の対象となる障がい福祉事業所は、
- 地域相談支援事業者
- 地域生活援助事業者
です。
厚生労働省は近年、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの推進」に力を入れています。
精神障がいの方が地域で安心して暮らしていけるような福祉ネットワークを作っていけるよう、「地域居住支援体制強化推進加算」を新設いたしました。
この記事を読めば「地域居住支援体制強化推進加算」について知らない型でも、その内容から届出方法、そして運営上の注意点やオススメの活用事例が分かります
「居住支援連携体制加算って何?」というお声を、お付き合いのある地域移行支援事業所さまや地域定着支援事業所さまから伺ってきました。
そこで本日は「地域居住支援体制強化推進加算」について一から解説いたします。
目次
地域居住支援体制強化推進加算とは?
「地域居住支援体制強化推進加算」は、精神障害の方に対応した地域福祉ネットワーク作成を促進するものです。
詳細に伝えると「地域居住支援体制強化推進加算」とは、
住居の確保や居住支援に係る課題を報告するなど、居住支援体制強化の取り組みを評価するもの(500単位/月1回)
となります。
けれども馴染みにない方は、
居住支援体制強化とは何だろう?どうすれば加算を取得することができるのか?
という疑問が出てくるのではないでしょうか。
そこで「地域居住支援体制強化推進加算」を取得する前提から、その加算算定の条件まで詳しく解説していきます。
居住支援体制強化とは?
相談事業所や自立支援事業所で、利用者の方の住まい探しの支援をすることもありますが、ここでいう「居住支援体制強化」とは、居住支援法人や居住支援協議会と連携を取ることです。
・居住支援法人
高齢者や障害者など住宅を確保するのが難しい方々へ円滑な入居を促進するためサポートをする法人として都道府県が指定した法人
・居住支援協議会
高齢者や障害者など住宅を確保するのが難しい方々へ円滑な入居を促進するため、そのような方々や賃貸人に対して住宅情報等の提供など支援を行う団体
このような入居支援を専門に支援してくれる法人や協議会と連携することで、相談事業所や自立支援事業所の「住まい探しの支援体制」が強化されるというわけです。
その居住支援体制が強化されたことに対して算定される加算が「地域居住支援体制強化推進加算」です。
各障がい福祉事業で居住支援体制を強化しておくと、以下のようなメリットがあります。
地域移行支援事業所:施設に入居している障がい者の地域移行を支援する時、地域の住居の確保に協力してくれます
地域定着支援事業所:単身で周囲の支援がない方の住まいの相談にのる時、住居の住み替えに協力してくれます
加算算定の条件とは?
「地域居住支援体制強化推進加算」とは、
住居の確保や居住支援に係る課題を報告するなど、居住支援体制強化の取り組みを評価するもの(500単位/月1回)
です。
加算対象は、「住居に関して支援もしくは相談になった方」ですので加算額は、
500単位/月1回 × 10 円/単位 × 支援者数
で計算することができます。
この「地域居住支援体制強化推進加算」を取得するには次の要件を満す必要があります。
・加算取得の報告書を役所に提出する
・報告先の居住支援協議会や協議の場を指定する
・支援者に対する説明や指導について知らせる
・支援者に対する支援の経過・課題・対策をまとめる
・地域の課題やニーズを整理する
気をつけるポイントは、「報告先の居住支援協議会や協議の場」の設定です。
各都道府県には公的な協議会があり、県下の居住支援活動を支援・調整しているので、各県の居住支援協議会を報告先としてオススメいたします。
ただしこのような公的組織への報告は義務付けられていませんので、仮に他の「協議の場」を報告先として設定する場合は、そのような協議の場の概要を添付書類として役所に提出すると安心です。
居住支援体制強化の仕方とは?
「地域居住支援体制強化推進加算」を取得するのに、居住支援法人や推進協議会と連携している証拠の提出などは求められていません。
けれども詳細に居住支援を報告するためには専門団体との連携が欠かせません。
そこで相談事業所や自立支援事業所の居住支援体制を強化するコツは、
地域の居住支援法人と連携すること
です。
けれども地域の居住支援法人との連携を考える時、
居住支援法人の探し方は?どうやって連携すればいいの?
など疑問が出てくるでしょう。
そこで居住支援法人とつながって住まい探しの体制を強化するポイントを説明いたします。
居住支援法人を探す
さっそくはじめに近くの居住支援法人を探してみましょう。
国土交通省に居住支援法人一覧のページがありますので、そちらを確認し、居住支援法人が近くにあるか確認してみてください。
ここで気をつけたいのは、
居住支援法人ごとにサポートする内容が異なっている
という点です。
居住支援法人によって専門が異なり、共通して入居支援全般はいたしますが、精神障がいに特化した法人、外国人やDV被害者を専門に扱う法人など、それぞれの法人に特徴があります。
ですので、お近くの連携できる居住支援法人がどのようなサービスを提供しているかを確認いたしましょう。
支援体制を確立する
次にお近くの居住支援法人を探したら、その居住支援法人との支援体制の確立方法をお伝えいたします。
地域移行支援事業所や地域定着支援事業所さまですと、
その事業所の利用者の相談を居住支援法人にお願いすること
が多いでしょう。
障がい福祉事業所と居住支援法人の連携の流れは基本的に次の通りです。
1 障がいをお持ちの方の情報を共有
↓
2 居住支援法人が入居可能物件を探す
↓
3 利用者を交えて、障がい福祉事業所と居住支援法人が複数の入居可能物件から最適な場所を選ぶ
↓
4 居住支援法人が利用者に対して入居のための契約や引っ越し、役所への届出等を支援
このようなプロセスをモデルにしてお近くの「居住支援法人」と連携体制を相談すると、「地域居住支援体制強化推進加算」の報告書を書く時に、支援の経過・課題・対応というポイントを明確に記すことができます。
連携の際の注意点
地域移行支援事業所や地域定着支援事業所さまが、居住支援法人と連携すると利用者の支援がスムーズになるでしょう。
しかし居住支援法人との連携に際して注意点は、
利用者さまの個人情報の取り扱い
です。
障がいをお持ちの方の物件を探すのですから、居住支援法人はそうした個々人の障害の特性について理解しないと物件を選ぶことはできません。
なので、障がい福祉事業者さまが利用者の個人情報を共有することが容易な解決策ですが、個人情報の漏洩と見做されれば大問題になります。
そこで有効な対策をご紹介いたします。
・利用者さまから個人情報を居住支援法人に提供する同意書を取得する
・居住支援法人から目的外での個人情報を利用しない誓約書を取得する
地域居住支援体制強化推進加算のオススメ活用法
地域移行支援事業所や地域定着支援事業所さまは、居住支援体制を強化し、報告書を作成することで「地域居住支援体制強化推進加算」を算定できます。
ただ「地域居住支援体制強化推進加算」は500単位/月なので、およそ支援者一人あたり月額5000円程度になります。総額は5000円×利用者数です。
ではこのような加算額を考慮すると、
「地域居住支援体制強化推進加算」を算定するメリットって何?
という疑問が出てくるでしょう。
そこで続いて「地域居住支援体制強化推進加算」のオススメ活用法をお伝えいたします。
居住相談に強い相談支援事業所へ
「地域居住支援体制強化推進加算」の取得をオススメする理由として、加算額の算定ではなく、居住支援の体制が強化されることを挙げます。
地域相談支援事業所に来られる利用者の多くは、お住まいに関して悩みを抱えておられます。
そこで「地域居住支援体制強化推進加算」を算定する中で、支援の経過や課題の情報を蓄積することができるので、利用者の問題を解決できる相談支援事業所として信頼されるでしょう。
また公的な居住支援協議会に対して定期的な報告をしていれば、管理体制の適正な公正な事業所として行政からの信頼を得ることもできるでしょう。
「地域居住支援連携体制加算」の取得
居住支援法人と福祉の連携を促進する加算として「地域居住支援体制強化推進加算」の他に、「居住支援連携体制加算」があります。
・「居住支援連携体制加算」(35単位/1日)
居住支援法人や協議会との連携体制を評価する加算
「居住支援連携体制加算」は、連携先の居住支援法人との計画書を作成し、月に1度以上の協議の場を設けていることで算定することができます。
こうした居住支援法人との連携体制が確立していれば、「地域居住支援体制強化推進加算」取得に必要な、支援の経過・課題・対策の整理がスムーズにできるでしょう。
「居住支援連携体制加算」はその連携体制を評価するもので、活動の実態に対しての加算ではありません。
そこで活動の実態に対する「地域居住支援体制強化推進加算」を取得できる体制にすれば、連携体制の確立から活動実態の強化まで包括的に事業を整えることができます。
更に「居住支援連携体制加算」を取得すれば、居住支援の実施にかかわらず全利用者を対象に35単位/1日の給付を得ることができるので財政的にも一助になります。
まとめ
「地域居住支援体制強化推進加算」は、精神障がいの方を受け入れる地域の福祉ネットワークを促進させるものです。
計画相談の事業所や自立支援の事業所は、居住支援体制を強化することができ、住まい探しを必要とする方に、実績と信頼を備えた支援をすることが可能になります。
「地域居住支援体制強化推進加算」を取得する中で居住支援法人や居住支援協議会とも連携を深め、地域で信頼される事業所になりましょう。
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