
就労継続支援A型の事業所を経営しております。基本報酬単位を上げるためにスコア表の見直しを行なっております。
ただスコア表の(III)「多様な働き方」のカテゴリーは、何が基準でどのように満たせばいいのか分かりにくいです。
スコア表の「多様な働き方」のカテゴリーの要件や注意点など教えてもらえるでしょうか?
繰り返していることですが、就労継続支援A型の事業所の収益アップには、スコア表で高いポイントを取り基本報酬単位を上げることが有益です。
ただしスコア表の単位を上げるために、不注意にスコアをつけていくと実地指導の時にトラブルになりやすいです。
この記事では就労継続支援A型の事業者様の理解の一助になるように以下のような内容がわかるように説明いたします。
- スコア表(III)「多様な働き方」の各々の取得要件がわかります
- スコア表(III)「多様な働き方」の各々の根拠資料がわかります
- スコア表(III)「多様な働き方」の間違えやすい点がわかります
目次
スコア表の解説!「多様な働き方」の要件と根拠資料は?

労継続支援A型の基本報酬単位はスコア表の(I)から(V)合計点で決まり、スコア表(III)「多様な働き方」は8つのカテゴリーから5つ選んで合計点を求めます。
(番号) | (内容) | (基準点) |
① | 免許・資格取得、検定の受験勧奨に関する制度 | 1〜2 |
② | 利用者を職員として登用する制度 | 1〜2 |
③ | 在宅勤務に係る労働条件及び服務規律 | 1〜2 |
④ | フレックスタイム制に係る労働条件 | 1〜2 |
⑤ | 短時間勤務に係る労働条件 | 1〜2 |
⑥ | 時差出勤制度に係る労働条件 | 1〜2 |
⑦ | 有給休暇の時間単位取得又は労働条件 | 1〜2 |
⑧ | 傷病休暇等の取得に関する事項 | 1〜2 |
(基準点) | (スコア点) |
合計8点以上 | 35 |
合計6点又は7点 | 25 |
合計1点以上5点以下 | 15 |
就労継続支援A型のスコア表(III)「多様な働き方」の仕組みを教えていただきありがとうございます。
ただ「多様な働き方」の各カテゴリーをどのように選べばいいのかわからないのですが、そのスコア表(III)の各カテゴリーの取得条件や根拠資料を詳しく教えてもらえるでしょうか?
スコア表の選び方は事業所の規模やスタッフの体制によって異なってきますが、どのスコアのカテゴリーも取得するにはコツがあります。
特に根拠資料の保存を忘れていると自治体との間でトラブルになります。
それでは就労継続支援A型のスコア表(III)取得の注意点についてしっかり説明したいと思います。
①免許・資格取得、検定の受験勧奨に関する制度

就労継続支援A型は利用者さんに対して、「免許、資格、検定等」を取得できる仕組み(就業規則等)や、その実際の支援を行うことでスコアのポイントを獲得できます。
※ 仕組みのみ=1ポイント 仕組みと実施:2ポイント
<「免許、資格、検定等」について>
利用者の一般就労への移行促進や賃金向上に質する内容のもの
例:雇用保険の訓練給付費の対象となる教育訓練の講座内のもの
※趣味的/教養的内容ものや、極めて初歩的な内容のものは対象外です
※ 免許・資格取得、検定受験の勧奨を証明する資料とは?
・ 免許・資格の取得等の支援に係る就業規則等
例:取得に係る支援のための企画や実施/教育機関が実施する訓練に参加/訓練費用等を助成
・ 当該年度に免許・資格・検定等の取得状況がわかる書類(※修了証書、受講証明書等の写しなど)
注意点は、就業規則の作成が義務でない10人未満の事業所でもスコアを取得するために就業規則に準じた書類の作成が必要という点です。
また免許・資格・検定等の取得は当該年度内の取得に限り、前年度の資格取得でスコアを得ることはできません。
就業規則は毎年度の4月1日時点を基準とし、書類の誤魔化しを行えば「労基への届出の日付」が残るのでおやめください。
※注意点
「免許、資格、検討等」に合格した場合のみ、スコアを得られるわけではありませんのでご留意ください。
②利用者を職員として登用する制度

就労継続支援A型の事業所が、事業所を利用する利用者さんを事業所の職員として雇用する仕組みや、その雇用を実際に行えば(1名以上)スコアのポイントを取得できます。
※ 仕組みのみ:1ポイント 仕組みと実施:2ポイント
<利用者を従業員として雇用するための仕組みとは>
就業規則等に、職員登用の基準・登用試験等の方法・登用後の雇用条件を定める必要があります
※職業指導員や生活支援員等の職種以外でも問題ありません
<利用者を従業員として雇用する際の注意点とは>
・利用者の希望による
・1名以上、登用する
・雇用継続期間が前年度において6ヶ月以上ある
・前年度末日まで雇用が継続している
※ 利用者を職員として登用する制度の根拠資料とは?
・ 障がい者を雇用する制度に関する就業規則(職員登用の基準・登用試験等の方法・登用後の雇用条件)
・ 登用した障がい者の労働契約書/勤務状況/利用者であったことがわかる資料
利用者さんを職員として雇用する際に、就業規則等でしっかりと登用試験や雇用条件を記載する必要があることに注意致しましょう 。
よくある間違いは、6ヶ月以上の期間も雇用していないのにスコア取得を申請していることです。
利用者を職員として雇用することは、その分人件費も上がり、また事業所の利用者も減ることなのでよく検討してから実施いたしましょう。
③在宅勤務に係る労働条件及び服務規律

就労継続支援A型の事業所が、利用者さんが在宅でもサービス支援を受けられる仕組みや、その在宅支援の実施(1名以上)によりスコアのポイントを上げることができます。
※ 仕組みのみ:1ポイント 仕組みと実施:2ポイント
<「在宅勤務」とは>
・運営規程で訓練内容を定めておく
・個別支援計画に支援の方向性と課題を記す
・1日に2回は連絡/助言/進捗状況の確認を行う
・在宅支援の日報を作成する
・1週間に1回は在宅支援の状況の評価を行う
<「在宅支援」を実現する仕組みとは >
就業規則等に、在宅勤務の対象者/服務規律/労働時間/出退勤管理等について記載する
※ 在宅勤務に係る労働条件及び服務規律の根拠資料とは?
・ 在宅勤務制度が規程された就業規則等
・ 在宅勤務制度の活用実績がわかる資料
よくある間違いは「在宅支援」の規程を就業規則で定めていても、「在宅支援」の実施を適切に行なっていないミスです。
特に1日に2回の状況確認や日報作成、それに1週間に1回の評価は事業所側にとっても少なくない負担です。
また在宅支援を実施する利用者の分、その人数を補って事業所本体で受け入れられるわけでもないのでお気をつけください。
④フレックスタイム制に係る労働条件

就労継続支援A型の事業所が、始業及び終業の時刻を利用者の決定に委ねる仕組み(=フレックス制度)や、その決定の実施を行なった場合はスコアのポイントが上がります。
※ 仕組みのみ:1ポイント 仕組みと実施:2ポイント
<フレックス制度の仕組みづくりの留意点>
労使協定を行い就業規則等に、労働者の範囲/清算時間/清算期間における総労働時間を定める必要があります。
※ フレックスタイム制に係る労働条件の根拠資料とは?
・ フレックス勤務制度が規程された就業規則等
・ フレックス勤務制度について締結された労使協定
・ フレックス制度の活用実績がわかる資料等
フレックス制度を規程し実施する上で課題となるのが、利用者を含めた労働者と労使協定を行うことです。
実施方法も厳密に労基で定められているのである程度の時間がかかることに気をつけましょう。
また労使協定の結果などを労基に届出することも忘れないように注意したいです。
⑤短時間勤務に係る労働条件

就労継続支援A型の事業所が、それぞれの障害の特性に応じて利用者さんが短時間でも働ける仕組みを作り、その仕組みを実施している場合はスコアのポイントが上がります。
※ 仕組みのみ=1ポイント 仕組みと実施=2ポイント
<短時間でも働ける仕組み作りとは>
就業規則等に、短時間勤務できる対象者の範囲/労働時間/休憩時間/休日/賃金を定めることを意味します
※育児・介護休業法の規程に基づく所定労働時間の短縮措置は除きます
※ 職員の人事評価の根拠資料とは?
・ 短時間勤務制度を規程した就業規則等
・ 短時間勤務制度の活用実績がわかる書類
就労継続支援A型は一律の就業規則に基づき雇用契約を利用者さんと結ぶので、その規定等の適用なしに特定の利用者さんの労働環境を優遇することはできません 。
障害の特性により長時間働けない方も少なくない現状ですので、配慮する場合は就業規則等に規定を作ることをお勧めいたします。
根拠資料としてサービス提供記録にその旨を記しておくことがポイントです。
⑥時差出勤制度に係る労働条件

就労継続支援A型の事業所が、利用者さんそれぞれの障害の特性に応じて1日の労働時間を変更することなく、始業・終業時間を変更できる仕組みを作り、それを実施する場合はスコアのポイントを上げることができます。
※ 仕組みのみ=1ポイント 仕組みと実施=2ポイント
<「始業・終業時間を変更できる仕組み」=時差出勤制度とは >
1日の所定労働時間を変更することなく時差出勤制度を利用できるように、始業時刻/終業時刻/休憩時間等を就業規則等に定めることを意味します
※ 時差出勤制度に係る労働条件の根拠資料とは?
・ 時差出勤制度を規程した就業規則等
・ 時差出勤制度の活用実績がわかる書類
就労継続支援A型事業所が利用者と結ぶ雇用契約には所定労働時間が定められているので、勝手に利用者さんの希望に応じてその方だけ始業・終業時間等を変更することは認められません。
注意点は1日の総労働時間を変更してはいけないという点です。つまり早く仕事を開始するなら、その分早く終わらないといけません。
利用者さんが良い環境で多くの回数利用してもらうために就労環境を整えましょう。
⑦有給休暇の時間単位取得又は計画的付与制度

就労継続支援A型の事業所が、有給休暇の時間単位取得や計画的付与の制度の仕組みを作っていて、その仕組みの実施をしている場合はスコアのポイントが上がります。
※ 仕組みのみ=1ポイント 仕組みと実施=2ポイント
<有給休暇の取得支援の仕組みについて>
・就業規則等に、時間単位年休の対象者の範囲/日数/1日の時間数等を定める
・就業規則等に、年次有給休暇の計画的付与の方法等を記す
※労使協定の締結が必要になります
※ 有給休暇の時間単位取得又は計画的付与制度の根拠資料とは?
・時間単位付与制度や計画的付与制度を規程した就業規則等
・時間単位付与制度や計画的付与制度に関する労使協定書
・当該制度の活用実績がわかる書類
有給休暇の時間単位年休や年次有給休暇の取得は勤続年数の実績が取得の可否につながるので、利用者さんの勤続年数は正確に管理いたしましょう。
注意点は、有給休暇の取得支援の仕組みの制定化に労使協定が必要なので、その時間と事務処理のコストは考慮する必要がある点です。
特に労使協定で有給休暇の時間単位年休は揉めやすいポイントなので気をつけましょう。
⑧傷病休暇等の取得に関する事項

就労継続支援A型の事業所が、業務外の事由で利用者さんが負傷や療養した場合に継続して利用できるよう便宜を図る仕組みや、その仕組みを実施する場合はスコアのポイントが上がります。
※ 仕組みのみ=1ポイント 仕組みと実施=2ポイント
<負傷や療養した場合に便宜を図る仕組みとは>
就業規則等に、休暇取得制度/短時間勤務制度/失効年休積立制度等を定めること
※ 傷病休暇等の取得に関する事項の認証とは?
・傷病休暇制度が規程された就業規則等
・当該制度の活用実績がわかる書類
利用者さんで精神や風邪等で休まれることは少なくないので、その状態でも継続して利用できる仕組みを作ることは意味があることでしょう。
特にコロナ禍において体調不良の方に対して、継続して働ける場所づくりを提供することは大切です。
ただし就労移行支援事業以外の出来事が原因で当該制度を利用できる点にご注意ください。
オススメ:(III)「多様な働き方」の組み合わせ例

就労継続支援A型のスコア表の中で(III)「多様な働き」は200点中、最高で35点(約20%)を占めることができますが、就業規則等の整備に時間がかかる特徴があります。
(番号) | (内容) | お勧め |
① | 免許・資格取得、検定の受験勧奨に関する制度 | ● |
② | 利用者を職員として登用する制度 | |
③ | 在宅勤務に係る労働条件及び服務規律 | |
④ | フレックスタイム制に係る労働条件 | ● |
⑤ | 短時間勤務に係る労働条件 | ● |
⑥ | 時差出勤制度に係る労働条件 | ● |
⑦ | 有給休暇の時間単位取得又は労働条件 | ● |
⑧ | 傷病休暇等の取得に関する事項 |
<上記スコア例の説明>
・①免許・資格取得、検定の受験勧奨に関する制度 2点
:特に生産活動に関する資格取得を支援し、通所回数の増加又は一般就労の可能性を高めましょう。
・④フレックスタイム制に係る労働条件 2点
:利用者さんの体調にあわせて就労できるように仕組みを整え、通所回数と労働時間を増やしましょう。
・⑤短時間勤務に係る労働条件 2点
:利用者さんが短時間でも働ける制度を設け、通所回数を増やしましょう。
・⑥時差出勤制度に係る労働条件 2点
:利用者さんの体調の良い時間帯に働けるよう準備し、通所回数を増やしましょう。
・⑦有給休暇の時間単位取得又は労働条件 2点
:利用者さんに有給休暇を取得してもらい労働意欲をあげ、通所回数を増やしましょう。
上記のスコア(III)「多様な働き方」のモデルは仕組み作りに関して就業規則を加筆修正するだけで対応できるモデルになります。
特に利用者さんの通所回数の増加を促すモデルの設計で、スコア(III)だけでなく他のスコア表や、通所回数を増やして基本報酬の額を底上げすることにつながるモデルです。
まとめ

本日は就労継続支援A型のスコア表(III)「多様な働き方」の要点をご説明いただきありがとうございました。勉強になりました。
根拠資料を揃えつつ、できる限り高いポイントを獲得できるよう、来年度のスコア表の準備をしていきたいと思います。
就Aのスコア表(III)「多様な働き方」のカテゴリーは、まず就業規則等を整備する必要があるので専門知識と時間がかかります。
ただ就業規則の制度はあるのに適切に実施されていないことも問題ですので注意致しましょう。
多様な働き方の労働状況を実現し、通所回数を増やし、基本報酬単位の額を上げていく戦略も並行して準備できれば心強いです。









