★★★記事執筆者のご紹介★★★
この記事は障害福祉事業専門で、国家資格者である行政書士の戸根裕士が作成しております。多数の顧問先様との仕事から得られた、実務に役立つ注意点をまとめました。
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児童発達支援と放課後等デイサービスを運営していますが、事業拡大のための他の手段を模索中です。特に生活介護との多機能型に興味があるのですが、定員や報酬の関係がよく分かりません。
そこでお尋ねしたいのですが、令和6年度の児発や放デイと生活介護の「多機能型」について、運営ポイントを教えてもらえますか?
令和6年度の報酬改定により児発と放デイは、生活介護との「多機能型」を選択することで幅広いニーズに応えられるようになりました。
ただ多機能型の設定次第で、定員や報酬関係が複雑になり、しっかり経営計画を立てていないと経営リスクがあります。
この記事では事業者様の理解の一助になるように以下の内容を説明いたします。
- 令和6年度の児発や放デイと生活介護の「多機能型」の概要がわかります
- 生活介護との「多機能型」の運営ポイントがわかります
- 生活介護との「多機能型」の収支金額の具体例がわかります
目次
【令和6年報酬改定】児発/放デイと生活介護の「多機能型」とは?要件と報酬を解説
障害児支援の児童発達支援や放課後等デイサービスは、生活介護とセットで一体的に行う「多機能型」という事業形態を選択することで、多様なニーズに応えて収益を上げ、経営を安定させることができます。
<「多機能型」の特例1:従業者の員数について>
・多機能型事業のそれぞれの、管理者やサビ管/児発管を兼務できます
・各々のサービスで専従要件のある職員は多機能型への専従として扱われます
・ただしその他の職員は各々のサービスごとに配置する必要があります
<「多機能型」の特例2:設備について>
・サービス提供の支障のない範囲で兼用できます
<「多機能型」の特例3:利用定員について>
・各種サービス合計の全体で10名以上の定員を確保する
・ただし重心障害児の通所施設がある場合は5名以上の定員を確保したら良い
<「多機能型」の特例4:報酬請求について>
・多機能型事業の各々サービスの合計定員を基準に算定する(=管理者サビ管が兼務の場合)
・ただし1「従業者の員数」の特例を使用しない場合は各々のサービスごとの定員で算定します
令和6年度の児発や放デイと生活介護の「多機能型」の概要についてわかりました。
ただ実際に生活介護との「多機能型」を運営する場合、どのようなポイントに注意して定員、報酬、人員配置を実行すれば良いのでしょうか
令和6年度の報酬改定により児発や放デイと生活介護の多機能型は、良い報酬条件を得ることも出来るようになりました。
そこで大事なのは、定員、人員配置、報酬の概要を把握し、収支予算書を綿密に立てることです。
以下では児発や放デイと生活介護の「多機能型」を効率よく運営するためのポイントをわかりやすく説明いたします。
生活介護との多機能型(重心型)のポイント:定員、人員配置、報酬
令和6年度の報酬改定以降、特に「重心型」の児発/放デイは、生活介護と「多機能型」の事業形態を選択することにより、定員や人員配置または報酬を効率化すると共に、多様なニーズに応えることが可能になります。
児発 | 放デイ | 児発(重心) | 放デイ(重心) | |
生活介護 | 全体合計で20人以上 :生活介護6人以上 児発5人以上 | 全体合計で20人以上 :生活介護6人以上 放デイ5人以上 | 全ての事業を通じて5人以上 | 全ての事業を通じて5人以上 |
生活介護(重度) | 全ての事業を通じて5人以上 | 全ての事業を通じて5人以上 | 全ての事業を通じて5人以上 | 全ての事業を通じて5人以上 |
(職種) | 生活介護 | 児発/放デイ(重心) |
管理者☜兼務可能 | 1以上 | 1以上 |
サビ管等☜兼務可能 | サビ管1人以上(一人は常勤) | 児発管1以上 |
生活支援員 | 1人以上(一人は常勤) | − |
児童指導員等 | − | 営業時間を通じて1人以上 |
看護職員☜兼務可能 | 1人以上 | 営業時間を通じて1人以上 |
理学療法士等☜兼務可能 | 必要に応じて配置 | 1人以上 |
医師☜兼務可能 | 連携のみで可能 | 連携のみで可能 |
(報酬名) | 生活介護 | 児発/放デイ(重心) |
基本報酬 | 定員5名以下 | 定員5名以上7人以下 |
常勤看護職員等配置加算 | 定員5名以下 | − |
人員配置体制加算 | 定員20人以下 | − |
児童指導員等加配加算 | − | 定員5名 |
専門的支援体制加算 | − | 定員5名 |
令和6年度の報酬改定以降、重心型の児発や放デイと多機能型を選択することにより、生活介護の基本報酬も最も高い「定員5名以下」を選択することが可能となりました。
基準配置の職員も兼務可能な場合が多く、各々のサービスを単独で実施するより少ない人数で運営することができます。
定員に関しても「全ての事業を通じて5人以上」で大丈夫なので、最低定員を考える必要もなく、事業を継続できるので安心です。
注目:多機能型(重心型)の収支を具体的に検討してみる
令和6年度の報酬改定以降、「重心型」の児発/放デイと生活介護の「多機能型」事業は、人件費と設備維持等の支出が大きくなるので、収支モデルを具体的に想定することが大切です。
パターン1(5名定員;生活介護2名、児発放デイ2名)
(報酬名) | 生活介護 =2名 | 児発/放デイ(重心) =2名 |
基本報酬 (7時間以上; 区分5) | 2,500単位 | 4,262単位 |
常勤看護職員等配置加算 | 64単位 | − |
人員配置体制加算(I) | 642単位 | − |
児童指導員等加配加算 | − | 748単位 |
専門的支援体制加算 | − | 494単位 |
1日合計単位 | 3,216単位 (≒32,160円) | 5,504単位 (≒55,040円) |
1ヶ月合計単位(=22日) | 70,752単位 (≒707,520円) | 121,088単位 (≒1,210,880円) |
(収支) | (科目) | (金額) | (備考) |
売上 | 国保連収入(生活介護+児発放デイ) | 1,918,400円 | 上記の表より |
支出 | 人件費 | 1,960,000円 | サビ管兼管理者:35万 生活支援員(常勤):28万 生活支援員(パート):8万 保育士(常勤):29万 保育士(常勤):26万 看護師(常勤):36万 理学療法士(常勤):34万 ↑加配加算にも使いましょう |
支出 | 諸経費 | 287,760円 | 売上の15%と仮定 |
合計 | ➖329,360円 |
パターン2(5名定員;生活介護2名、児発放デイ3名)
(報酬名) | 生活介護 =2名 | 児発/放デイ(重心) =3名 |
基本報酬 (7時間以上; 区分5) | 2,500単位 | 6,393単位 |
常勤看護職員等配置加算 | 64単位 | − |
人員配置体制加算(I) | 642単位 | − |
児童指導員等加配加算 | − | 1,122単位 |
専門的支援体制加算 | − | 741単位 |
1日合計単位 | 3,216単位 (≒32,160円) | 8,256単位 (≒82,560円) |
1ヶ月合計単位(=22日) | 70,752単位 (≒707,520円) | 181,632単位 (≒1,816,320円) |
(収支) | (科目) | (金額) | (備考) |
売上 | 国保連収入(生活介護+児発放デイ) | 2,523,840円 | 上記の表より |
支出 | 人件費 | 1,960,000円 | サビ管兼管理者:35万 生活支援員(常勤):28万 生活支援員(パート):8万 保育士(常勤):29万 保育士(常勤):26万 看護師(常勤):36万 理学療法士(常勤):34万 ↑加配加算にも使いましょう |
支出 | 諸経費 | 378,576円 | 売上の15%と仮定 |
合計 | ➕185,264円 |
パターン3(5名定員;生活介護3名、児発放デイ2名)
(報酬名) | 生活介護 =3名 | 児発/放デイ(重心) =2名 |
基本報酬 (7時間以上; 区分5) | 3,750単位 | 4,262単位 |
常勤看護職員等配置加算 | 96単位 | − |
人員配置体制加算(I) | 963単位 | − |
児童指導員等加配加算 | − | 748単位 |
専門的支援体制加算 | − | 494単位 |
1日合計単位 | 4,824単位 (≒48,240円) | 5,504単位 (≒55,040円) |
1ヶ月合計単位(=22日) | 106,128単位 (≒1,061,280円) | 121,088単位 (≒1,210,880円) |
(収支) | (科目) | (金額) | (備考) |
売上 | 国保連収入(生活介護+児発放デイ) | 2,272,160円 | 上記の表より |
支出 | 人件費 | 1,960,000円 | サビ管兼管理者:35万 生活支援員(常勤):28万 生活支援員(パート):8万 保育士(常勤):29万 保育士(常勤):26万 看護師(常勤):36万 理学療法士(常勤):34万 ↑加配加算にも使いましょう |
支出 | 諸経費 | 340,824円 | 売上の15%と仮定 |
合計 | ➖28,664円 |
重心型の児発や放デイと生活介護の多機能型を経営すると定員5名にならないと黒字化しないことが分かります。
また比重も重要で、生活介護より重心型の児発や放デイの方が収益が高いことが理解できるでしょう。
更に人件費率も高く、定員5名に達しないと売り上げに対して8割強の支出が想定されるので注意が必要です。
まとめ
令和6年度の報酬改定による児発や放デイと生活介護の「多機能型」について詳しく分かりました。ありがとうございます。
障害児支援支援の内容を見直して可能性を探り、充実したサービス提供体制を整えたいと思います。
令和6年度の報酬改定により、児発や放デイと生活介護の「多機能型」のサービス提供は、幅広いニーズに対応して収益安定を目指せるようになりました。
形態としては子供から大人まで成長過程を支援できますが、重心型の多機能型の場合は児発や放デイの利用者数を確保しないと経営が苦しいです。 また定員数が少なく多機能型事業所では事業拡大に限度もあるので、地域のニーズをしっかりと把握して計画を立てることが大切です。
令和6年度の報酬改定にもしっかり対応し、自治体や利用者さんから信頼される組織を作ってください。
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