★★★記事執筆者のご紹介★★★
この記事は障害福祉事業専門で、国家資格者である行政書士の戸根裕士が作成しております。多数の顧問先様との仕事から得られた、実務に役立つ注意点をまとめました。
戸根行政書士事務所のプロフィールはこちらですので、よろしければ弊社の支援方針や独自の強みなどご覧ください。
就労継続支援A型事業所を運営していますが、なかなか利用者さんが一般就労につながらず困っています。そんな時に「施設外支援」を実施して、実習から入れば一般就労のハードルが低くなると聞きました。
そこで就労継続支援A型やB型で実施できる「施設外支援」について、詳しく教えていただけますでしょうか?
「施設外支援」とはわかりやすく言えば実習に出すことで、事業所の施設外でも支援をしていたとみなされる制度です。
ただ似ている「施設外就労」と混同されやすく、書類整理の量も多いので、実地指導で注意されやすいポイントです。
この記事では事業者様の理解の一助になるように以下の内容を説明いたします。
- 「施設外支援」のポイントがわかります
- 「施設外支援」の根拠資料の間違えないポイントがわかります
- 「施設外支援」のオススメ活用と注意点がわかります
目次
「施設外支援」とは?算定要件や「施設外就労」との違いを解説
就労継続支援A/B型事業所は基本的に事業所内で就労を支援いたしますが、事業所以外の施設外でも「施設外支援」と「施設外就労」というサービス提供を行うことができます。
<「施設外支援」とは?>
事業所外の企業等で実習を実施した場合、以下の1〜4を満たせば、1年間のうちに180日を限度に報酬を算定できる。
1:運営規程に位置付けられている
2:1週間1ヶ月ごと(R6.new)の個別支援計画において就労の効果が記されている
3:施設外支援の実習先から聞き取りを行なって日報が作成されている
4:緊急時の対応ができる
施設外支援 | 施設外就労 | |
(概要) | 実習 | 請負先の現場で就労支援 |
(限度) | 1年に180日 | なし |
(運営規程) | 記載が必要 | 記載が必要 |
(個別支援計画) | 1ヶ月ごとの見直し | 6ヶ月以内の見直し |
(日報) | 必要 | なし |
(実績報告) | なし | 月に一度あり |
(人員配置) | なし | 基準に沿って配置 |
就労継続支援A型B型での「施設外支援」の概要について理解することができました。
ただ「施設外支援」を実施する上での個別支援計画の見直しや日報の作成など、具体的な書類の手続きが不安なのですが、就A就Bの「施設外支援」を成立させる実務についてどのような点に気をつければ良いでしょうか?
「施設外支援」は定期的な自治体のチェックもなく、事業所様の方で気をつけて書類管理をする必要があります。
実地指導の時にも「施設外支援」の書類の不備は、よく指摘される事項です。
以下では就労継続支援A型B型の「施設外支援」の間違えないポイントをわかりやすく説明いたします。
「施設外支援」のための個別支援計画の作成ポイント
就労継続支援A型事業所B型事業所で「施設外支援」を実地する際、通常の半年よりも頻度の多い1週間ごとに個別支援計画を見直し、当該の利用者さんに「施設外支援」が有効かチェックしなくてはいけません。
<個別支援計画を見直す際の注意点>
・「施設外支援」により就労能力や一般就労への移行への効果があると記す
・今後の取得賃金や工賃の額を記して達成度を評価する
・「1ヶ月」ごとではあるが、「施設外支援」をしない月は作成しなくていい
「施設外支援」の対象者の個別支援計画は、その実習の効果を明記する必要があるので、他の通常の利用者さんと大きく違うことにご注意ください。
1ヶ月ごとに更新するので一般的な紋切り型のフレーズが使えず、利用者さんの実情を分析して細かい内容を書いていく必要があります。
1ヶ月ごとに個別支援計画を交付することも必要なので、利用者さんから印鑑等を忘れずにもらいましょう。
「施設外支援」のための日報の作成ポイント
就労継続支援A型/B型の「施設外支援」は、事業所スタッフの手を離れても基本報酬を算定できるのですから、日毎の日報で実習先の様子を分析することは大切なポイントです。
<日報を作成する際の注意点>
・先に作っている個別支援計画の評価ポイントに即して日々の様子を記す
・次に作る個別支援計画の内容が、日報の記述の結果となるよう因果関係を作る
「施設外支援」の日報作成のポイントは、とにかく1ヶ月ごとに更新する個別支援計画の作成内容に関連づけることです。
そして日報の内容は、「施設外支援」の実習に行く利用者に成果が伺えると意識して作成いたしましょう。
もし「施設外支援」を実施する日々で、実習の利用者さんに就労向上の成果が伺えない場合は早期に「施設が支援」の中止を検討してください。
「施設外支援」のオススメ活用法と注意点
就労継続支援A型B型で「施設外支援」という実習を利用者さんに実施することで、通常の就労支援より一般就労への移行が早く、就労能力も向上するチャンスがあり、一般就労へ繋げていく体制づくりをすることができます。
<「施設外支援」のオススメ活用法>
・実習先を使って一般就労へつなげて「就労移行支援体制加算」を取得する
・実習先を使って就労定着支援のサービスで基本報酬単位を算定する
<「施設外支援」の注意点>
・毎日、日報を作成する業務負担がある
・1ヶ月ごとに個別支援計画を見直すなど、サービス管理責任者への負担がある
通常の就労継続支援のサービス支援を受けて就労するより、「施設外支援」を使い実習から入れば一般就労へのハードルは下がります。
ただ利用者が事業所にいなくても報酬算定できるわけですから、その分事務的な負担は多くなり、特にサービス管理責任者は大変です。
「施設外支援」を実施するにしても人数をコントロールして開始されることをお勧めいたします。
よくある質問
「施設外支援」の期間である「1年間」とはどのように計算するのでしょうか?
答:「施設外支援」の「1年間」とは、4月1日から翌年の3月31日までの年度の1年間を指します。
「施設外支援」の限度の「180日間」とは延長することは可能でしょうか?
答:延長することは可能です。ただし職場適用訓練を受講する場合とトライアル雇用助成金を取得している場合に限ります。
同日に「施設外支援」と本体事業所利用を実施した場合は、どのように扱えばいいでしょうか?
答:「施設外支援」の実施日と扱ってください。
まとめ
「施設外就労」と間違えやすい「施設外支援」について詳しく分かりました。ありがとうございます。
特に個別支援計画と日報の作成方法が参考になったので、「施設外支援」を実施する際に参考にいたします。
就労継続支援A/B型事業所で「施設外支援」を実施する際は、日報をきっちりと記録し、1ヶ月ごとの個別支援計画に反映するよう注意いたしましょう。
「施設外支援」という実習をうまく利用すれば、利用者さんの一般就労へのハードルが大きく下がります。 ただ1週間ごとの個別支援計画の見直しや日報作成など、書類作業の負担が多いことにご注意ください。
「施設外支援」の制度をうまく利用して、一般就労へと移行しやすい体制づくりを行い、しっかりと自治体や利用者さんから評価される組織を作ってください。
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