

就労継続支援A型の事業所を経営しております。基本報酬単位を上げるためにスコア表の見直しを行なっております。
ただスコア表の(I)「労働時間」の計算方法は、どのように適正に行えるのか分かりにくいです。
スコア表の「労働時間」の計算方法や注意点など教えてもらえるでしょうか?
繰り返していることですが、就労継続支援A型の事業所の収益アップには、スコア表で高いポイントを取り基本報酬単位を上げることが有益です。
ただしスコア表の単位を上げるために、不注意にスコアをつけていくと実地指導の時にトラブルになりやすいです。
この記事では就労継続支援A型の事業者様の理解の一助になるように以下のような内容がわかるように説明いたします。
- スコア表(I)「労働時間」の計算方法がわかります
- スコア表(I)「労働時間」の根拠資料がわかります
- スコア表(I)「労働時間」の計算の間違えやすい点がわかります
★★★記事執筆者のご紹介★★★
この記事は障害福祉事業専門で、国家資格者である行政書士の戸根裕士が作成しております。多数の顧問先様との仕事から得られた、実務に役立つ注意点をまとめました。
戸根行政書士事務所のプロフィールはこちらですので、よろしければ弊社の支援方針や独自の強みなどご覧ください。
目次
スコア表の解説!「労働時間」の要件と根拠資料は?

労継続支援A型の基本報酬単位はスコア表の(I)から(V)合計点で決まり、スコア表(I)「労働時間」は、利用者の1日の平均労働時間が長いほど評価されて、スコア点が高くなります。
(番号) | (内容) | (スコア点) |
① | 1日の平均労働時間が7時間以上 | 90点 |
② | 1日の平均労働時間が6時間以上7時間未満 | 80点 |
③ | 1日の平均労働時間が5時間以上6時間未満 | 65点 |
④ | 1日の平均労働時間が4時間半以上5時間未満 | 55点 |
⑤ | 1日の平均労働時間が4時間以上4時間半未満 | 40点 |
⑥ | 1日の平均労働時間が3時間以上4時間未満 | 30点 |
⑦ | 1日の平均労働時間が2時間以上3時間未満 | 20点 |
⑧ | 1日の平均労働時間が2時間未満 | 5点 |
<令和6年度報酬改定のポイント>
・「4時間半以上」以上のカテゴリーの配点が10点上がりました
・「4時間以上」以下のカテゴリーは配点の変化なしです
・つまり特開金受給要件のギリギリの労働時間は配点変化なしということです
就労継続支援A型のスコア表(I)「労働時間」の仕組みを教えていただきありがとうございます。
ただ「労働時間」の各カテゴリーを選ぶための労働時間の計算について詳しくわからないのですが、そのスコア表(I)の各カテゴリーのための計算方法や根拠資料を詳しく教えてもらえるでしょうか?
スコア表の各カテゴリーは基本的に1時間単位で区切られていて、別カテゴリーになるとスコア点が大きく異なるので適正な計算方法がポイントです。
ただ計算のための根拠資料の保存を忘れていると自治体との間でトラブルになります。
それでは就労継続支援A型のスコア表(I)取得の注意点についてしっかり説明したいと思います。
「労働時間」の適正な計算について

就労継続支援A型のスコア表「労働時間」とは、実際に利用者さんが労働した時間数の前年度の総計のことを指し、休憩時間/遅刻/早退/欠勤/健康や生活の助言指導の時間(=賃金支払い無し)などは「労働時間」に含めません。
※施設外就労の労働時間もスコア表の「労働時間」の計算に含めます。
<「労働時間」=賃金支払いがあるかどうか>
・「健康や生活の助言指導の時間」は賃金を払っていれば「労働時間」に含まれます(=払っていないなら含まれません)
・「年次有給休暇」は賃金を支払っていれば「労働時間」に含まれます
・遅刻/早退/欠勤で実際に労働していない時間で賃金支払いがなければ「労働時間」に含まない
※ 「労働時間」を証明する資料とは?
・前年度雇用契約を締結していたすべての利用者の延べ労働時間の記録
・延べ利用人数を求める根拠となる始業と終業時刻の記録
<「労働時間」を計算する注意点>
・「労働時間」は事業所のサービス提供時間内に行われているか
・「労働時間」は就業規則や雇用契約の「労働時間」と一致しているか
※基本的には就業規則の労働時間が優先します。
・雇用契約を結ばない利用者の労働時間は算入しない
「労働時間」を適正に計算するには始業・終業時間を正確に記録することが大事なのでタイムカードなど活用いたしましょう。
ただし雇用契約を結んでいない利用者は対象外になるので、雇用契約の日付もあわせて確認することが大切です。
病気等で休む利用者が出る場合など月毎に利用者数も適正に管理することも忘れずに気をつけましょう。
※ 「労働時間」をどこまで長くするか?
・週20時間:雇用保険に入る段階であり、利用者が加入すると特開金という助成金(2期約80万円)を受給することができます
・週30時間未満:社会保険に入る限界であり、社保の会社負担とスコアの点数アップを比較検討します
短時間の労働は計算に入れる?

就労継続支援A型の事業所に短時間の労働者がいる場合は、その時間を計算に入れるとスコア表の「労働時間数」が低くなってしまいますが、一定の条件を満たす場合はその短時間労働者を計算に入れなくても良いとされています。
<短時間労働者の扱いについて>
就Aで「利用開始時に予見できない事由」で短時間労働(1日4時間未満)になった場合、その労働者を、短時間になった日から90日を限度として延べ労働時間数/延べ利用者数から除外することができます。
ただしその旨を都道府県に届け出する必要があります。
※「利用開始時に予見できない事由」とは
・筋ジストロフィー等進行性の難病等を罹患している利用者が、利用開始時には予見できない病状の進行により短時間労働となってしまった場合
・利用開始後に病気等で入院し、退院直後の労働が短時間となってしまう場合
・家族の介護を受けながら利用していたが、家族の病気等により居宅介護サービスが必要になった場合
・精神障害者等が、利用開始時には予見できない体調の変動により短時間労働となってしまった場合
短時間労働者の扱いを適正にするためのポイントは、利用開始時にアセスメントで上記要件にあてはまる可能性があるか丁寧に確認することです。
後で短期時間労働者に該当すると発見した場合は、自治体に問い合わせて遡って適用できるか協議いたしましょう。
特に「予見できない体調」で休む可能性が高い場合は、計画相談から支援計画を受け取り根拠資料として残しておきましょう。
よくある質問

施設外就労を実施しているのですが、その労働時間もスコアの計算に入れていいですか?
答:施設外就労の労働時間もスコアの計算に入れることができます。
雇用契約を結ばない利用者も受け入れていますが、その労働時間はスコアの計算に入れていいですか?
答:雇用契約を結ばない利用者の労働時間はスコアの計算に入れることはできません。
スコアの「労働時間」の計算をした時の端数処理は、小数点第二位を四捨五入するのでしょうか?
答:四捨五入などの端数処理は致しません。
まとめ

本日は就労継続支援A型のスコア表(III)「多様な働き方」の要点をご説明いただきありがとうございました。勉強になりました。
根拠資料を揃えつつ、できる限り高いポイントを獲得できるよう、来年度のスコア表の準備をしていきたいと思います。
就Aのスコア表(III)「多様な働き方」のカテゴリーは、まず就業規則等を整備する必要があるので専門知識と時間がかかります。
ただ就業規則の制度はあるのに適切に実施されていないことも問題ですので注意致しましょう。
多様な働き方の労働状況を実現し、通所回数を増やし、基本報酬単位の額を上げていく戦略も並行して準備できれば心強いです。
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