就労継続支援B型事業所を運営していますが、そろそろ実地指導が来そうで心配です。度重なる報酬改定により実地指導の確認ポイントも変わっていると聞きました。
そこで最近の就労継続支援B型の実地指導の傾向や間違えやすいポイントを、詳しく教えていただけますでしょうか?
実地指導の通知が来た時、どの就労継続支援B型の事業所の中でも実地指導対策は気になるポイントかと思います。
特にコロナ禍により在宅利用が増えたり、工賃支払の体系が複雑になったりしてから実地指導でトラブルが多いと聞きます。
この記事では事業者様の理解の一助になるように以下の内容を説明いたします。
- 就労継続支援B型の実地指導の間違えやすいポイントがわかります
- 就労継続支援B型の実地指導の在宅利用の確認ポイントがわかります
- 就労継続支援B型の実地指導の書類整備のポイントがわかります
目次
実地指導、ここがチェックされる①!間違えやすいポイント解説
就労継続支援B型事業所は、「適正にサービスを提供し請求業務を行っているか」自治体に、実地指導として定期的にチェックされます。
<実地指導の基本的なチェックポイント>
1 人員基準に関する事項:適正に利用者数を計算し従業員を配置できているか等
2 運営体制に関する事項:運営規程/重説や個別支援計画が適正に整備されているか等
3 報酬請求に関する事項:支援の実態に合わせて請求をしているか等
※一般的な管理体制への指摘事項の例
・調理員の休憩時間を一般的な休憩時間(お昼休憩)とずらして記載する
・管理者がモニタリングしてはいけない
・健康診断は結果も準備する
・契約内容報告書は変更があった場合も提出する
・食事提供体制加算は食費がゼロだと算定できない
・修正テープでの修正は認められない
・避難訓練は年に2回行う
・重説は2種類(ルビ版・拡大版等)用意して欲しい
就労継続支援B型の実地指導の概要は、パターンに分けていただいたのでわかりました。
ただ実際に実地指導の時に何か指摘されて報酬の返還など命じられるのが怖いのですが、就労継続支援B型の実地指導は特にどのような点に気をつければ良いでしょうか?
障害福祉サービスは全ての事業で実地指導が行われますが、就労継続支援B型ならではのチェックポイントもあります。
またコロナ禍により在宅利用も増えたこともあって、サービス提供記録の記録や実態に合わせた工賃支払の明細書の確認は必須です。
以下では就労継続支援B型の実地指導の、間違えやすいポイントをわかりやすく説明いたします。
ポイント1:工賃支払を適正にする
就労継続支援B型事業所は利用者さんの作業内容に応じて工賃を支給する必要がありますが、その工賃支給の適正化のために工賃規程への同意や、明細がわかる工賃支払明細書を事業所側で揃えておく必要があります。
<工賃支払の間違えやすいポイント>
・工賃規程に規定された単価とその根拠(※時間数など)が明細書に記されていない
・明細書に工賃として扱えない賃金項目(※皆勤賞)などがある
・工賃額を変更するときに議事録等の根拠がわからない
・前年度の平均工賃額を周知していない
※工賃支払と食費の関係について
月毎に工賃の支払いとその月の食費の徴収を同時に行うと、会計作業として二度手間になるので工賃の支払い時に、明細書に前月食費額を明示してその分を控除し支払うことが可能です。
就労継続支援B型で支払う工賃は一般的な賃金と違って規制が少ない分、明細や規程をしっかり整えておく必要があります。
もし適切に工賃支払ができておらず明細に不備があった場合、翌年の基本報酬を算定する平均工賃額の計算も狂ってくるので注意が必要です。
また工賃額を変更する時は事業所側の判断だけで行うのではなく、利用者からも同意等をもらいましょう。
<工賃支払の適切な事業所体制を作る>
・【基本】平均工賃月額の計算の仕方は?解説と注意点とは
・【基本】就労継続支援B型:工賃支払いの注意点は?月ごとの手続き解説
・【おすすめ】医療連携体制加算の活用方法とは?要件や間違えやすい点も解説
・【応用】定員超過と収益アップの注意点とは?
・【注意】「在宅時生活支援サービス加算」とは?
<工賃支払以外の参加・共生型の新体制を目指す>
・【令和3年】ピアサポート体制・実施加算とは?オススメ活用事例あり
・【令和3年】地域協働加算とは?オススメ活用事例あり
ポイント2:在宅におけるサービス提供記録に注意
就労継続支援B型の事業所はコロナ禍の影響もあって、在宅利用を希望する利用者にサービス提供する機会が増えましたが、在宅利用として基本報酬の請求が認められる要件や準備を怠っていると実地指導でトラブルになります。
<就B在宅利用の一般的な要件(※自治体によって異なります)>
1:在宅利用者が行う作業活動 、訓練等のメニューを確保。
2:1日2回の連絡、助言又は進捗状況の確認、日報作成。
3:緊急時に対応できる。
4:利用者から質問があれば訪問や連絡等による必要な支援が提供できる。
5: 訪問/通所/電話・PC等により評価を1週間につき1回は行う。
6:原則として月のうち1日は訪問/通所により訓練目標達成度の評価を行う。
※在宅利用の記録の注意点について
・週に1回または月に1回の評価をいつ行ったのか明記しましょう
・アセスメント時に日常生活や身体の状況もしっかりヒアリングしましょう
・サービス提供記録の支援者名と出勤簿の記載の整合性をとりましょう
就労継続支援B型では通所より在宅利用の方が負担が少ないことから積極的に在宅利用を選ぶ方も多くなりました。
しかし就Bの制度上は通所が基本になっているので、在宅利用で同じサービス報酬を得るにはしっかりと記録を整備する必要があります。
特に訓練目標の達成度の記録のミスや不備が多いので気をつけましょう。
ポイント3:施設外就労の不備をなくす
就労継続支援B型の事業所では、より高い賃金を払い、就労支援事業の会計を黒字にするために単価の高い施設外就労を実施することが多いですが、施設外就労の実施に関しての書類不備を厳しくみられる傾向にあります。
<施設外就労の間違えやすいポイント>
・1日の利用者数を事業所本体と施設外とを分けていない
・1日の従業員の配置を事業所本体と施設外と、時間数を表記して分けていない
・個別支援計画に施設外就労の効果の文言を入れていない
・施設外就労の規程を作っていない
・施設外就労のマニュアルを作成していない
・施設外就労で食事提供に関する規程を作っていない
・施設外のサービス提供実績記録に毎日ハンコを押してもらっていない
施設外就労を実施することで、定員を変更せずに1日の利用者数を増やすこともできるので就労継続支援B型の収益の一つになります。
施設外就労の人員配置基準が適正化どうかは1日単位で確認するので、毎日の記録が大事になってきます。
特に個別支援計画への未記載は多くみられますのでサービス管理責任者の方に言っておきましょう。
<賃金上昇のための体制づくり>
・【高収入】施設外就労支援の注意点とは?基本から間違えやすいミスまで説明
・【推奨】就労移行連携加算とは?オススメ活用事例あり
・【注目】就労移行支援体制加算とは?オススメ活用事例あり
ポイント4:令和4年度の義務化の規定に対応する
就労継続支援B型の事業所は令和4年度より虐待と身体拘束適正化の委員会の設置、そしてハラスメント対策が義務化されたのに伴い、就Aの実地指導でも委員会の開催の実態や体制の整備については入念にチェックされる傾向になります。
<令和4年度の義務化の規定について>
【1】虐待防止委員会とは?運営規程の書き方から記録書類まで解説
【2】身体拘束適正化委員会と「身体拘束廃止未実施減算」とは
【3】障害福祉のハラスメント防止の対策とは?
※身体拘束適正化委員会等の扱いについて
・委員会の結果は従業員に通知いたしましょう(例:議事録に署名欄を設ける)
・委員会の指針に構成員の記載をいたしましょう
・行動を抑制することも身体拘束になるので協議しましょう(例:道を塞ぐ)
虐待や身体拘束の規程は令和4年度から義務化されたにもかかわらず、運営規程等の変更していない事業所があるのでご注意ください。
また身体拘束適正化の未実施は令和5年度より減算の対象になるので要注意です。
委員会の組織は必ずしも事業所内部に限定することはないので外部の方々も巻き込み適正化に努めましょう。
ポイント5:就労支援事業会計を整理する
福祉事業の中で生産活動をする就労継続支援B型の事業所の会計は、「就労支援事業会計」という仕組みで実施する必要があり、生産活動で売上高の中から利用者賃金を支払えているか証明する必要があります。
<「就労支援事業会計」の特徴>
・事業所の単位ごとに「生産活動に係る会計」と「福祉事業活動に係る会計」を明確に区別する
・複数の生産活動を行う場合は、原則的に作業種別ごとに会計を区分する(※多種少額の場合は区別なし)
就労支援B型事業所の会計で、生産活動と福祉事業が区分されておらず、売上高と利用者賃金の関係が明確でないなら実地指導で指摘されやすいです。
特に障害福祉事業以外の事業を実施ていて、両者が混同されている場合は注意が必要です。
就Bと他の障害福祉事業を同時に実施している場合でも両者の会計区分について気をつけてください。
まとめ
就労継続支援B型の実地指導の間違えやすいポイントついて詳しく分かりました。ありがとうございます。
在宅利用の書類に不備がありそうなので至急確認し、対応を協議したいと思います。
近年の就労継続支援Bの実地指導でよく聞くのは、在宅利用のサービス提供記録に定期的な訓練の評価が行われていないことです。
1日2回の電話等による確認もですが、1週間に1回と月に1回の評価は忘れずどこで行ったか記して管理いたしましょう。 今後もコロナ禍の影響で在宅利用の制度はどうなるかわかりませんが、例外的な在宅利用が終わったとしてもその期間の書類は残しておく必要があります。
就労継続支援B型の事業を安定的に運営していくには実地指導を切り抜けることが大切なので、しっかりと自治体や利用者さんから信頼される組織を作ってください。
戸根行政書士事務所からのお知らせ
<常勤換算について>
・【必読】常勤換算の計算総まとめ!減算にならないためのポイント
・【基本】常勤換算について徹底解説!計算方法/注意点/よくある質問まで
・【必見】利用者数の計算の仕方のポイント!人員配置の注意点まとめ
・【まとめ】グループホームの人員配置の計算とは?初歩から注意点まで解説
・【必見】サービス管理責任者の兼務を徹底解説!間違えやすい点も説明
<減算について>
・【基本】人員欠如の減算とは?計算方法や注意点も解説
・【詳解】人員欠如の減算:基準や緊急対応・防止策をご説明
・【詳解】サービス管理責任者欠如減算と個別支援計画未作成減算とは?
<事業所管理の健全化に努める>
・【注意】利用者紹介のために紹介料を払う?利益供与の問題点と対策
・【基本】土曜日開業の注意点とは?人員配置等の問題を解説
・【必読】常勤換算の計算総まとめ!減算にならないためのポイント
・【必見】サービス管理責任者の兼務を徹底解説!間違えやすい点も説明
・【必見】就労支援事業会計とは?会計区分や按分処理のポイント解説
・【注意】就労支援事業の積立金とは?余剰金を発生させない会計処理
・【注意】サービス管理責任者の更新研修の条件とは?
・【基本】サービス管理責任者の実務経験おすすめルートとは?
・【基本】「一体型」と「多機能型」の違いとは?事業拡大のチャンス!
・【大注目】令和5年サービス管理責任者の実務経験が6ヶ月に変更!
・【大注目】令和5年サービス管理責任者不在の猶予期間が2年に!
<工賃上昇のための体制づくり>
・【高収入】施設外就労支援の注意点とは?基本から間違えやすいミスまで説明
・【推奨】就労移行連携加算とは?オススメ活用事例あり
・【注目】就労移行支援体制加算とは?オススメ活用事例あり
<工賃支払いを適正に管理する>
・【基本】就労継続支援B型:工賃支払いの注意点は?月ごとの手続き解説
<工賃上昇のための体制づくり>
・【高収入】施設外就労支援の注意点とは?基本から間違えやすいミスまで説明
・【推奨】就労移行連携加算とは?オススメ活用事例あり
・【注目】就労移行支援体制加算とは?オススメ活用事例あり
<工賃支払いを適正に管理する>
・【基本】就労継続支援B型:工賃支払いの注意点は?月ごとの手続き解説
<現状に応じた適切な事業所体制を作る>
・【基本】平均工賃月額の計算の仕方は?解説と注意点とは
<工賃支払以外の参加・共感型の新体制を目指す>
・【令和3年】ピアサポート体制・実施加算とは?オススメ活用事例あり
・【令和3年】地域協働加算とは?オススメ活用事例あり
<処遇改善加算を適正に取得する>
・【基本】福祉・介護職員処遇改善加算とは?条件・注意点を解説
・【基本】福祉・介護職員「特定」処遇改善加算とは?条件・注意点を解説
・【注意】処遇改善加算・特定処遇改善加算の対象職種とは?注意点も徹底解説
・【注意】処遇改善キャリアパス要件を満たすとは?記述例・失敗例あり
・【基本】賃金改善の方法をわかりやすく解説:トラブル防止の注意点もあり
<事業所管理の健全化に努める>
・【注意】利用者紹介のために紹介料を払う?利益供与の問題と対策
・【基本】土曜日開業の注意点とは?人員配置等の問題を解説
・【必読】常勤換算の計算総まとめ!減算にならないためのポイント
・【必見】サービス管理責任者の兼務を徹底解説!間違えやすい点も説明
・【義務化】虐待防止委員会とは?運営規程の書き方から記録書類まで解説
・【義務化】身体拘束適正化委員会と「身体拘束廃止未実施減算」とは
<ここが知りたい!実地指導対策:就労継続支援A型編>
・実地指導、ここがチェックされる①!間違えやすいポイント解説
・実地指導、ここがチェックされる②!間違えやすいポイント解説
<ここが知りたい!実地指導対策:就労継続支援B型編>
・実地指導、ここがチェックされる①!間違えやすいポイント解説