障がい福祉サービスの事業所を開業するために準備をしています。現在は指定を受ける日にちまで開業に向けて必要書類等を集めています。
特に個別支援計画はサービスを提供するにあたっての基本だと思い入念に調べています。
障がい福祉サービスの個別支援計画を作成するための手順や注意点をしっかりと教えてもらえるでしょうか?
障がい福祉サービスを提供するにあたって、利用者さんの現状と意向を調べて支援の方向を形づける個別支援計画は事業の根幹の一つです。
もし個別支援計画を作成していなかったり、不適切な方法で作成している実地指導の時にトラブルになりやすいです。
この記事では障がい福祉の事業者様の理解の一助になるように以下のような内容がわかるように説明いたします。
- 個別支援計画の作成手順がわかります
- 個別支援計画を作成する際の注意点がわかります
- 個別支援計画の作成に対する実地指導の時のトラブルの原因がわかります
目次
【基本】個別支援計画を作成する手順と注意点!
手順1:必要事項の聞き取り(アセスメント )
個別支援計画作成のために第一に障害福祉事業所のサービス管理責任者の業務ことは、利用者さまに対して「アセスメント」を行い、利用者の状況を分析・把握し、サービス提供によって解決すべき課題を明らかにいたします。
<アセスメントのポイント>
・利用者のニーズ:利用者がどのようになりたいか、どのような支援を望むのか
・利用者の課題:利用者にはどのような課題があり、どのような対策が必要か
アセスメントを実施する際はメモ書きではなく、事業所ごとに統一した書式で行うことが望ましいです。
特に「ニーズ」「課題」「目標」は漏らさず聞き取り、こちらで整理いたしましょう。
ただ利用者様によっては自分の口から発言することが難しい場合もあるので、一緒に探すという寄り添う姿勢が大切です。
<アセスメントの注意点>
・必要があればご家族や他の支援者からも情報を聞き取ること
・本人の希望しないことを記さないこと
・個人情報なので厳密に保管すること
手順2:個別支援計画「原案」を作成する
障害福祉事業所のサービス管理責任者が次にする業務は、利用者さんからアセスメントで確認した内容を基準にして、個別支援計画の「原案」を作成いたします。
<個別支援計画に必要な内容>
・利用者及びご家族の生活に対する意向
・総合的な支援方針
・生活全般の質を向上させるための課題
・指定障害福祉サービスの目標及びその達成時期
・指定障害福祉サービスを提供する上での留意事項
個別支援計画の原案の作成のポイントとしては、アセスメントで聞き取った事項とリンクしていることです。
そして「総合的な方針」→「課題」→「目標」/「達成時期」という支援の流れが明確になるように、それぞれの連関を合理的に定めましょう。。
また相談支援員の作成する利用計画があれば、その利用計画との整合性があるようにいたしましょう。
<個別支援計画の原案作成の注意点>
・アセスメントの情報に基づいて行うこと
・計画相談員等により作成されたサービス利用計画と整合性を保つこと
・サービス利用計画は個別支援計画の代わりにならないこと
手順3:担当者会議の開催
障害福祉事業所にて「手順1:アセスメント」 →「手順2個別支援計画の原案の作成」に至れば、個別支援計画を作成するための次の業務は、スタッフや関係者を交えて担当者会議を開催し、サービス提供に関わる担当者から意見をもらう必要があります。
<サービス担当者会議の記録のポイント>
・「検討した項目」を設け、個別支援計画の「到達目標」を議論ください
・「検討内容」を設け、個別支援計画の「本人の役割・実態」を議論ください
・「結論」を設け、個別支援計画の「支援内容」を議論ください
サービス提供担当者会議は、場合によって事業所のスタッフだけではなく計画相談の職員や家族または後見人を交えて行う必要があります。
注意点としては、個別支援計画の結論ありきで進めるのではなく、利用希望者の就労環境が充実するように議論したことを記録しておく必要があります。
特に開催日と参加者に関しては記名漏れがないように注意致しましょう。
手順4:個別支援計画の完成
障害福祉事業所にて「手順3:担当者会議の開催」にて個別支援計画の原案に対してコメントをもらった後に、手順の4ではそれらのコメントを十分に踏まえて原案を修正し個別支援計画を完成させる必要があります。
<個別支援計画の作成の注意点>
・サービス内容を具体的に記す
・作成日はサービス提供日より前の日付
・作成日等の日付は手書きが望ましい
・利用者から同意のための署名と押印をしてもらう
個別支援計画は利用者さんに交付するものなので、理解しやすい、また読みさすい言葉を選び記すように致しましょう。
注意点としては、個別支援計画の原案はもう必要ないと捨ててはいけず、原案→完成版という筋道がわかるように資料を保管しておきましょう。
実地指導の時にすぐに提出できるように保管場所や保管方法にもご注意ください。
手順5:モニタリングの実施
障害福祉サービスでは「手順4:個別支援計画の完成」で利用者への支援の内容管理が終わるのではなく、事業所にとって大切なのは6ヶ月以内(もしくは3ヶ月以内)に個別支援計画の見直し(=モニタリング)を実施することです。
<モニタリングの注意点>
・個別支援計画にある「到達目標」の達成度を記してください
・達成度を判断する「原因の分析」を詳細に記してください
・「原因の分析」から導かれる「今後の支援内容」を次に個別支援計画に反映させます
・場合によっては再度「手順1:アセスメントの実施」を行い、必要な支援の方向を再検討いたします
モニタリングの実施は6ヶ月以内(または3ヶ月以内)なので、余裕を持って期限の1ヶ月前には準備をして終えておくことをお勧めいたします。
モニタリングはそれ以前の支援内容の効果を見直すものなので、前回の個別支援計画に基づき連続性があるように作成してみてください。
利用者が多くなるとモニタリング時期が混乱するので表で一覧にまとめておくことをお勧めいたします。
個別支援計画の作成:実地指導でトラブルにならないポイント
注意点1:個別支援計画の未作成減算を避ける
障がい福祉サービスの事業所では、サービス提供に必ず必要な個別支援計画を作成していないとその未作成の期間に応じて報酬が減らされる減算の適用になってしまいますのでご注意ください。
減算の第一段階
「個別支援計画」が作成されずサービス提供があった場合、基本報酬における利用者全員の70%を算定(=30%減)
減算の第二段階
「減算が適用される月」から連続して3ヶ月以上、「個別支援計画」が未作成の場合、3ヶ月目から「当該状況が解消されるに至った前月」まで基本報酬における利用者全員の50%を算定(=50%減)
<減算にならないためのポイント>
・モニタリングの期限の1ヶ月前には個別支援計画の作成を終えておくように調整する
・月毎のモニタリング実施者を社内で共有し、個別支援計画の作成のし忘れを防ぐ
・個別支援計画を作成しやすいように必要書類を徐々に揃えて準備しておく
実地指導の時に個別支援計画が確実に作成されているかという点は必ずチェックされるポイントです。
注意点は個別支援計画の未作成の減算は、ただ計画書の不在だけではなく、不適切な書き方をしていても算定されるので注意致しましょう。
個別支援計画なしで支援して請求していると、悪質な場合は返金の可能性も出てくるのでご注意ください。
※思いがけずに個別支援計画未作成の減算になる場合とは?
個別支援計画を作成できるサービス管理責任者がいなくなると、必然的に個別支援計画も作成することができなくなります。
注意点2:個別支援計画の画一化を避ける
障がい福祉サービスで個別支援計画の未作成は大きな問題で実地指導のトラブルになりますが、加えて一つ重要なポイントは個別支援計画が作成されていても全利用者が同じような内容ばかりでないように注意致しましょう。
<個別支援計画の作成における実地指導の事例>
・個別支援計画の内容がコピペされて同じ内容が散見される
・アセスメントの結果が反映されていない
・個別支援計画の原案に対する関係者の意見が反映されていない
・モニタリングの結果が反映されていない
・個別支援計画の訓練内容と目標が漠然としていて実効性がない
たとえ個別支援計画を作成していても、適切な手順を踏まず利用者支援を第一としていない内容については実地指導の時にトラブルになりやすいです。
利用者が多くなり一度に個別支援計画を作成する量が多くなると、簡素化と画一化をする傾向になりやすいので注意致しましょう。。
個別支援計画は交付してしまうと修正が効かないので十分に内容を熟慮して計画を作りましょう。
注意点3:サービス提供記録との整合性
障害福祉サービスの実施のために作成された個別支援計画は、それ以降の日々の利用者さんへの支援の基本になるので、その日々の支援を記録したサービス提供記録が個別支援計画に基づいているかどうかによって個別支援計画の有効性は左右されます。
<サービス提供記録の作成のポイント>
・記録の利用者さんへの支援内容が個別支援計画の「到達目標」に基づいて行われているか
・記録の利用者さんへの支援内容の結果が、個別支援計画を見直すモニタリングに反映できるようになっているか
・記録の利用者さんの身体状況がアセスメントの結果と整合性が保てているか
忘れやすいポイントは、個別支援計画を適正に作成するために密接に関わりがあるのが、支援ごとに作成するサービス提供記録であるという点です。
個別支援計画を見直すモニタリングを実施するにしても、基礎となる資料は業務日報ではなくサービス提供記録にあたります。
サービス管理責任者はただ個別支援計画を作成するだけではなく、計画に基づいて支援を行い記録できるように直接支援員を指導いたしましょう。
まとめ
まとめ
本日は個別支援計画の作成の要点をご説明いただきありがとうございました。勉強になりました。
個別支援計画の作成の手順を守り、利用者さんや関係者の意向も反映させつつ、時期を守って適切に計画を作成していきたいと思います。
しっかり準備していても、思わずとも個別支援計画の未作成減算になるのは、計画を作成するサービス管理責任者が辞める時なので注意致しましょう。
また実地指導は事前に実施日が通告されるので、未作成でも誤魔化すことができると考えられがちですが、自治体もプロなので偽造は避けた方が良いです。
個別支援計画の枚数が多くなると紛失しがちなので、順序通りに間違えなく保管しておきましょう。
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