就労継続支援A型を運営しているのですが、利用者さんへ支払う賃金を上げることに中々苦戦しています。
でも賃金を上げるとなると利用者さんへの支援だけでなく販路拡大や商品開発に人件費もかかります。
そこで知りたいのですが活用できる加算などありますでしょうか?
就労継続支援A型で賃金を向上させるために基準人員に加えて追加のスタッフを配置することで取得できる「賃金向上達成指導員配置加算」があります。
令和3年度の報酬改定により支払い賃金額も基本報酬を決めるスコアに影響を及ぼすので、ぜひ人件費を払ってでも賃金を上げたい時におすすめです。
この記事では事業者様の理解の一助になるように「賃金向上達成指導員配置加算」に関して以下のような内容がわかるように説明いたします。
- 「賃金向上達成指導員配置加算」の取得基準がわかります
- 「賃金向上達成指導員配置加算」を取得する時の注意点がわかります
- 「賃金向上達成指導員配置加算」の疑問や不安が解消される
目次
- 1 賃金向上達成指導員配置加算の「条件」とは?
- 2 賃金向上達成指導員配置加算の「注意点」と活用法は?
- 3 よくある質問
- 3.1 賃金向上達成指導員はパートでも大丈夫ですか?
- 3.2 賃金向上達成指導員は兼務も可能でしょうか?
- 3.3 賃金向上達成指導員は処遇改善加算の対象になるでしょうか?
- 3.4 賃金向上達成指導員の勤務期間は、サビ管になる実務経験に含まれますか?
- 3.5 賃金向上達成指導員は、福祉専門職員配置等加算(I)の条件の常勤職員の対象になるでしょうか?
- 3.6 賃金向上達成指導員の担当者が変更した場合、その都度、届出の必要がありますか?
- 3.7 賃金向上達成指導員配置加算を算定している場合、施設外に出る利用者に対しても6:1で配置する必要がありますか?
- 3.8 賃金向上達成指導員配置加算を算定している場合、運営規程の変更は必要がありますか?
- 4 まとめ
賃金向上達成指導員配置加算の「条件」とは?
就労継続支援A型において定員規模に応じて、賃金向上の達成のために指導をする人員を常勤換算で1以上配置することで「賃金向上達成指導員配置加算」を取得できます。
<賃金向上達成指導員配置加算とは?>
生産活動収入を増やすための販路拡大、商品開発、労働時間の増加等の賃金向上を図るための賃金向上計画(又は経営改善計画)を作成するとともに、利用者のキャリアアップの仕組みを導入し、この計画に取り組む人員を常勤換算で1以上配置することで取得できる加算です。
(利用定員) | (報酬単位) |
20人以下 | 70単位/日 |
21人以上40人以下 | 43単位/日 |
41人以上60人以下 | 26単位/日 |
61人以上80人以下 | 19単位/日 |
81人以上 | 15単位/日 |
「賃金向上達成指導員配置加算」は、賃金向上のための計画を作成して、その指導員を配置すれば取得できると分かりました。
ただ「賃金向上達成指導員配置加算」を取得するには、どのように適切に工賃向上計画を書けばいいでしょうか??
「賃金向上達成指導員配置加算」を適正に算定するためには、生産活動の収入が上がることに直結するように賃金向上計画を作成しなければいけません。
また同時にサービス利用者の労働管理にも注意を払わないとトラブルになってしまいます。
以下では具体的な例を示しつつ「賃金向上達成指導員配置加算」についてわかりやすく説明いたします。
条件1:指導員を常勤換算1以上配置
「賃金向上達成指導員配置加算」を算定するには基準となる人員配置に加え、常勤で1以上の賃金向上達成指導員を配置する必要があります。
※運営規程を変更して「賃金向上達成指導員」を従業員に加えましょう。
<賃金向上達成指導員とは>
「賃金向上計画」を作成し、この計画で掲げた内容の達成に向けて積極的に取り組む専門のスタッフ
<「賃金向上計画」とは?>
生産活動収入を増やすための販路拡大、商品開発、労働時間の増加など、賃金向上に結びつく取り組みに係る計画のことです。
※就労系の留意事項通知で示す経営改善計画書をもって「賃金向上計画」に変えることも可能です
<賃金向上達成指導員の具体的な職務>
・賃金の高い業務委託などを探すための営業活動
・需要がある商品を作るための調査または効率の良い開発
・長時間働いてもらうための環境づくり
「賃金向上達成指導員」には就労継続支援A型の職業指導や生活指導とは違った働きを担って頂く必要があります。
それゆえ注意していただきたいのは、賃金向上のための労働時間は必要な人員配置の常勤換算数に含まれないという点です。
もちろん他の職種と兼務も可能ですがシフト表では時間を区別して記録しておきましょう。
条件2:利用者のキャリアアップの措置を講じる
「賃金向上達成指導員配置加算」を算定するには、就労継続支援A型と雇用契約を結んで働く利用者のキャリアがアップするような措置を講じる必要があります。
<利用者のキャリアアップの措置とは>
職業能力の向上により将来の地位や賃金などの処遇が改善されること
<具体的なキャリアアップの措置とは?>
・昇給、昇進、昇格といった仕組みが就業規則に記されていること
・賃金規程などに地位に応じた昇給の額が明示されていること
・該当者がいれば実施されていること
「賃金向上達成指導員配置加算」を算定するには、人員配置だけでなく賃金向上のキャリアアップが保証されるような環境整備が欠かせません。
そこで就業規則や賃金規定の内容を適正化することが重要です。ただし就業規則を変更するには、労働者の代表を正当に選んで意見を求める必要があるので、時間と手続きがかかることにご注意ください。
賃金向上達成指導員配置加算の「注意点」と活用法は?
「賃金向上達成指導員配置加算」を算定する上で気をつけたいのは、「賃金向上計画」の作成の仕方と利用者の労働環境の改善の方法という点です。
<賃金向上達成指導員配置加算に係るトラブル例>
・実態に即して適正に効果のある「賃金向上計画」を作成できていない→✖️
・利用者に益する形で公正に労働環境の整備ができていない→✖️
「賃金向上達成指導員配置加算」の検討をしたいのですが、「賃金向上計画」の作成の仕方がわからないですし正しいかどうかも不安です。
それに利用者への適正な配慮もピンとこないので「賃金向上達成指導員配置加算」を算定する際に、どのような注意点を踏まえればいいのか解説してもらえるでしょうか?
「賃金向上達成指導員配置加算」を算定してトラブルにならないためには、事業者側の適正な計画作成と労働者である利用者保護の措置が欠かせません。
というのも就労継続支援A型は利用者と雇用契約を結ぶので労働環境の適正化は避けられないからです。
それではこれから「賃金向上達成指導員配置加算」を初めて算定しようとする方にもわかりやすいように加算の活用方法をご説明します。
経営改善計画書を利用する
「賃金向上達成指導員配置加算」を算定するために必要な「賃金向上計画」の代わりに、行政でも認められている「経営改善計画」を使用するという代替え措置を検討しましょう。
<経営改善計画について>
生産活動の収入が賃金支払以下の就A事業所に対して自治体が求める、1〜6の各項目において経営改善を計画した書類のことです
<経営改善計画において具体的に決めること?>
・現在の事業/計画期間において実施する事業
・現在の収入/計画期間における収入の目標
・現在の経費/計画期間における経費の見込
・「収入ー経費」の現在/計画期間における目標
・現在の総賃金/計画期間における総賃金見込
経営改善計画を使用すれば、「賃金向上計画」で要求される事項を漏れなく満たすことができます。
ただし経営改善計画のフォーマットを利用する時は「項目1:収入が支出を上回らない理由」の説明欄は、現在の収入維持/収入向上の具体的な取り組むを記載ください、賃金向上の検討に慣れない方にはぜひ経営改善計画を利用することをお勧めいたします。
キャリアアップと就業規則
「賃金向上達成指導員配置加算」を算定するために必要な利用者のキャリアップ措置の実行は、就A利用者専用の就業規則があり、その中で利用者独自の昇給・昇格の仕組みがあることが望ましいです。
<就A利用者専用の就業規則について>
雇用会社の就業規則に関して直接支援員とサービス利用者は労働条件等が著しく異なるので、就A利用者の環境に相応しい就業規則を作成することが望ましいと考えられています
<就A就業規則を変えることは難しい?>
・全労働者の中から代表を合理的に選出する必要があるが、直接支援員は管理の立場にあると見做されるかもしれないので、支援員外のスタッフ/利用者内の選出が望ましい
・利用者の中でメール等が苦手な方、見えない選出過程に不安を抱く方がいるので書面を回して記名押印がトラブルが少ない
10人未満の会社は就業規則の作成の必要性がないのですが、就Aの場合は支援者とサービス利用者あわせて10人を超えることが殆どなので就業規則は必要です。
ただその就業規則において直接支援者もサービス利用者も同じ労働者であるので、分け隔てなく平等に扱ってください。
特に昇給に関しては利用者との間でトラブルが起こりやすいので、誰が見ても分かる合理的な基準を示していると安心です。
利用者増→パートを活用
「賃金向上達成指導員配置加算」を算定するお勧めのポイントは、利用者がある程度増えた時点で、パート職員に指導員に就任してもらうことです。
<加算算定の時期の目安>
時給1,000円で合計常勤1=160,000 < 70単位 × 10円/単位 × 20日 × 12人
※定員20人以下の場合です
「賃金向上達成指導員配置加算」を算定する目安は定員20人以下だと、利用者が12人になった時点です。
注意点としてはパート1人で常勤1を満たしいてしまうと常勤職員扱いになるので社会保険料等の負担があり、できれば複数のパートを活用していただきたい点です。
上記の計算から分かるように「賃金向上達成指導員配置加算」は人件費の負担分程度に過ぎませんので、加算で儲けるというよりは生産活動が向上する体制作りとお考えください。
よくある質問
賃金向上達成指導員はパートでも大丈夫ですか?
答:パートでも大丈夫です。複数人で合計して常勤換算1以上にしてください。
賃金向上達成指導員は兼務も可能でしょうか?
答:自治体により判断が異なります。必ず担当の自治体に兼務が可能かどうか確認いたしましょう。
賃金向上達成指導員は処遇改善加算の対象になるでしょうか?
答:基本的には処遇改善加算の対象になります。ただし一部の自治体で処遇改善加算の対象外のところもあるので要確認ください。
賃金向上達成指導員の勤務期間は、サビ管になる実務経験に含まれますか?
答:含まれる場合があります(※自治体によって対応が異なるので要確認が必要です)。
賃金向上達成指導員は、福祉専門職員配置等加算(I)の条件の常勤職員の対象になるでしょうか?
答:対象にはなりません。
賃金向上達成指導員の担当者が変更した場合、その都度、届出の必要がありますか?
答:届出の必要はありません。
賃金向上達成指導員配置加算を算定している場合、施設外に出る利用者に対しても6:1で配置する必要がありますか?
答:いいえ。施設外に出る利用者への配置は基本報酬単位の配置と同じです。
賃金向上達成指導員配置加算を算定している場合、運営規程の変更は必要がありますか?
答:はい。従業員に「賃金向上達成指導員」を加えましょう。
まとめ
「賃金向上達成指導員配置加算」を取得することの条件や注意点がしっかりわかりました。ありがとうございます。
「収入<賃金支払」により実地指導のトラブルが怖いので加算を活用して人件費を節約し、常に生産活動が向上していくような事業所体制を目指したいと思います。
「賃金向上達成指導員配置加算」はある程度、利用者が揃った事業所でこれからの経営を安定させるためにお勧めの加算です。
ただ賃金向上の営業等を行うだけでなく、賃金向上計画を書くことや就業規則を整備することも大切な事業所全体の適正化です。。
特に余っているパートを活用してして無理のない範囲で「賃金向上達成指導員配置加算」を取得し経営を安定させましょう。
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