★★★記事執筆者のご紹介★★★
この記事は障害福祉事業専門で、国家資格者である行政書士の戸根裕士が作成しております。多数の顧問先様との仕事から得られた、実務に役立つ注意点をまとめました。
戸根行政書士事務所のプロフィールはこちらですので、よろしければ弊社の支援方針や独自の強みなどご覧ください。
放課後等デイサービスを運営していますが、令和6年度から売り上げが落ちて不安です。児童指導員等加配加算や専門的支援体制加算を取っていますが、他の収益源として個別サポート加算(I)に興味があります。ただ加算を取る手順が複雑でよく分かりません。
そこでお尋ねしたいのですが、放デイの個別サポート加算(I)取得の順序や注意点を教えてもらえますか?
令和6年度の報酬改定以降、放デイの収益が減っていることはよく耳にする話です。
そこで個別サポート加算(I)は、事業所の新たな収益源になると同時に、本来ならば手厚い支援を必要としている児童に対して、適切な支援を届けるチャンスにもなります。
この記事では事業者様の理解の一助になるように以下の内容を説明いたします。
- 放デイの個別サポート加算(I)の概要がわかります
- 放デイの個別サポート加算(I)を取るための就学調査表の判断基準がわかります
- 放デイの個別サポート加算(I)の取得手順と注意点がわかります
目次
放デイの個別サポート加算(I)を取る?受給者証や就学児サポート調査の進め方を解説
令和6年度の報酬改定により放デイの収益は上げにくくなりましたが、児童指導員等加配加算や専門的支援体制加算以外に収益を上げるポイントは、個別サポート加算(I)の90単位を漏れなく取得して、高い質の支援を実施することです。
<放デイ「個別サポート加算」(I)とは>
放課後等デイサービスで算定できる「個別サポート加算」(I)は、重症心身障害児やケアニーズの高い児童(就学児サポート表13点以上)、また著しく重度の障害児(食事入浴移動排泄の3つが全介助)に対する支援により算定することができます(※重心型の事業所では算定できません)。
(個別サポート加算Iの種類) | (単位) | (条件) | (備考) |
パターン1 | 90単位(+30単位) | ケアニーズの高い障害児に対して支援を行う →就学児サポート調査表で13点以上 | 強度行動障害支援者研修(基礎)の修了者が支援した場合は+30単位 |
パターン2 | 120単位 | 著しく重度の障害児に対して支援を行う →食事、排せつ、入浴及び移動のうち3以 上の日常生活動作について全介助を必要と すること | なし |
※放デイ「個別サポート加算」(I)の注意点について
・重度の障害児に対する支援は90単位ですが、強度行動障害基礎研修修了者を配置して支援をすると120単位になります(ただし「強度行動障害児支援加算」は算定できません)。
・単なる重度障害児に対する個別サポート(I)90単位又は著しく重度障害児120単位は、「強度行動障害児支援加算」と合わせて請求できます
・基礎研修修了者配置の個別サポート(I)120単位は、配置した日のみ請求できます(※届出が必要です)
・著しく重度の障害児に対する支援は自動的に120単位になります
放デイの個別サポート加算(I)の概要についてわかりました。
ただ個別サポート加算(I)が必要かどうかを見極め、保護者と協働して受給者証を申請するためには、どのようなポイントに具体的に気をつければ良いでしょうか?
放デイで個別サポート加算(I)を取得するためには、対象児童の受給者証に個別サポート加算(I)が取得できる旨の記載が必要です。
そのためには就学児サポート調査表をしっかり作成する必要がありますが、作成自体が難しく保護者も納得しにくいので手続きが難航することがあります。
以下では、放デイの児童に対して個別サポート(I)の対象者になるか判断するポイントと、受給者証の手続きを円滑にすすめる要点について、わかりやすく説明いたします。
個別サポート加算(I)を増やすポイントとは
放デイの利用児童のうち、個別サポート加算(I)の基準に該当する利用児童に対して、個別サポート加算(I)を付けて収益を上げるには、就学児サポート評価表や制度の理解があり、保護者にしっかりと説明できる体制作りが大切です。
<ポイント:就学児サポート評価表の内容を理解する>
・就学児サポート評価表の16の項目内容の「目的」「解釈」「具体例」を理解する
・評価表の状態の判断は、適切な支援や環境が整っていない状況(例:保護者や慣れている支援者がいない状況、初めて の場所等)を想定する
・評価表の状態の判断は、発生する頻度も考慮する
・「できる時とできない時がある場合」は、「できない場合」に基づき判断する(=点数がまたがる場合は、高い方の点数 を採用する
・聞き取りを保護者に行う際には、具体例を適宜参考に示しながら聞き取りを行う
・聞き取りは、相談支援事業所や主治医などから聴取し、総合的に勘案しても良い
※就学児サポート評価表で13点を取ること(=個別サポート加算(I)取得)について
・16項目のうち13項目で「支援が必要な場合がある」を選択しても対象となる
・「③大声・奇声を出す」「⑤多動・行動停止」「⑥不安定な行動」では「常に支援が必要である」を選択することも多く、それだけで6点になり後は7点を抑えるだけになる
・明らかに強度行動障害の児童は確実に13点を取りますが、その他の児童でも就学児サポート評価表の理解があると13点になることも少なくないです
保護者に対して、個別サポート加算(I)を取得することが児童の重症度を認定する行為でないことを理解してもらうよう、説得することが大切です。
むしろ個別サポート加算(I)を取ることは、専門的な研修を修了した職員を配置するきっかけになるので、「自分の子供の支援の質が向上する」と説明することが大切です。
就学児サポート評価表の判断は、その表に対する理解がないと出来ないので、定期的な研修を行うことも良い案です。
まず何をする?!:個別サポート加算(I)を判断する手順について
放デイの利用児童に対して新規で個別サポート加算(I)を付加する場合は、その個別サポート加算(I)取得の理由と支援内容、そして加算報酬額も含めて、保護者や役所としっかり話し合うことが大切です。
<個別サポート加算(I)を判断する手順>
1 アセスメント時に全員の新規児童に対して就学児サポート評価表の判断を行う
2 13点を超えそうなら保護者を行い、児童の現状と高度な支援の必要性について説明する→場合によっては区役所に同行し担当職員と面談する
3 13点を現時点では超えないようでも、支援が必要になる評価表の項目への支援は個別支援計画に記し、モニタリング時に就学児サポート評価表を再検とする
4 管理職や児発管には1年に数回就学児サポート評価表の判断方法についての研修を行う
保護者や児童は、そもそも就学児サポート評価表や個別サポート加算(I)のことを何もわからないと思うので丁寧な説明が必要です。
その個別サポート(I)の説明を従業員が実施できるよう、加算や就学児サポート評価表の研修計画を立てましょう。
同時に利用児童への支援の振り返りの場面で、就学児サポート評価表も再検討し、必要な児童に質の高い支援を提供する体制作りが大切です。
まとめ
令和6年度に改定した放デイの個別サポート加算(I)について詳しく分かりました。ありがとうございます。
個別サポート加算(I)に該当する児童に対して、必要な支援ができるよう体制を整えたいと思います。
放デイの個別サポート加算(I)を取得するには、その根拠となる就学児サポート評価表の理解と判断方法を知ることが大切です。
一見しても該当可能性がないと思われる児童にも、必要な強化型の支援を途切れさせないために、支援の振り返りの都度、就学児サポート評価表は再チェックしましょう。 ただ、自分の子供が重症であることに不安を持つ保護者の方も多いので、加算を取り支援を強化する際には、丁寧な説明をすることが大切です。
就学児サポート評価表の深い理解と保護者への丁寧な説明を行なって、自治体や利用者さんから信頼される組織を作ってください。
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