就労継続支援A型事業所を運営していますが、コロナ感染症を恐れて在宅支援を希望する方が増えました。ただ在宅での就労支援は、居宅介護などを利用しないと在宅就労できない方もいて困っています。
そこで就労継続支援A型やB型の在宅利用に関して活用できる加算などあれば、その詳細を教えてもらい解説してくれないでしょうか?
就労継続支援A/B型事業所で在宅支援をする際に活用できる「在宅時生活支援サービス加算」があります。
しかしその加算の算定で契約書などを準備しておかないと、実地指導でトラブルになる等の問題が起きてしまいます。
この記事では事業者様の理解の一助になるように以下の内容を説明いたします。
- 就Aと就Bの「在宅時生活支援サービス加算」の概要がわかります
- 「在宅時生活支援サービス加算」で収益が上がるかわかります
- 「在宅時生活支援サービス加算」の運営上の注意点がわかります
目次
「在宅時生活支援サービス加算」とは?注意点やオススメ活用法を解説
就労継続支援A/B型事業所で利用者数が在宅支援を希望し、効果があると認められた場合、「在宅時生活支援サービス加算」を取得すれば事業所も利用者も負担が少なく、就労サービスの在宅支援が可能になります。
<「在宅時生活支援サービス加算」とは>
就労サービスの在宅利用を希望し、かつ市町村がその在宅利用の効果を認めた場合、利用者の居宅において居宅介護や重度訪問介護の費用を負担して就労サービスを提供した場合に算定できます。
→つまり就労サービスを居宅で利用する場合、在宅支援を受けないと就労支援できない場合に算定できます。
※「在宅時生活支援サービス加算」の条件まとめ
1 利用者が、就労サービスの在宅利用を希望する
2 市町村が、就労サービスの在宅利用を容認する
3 就A/B事業所が、利用者の居宅介護や重度訪問介護の費用を負担する
4 就A/B事業所が依頼したヘルパー等が、在宅で就労サービスを提供する
(加算名) | (単位) |
在宅時生活支援サービス加算 | 300単位/日 |
就労継続支援A型とB型で活用できる「在宅時生活支援サービス加算」の概要がわかりました。
ただ「在宅時生活支援サービス加算」を算定する際に、実地指導でトラブルにならないよう注意すべきポイントなどはあるでしょうか?
就Aと就Bで活用できる「在宅時生活支援サービス加算」は対象者の判断と費用負担の取り決めが大切です。
実態とは異なる不適切な状態で加算を算定すると実地指導の時にはトラブルになるのでご注意ください。
以下では「在宅時生活支援サービス加算」の運用方法をわかりやすく説明いたします。
注意点1:加算対象者かどうかの判断
就労継続支援A型事業所B型事業所にて「在宅時生活支援サービス加算」を算定するには、在宅支援を希望する利用者が、「居宅介護等のサービスがなければ在宅利用できないほどの健康状況」である必要があります。
<「在宅時生活支援サービス加算」の対象者の見極め>
・そもそも受給者証等に在宅時生活支援サービス加算の可否があるか
・アセスメント時に、日常生活での支援サービスが付いているか確認する
・計画相談事業所に、日常生活での支援サービスが付いているか確認する
就労継続支援A型や就Bで「在宅時生活支援サービス加算」を算定することは、利用者さんの誰にでも可能というわけでなく自治体の許可が必要です
しっかりと事前から本人もしくは周囲の関係者に丁寧なヒアリングをしておき、福祉サービスの利用状況を確認することが大切ですす。
居宅介護等の事業所とは頻繁に連絡を取り合い就労状況を確かめることも在宅支援では重要です。
注意点2:費用負担の取り決め
就労継続支援A型事業所B型事業所にてにて「在宅時生活支援サービス加算」を算定するには、就労事業所側で居宅介護サービス等の費用を負担する必要がありますが、負担額や支払期日等の条件を契約書で取り決めておけばトラブルが減ります。
<「在宅時生活支援サービス加算」の費用負担の取り決め>
・受給者証を確認し費用を共有し明記する(※金額は自由に決めることができます)
・支払額の通知期日と支払期限を定めて明記する
・個別支援計画に在宅利用の有効性と居宅介護等のサービス費用の負担を明記する
就Aや就Bで「在宅時生活支援サービス加算」をする場合には、外部の居宅介護事業所等との連携関係を綿密に打ち合わせしておく必要があります。
特に費用の負担に関することは丁寧に決めておき、契約書等の文書で記録しておきましょう。
個別支援計画の作成のための会議にも居宅介護事業所等も参加してもらい、両方の事業所の関係性を利用者さんに確認してもらうことも大切です。
「在宅時生活支援サービス加算」で収益が上がるのか
就労継続支援A型やB型で「在宅時生活支援サービス加算」を算定した場合、居宅介護等の費用を就労事業所が負担しますが、加算額とサービス負担額を比較した場合でも「在宅時生活支援サービス加算」で大きく収益は上がりません。
<例:在宅支援2時間半に居宅介護の身体介助をつける仮定パターン>
・居宅介護の身体介助(2時間半) = 833単位(≒8,330円)
→ 本人負担833円(=就Aからの依頼費用と仮定する)
・「在宅時生活支援サービス加算」 = 300単位(≒3,000円)
⇨ 3000円(加算) - 833円(就Aからの依頼費用) = 約2167円
※「在宅時生活支援サービス加算」による収益アップの限界について
・居宅サービスで利用できる時間数に制限がある
・就労サービスの利用時間は1日数時間以上ある場合が多い
・結果、居宅サービス報酬がなく介護事業者が在宅支援する場合が発生し得る
・それゆえ毎日在宅支援できない→通所回数が減り就労事業所の収益増にはならない
<「在宅時生活支援サービス加算」の活用法>
自社で就労継続支援A型の他に、居宅介護サービス事業を行っている場合は、自社内の居宅介護等に依頼することで依頼費用を節約し、かつ就Aの利用者を確保できて基本報酬等も算定することができダブルで得をいたします。
就Aや就Bで「在宅時生活支援サービス加算」を算定すれば、1日につき約2000円程度の収益アップにつながります。
ただし居宅介護の利用制限があるので一ヶ月に何度も加算を算定できないでしょう。
在宅就労以外での居宅介護の利用も計画に入れる必要があるので、実際「在宅時生活支援サービス加算」を算定できるケースは例外的な可能性があります。
まとめ
就労継続支援A型とB型の「在宅時生活支援サービス加算」について詳しく分かりました。ありがとうございます。
まず対象となる利用者さんの居宅介護等のサービス利用状況を確認し、個別支援計画を作成して連携を図りたいと思います。
「在宅時生活支援サービス加算」は就労継続支援A型とB型で在宅支援をした際に、在宅支援で必要なサービス負担を代わりに請け負う制度になります。
「在宅時生活支援サービス加算」は直接的に収益増に結びつくというよりは、在宅支援を必要とする利用者さんの負担を減らすことに焦点があります。 特に居宅介護等の利用時間は制限があるので、本当に就労の在宅利用に必要かどうかよく話し合いをいたしましょう。
就Aと就Bで地域の居宅介護事業所等と密接な連携をとり、「在宅時生活支援サービス加算」を算定して本人負担も減らし、しっかりと自治体や利用者さんから評価される組織を作りましょう。
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