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この記事は障害福祉事業専門で、国家資格者である行政書士の戸根裕士が作成しております。多数の顧問先様との仕事から得られた、実務に役立つ注意点をまとめました。
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就労継続支援B型事業所を運営していますが、令和6年の障害福祉の報酬改定で「目標工賃達成指導員配置加算」が変わると聞きました。 特に新しく新設される「目標工賃達成加算」についてどのような取得条件で、いくら報酬がもらえるのか気になります。
そこでお尋ねしたいのですが、令和6年の報酬改定で新設される「目標工賃達成加算」のことを詳しく教えていただけますでしょうか?
令和6年度の報酬改定で「目標工賃達成指導員配置加算」は、「目標工賃達成加算」とセットで扱われることになりました。
「目標工賃達成指導員配置加算」は就労継続支援B型の重要な収益源なので、「目標工賃達成加算」も取得することは必然と言えるかもしれません。
この記事では事業者様の理解の一助になるように以下の内容を説明いたします。
- 令和6年度報酬改定の「目標工賃達成加算」の概要がわかります
- 「目標工賃達成加算」の取得条件がわかります
- 「目標工賃達成加算」のオススメ活用法がわかります
目次
【令和6年報酬改定】「目標工賃達成加算」とは?取得条件やオススメ活用法を解説!
令和6年度の就労継続支援B型の報酬改定では「目標工賃達成加算」が新設され、「目標工賃達成指導員配置加算」を算定している事業所が、工賃向上計画に基づき、工賃が実際に向上した場合に算定することができます(=10単位/日)。
<就B「目標工賃達成加算」の条件>
1:「目標工賃達成指導員配置加算」を算定している
2:前年度の事業所の平均工賃月額≧「前年度において作成した工賃向上計画の目標額」
3:「前年度において作成した工賃向上計画の目標額」≧(前前年度の平均工賃月額+(前前年度の全国平均工賃ー3年前の全国平均工賃))
※「目標工賃達成指導員配置加算」で高い単位が算定できなくなります
・加算条件が基本人員6:1以上、かつ工賃向上達成指導員を入れて5:1以上になります
・加算単位が従来に比べて下がります
(定員) | 目標工賃達成指導員 配置加算 | 目標工賃達成加算 | 合計 | ⇆以前 |
20人以下 | 45単位 | 10単位 | 55単位 | ⇆89単位 |
20人以上40人以下 | 40単位 | 10単位 | 50単位 | ⇆80単位 |
※1「目標工賃達成指導員配置加算」単体の報酬がどれだけ減るか
例)平均利用者15名/開所日数20日
令和5年度以前:89単位×10円×20日×15名=267,000円増/月
⇅
令和6年度以降:55単位×10円×20日×15名=165,000円増/月
⇨1月で10万2千円のマイナス収益の差が出ます。
※2「目標工賃達成指導員配置加算」が算定可能→全体的に収益アップ
例)平均利用者15名/開所日数20日/平均工賃12,000円
令和5年度以前
基本報酬:590単位×10円×20日×15名=1,770,000円/月
加算:89単位×10円×20日×15名=267,000円/月
→合計:2,037,000円
⇅
令和6年度以降
基本報酬:673単位×10円×20日×15名=2,019,000円/月
加算:55単位×10円×20日×15名=165,000円/月
→合計:2,184,000円
⇨全体的に見れば1月で14万7千円のプラス収益の差が出ます。
令和6年度の報酬改定による「目標工賃達成指導員配置加算」の収益源と「目標工賃達成加算」の位置付けが分かりました。
ただ実際に確実に「目標工賃達成」加算を取得するために、どのようなポイントに注意し、どのようトラブル対策が有効か教えてもらえるでしょうか?
「目標工賃達成加算」は、「目標工賃達成指導員配置加算」を算定している事業所にとって必ず考慮すべきポイントになります。
そのためには目標の工賃を達成したという根拠書類の揃え方が上手であることが大切です。
以下では令和6年度報酬改定の「目標工賃達成加算」の取得条件と活用法をわかりやすく説明いたします。
ポイント1:工賃向上計画の書き方
令和6年度の報酬改定により、就労継続支援B型事業所が「目標工賃達成加算」を算定するには、前年度平均工賃の設定を工夫して達成しやすい「工賃向上計画」を準備することが大切です。
<前年度平均工賃設定のポイント>
・前々年度(2年前)の平均工賃月額より金額を上昇させる
・↑上昇金額は前々年度(2年前)の全国平均と3年前の全国平均の上昇以上にする
※令和6年度に「目標工賃達成加算」を算定する例
・令和5年度の目標平均工賃設定≧令和4年度平均工賃実績+524円
・令和5年度平均工賃実績≧↑令和5年度の目標平均工賃設定
(年度) | (全国平均工賃月額) |
令和4年全国平均工賃 | 17,031円 |
令和3年全国平均工賃 | 16,507円 |
<「工賃向上計画」作成の一般的なポイント>
・売上の増加は達成可能な範囲で設定いたしましょう
・売上の増加は支払い可能な工賃(+経費)とほぼ同一額にいたしましょう
・工賃の増加は小規模から段階的に増やしていきましょう
・既に非現実的な「工賃向上計画」を提出していたら変更いたしましょう
・加算算定のために工賃額を増やす場合に加算額より工賃支払額が多くなって赤字にならないよう注意しましょう
「目標工賃達成加算」が新設された、就労継続支援B型事業所の「工賃向上計画」は如何に達成しやすい段階にするかがポイントになります。
特に必要な工賃額の目安は厚生労働省により定められていないので、現実的に可能な範囲で段階的に増やしていくことが大切です。
「目標工賃達成指導員配置加算」の取得が前提になるので、目標工賃達成指導員の活動を考慮して「工賃向上計画」を作成してください。
ポイント2:工賃の上げ方
令和6年度の報酬改定により、就労継続支援B型事業所が「目標工賃達成加算」を算定するには、工賃の実際の増額が条件になりますが、工賃設定の理解を正しく理解し適正に増額することが大切です。
<工賃増額の設定の注意点>
・同一作業には同一の工賃額を設定する
・能力により工賃額の差を設けてはいけない
・皆勤賞など作業自体の評価以外の額を支給しても工賃に含まれない
・特別賞や努力賞など評価対象が曖昧な額を支給しても工賃に含まれない
「目標工賃達成加算」の算定のために、無理にでも工賃支給額を増額する事業所も少なくないと思います。
しかし本来工賃として認容できない金額を間違えて工賃扱いしていると、実地指導の時にトラブルになり最悪返金の可能性も出てきます。
ただ作業内容によって異なる工賃額を設定することもできるので、実態に合わせて適正な工賃規程を作ることがポイントになってきます。
就B事業運営:ひとまず今できることとは?
令和6年度の報酬改定により「目標工賃達成指導員配置加算」の報酬額が減額されたので、これから引き続き基本報酬を6:1にして「目標工賃達成指導員配置加算」に加えて「目標工賃達成加算」を取得するか、他方でもはや「目標工賃達成指導員配置加算」の算定を辞めるか選択が必要です。
<パターン1:「目標工賃達成指導員配置加算」+「目標工賃達成加算」>
・これまでの条件に加えて実際の工賃の増額が必要です
・更に工賃向上計画に則した対応も求められます
・人員配置が6:1(目賃達成指導員を入れて5:1)で必要になります
・ただし平均利用者15名としたら1ヶ月で10万円程度の収入減になります
・しかし基本報酬を6:1にするので全体的に約15万円収益増になります
※加算による収益増と人件費負担の増額のバランス
基準職員を75:1から6:1にすると平均利用者数15人で常勤換算05増、つまり月に80時間増(=最低人件費8万円)になります。それゆえ、基準職員を6:1にして「目標工賃達成指導員配置加算」等を算定しても、15万円ー8万円=7万円の収益増が現実的な数字です。
<パターン2:「目標工賃達成指導員配置加算」を止める>
・目標工賃達成指導員を配置する必要がないので経費削減になります
・人員配置を5:1にする必要もないので経費削減になります
・工賃を増額する必要もないので経費削減になります
就労継続支援B型事業所で引き続き「目標工賃達成指導員配置加算」を算定するには、従来に比べて月に15万円程度の収入増と人件費の増額を考慮する必要があります。
それ故に比較的大規模な就労継続支援B型は継続して「目標工賃達成指導員配置加算」+「目標工賃達成加算」を算定できるでしょう。
他方で小規模の事業者は収入減に加え人件費もかかるので、一層のこと人件費の節約と割り切って「目標工賃達成指導員配置加算」を止めることも検討した方が良いでしょう。
まとめ
令和6年度の報酬改定により新設される「目標工賃達成加算」について詳しく分かりました。ありがとうございます。
令和6年度報酬改定に対応した組織づくりに早く着手したいと思います。
令和6年度の報酬改定で、「目標工賃達成指導員配置加算」が高い報酬単価を得られなくなったことがポイントです。
そのために新設された「目標工賃達成加算」ですが単位数も大きくなく、取得条件を揃えるにも手間がかかってしまうことが現実です。 事業所様によっては「目標工賃達成指導員配置加算」の算定そのものを見直し、経費削減に走ることも選択肢に入るでしょう。
しっかりと令和6年度の就労継続支援B型事業所の制度変更に順応して、自治体や利用者さんから信頼される組織を作ってください。
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