これから障害福祉事業を開業しようと準備をしています。ただ、どのサービスで収益を上げられるのか、本当のところが知りたいです。
そこでお尋ねしたいのですが、障害福祉事業のサービスごとの収支決算や、どのサービスが好調かなど詳しく教えていただけますでしょうか?
障害福祉事業はビジネスの中で需要もあり安定していると言われますが、決してそんなに簡単ではありません。
厚生労働より令和5年度の経営実態調査が発表されましたが、赤字の事業所など一定の割合で存在し、サービスによって今後の需要も大きく異なります。
この記事では事業者様の理解の一助になるように以下の内容を説明いたします。
- 障害福祉事業のサービスごとの収支状況がわかります
- 障害福祉事業がどのくらい儲かっているかわかります
- どの障害副事業のサービスが今後期待できるかわかります
目次
【令和5年】障害福祉事業の収支状況は?儲かるのか,どのサービスが好調か現状解説
数年に一度、厚生労働省より「障害福祉サービス等経営実態調査」が行われて結果が発表され、障害福祉事業のサービスごとの経営状況が具体的な数字でよくわかります。
<「障害福祉サービス等経営実態調査」とは>
本調査は、障害者支援施設、障害福祉サービス事業所、相談支援事業所、児童福祉法に基づく障害児入所施設及び障害児通所支援施設の経営実態と、制度の施行状況を把握する基礎資料を得ることを目的とします。
※「障害福祉サービス等経営実態調査」の注意点
・全事業者が対象の統計ではありません
・無作為に抽出された回答対象も解答率100%ではありません
障害福祉事業の収支状況のリアルがわかる「障害福祉サービス等経営実態調査」の概略についてわかりました。
ただ実際に収支の状況や支出のバランスなどを確認するために、「障害福祉サービス等経営実態調査」のどのようなポイントに注意すれば良いか教えてもらえるでしょうか?
「障害福祉サービス等経営実態調査」から分かるデータは100%正確なものではない点をまず念頭においてください。
しかし回答事業者も一定程度存在することから、ある程度の妥当性がある調査結果と収支状況と言えるでしょう。
以下では「障害福祉サービス等経営実態調査」の調査結果から、障害福祉事業のサービスごとの収支現状と、儲かっているかどうかをわかりやすく説明いたします。
就労継続支援A型の収支状況
令和5年度調査の就労継続支援A型の収支モデルは、1年間の売上が約4,495万円で支出は4,366万円、その結果収支差は+129万円という現状になっております。
<令和5年:就Aの収支構造のポイント>
・モデルの収支差は2.9%で、モデル定員は19人になります
・定員1人あたりの収支差は6万8千円です
・全事業所の客体数が一番多い収支差率は5%から10%です
・ただし約41%の事業所は赤字です
まず注目すべきは令和2年度の調査と比較して収支差が4.2→2.9%と悪化していることです。
事業所全体の動向を見ると、赤字の事業所が令和2年度から35→41%と増えていることに注意いたしましょう。
客体数が多い収支差率も低くなっており、稼いでいる事業所と体力のない事業所との差が大きくなっていることが大事なポイントです。
※(参考)令和2年度就Aの収支構造のポイント
・モデルの収支差は4.2%で、モデル定員は18人になります
・定員1人あたりの収支差は16万5千円です
・全事業所の客体数が一番多い収支差率は10%から15%です
・ただし約35%超の事業所は赤字です
就労継続支援B型の収支状況
令和5年度調査の就労継続支援B型の収支モデルは、1年間の売上が約3,325万円で支出は3,151万円、その結果収支差は+174万円という現状になっております。
<令和5年:就Bの収支構造のポイント>
・モデルの収支差は5.2%で、モデル定員は20人になります
・定員1人あたりの収支差は8万5千円です
・全事業所の客体数が一番多い収支差率は-5%から0%です
・ただし約39%超の事業所は赤字です
まず注目すべきは令和2年度の調査と比較して収支差が6.0→5.2%と悪化していることです。
また事業所全体の動向を見ると、赤字の事業所が令和2年度から35→39%と増えていることに注意いたしましょう。
客体数が一番多い収支差率もマイナスに陥り、業界全体からすると苦しい経営状況になっています。
※(参考)令和2年度就Bの収支構造のポイント
・モデルの収支差は6.0%で、モデル定員は22人になります
・定員1人あたりの収支差は10万6千円です
・全事業所の客体数が一番多い収支差率は5%から10%です
・ただし約35%超の事業所は赤字です
グループホーム(包括型)の収支状況
令和5年度調査の共同生活援助グループホーム(介護サービス包括型)の収支モデルは、1年間の売上が約4,168万円で支出は3,789万円、その結果収支差は+379万円という現状になっております。
<令和5年:グループホームの収支構造のポイント>
・モデルの収支差は9.1%で、モデル定員は15人になります
・定員1人あたりの収支差は24万7千円です
・全事業所の客体数が一番多い収支差率は20%から25%です
・ただし約39%超の事業所は赤字です
まず注目すべきは令和2年度の調査と比較して収支差が7.3→9.1%と改善していることです。
また事業所全体の動向を見ると、赤字の事業所が令和2年度から25→39%と増えていることに注意いたしましょう。
客体数が多い収支差率は高くなっていて、稼いでいる事業所と体力のない事業所との差が大きくなっていることが大事なポイントです。
※(参考)令和2年度グループホームの収支構造のポイント
・モデルの収支差は7.3%で、モデル定員は19人になります
・定員1人あたりの収支差は18万8千円です
・全事業所の客体数が一番多い収支差率は5%から10%です
・ただし約25%超の事業所は赤字です
児童発達支援の収支状況
令和5年度調査の児童発達支援の収支モデルは、1年間の売上が約3,903万円で支出は3,677万円、その結果収支差は+226万円という現状になっております。
<令和5年:児童発達支援の収支構造のポイント>
・モデルの収支差は5.8%で、モデル定員は18人になります
・定員1人あたりの収支差は12万8千円です
・全事業所の客体数が一番多い収支差率は20%から25%です
・ただし約26%超の事業所は赤字です
まず注目すべきは令和2年度の調査と比較して収支差が1.2→5.8%と大幅に改善していることです。
それに伴い事業所全体の動向を見ると、赤字の事業所が令和2年度から40→26%と減っています。
客体数が多い収支差率は高くなっていて、業界全体の収益構造が高まっていることがわかります。
※(参考)令和2年度児童発達支援の収支構造のポイント
・モデルの収支差は1.2%で、モデル定員は16人になります
・定員1人あたりの収支差は2万8千円です
・全事業所の客体数が一番多い収支差率は10%から15%です
・ただし約40%の事業所は赤字です
放課後等デイサービスの収支状況
令和5年度調査の放課後等デイサービスの収支モデルは、1年間の売上が約3,160万円で支出は2,978万円、その結果収支差は+182万円という現状になっております。
<令和5年:放課後等デイサービスの収支構造のポイント>
・モデルの収支差は5.8%で、モデル定員は10人になります
・定員1人あたりの収支差は17万5千円です
・全事業所の客体数が一番多い収支差率は25%から30%です
・ただし約25%超の事業所は赤字です
まず注目すべきは令和2年度の調査と比較して収支差が10.7→5.8%と悪化していることです。
事業所全体の動向を見ると、赤字の事業所の事業所の割合は大きく変わっていません。
客体数が多い収支差率は高くなっていて、稼いでいる事業所と体力のない事業所との差が大きくなっていることが大事なポイントです。
※(参考)令和2年度放課後等デイサービスの収支構造のポイント
・モデルの収支差は10.7%で、モデル定員は11人になります
・定員1人あたりの収支差は34万1千円です
・全事業所の客体数が一番多い収支差率は15%から20%です
・ただし約27%の事業所は赤字です
まとめ
「障害福祉サービス等経営実態調査」の調査結果から、各々の障害福祉事業のサービスとごとの収支状況が詳しく分かりました。ありがとうございます。
各々のサービスごとの現状と地域の需要を比較して新規事業を選んでいきたいと思います。
「障害福祉サービス等経営実態調査」から分かる収支差率を前回調査と比較すると、共同生活援助と児童発達支援が大きく伸びていることがわかります。
ただどの障害福祉サービスでも、かなり多くの事業所が赤字でもあるので、経営と営業を適切に実施することが大切といえます。 その他にも令和6年の障害福祉の報酬改定で収支状況にも変化があると予測できるので要注意です。
しっかりと「障害福祉サービス等経営実態調査」を活用して自社の経営の戦略を練り、自治体や利用者さんから信頼される組織を作ってください。
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