
★★★記事執筆者のご紹介★★★
この記事は障害福祉事業専門で、国家資格者である行政書士の戸根裕士が作成しております。多数の顧問先様との仕事から得られた、実務に役立つ注意点をまとめました。
戸根行政書士事務所のプロフィールはこちらですので、よろしければ弊社の支援方針や独自の強みなどご覧ください。

新しく開始する「就労選択支援」は、既存の就労継続支援A型B型と一体的に運営できると聞きました。その場合、自社の「就労選択支援」を使えば、自社の就労継続支援A型に簡単に誘導できると考えました。
そこでお尋ねしたいのですが、自社の就労継続支援A型B型で「就労選択支援」を運営する注意点について、詳しく教えていただけますでしょうか?
就労継続支援A型B型は、過去3年間に3人の就労実績があれば、一体的に「就労選択支援」を運用することができます。
ただし一体的に実施する事業所で利用者を囲い込まないために、中立性を確立する様々なルールがあります。
この記事では事業者様の理解の一助になるように以下の内容を説明いたします。
- 「就労選択支援」の囲い込み禁止ルールがわかります
- 計画相談支援事業所との連携の大切さがわかります
- 「特定事業所集中減算」を敢えて選ぶ際の注意点がわかります
目次
【注意】就労選択支援、必ず気を付けるポイント!自社で囲い込みする禁止を解説

令和7年10月より開始する「就労選択支援」は、就労継続支援A型B型も指定を取って一体的に開業できますが、障害者本人の就労活動の最適化を目指すために(=つまり自社による囲い込み禁止のために)、「就労選択支援」の中立化に向けたルールづくりが整備されています。
<囲い込み禁止(中立化)のルール1:「特定事業所集中減算」の設置>
・前6ヶ月において、自社「就労選択支援」のサービスにより、同一事業者に移行させた利用者の割合が80%を超えているなら、200単位の減算となります。
・つまり本来1,210単位が、200単位引かれ、1,010単位になります。
<囲い込み禁止(中立化)のルール2:多機関連携会議の実施>
・「就労選択支援」では、アセスメント結果の作成に当たって、ケース会議を開催しないといけません(※開催していないと報酬請求できません)
・そのケース会議に、本人への情報提供の誤りや偏りがないよう、本人と「就労選択支援」以外の関係者の参加が義務付けられています
・具体的には多機関連携会議には、計画相談支援事業所の出席が検討されています
<囲い込み禁止(中立化)のルール3:継続利用時の自社「就労選択支援」の利用禁止>
・現在、就労継続支援A型B型等の利用者も、当該サービスの妥当性を検証するために「就労選択支援」を受けることができます
・そしてその継続利用者の「就労選択支援」の利用は、自社以外の「就労選択支援」利用が原則になります
・ただし近隣に「就労選択支援」事業所がない場合は、自社の「就労選択支援」の利用も例外的に容認されます
就労選択支援事業の囲い込み禁止のルールについてわかりました。
ただ実際に、「就労選択支援」を開業して仕組みづくりをする際に、どのような戦略を立てていけば良いか教えてもらえるでしょうか?
「就労選択支援」は、いかに第三者を巻き込んで、中立的な仕組みづくりにするかがポイントです。
減算があっても自社で利用者を囲い込めば利益が上がると考えられますが、様々なリスクがあることにご注意ください。
以下では、しっかりと中立的な「就労選択支援」を組織していくポイントをわかりやすく説明いたします。
まず出来ること1:計画相談支援事業所との関係構築

令和7年10月より開始する「就労選択支援」では、囲い込み防止の対策を守りつつ、スムーズに利用者を確保するには、会議参加や継続利用の場面で計画相談支援事業所との関係構築が欠かせません。
<ポイント1:報酬算定するためのケース会議に参加してもらう>
・「就労選択支援」の報酬算定に必要なケース会議に、計画相談支援事業所の職員の参加が必須です
・利用者本人の情報や日常生活の課題を、計画相談支援事業所と正確に共有することが大切です
・特に、最低賃金が貰える就労継続支援A型を希望している場合は、本当にその能力があるか検討することが大切です
・金銭的に不安がある方は、就労先で得る報酬額を想定して、生活保護や保険制度の利用も計画相談事業所と検討しましょう
・一般就職を目指す場合は、職場定着の支援や訪問看護の利用も想定して勤続できるような体制を作りましょう
<ポイント2:継続利用をしている時は情報共有を徹底する>
・継続利用時に、必要もないのに「就労選択支援」に移行しないよう、計画相談支援事業所への日常的な情報共有が求められます
・令和6年4月より就労継続支援A型B型は、計画相談支援事業所へ個別支援計画を送付する義務があるので守りましょう
・就労継続支援A型B型での、解決が容易でない支援の課題を共有しておくことが大切です
・就労継続支援A型で最低賃金をもらう労働が難しい場合は、早期に就労継続支援B型等への移行の検討が必要です
「就労選択支援」と計画相談支援事業所との連携は、利用開始前にも継続利用時にも大切になってきます。
計画相談支援事業所は多忙なことが多いので、事前にスケジュール調整をしっかりいたしましょう。
計画支援事業所にとっても、「就労選択支援」のケース会議ののちに、計画相談側での支援会議も実施できれば効率化が図れます。
まず出来ること2:あえて「特定事業所集中減算」を選ぶ注意点

新制度「就労選択支援」は、囲い込み禁止のために「特定事業所集中減算」(200単位減算)があり、減算単位も大きくないことから、敢えて減算を受けて自社への誘導を行うことも考えられますが、収入だけでなく長期的な注意点も踏まえることが大切です。
<敢えて「特定事業所集中減算」を前提にする注意点>
・「就労選択支援」の報酬請求で必要な他職種のケース会議で、参加必須の計画相談支援事業所から否認されることが想定されます
・継続利用時に「就労選択支援」を実施する場合は、そもそも自社の選択支援は原則利用できません
・継続利用時に利用者の計画相談支援事業所から、囲い込みをしていると疑われるとケース会議に参加してもらえない可能性があります
・利用者の意向で自社の利用が集中する場合は、就労選択のアセスメント等が客観的に中立であるよう整理しましょう
普通に考えれば「特定事業所集中減算」の減算額と、利用者を通所させた後の売り上げを比較すれば、減算を選んで囲い込みをする会社も出てくると思います。
しかし「就労選択支援」の実施は、第三者である計画相談支援事業所の意向を組み込むことが大切であり、囲い込みをしても一定のリスクがあります。
ただし結果的に利用者の意向で自社の「就労選択支援」に通うこともあると思いますが、その際は就労選択のアセスメントや継続支援時の状況など、こまめに計画相談支援事業所に報告しておきましょう。
まとめ

令和7年10月開始の就労選択支援の囲い込み禁止ルールについて詳しく分かりました。ありがとうございます。
新制度「就労選択支援」に対応した組織づくりに早く着手したいと思います。
「就労選択支援」は、利用者の意向と選択の中立化が反映されるよう、様々なルールが作られています。
特に計画相談支援事業所との連携は必須であり、地域の相談支援事業所との関係づくりを早期に始めましょう。 また「特定事業所集中減算」を前提にする仕組みづくりも考えられますが、第三者の意見を入れることが必須なことからリスクもあるので慎重にご検討ください。
しっかりと新制度「就労選択支援」の開設と就労継続支援A型B型事業所の制度変更に順応して、自治体や利用者さんから信頼される組織を作ってください。
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