★★★記事執筆者のご紹介★★★
この記事は障害福祉事業専門で、国家資格者である行政書士の戸根裕士が作成しております。多数の顧問先様との仕事から得られた、実務に役立つ注意点をまとめました。
戸根行政書士事務所のプロフィールはこちらですので、よろしければ弊社の支援方針や独自の強みなどご覧ください。
就労継続支援A型事業所を運営していますが、令和6年の障害福祉の報酬改定のことが気になります。私たちの事業所は令和6年の報酬改定でどのように対応すれば良いか不安です。
そこでお尋ねしたいのですが、令和6年の報酬改定で就労継続支援A型事業所が対応すべき重要変更のことを、詳しく教えていただけますでしょうか?
令和6年度の報酬改定で就労継続支援A型事業所の制度は大きく変わります。
もし令和6年度の報酬改定に適切に対応できないと、就Aの経営にマイナス面の影響が出るかもしれません。
この記事では事業者様の理解の一助になるように以下の内容を説明いたします。
- 令和6年度報酬改定の就労継続支援A型の重要変更点がわかります
- 令和6年度報酬改定の就Aの、まず確認することがわかります
- 令和6年度報酬改定の就Aの、忘れてはいけないことがわかります
目次
【令和6年報酬改定】就労継続支援A型,まず確認するポイントとは?
令和6年度の就労継続支援A型の報酬改定については、令和5年12月6日の「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の基本的な方向性」が発表されて、就Aの制度変更に関する要点がわかりました。
<令和6年度報酬改定:就労継続支援A型事業所の方針>
就労継続支援A型事業所の生産活動収支の改善と効果的な取り組みの評価
1:スコア方式による評価項目の見直し
2:経営改善への取り組み状況による評価
令和6年度の報酬改定の就労継続支援A型の制度変更の方針についてわかりました。
ただ実際に令和6年度の報酬改定に就A事業者が適切に対応するために、どのようなポイントに注意し、どのようトラブル対策が有効か教えてもらえるでしょうか?
令和6年度の就労継続支援A型の制度変更のポイントは多岐に渡り、全体を把握することは容易ではありません。
ただ令和6年度の就労継続支援A型事業所の制度変更の、重要なポイントさえ把握しておけば安心です。
以下では令和6年度報酬改定の就労継続支援A型の、重要な制度変更とその対策をわかりやすく説明いたします。
R6報酬改定:就労継続支援A型の気になる変更点
令和6年度の報酬改定により、就労継続支援A型事業所の主な変更点は、利用者による生産活動の黒字になっているか、赤字を改善できているかという点が厳しく見られて報酬に反映されるようになります。
<就労継続支援A型の気になる変更点1:スコア>
・スコア方式の「生産活動」のカテゴリーで黒字の場合は配点が高くなります(MAX40→60)。
・スコア方式の「生産活動」のカテゴリーで赤字の場合は減点になります(−20点になります)。
・生産活動が赤字なのに経営改善計画を提出していない事業所はスコアの減点になります(−50点)
(スコアのカテゴリー) | (旧) | (令和6年報酬改定) |
労働時間 | 5点~80点 | 5点~90点 |
生産活動 | 5点~40点 | ー20~60点 |
多様な働き方 | 0~35点 | 0~15点 |
支援力向上 | 0~35点 | 0~15点 |
地域連携活動 | 0~10点 | 0~10点 |
経営改善計画(NEW) | × | ー50点~0 |
利用者の知識及び能力の向上(NEW) | × | 0~10点 |
<就労継続支援A型の気になる変更点2:施設外就労>
・施設外就労支援に関する実績報告を毎月する必要がなくなります
・施設外支援での個別支援計画の見直しが1ヶ月に1回になります
※就労継続支援A型の経営の危機
以前まで生産活動は赤字でも5点もらえて、支援力向上等の他のカテゴリーで稼げば105点以上の655単位(7.5:1)を取れていたのが、赤字だとマイナスになり他のカテゴリーの配点も下がって70点程度、つまり410単位になる可能性が高いです。
⇨例:(655単位-410単位)×10円/単位×15人×20日×12ヶ月=8,820,000円
つまり年間で900万円弱の赤字になります。
まさにこれまで生産活動が赤字で経営してきた就労継続支援A型事業所は危機に直面していると言っても過言ではありません。
何より赤字でも他のスコアのカテゴリーで補うことができず、下手をすれば年間1千万円以上の赤字になり経営が本当に苦しくなります。
就労継続支援A型を継続するか今一度考え、就労継続支援B型に変えることも視野に入れていただければと思います。
R6報酬改定:全障害福祉サービスの気になる変更点
令和6年度の報酬改定により、どのような障がい福祉事業を行っているかにかかわらず、虐待等の減算項目の増加やテレワーク等の活用は注目しておきましょう。
<全障害福祉サービスの気になる変更点>
・虐待防止の委員会/研修/担当者未実施の場合は減算になります
⇨「虐待防止措置未実施減算」:所定単位の1%
・「身体拘束廃止未実施減算」の減算単位が5単位→10%に増加いたします
・業務改善計画(BCP)等を策定して訓練等を実施していないと減算になります
⇨「業務継続計画未策定減算」:入所系は3%、その他1%
・障害福祉サービス等情報システムに利用者への情報を公表していないと減算になります
⇨「情報公表未報告減算」:入所系は10%、その他5%
・食事提供体制加算の算定要件が追加され厳しくなります
⇨①栄養面の保証 ②利用者献立の摂取量の記録 ③体重やBMIを6ヶ月に1度記録
・管理者はテレワークで仕事をすることが可能になります
・管理者以外の職種も条件付きでテレワークができるようになります
・個別支援計画作成のための担当者会議に、原則的に利用者の参加が必要です
新しい3種類の減算が「虐待防止措置未実施減算」/「業務継続計画未策定減算」/「情報公表未報告減算」と導入されることが注目すべきポイントです。
各々の減算を避けるためには、事業年度初めにしっかり研修と訓練の計画を立てることが大切です。
その他にも個別支援計画の担当者会議に、利用者本人も参加し意見を聞くことが定められたので従業員に周知いたしましょう。
就A事業運営:ひとまず今できることとは?
令和6年度の報酬改定により就労継続支援A型事業所が、まずできることは利用者による生産活動の見直しと他のスコアによる補填、さらに業務改善計画の容易化が挙げられます。
<就労継続支援A型事業所がひとまず、今できること>
・スコアの生産活動が赤字の場合は、他のスコアで補填できるよう調整する
・スコアの生産活動の試算をして、カバーできそうな赤字は補う準備をする
・スコアの生産活動の試算をして、赤字にならないよう業務受託を増やす
・業務改善計画を達成しやすい目標に変更する
・生産活動が黒字になるように営業活動を増やす
就労継続支援A型事業所の生産活動が赤字であれば、研修や視察に行くなど出来る限りスコアを上げやすい努力をいたしましょう。
もし就労継続支援A型事業所が関係会社や親会社から仕事を受託している場合、確実に黒字になるようその受託量を調整することも大切です。
その他、業務改善計画の目標を達成可能なレベルに調整して、今年度の生産活動の業績と釣り合わせることも大切です。
まとめ
令和6年度の報酬改定の就労継続支援A型の重要な変更点について詳しく分かりました。ありがとうございます。
令和6年度報酬改定に対応した組織づくりに早く着手したいと思います。
令和6年度の報酬改定で、利用者による生産活動が黒字になる就労継続支援A型事業所がより評価され報酬も高くなっていきます。
逆に言えば生産活動が赤字の事業所はより報酬が減らされ、その結果、就労継続支援A型事業所の間での格差はますます広がっていくでしょう。 その他にも虐待や BCPに関する減算も増えますのでご注意ください。
しっかりと令和6年度の就労継続支援A型事業所の制度変更に順応して、自治体や利用者さんから信頼される組織を作ってください。
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