就労継続支援A型事業所を運営していますが、近いうちに実地指導を行うという通達が来て焦っています。年度ごとの義務化対応の追加により実地指導の確認ポイントも移ると聞きました。
そこで最近の就労継続支援A型の実地指導の傾向や間違えやすいポイントを、詳しく教えていただけますでしょうか?
実地指導の通知が来た時、どの就労継続支援A型の事業所の中でも実地指導対策は気になるポイントかと思います。
特に令和3年の報酬改定から始まる就Aの基本報酬がスコアや施設外労働に対していの指導が、実地指導では多いと聞きます。
この記事では事業者様の理解の一助になるように以下の内容を説明いたします。
- 就労継続支援A型の実地指導の間違えやすいポイントがわかります
- 就労継続支援A型の実地指導のスコアの確認ポイントがわかります
- 就労継続支援A型の実地指導の書類整備のポイントがわかります
目次
実地指導、ここがチェックされる③!間違えやすいポイント解説
就労継続支援A型事業所は、「適正にサービスを提供し請求業務を行っているか」という観点で自治体に、実地指導として定期的にチェックされます。
<実地指導の基本的なチェックポイント>
1 人員基準に関する事項:適正に利用者数を計算し従業員を配置できているか等
2 運営体制に関する事項:運営規程/重説や個別支援計画が適正に整備されているか等
3 報酬請求に関する事項:支援の実態に合わせて請求をしているか等
就労継続支援A型の実地指導の概要は、パターンに分けていただいたのでわかりました。
ただ実際に実地指導の時に何か指摘されて報酬の返還など命じられるのが怖いのですが、就労継続支援A型の実地指導は特にどのような点に気をつければ良いでしょうか?
障害福祉サービスは全ての事業で実地指導が行われますが、就労継続支援A型ならではのチェックポイントもあります。
また令和3年の報酬改定によりスコア表によって基本報酬単位が決まるようになったり、年度ごとの義務化対応案件があったりと、これらは確認必須です。
以下では就労継続支援A型の実地指導の、間違えやすいポイントをわかりやすく説明いたします。
ポイント1:スコア表のミスをなくす
近年の実地指導でよくあるのは、就労継続支援A型事業所の基本報酬は令和3年の報酬改定によりスコア表で評価されるようになったので、実地指導ではスコア表の得点が適正化どうか入念にチェックされる傾向です。
<「スコア(III)多様な働き方」の間違えやすいポイント>
・短時間勤務の規則が「介護・育休の短時間規則」になっている
・時差出勤の実績が、所定の労働時間を満たしていない
・在宅勤務の規則が詳細ではない
・フレックスタイム制と時短制度を取り違えている
・フレックスタイム制を実地しているのに36協定を行なっていない
<「スコア(IV)支援力向上」の間違えやすいポイント>
・研修に半数以上参加した記録がない
・「先進的事業者」の視察/受入をしていないのに2ポイント取得している
・商談会等の参加を単なる営業と考えている
・商談会に関する記録が残っていない
就労継続支援A型のスコア表に関する厚生労働省の留意事項(令和3年3月30日)が公表されているので、よく読んで根拠資料を揃えることをお勧めいたします。
もし不適切にスコアを取得していた場合、全体のスコアの単位が変われば基本報酬も変わり、最悪は返金の可能性があります。
スコアの得点を高めるには時間がかかるので、常に次年度のスコアを想定して対策を立てましょう。
<スコア表の解説>
・【基本】スコア表(I)の解説!「労働時間」の要件と根拠資料は?
・【基本】スコア表(II)の解説!「生産活動」の要件と根拠資料は?
・【基本】スコア表(III)の解説!「多様な働き方」の要件と根拠資料は?
・【基本】スコア表(IV)の解説!「支援力の向上」の要件と根拠資料は?
・【基本】スコア表(V)の解説!「地域連携活動」の要件と根拠資料は?
ポイント2:施設外就労の不備をなくす
就労継続支援A型の事業所では、より高い賃金を払い、就労支援事業の会計を黒字にするために単価の高い施設外就労を実施することが多いですが、施設外就労の実施に関しての書類不備を厳しくみられる傾向にあります。
<施設外就労の間違えやすいポイント>
・1日の利用者数を事業所本体と施設外とを分けていない
・1日の従業員の配置を事業所本体と施設外と、時間数を表記して分けていない
・施設外実施日に事業所本体の人員配置は昨年度平均に7.5:1or10:1の配置が必要
・施設外実施日に事業所外部の人員配置は施設外利用者に7.5:1or10:1の配置が必要
・個別支援計画に施設外就労の効果の文言を入れていない
・施設外就労の規程を作っていない
・施設外就労のマニュアルを作成していない
・施設外就労で食事提供に関する規程を作っていない
・施設外のサービス提供実績記録に毎日ハンコを押してもらっていない
施設外就労を実施することで、定員を変更せずに1日の利用者数を増やすこともできるので就労継続支援A型の収益の一つになります。
施設外就労の人員配置基準が適正化どうかは1日単位で確認するので、毎日の記録が大事になってきます。
特に個別支援計画への未記載は多くみられますのでサービス管理責任者の方に言っておきましょう。
<賃金上昇のための体制づくり>
・【高収入】施設外就労支援の注意点とは?基本から間違えやすいミスまで説明
・【推奨】就労移行連携加算とは?オススメ活用事例あり
・【注目】就労移行支援体制加算とは?オススメ活用事例あり
ポイント3:令和4年度の義務化の規定に対応する
就労継続支援A型の事業所は令和4年度より虐待と身体拘束適正化の委員会の設置、そしてハラスメント対策が義務化されたのに伴い、就Aの実地指導でも委員会の開催の実態や体制の整備については入念にチェックされる傾向になります。
<令和4年度の義務化の規定について>
【1】虐待防止委員会とは?運営規程の書き方から記録書類まで解説
【2】身体拘束適正化委員会と「身体拘束廃止未実施減算」とは
【3】障害福祉のハラスメント防止の対策とは?
虐待や身体拘束の規程は令和4年度から義務化されたにもかかわらず、運営規程等の変更していない事業所があるのでご注意ください。
また身体拘束適正化の未実施は令和5年度より減算の対象になるので要注意です。
ハラスメント防止に関しては一般的なハラスメントに加えて、近年ではカスタマーハラスメントの指針(※出来る限り詳細に)についてもまとめましょう。
ポイント4:就労支援事業会計を整理する
福祉事業の中で生産活動をする就労継続支援A型の事業所の会計は、「就労支援事業会計」という仕組みで実施する必要があり、生産活動で売上高の中から利用者賃金を支払えているか証明する必要があります。
<「就労支援事業会計」の特徴>
・事業所の単位ごとに「生産活動に係る会計」と「福祉事業活動に係る会計」を明確に区別する
・複数の生産活動を行う場合は、原則的に作業種別ごとに会計を区分する(※多種少額の場合は区別なし)
就労支援A型事業所の会計で、生産活動と福祉事業が区分されておらず、売上高と利用者賃金の関係が明確でないなら実地指導で指摘されやすいです。
特に障害福祉事業以外の事業を実施ていて、両者が混同されている場合は注意が必要です。
就Aと他の障害福祉事業を同時に実施している場合でも両者の会計区分について気をつけてください。
ポイント5:加算算定の根拠資料を残す
就労継続支援A型の事業所は加算を適切に算定して収益アップを目指すのが基本ですが、各種加算の根拠資料を正確に保存しておかないと返金の可能性があり要注意です。
<各種加算の根拠資料の注意点>
・欠席時対応加算は、連絡日/相談援助/対応者/欠席理由/次の通所日を記載する
・定員超過利用減算を回避するため日常的な定員超過を避けておく
・賃金向上達成指導員配置加算は、職員で常勤1を確保し、利用者キャリアアップ規程を用意する
・処遇改善加算は賃金改善の根拠となる規程と実際の支給の実態に整合性を持たせる
就労支援A型事業所の加算算定に関して、適切な資料管理ができておらず返金することになった事例をしばし聞きます。
特に賃金向上達成指導員配置加算など従業員の人員配置が求められる場合に、施設外就労も実施すると一層複雑になり管理が難しくなります。
施設外就労も関連してくると前年度平均利用者数の算出が大切になってくるので定期的に見直してみましょう。
まとめ
就労継続支援A型の実地指導の間違えやすいポイントついて詳しく分かりました。ありがとうございます。
令和4年度からの義務化の対応に追いついていなかったので、すぐに協議したいと思います。
近年の就労継続支援Aの実地指導でよく聞くのは、就労支援事業会計が整理されていないことです。
売上高から賃金を支払えていることが明確でない場合、従たる事業所の設立をする際にも課題になります。 今後も多店舗展開をして事業拡大をする際には、就労支援事業会計の整備は欠かせないので対応するようにいたしましょう。
就労継続支援A型の事業を安定的に運営していくには実地指導を切り抜けることが大切なので、しっかりと自治体や利用者さんから信頼される組織を作ってください。
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