★★★記事執筆者のご紹介★★★
この記事は障害福祉事業専門で、国家資格者である行政書士の戸根裕士が作成しております。多数の顧問先様との仕事から得られた、実務に役立つ注意点をまとめました。
戸根行政書士事務所のプロフィールはこちらですので、よろしければ弊社の支援方針や独自の強みなどご覧ください。
就労継続支援A型事業所を運営していますが、令和6年の障害福祉の報酬改定により廃業か倒産の危機を迎えています。生産活動が赤字でスコアと基本報酬が大幅に下がり、これ以上事業が継続できなくなりました。
そこでお尋ねしたいのですが、令和6年の報酬改定により、就労継続支援A型事業所から就労継続支援B型に移行しようと思っているのですが、注意点など詳しく教えていただけますでしょうか?
令和6年度の報酬改定で就労継続支援A型事業所の制度は大きく変わります。
基本報酬の下げ幅が大きく就労継続支援A型から就労継続支援B型へ移行を検討している事業所も多数あると思います。
この記事では事業者様の理解の一助になるように以下の内容を説明いたします。
- 令和6年度報酬改定の就労継続支援A型の重要変更点がわかります
- 就Aから就Bに移行する際の注意点がわかります
- 就Aから就Bとの多機能型に移行する際の注意点がわかります
目次
【令和6年】就労継続支援A型からB型へ!廃業や倒産危機の回避を解説!
令和6年度の報酬改定により、生産活動が赤字(売上<利用者賃金)続きの就労継続支援A型は、その基本報酬を決めるスコア表のポイントが大幅に下げられ、廃業や最悪の場合は倒産の経営の危機を迎えることになりました。
<令和6年度報酬改定:生産活動赤字の事業所の収益減について>
就労継続支援A型のスコア表がII生産活動に関してマイナススコアになり、III多様な働き方とIV支援力向上のスコア数が下がりました。その結果、月単位で約70万円の赤字になり、年単位で840万円のマイナス収益になります。
※もはや1人419単位は経費等を払ってしまえば殆ど残りません。
(カテゴリー) | 令和6年度 | 令和5年度以前 |
I労働時間 | 40 | 40 |
II生産活動 | ー20 | 5 |
III多様な働き方 | 15 | 35 |
IV支援力向上 | 15 | 35 |
V地域連携活動 | 10 | 10 |
VI経営改善計画 | なし | なし |
VII利用者の知識等向上 | 10 | なし |
合計 | 70 | 125 |
基本報酬単位 | 419単位 | 655単位 |
月15人20利用の報酬総額 | 1,257,000円 | 1,965,000円 |
令和6年度の報酬改定の就労継続支援A型の制度変更の方針についてわかりました。
令和6年度の報酬改定により就A事業者が就労継続支援B型へ移る場合、どのようなポイントに注意し、どのようトラブル対策が有効か教えてもらえるでしょうか?
就労継続支援A型から就労継続支援B型に変えるには、就B単独で実施するか就Aを残して多機能型で事業をするか選択肢が分かれます。
就Bも多機能型もそれぞれのメリットとデメリットがあるので注意が必要です。
以下では就労継続支援A型から就労継続支援B型へ移る、各々の選択肢のポイントをわかりやすく説明いたします。
就労継続支援A型から就労継続支援B型に変わる注意点
令和6年度の報酬改定により、就労継続支援A型事業所から就労継続支援B型へ変更する際の注意点は、利用者との雇用関係を会社都合で中断することの影響です。
<就Aから就Bへ変更の注意点について>
・就労継続支援A型の利用者を会社都合で解雇しては特開金が受給できなくなります
・有給の義務や失業保険の手当がなくなります
・最低賃金が保証されず月単位の手取りが下がります
・計画相談との調整や受給者証の申請に時間がかかります
・開所から半月の基本報酬はみなしのため低いです
・同一労働に対して同一工賃を保証し、個々人に差異をつけることが難しくなります
就労継続支援A型の経営が難しくなった時、そもそも就A利用者全員が就Bに移行してくれるわけではありません。
就Bに移行してくれたら高い賃金を保証すると誘うことは利益誘導になりかねないのでご注意いたしましょう。
また就労継続支援A型を廃止するまでは有休消化の権利の請求があるので、しっかり有給希望に対応することも大切です。
就労継続支援B型との多機能型という選択肢
令和6年度の報酬改定により、就労継続支援A型が廃業や倒産の危機を迎えた場合、ただ就労継続支援B型に移行するだけではなく、就労継続支援B型との多機能型という形態を選択することも可能です。
<就労継続支援B型との多機能型のメリット>
・就労継続支援A型の定員が少なくなり生産活動が黒字化しやすい
・就労継続支援A型を希望する利用者を残留させることができる
・サビ管/管理者/常勤職員を兼務させることが可能になる
・業務委託契約を簡単に解除することができない
・就労継続支援B型の定員が少なくても施設外を使えば一定数以上は受け入れることができる
<就労継続支援B型との多機能型のデメリット>
・報酬単位が一般的に就Bの方が低い(=収益減の可能性)
・就労支援事業会計の内訳を就Aと就Bとに区分する必要がある(=税理士費用の増額の可能性)
・「目標工賃達成指導員」と「賃金向上達成指導員」の兼務ができない(=収益減の可能性)
・就Aと就Bの作業内容と作業場所をしっかりと分ける必要があります
・利用者同士の間で賃金と工賃の差額をうらやましく思う悪い空気が出てきます
現在の就労継続支援A型利用者を減らせば生産活動が黒字=高いスコアを維持できるのかどうかを判断することが大切です。
もしそれが可能であれば、就労継続支援B型との多機能型を選び、就Aと就Bの両方で売上をあげることができます。
施設外を使えば就労継続支援B型の利用者も結構な数は受け入れられるので、就労継続支援A型を続けるメリットが想定できるかどうか検討することが大事です。
就A事業運営:ひとまず今できることとは?
令和6年度の報酬改定により、スコアが大幅に下がり危機に直面した就労継続支援A型事業所は、特に生産活動の赤字の規模が定員を縮小して回復可能かどうか判断することが大切です。
<「就労継続支援B型単体か、就労継続支援B型との多機能か」判断ポイント>
・就労継続支援A型の規模が小さければスコアは維持できるか
・就労継続支援B型に移行しても利用者がついてくるか
・半年間程度、資金をショートさせないための現金があるか
・就労継続支援B型用の仕事をすぐに用意できるか
・従業員がどれだけ残留するか清算できるか
スコアが大幅に下がれば、就労継続支援A型事業所を維持しているだけでも、赤字はどんどん大きくなります。
就労継続支援B型単独や多機能型に移行するにしても、手続きだけで数ヶ月かかることもご留意ください。
またあくまでも利用者さんの自己決定権が尊重されるので、無理なサービス内容の強要は避けましょう。
まとめ
令和6年度の報酬改定により、就労継続支援A型から就労継続支援B型へ移行する重要点について詳しく分かりました。ありがとうございます。
就労継続支援B型単独でするか多機能型で事業をするか早期に判断して準備したいと思います。
話に聞くところによると、多数の事業所様が就労継続支援A型から就労継続支援B型単独へ移行することを検討しているようです。
ただ実際に就労継続支援A型でも規模が小さくなれば生産活動が黒字になるケースもあるので、多機能型も視野にしっかり入れて判断ください。 また利用者が就Aか就Bかどちらかを選ぶかは、その方の自己判断や支援の客観的必要性によるので尊重いたしましょう。
しっかりと令和6年度の就労継続支援A型事業所や就労継続支援B型の制度変更に順応して、自治体や利用者さんから信頼される組織を作ってください。
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