
★★★記事執筆者のご紹介★★★
この記事は障害福祉事業専門で、国家資格者である行政書士の戸根裕士が作成しております。多数の顧問先様との仕事から得られた、実務に役立つ注意点をまとめました。
戸根行政書士事務所のプロフィールはこちらですので、よろしければ弊社の支援方針や独自の強みなどご覧ください。

就労継続支援A型の運営が安定して、次の就労継続支援A型を開業することを検討しています。ただ基本報酬を決めるスコア制度を、早く有利に出来る時期で始めたいです。
そこでお尋ねしたいのですが、いつから就労継続支援A型を開業していけば最も良い条件で運営をスタートできますか?
令和7年3月に発表された厚生労働省QandAで、就労継続支援A型の開業時期とスコア制度の関係が統一されました。
スコア制度を上手に使うために、開業時期や会計年度設定を間違えれば、売上が大きく変動するのでご注意ください。
この記事では事業者様の理解の一助になるように以下の内容を説明いたします。
- 就労継続支援A型の開業時期と基本報酬の関係がわかります
- スコア(II)生産活動の黒字化を有利に展開できる時期がわかります
- R70331のQandA問3のポイントがわかります
目次
【最新Q&A:就A】スコア(II)生産活動の年度と期間とは?一番得する開業時期を解説

就労継続支援A型は「いつから開業するか」を上手に選べば、いち早く生産活動を黒字にして、高いスコア=高い基本報酬を目指すことが出来ましたが、令和7年3月31日付の「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&AVOL.8問3」にて、開業時期と会計年度ごとの「スコア(II)生産活動」の対象が明確に定められました。
<「スコア(II)生産活動」の基本>
・利用者の生産活動による売上から経費を除いた金額で、利用者賃金を払えたらクリアです。
・利用者賃金とは、賃金/給料/手当/賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として支払う全種類です
・生産活動の会計が黒字かどうかは、会社の会計年度期間により原則判断いたします。
・例えば、毎年9月末日が会計年度の終了日である場合、令和6年度スコアの前年度は令和5年9月末日が終了日となる会計年度で判断します。
問3 | 「厚生労働大臣の定める事項及び評価方法の留意事項について」(令和3年3月30 日障発0330 第5号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)の記2の(2)について、 例えば、年度当初に指定された事業所であって、会計年度(事業年度)の終了日が3月31 日と異なる場合の2年度目のスコア算定の取扱いなど、 事業所の指定時期と会計年度(事業年度)の組み合わせによっては取扱いが明示されていないものがあるが、どのように取り扱えばよいか。 |
答 | 下表を参考にされたい。 |

<最新のQandAの表のポイント>
・指定時期が年度当初か否か、会計年度が4〜3月か否か、指定月が会計年度内か外かによって「スコア(II)生産活動」の対象の見解が統一されました。
⇨これまでの就労継続支援A型の留意事項でも新規指定の際の「スコア(II)生産活動」の対象見解は提示されていましたが、上記のような詳細な区分はなく、指定権者ごとで解釈が異なっていました。
・これにより指定権者ごとの「スコア(II)生産活動」の見解の相違がなくなりました。
・ポイントは数ヶ月の年度実績により「スコア(II)生産活動」を黒字と見做せなくなりました(下記で解説します)
就労継続支援A型の「スコア(II)生産活動」についてわかりました。
ただ実際に、就労継続支援A型を新しく開業する場合は、どのような点に注意すれば良いでしょうか?
「スコア(II)生産活動」に関する最新のQandAで大切なポイントは、数ヶ月の年度実績により「スコア(II)生産活動」の黒字化ができなくなったということです。
つまりは最短で「スコア(II)生産活動」を黒字にしてスコアの基本報酬を高くする戦略の変更が求められるようになりました。
以下では「スコア(II)生産活動」の大きな制度変更のポイントをわかりやすく説明いたします。
最短黒字化の戦略の見直し:数ヶ月の年度実績が否認されました

これまで就労継続支援A型は開業時期を選べば、3月末までの数ヶ月の期間で一年度実績を作ることができ、その数ヶ月の1年度+翌12ヶ月の2年度で「前年度並びに前前年度」の二期の実績を最短で作ることも可能でしたが、今回の令和7年3月31日のQandAにより、この最短の実績作りは不可とされることになりました。
<「数ヶ月の1年度+翌12ヶ月の2年度」とは>
例)指定月は2月/会計年度は4月〜3月の場合、1年度目は2月から3月末、2年度目は4月から翌3月
・過去:2月から3月末で1年度とし、その期間の生産活動を黒字にすれば、翌年4月からは2年度の生産活動の実績でもって「スコア(II)生産活動」の実績を作ることが可能とする指定権者がありました。
・令和7年3月31日以降:2月から3月末で1年度だけ生産活動を黒字にしても、翌年4月の時点でその2ヶ月を「前前年度の実績」としては考えなくなりました。
⇨上記の図で言うと下から3番目が該当し、⑤ではなく③になると言うことです。
「スコア(II)生産活動」に関する最新のQandAは、年度途中指定の場合で3月末までの数ヶ月の実績を対象外に置いたところがポイントです。
事前から就労継続支援A型の仕組み化が出来ていれば、数ヶ月であっても生産活動を黒字化することは出来るので、事前の準備作業も異なってきます。
これまでは2月または3月指定を意図的に狙うスキームもありましたが、それが最適かどうか注意が必要です。
今から出来ること:開業時期は4月がオススメ

令和7年3月31日以降、就労継続支援A型を新しく開業し、出来るだけ早期に2年度分の実績で「スコア(II)生産活動」を評価したい場合は、結局のところ4月指定で指定申請を受けて開業することが有利になるようになりました。

<4月指定開業の有利なポイントについて>
・2年経てば自動的に2年度(前年度及び前前年度)の実績で評価できます。
⇨年度途中指定よりも数ヶ月でも早く2年度実績で基本報酬の算定が出来ます。
・会計年度に関しては生産活動内容の「売上計上のタイミング」を考慮して設定してください。
・会計年度を「4月〜翌3月以外」にした場合、⑤になると行政年度か会計年度のどちらか選択できることになりました(※留意事項通知には原則会計年度となっています)。
・「4月〜翌3月以外」にする場合は生産活動内容の売上や経費の発生の時期を考慮し、会計年度の方が有利になるよう設計しておくと2年度(前年度及び前前年度)黒字化を達成しやすいようになります。
令和7年3月31日の最新のQandAにより、開業時期を選べる場合は4月開業が有利になる状況が生まれました。
また「スコア(II)生産活動」の判断期間が留意事項通知では会計年度となっていたのですが、行政年度の使用の併用も認める書き方になっている点に注目しましょう。
各々の事業所は就労継続支援A型の生産活動の内容によって、会計担当者と生産活動が黒字化になるよう会計年度期間の設定を工夫することも大切です。
まとめ

就労支援の「スコア(II)生産活動」に関する、厚生労働省による令和7年最新のQandAの新ルールについて詳しく分かりました。ありがとうございます。
「スコア(II)生産活動」のQnadAのポイントもしっかり守って、法令に準拠した組織づくりに早く着手したいと思います。
令和6年度の報酬改定により「スコア(II)生産活動」は、就労継続支援A型の基本報酬を決める大切な項目になりました。
令和7年3月の厚生労働省のQandAでは、開業してから年度ごとの「スコア(II)生産活動」の設定方法が明示され、最短2年度実績の工夫などの方法が通用しなくなりました。 多店舗展開やフランチャイズの場合は、開業時期によって収益が大きく異なるので、新しい「スコア(II)生産活動」のルールに則って事業計画を修正することが大切です。
しっかりと重要制度「スコア(II)生産活動」のルールを守って、自治体や利用者さんから信頼される組織を作ってください。
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