
★★★記事執筆者のご紹介★★★
この記事は障害福祉事業専門で、国家資格者である行政書士の戸根裕士が作成しております。多数の顧問先様との仕事から得られた、実務に役立つ注意点をまとめました。
戸根行政書士事務所のプロフィールはこちらですので、よろしければ弊社の支援方針や独自の強みなどご覧ください。

就労継続支援A型B型事業所を運営していますが、不正のニュースを見聞きして、生産活動の売り上げや支出が適正か心配になっています。今後さらに、運営指導時に生産活動のチェックが厳しくなるとも聞きました。
そこでお尋ねしたいのですが、「就労支援の生産活動のスキームをどのように見直せば良いか」、詳しく教えていただけますでしょうか?
就労支援は原則、障害者の活動による売り上げから、彼らへの賃金・工賃を支払うことがルールです。
しかし、生産活動が黒字であれば何でも良いかというと、そうではなく、今後は適正化の有無が厳しく点検されるでしょう。
この記事では事業者様の理解の一助になるように以下の内容を説明いたします。
- 就労継続支援A型B型の生産活動会計の見直しポイントがわかります
- 運営指導の時にリスクがある生産活動のスキーム事例がわかります
- 生産活動会計を適正にするために今できる対策がわかります
目次
【就労継続支援A型B型】生産活動会計のスキーム見直し!回避すべき注意点とは

令和7年10月20日の社会保障審議会部会にて「指定就労継続支援事業所の新規指定及び運営状況の把握・指導のためのガイドライン 」の原案が発表され、就労継続支援A型B型の生産活動会計が厳しく点検される方針が検討されています。
<生産活動会計が厳しく点検されることのリスク>
・A型は生産活動が赤字と見直しされると、基本報酬を決めるスコアの点数が大きく下がります(=基本報酬引き下げ)
・B型も生産活動の収入以外から工賃を払っていると、生産活動収入の範囲内で支給できる工賃額へと、基本報酬の単位設定が見直しされます(=基本報酬引きだげ)
就労継続支援A型B型生産活動会計が、今後厳しく点検されるリスクについてわかりました。
ただ今後、生産活動会計の仕組みづくりや定期的な見直しの際に、どのような点に注意すればよろしいでしょうか?
これから就ABの生産活動会計が、厳しくチェックされるということは、基本報酬単価引き下げのリスクが出てくるということです。
ただ新規ルールの付加というよりは、「これまでのルール内で適正に運営しているか否か」がポイントになるでしょう。
以下では生産活動会計の注意点と戦略をわかりやすく説明いたします。
注意:運営指導で指摘されるリスクが高いスキーム解説

「指定就労継続支援事業所の新規指定及び運営状況の把握・指導のためのガイドライン 」の原案にて、「複数の第三者的な取引先の確保」という視点が強調されていることから、就労継続支援A型B型の生産活動会計は「どこから、どのような取引で生産活動収入を上げているか」という観点を十分に説明できる必要があります。
<運営指導で指摘されるリスクのある事例>
・同代表の別会社からのみ仕事を受注している
・同一役員の関連会社からのみ仕事を受注している
・同法人ないの別事業部からのみ仕事を受注している
・請求書から確認できる仕事の単価が市場価格から著しく乖離している
・納品書から確認できる仕事量が非現実的である
・納品書から確認できる仕事内容が一般市場に存在していない
・仕事受注会社に対して相互的に多額の業務を発注している
上記のようなリスク有りの生産活動スキームは、直ちに否認されることはないと想定されます。
多少とも指導が厳しくなるスキームでも、根拠書類を十分に準備して丁寧な説明を行えば、適正と認められることもあるでしょう。
何よりもまず、「どこからどのような取引で生産活動収入を確保しているか」という観点への適切な説明が重要になります。
今できること:売り上げ根拠と単価の明確化

就労継続支援A型B型事業所は、「どこからどのような取引で生産活動収入を上げているか」という生産活動会計の説明責任を負うようになるので、売り上げ根拠と単価を、第三者からヒアリングされても答えられるように準備しておく必要があります。
| (項目) | (就労定着支援) |
| 業務委託契約書 | ・仕事内容が市場になるか ・単価が適正か ・単価に対する仕事量が現実的か ・自社の障害者が対応できる仕事内容と仕事量か |
| 納品書 | ・納品量がサービス提供記録の内容と一致しているか |
| 請求書 | ・請求単価が契約書並びにサービス提供記録の作業量と一致しているか ・可能なら相見積もり書を取っているか |
| 商談記録 | ・なぜその会社から仕事を受注することになったのか ・障害者への就労支援の意義はどこにあるのか |
| サービス担当者会議 | ・その仕事を行うことに対する障害者の意見はどうか |
| 営業記録 | ・他の会社から仕事を受注する努力をしているか |
| 作業記録 | ・納品書の量と矛盾していないか ・担当者会議の本人の意見と相違はないか |
| 外部企業ヒアリングシート | ・なぜ就労事業所に発注したのかの理由があるか ・一般企業への発注と比較したか ・作業発注の継続意思はあるか ・これまでの作業量と単価に対する見直しはあるか |
就労継続支援A型B型の生産活動会計の適正化のためには、運営指導の時に、その公平さと適切さを説明できる準備が必要です。
生産活動会計なので、契約書や請求書はもちろんのこと、日々の作業記録や支援計画資料との関連付けも忘れてはいけません。
その他にも、相手企業が応じてくれるか確実ではないですが、定期的にヒアリングシートを取って、「作業内容・単価・継続の意思」など確認すれば、更に有効でしょう。
まとめ

就労継続支援A型B型の生産活動の適正化対策について詳しく分かりました。ありがとうございます。
生産活動を適正にするためにスキームを見直し、丁寧に根拠書類を集めていきます。
就労継続支援A型B型の生産活動会計が黒字であるか否かは、基本報酬単価を決める重要なポイントです。
ただ、今後の運営指導の方針としては、生産活動会計が適切か否かが厳しくチェックされるでしょう。 事業所が生産活動の収入を、「どこの企業から、どのような契約で得ているか」という点に対して、十分に説明できるように書類等を準備しておきましょう。
生産活動会計を適正に見直し、自治体や利用者さんから信頼される組織を作ってください。
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