
★★★記事執筆者のご紹介★★★
この記事は障害福祉事業専門で、国家資格者である行政書士の戸根裕士が作成しております。多数の顧問先様との仕事から得られた、実務に役立つ注意点をまとめました。
戸根行政書士事務所のプロフィールはこちらですので、よろしければ弊社の支援方針や独自の強みなどご覧ください。


就労継続支援A型B型事業所を運営していますが、就労移行支援体制加算の不正を見聞きして、生産活動の売り上げや支出が適正か心配になっています。今後さらに、運営指導時に就労支援事業会計のチェックが厳しくなるとも聞きました。
そこでお尋ねしたいのですが、「就労支援の就労移行支援体制加算の算定をどのように見直せば良いか」、詳しく教えていただけますでしょうか?
「就労支援体制加算」は、簡単に言うと、「事業所が利用者を支援して(6ヶ月以上の)一般就労させたことに対する対価」です。
ただし加算額が大きく、就労という観点だけで見れば関連会社を使うなどすれば実現可能なことから、不適切と思われる運用もあるかもしれません。
この記事では事業者様の理解の一助になるように以下の内容を説明いたします。
- 就労継続支援A型B型の就労移行支援体制加算の見直しポイントがわかります
- 就労移行支援体制加算を適正に算定するための資料作りがわかります
- 就労支援の利用者のキャリアアップ規程を作成する重要性がわかります
目次
【令和8年報酬改定】就AB「就労移行支援体制加算」を適正に算定するポイントは?

令和8年度報酬改定により、就労継続支援A型B型で算定される「就労移行支援体制加算」のルールが変更され、複数回算定不可の厳密化と加算対象者数の上限が設定されることになりました。

<令和6年度新ルール:3年間の制限について>
・一度、就Aを経て加算算定対象者になれば、同じ就A事業所から再度3年間は加算算定の就労定着者にならない
・規制対象の3年間とは、6ヶ月勤続を達成した翌年度、つまり加算算定開始の4/1から3年間です
・例外的に、都道府県知事や市区町村が承認すれば3年以内であっても加算算定が可能になる
<令和8年度報酬改定の注意点>
・加算対象となる「就労定着者数」(6ヶ月の一般就労の実績者)は、前年の9月30日時点の定員数を上限とします。
・上記定員数以上の請求をすると、エラーコードが国保連→指定権者に送られ、詳細な調査対象になるのでお気をつけ下さい。
・過去3年間に繰り返して加算算定できないルールは、厳密に他事業所での算定も1回としてカウントします。
・過去3年間に繰り返して加算算定できないルールの例外は、「ハラスメントなどやむを得ない事情」と具体的に定義されました。
就労継続支援A型B型の「就労移行支援体制加算」の算定要件が、今後厳しくなることについてわかりました。
ただ今後、継続して「就労移行支援体制加算」を算定するには、どのような点に注意すればよろしいでしょうか?
今後も継続して就ABで「就労移行支援体制加算」を算定するには、要件の遵守だけでなく、加算制度の趣旨に沿った算定をすることが大切です。
多額の加算金を得るために「就労移行支援体制加算」を算定するのは、運営指導で大きなトラブルになり多額の返金リスクがあることにご注意ください。
以下では「就労移行支援体制加算」の適正な算定についてわかりやすく説明いたします。
注意:加算の趣旨に反した人工的なスキーム作りを止める

就AB「就労移行支援体制加算」の適正な算定のために、「本人の希望・能力・適性に応じて一般就労へつなげ、その後の定着まで見据えた継続的な支援体制があることを評価する」という点を遵守し、加算金を得るための人工的な就職斡旋や、利用者本人の希望を無視した誘因は避けるように致しましょう。
| (適正化のための書類) | (運用上の注意点) |
| アセスメント記録 | 本人の希望・能力・適性に応じた支援を行っている根拠です。 |
| 面談記録 | 一般就労に向けた本人の希望を書いてください |
| 個別支援計画 | 一般就労に向けた目標と現状の課題と支援内容を書いてください。 |
| モニタリング記録 | 一般就労に向けて達成度が高まっている様子を書いてください。 |
| 就労支援の実施記録 | 求人検索、企業見学、実習、面接練習、履歴書作成支援、企業との調整、職場開拓などの記録です。 |
| 関係機関連携記録 | 障害者就業・生活支援センター、ハローワーク、相談支援専門員、職業センター、企業担当者、ジョブコーチ等との連絡記録です。 |
「就労移行支援体制加算」を算定するには、単に一般就労した証拠と6ヶ月勤続した証拠だけでは不十分になってくるでしょう。
「就労移行支援体制加算」の算定のために、日々の支援の記録に基づき、どのような課題からスタートし、どのように改善され、結果、就職に至った筋道を明確にすることが大切です。
その筋道を明確にするために、特にモニタリング作業に力点を置いて一般就労のための成果が徐々に出てきた経過を明確にしましょう。
今、できること:利用者のキャリアアップ規程の作成

就AB「就労移行支援体制加算」の適正な算定のために、上記のように利用者の資質向上の明確化の書類づくりだけではなく、加えて(就A「賃金向上達成指導員配置加算の要件でもある)「利用者のキャリアアップ規程」の作成が有益になります。
<就労利用者の「キャリアアップ規程」とは>
就労利用者が、職務経験・訓練・教育訓練・資格取得・作業能力の向上等を通じて、より高い役割、作業内容、賃金、一般就労への可能性につながる仕組みを定める規程です。
<「キャリアアップ規程」のポイント>
・目的と対象者を明確にしてください
・キャリア段階を定めてください(以下に詳細に書きます)
・評価項目も具体化してください:勤怠の安定、作業速度、正確性、集中力、持続力、報連相、対人面、体調管理、通勤能力、指示理解、危険予知、資格取得、企業実習での評価など。
・昇給、昇格の仕組みも明確にしてください:半年ごとの評価で、一定基準を満たした場合に時給を見直す。新たな作業を安定して担当できる場合、職務等級を上げるなど。
| (番号) | (ステップ) | (ポイント) |
| 1 | 基礎取得段階 | 安定通所、基本的な作業手順、安全衛生、あいさつ、報告・連絡・相談を身につける段階。 |
| 2 | 自立作業段階 | 職員の声かけが少なくても、品質・納期・作業量を意識して作業できる段階。 |
| 3 | 応用役割拡大段階 | 複数作業への対応、後輩利用者への助言、段取り、検品、在庫管理、簡単なリーダー的役割を担う段階。 |
| 4 | 一般就労準備段階 | 企業実習、職場見学、ハローワーク登録、履歴書作成、面接練習、職場で必要な配慮整理を行う段階。 |
「就労移行支援体制加算」を算定するために、賃金向上達成指導員配置加算を算定していなくても「利用者キャリアアップ規程」を作成しておくことをお勧めいたします。
そして全利用者を対象に、そのキャリアアップ規程に基づき評価しておくことで、一般就労実現可能性が明確になります。
このキャリアアップ規程により一般就労可能段階になった後、一般就労して加算を算定すると適正な算定と見られる可能性が高くなるでしょう。
まとめ

就労継続支援A型B型の就労移行支援体制加算の適正化対策について詳しく分かりました。ありがとうございます。
加算を適正にするためにスキームを見直し、丁寧に根拠書類を集めていきます。
就労継続支援A型B型の「就労移行支援体制加算」は、加算額が大きく事業所運営を左右しかねない重要な加算です。
それ故に不適切な算定に走らないため、「本人の希望・能力・適性に応じて一般就労へつなげ、その後の定着まで見据えた継続的な支援体制があることを評価する」という理念に常に立ち返りましょう。 また誰が見ても加算を適切に算定していると思われるように、一般就労に向けて段階的な利用者支援の向上の道筋を明確にすることが大切です。
就労移行支援体制加算を適正に見直し、自治体や利用者さんから信頼される組織を作ってください。
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