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この記事は障害福祉事業専門で、国家資格者である行政書士の戸根裕士が作成しております。多数の顧問先様との仕事から得られた、実務に役立つ注意点をまとめました。
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障害者グループホーム(共同生活援助)を運営していますが、令和6年の障害福祉の報酬改定のことが気になります。基本報酬の設置の仕方と新しい「人員配置体制加算」が新設され、どう「特定従業者数換算方法」に対応したら良いかわかりません。
そこでお尋ねしたいのですが、令和6年の報酬改定で障害者グループホーム(共同生活援助)の「人員配置体制加算」と「特定従業者数換算方法」のことを、詳しく教えていただけますでしょうか?
令和6年度の報酬改定で障害者グループホーム(共同生活援助)の制度は大きく変わります。
もし令和6年度の報酬改定に適切に対応できないと、障害者グループホーム(共同生活援助)の経営にマイナス面の影響が出るかもしれません。
この記事では事業者様の理解の一助になるように以下の内容を説明いたします。
- 令和6年度報酬改定の「特定従業者数換算方法」の概要がわかります
- 令和6年度報酬改定で新設された「特定従業者数換算方法」の注意点がわかります
- 令和6年度報酬改定によるGHの収益増減の具体的なシミュレーションがわかります
目次
【令和6年】特定従業者数換算方法とは?計算方法から注意点まで徹底解説!
令和6年度の報酬改定により、障害者グループホーム(共同生活援助)の基本報酬は「6:1」の一択になり、基本報酬に加えて「人員配置体制加算」の算定は必須になりましたが、その「人員配置体制加算」の算定には「特定従業者数換算方法」による計算が必要になります。
<「人員配置体制加算」とは>
基準となる世話人・生活支援員の常勤換算数(小数点第二位切り上げ)に加えて、「特定従業者数換算方法」により12:1もしくは30:1で世話人や生活支援員を加配した場合に区分に応じて1日の基本報酬に追加して算定できます。
(区分) | 12:1(加算I) | 30:1(加算II) |
区分4以上 | 83単位/日 | 33単位/日 |
区分3以下 | 77単位/日 | 31単位/日 |
<「特定従業者数換算方法」とは>
事業所ごとの常勤時間の設定が何時間であれ、全て常勤=40時間で統一し、基準上必要な常勤換算数+加配で必要な常勤換算数を40でかけて、基準と加算の必要時間数を算定する計算法です。
(項目) | 1:常勤40hの場合 | 2:常勤32.5hの場合 |
世話人 = 6:1配置 | 常勤2 = 80h | 常勤2 = 65h |
生活支援員 = 6:1配置 | 常勤2 = 80h | 常勤2 = 65h |
加配職員 = 12:1配置 | 常勤1 = 40h | 常勤1 = 32.5h |
調整時間数 | なし | 37.5h |
<必要総時間数> | 200h | 200h |
※「特定従業者数換算方法」のポイント
これまで事業所により常勤時間の設定を短くすれば、同じ基準上の必要人員配置なのに配置時間を少なく(=人件費削減)できていましたが、「特定従業者数換算方法」を使えば(=「人員配置体制加算」の算定)、全て常勤時間の設定が40時間と見做され、そうした人件費削減のテクニックが使えなくなりました。
令和6年度の報酬改定の障害者グループホーム(共同生活援助)の「特定従業者数換算方法」についてわかりました。
ただ実際に「特定従業者数換算方法」を使用するために、どのようなポイントに注意し、どのようトラブル対策が有効か教えてもらえるでしょうか?
令和6年度の障害者グループホーム(共同生活援助)の制度変更のポイントは、従来は常勤換算数を低く設定した事業所とそれ以外の不公平さを無くす点にあります。
それ故に「特定従業者数換算方法」の注意点をよく守り、適正な計算方法でシフト管理を行うことが大切です。
以下では「特定従業者数換算方法」の計算の注意点と活用方法をわかりやすく説明いたします。
「特定従業者数換算方法」のルールと注意点について
令和6年度の報酬改定により、障害者グループホーム(共同生活援助)の経営は、基本報酬+「人員配置体制加算」が基本になりましたが、「特定従業者数換算方法」の計算方法は色々なルールがあるのでご注意ください。
<「特定従業者数換算方法」のルールと注意点>
・常勤職員が有給や欠勤を使った場合は常勤1と見做されません(=実労働時間数のみカウントされます)
・計算にあたって小数点第二位以下は切り捨てです(※四捨五入ではありません)
・労基法で要請される休憩時間は配置時間としてカウントできます(※6h以上の労働で45m以上の休憩)
「特定従業者数換算方法」で最も間違えやすいのは、有給や欠勤した常勤職員は常勤職員として扱われないことです(※通常は扱われます)。
常勤職員を自動的に常勤1とする管理方法をしている場合は早急に変更の対応が必要になります。
また「特定従業者数換算方法」では休憩時間もカウントできることも画期的で、管理方法時の見直しに役立てましょう。
注意:「特定従業者数換算方法」により人件費が増えます
令和6年度の報酬改定により新設された「人員配置体制加算」と「特定従業者数換算方法」を適用すれば、障害者グループホームの収益が微減にとどまりますが、その分人件費が増大するリスクがあるのでご注意ください。
(項目) | 令和6年度: 6:1配置/12:1加算 |
必要基準の世話人配置 | 常勤1.0 |
必要基準の生活支援員配置 | 常勤0.7 |
人員配置体制加算の人員配置 | 常勤0.5 |
合計時間数 | 常勤2.2 |
「特定従業者数換算方法」 | 88時間/週 |
1)常勤時間40時間/週の場合 | (1.0+0.7)*40[=68]+(88ー68)[=20時間加配] |
2)常勤時間35時間/週の場合 | (1.0+0.7)*35[=59.5]+(88ー59.5)[=28.5時間加配] |
3)常勤時間32.5時間/週の場合 | (1.0+0.7)*32[=54.4]+(88ー54.4)[=33.6時間加配] |
<令和6年度グループホームの人件費増加のポイント>
・常勤時間の設定が低い事業所ほど「人員配置体制加算」を算定するために人の配置が必要になります
・加配職員は常勤であっても欠勤があれば時間数に数えられません
・必要基準職員で常勤職員になり常勤1をそちらに回していれば加配職員になれないので増員が必要です
障害者グループホームの常勤時間を40時間に設定していたら変化はありませんが、常勤時間を35時間もしくは32.5時間に設定している事業所は人件費負担増を強いられます。
また常勤時間が32時間に近いほど少なければ「特定従業者数換算方法」を使うとスタッフの増員が必要になってきます。
「人員配置体制加算」を取得して収益減を避けるには人件費負担が上がる可能性があることにご注意ください。
障害者GH事業運営:ひとまず今できることとは?
令和6年度の報酬改定により障害者グループホーム(共同生活援助)は、「人員配置体制加算」を算定するために「特定従業者数換算方法」に合わせたシフト管理方法を見直すことが大切です。
<障害者グループホーム(共同生活援助)がひとまず、今できること>
・有給や欠勤を時間数としてカウントしない
・計算方法を小数点2位以下を切り捨てにする
・休憩時間を把握して配置時間としてカウントする
・人員の頭数を減らすには常勤時間40時間への設定を見直す
・加算取得のためにパート職員のシフトを増やす方向で調整する
現在の規模で障害者グループホーム(共同生活援助)を運営する計画だと、規模が大きければ大きいほど早急に事業計画へ報酬改定によるマイナスを反映させる必要があります。
闇雲に規模を拡大すると損をするケースもあるので、事業拡大には慎重な対処が必要です。
もしくはもはやグループホームでは収益を上げない方向だと、加算もそして夜間支援体制加算も設定せず区分が低い利用者を対象とする方向に変えるのも戦略です。
まとめ
令和6年度の報酬改定の障害者グループホーム(共同生活援助)の「特定従業者数換算方法」の仕組みについて詳しく分かりました。ありがとうございます。
令和6年度報酬改定に対応した組織づくりに早く着手したいと思います。
令和6年度の報酬改定で基本報酬による収益は、「人員配置体制加算」で補ってもマイナスになるので事業計画の修正が必要です。
常勤換算時間の設定を変更すれば、マイナス収益の一部を補填する人件費削除もできますが、労務的な負担が一時的にかかってくるでしょう。 拡大傾向のグループホーム事業者様は一層影響が大きいので、今後の事業展開を再考するのも大切です。
しっかりと令和6年度の障害者グループホーム(共同生活援助)の制度変更に順応して、自治体や利用者さんから信頼される組織を作ってください。
戸根行政書士事務所からのお知らせ
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