
★★★記事執筆者のご紹介★★★
この記事は障害福祉事業専門で、国家資格者である行政書士の戸根裕士が作成しております。多数の顧問先様との仕事から得られた、実務に役立つ注意点をまとめました。
戸根行政書士事務所のプロフィールはこちらですので、よろしければ弊社の支援方針や独自の強みなどご覧ください。

就労継続支援A型B型を運営していて、「就労移行支援体制加算」が大きな収益源の柱になっています。けれども、令和7年1月に発表されたQ&AVOL.7で、「就労移行支援体制加算」の算定に大きな影響が出てくると聞きました。
そこでお尋ねしたいのですが、令和7年1月以降、「就労移行支援体制加算」を算定する運用見直しや注意点があれば、教えていただけないでしょうか?
「就労移行支援体制加算」は就労継続支援A型B型の売り上げに貢献する大きな要素です。
ただし、令和6年の報酬改定により「同一利用者に対して3年間は複数回算定すること」が禁じられました。
この記事では事業者様の理解の一助になるように、以下の内容を説明いたします。
- 就労移行支援体制加算の3年間再取得禁止のルールがわかります
- 最新の厚生労働省のQ&AVOL.7の要点がわかります
- これからの就労移行支援体制加算の運用のポイントがわかります
目次
【最新】就労移行支援体制加算の運用、見直す必要があります!3年ルールの対応解説

令和6年度報酬改定により、就労継続支援A型B型で算定できる「就労移行支援体制加算」のルールが変更になりましたが(=同一利用者に対して3年間は複数回算定を禁止)、令和7年1月24日発表の「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.7」では、よりその詳細が明らかになりました。

<Q &AVOL.7の回答のポイント>
・実際のところ「同一の利用者について過去3年間において当該加算を複数回算定することの禁止」という留意事項で通達している内容の確認
・加算算定不可の事例を2つ提示
・指定権者に対する、事業所だけでなく利用者や関係機関からの聞き取りの要請
・支給決定機関に対する、不正請求の検討と指定権者との情報共有の要請
<Q &AVOL.7の回答の考察>
・留意事項に小さく記述した3年間の加算の複数回取得の禁止ルールを広く知らせる役割がある
・事例の提示により、「3年間の加算の複数回取得の禁止ルールは別法人にも適用されること」がわかった
・不正請求が疑われる事業所に対して指定権者が積極的に介入できるようになった
「就労移行支援体制加算」のルールの変更とQandAのポイントがわかりました。
しかし実際に、これから「就労移行支援体制加算」を運用していく上で、どのようなポイントに注意すればよろしいでしょうか?
まず大切なのはQ &AVOL.7の説明図から、どのような事態を厚生労働省が認めていないか正確に読み取ることが大切です。
そして「就労移行支援体制加算」の不正受給を疑われないよう、適正に請求していると証明できる体制作りが必要になってきます。
以下では「就労移行支援体制加算」の運用変更について、わかりやすく説明いたします。
「就労移行支援体制加算」の不正請求:厚生労働省がNGと言うパターンを理解する

令和7年1月24日発表の「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.7」では、「就労移行支援体制加算」の算定不可のパターンを2通り説明していて、大切なのは「(事例2)の他事業所間での算定ルールを理解すること」にあります。


<Q &AVOL.7の事例1のポイント>
・「同じ利用者に対して同じ事業所で3年以内は複数回算定できない」ということがわかる単純な図式です
<Q &AVOL.7の事例2のポイント>
・同法人の別事業所でも、一度「就労移行支援体制加算」を算定した利用者に対して、3年以内に複数回算定できないです
・別法人の別事業所であっても、一度「就労移行支援体制加算」を算定した利用者に対して、3年以内に複数回算定できないです(☜留意事項より明確化された大切なポイントです)
令和6年度の報酬改定で、留意事項通知にひっそりと記された3年間複数回NGルールが、図式により明示化されたことは大きいでしょう。
加えて留意事項通知には明文化されていなかった、「同法人別事業所又は別法人別事業所にも3年間禁止ルールが及ぶこと」がわかりました。
これにより複数事業所や複数法人を活用した「就労移行支援体制加算」の算定スキームが大きな制限がかかったことになります。
今できること:「就労移行支援体制加算」の不正請求を疑われない体制作り

令和7年1月24日発表の「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.7」により、「就労移行支援体制加算」の不正請求が疑われる余地がどの法人にも出てきたので、「就労移行支援体制加算」を算定している事業所はどこも疑惑を防ぐ体制作りが必須の課題になります。
※まずチェックポイント☞Q &AVOL.7に残る課題
・同一利用者に対して3年以内に複数回算定しかどうかを、指定権者が判断して不正を見つける仕組みに実効性が欠けています
・一年に一度の加算算定届出は氏名等しか書いていないので、別事業所で同時に加算取得しているか否かは分かりにくいです
・結果、実際に同一利用者の複数回算定を調べるには指定権者側の労力が多大になります
・つまり不正発見は、事業所内の内部告発や支給決定機関の情報共有によるところが大きくなります
<「就労移行支援体制加算」の不正請求を疑われない体制作り>
・新規利用者の履歴書に「一般就労した過去」があれば、以前に通所していた事業所に照会する必要があります
・ホームページや資料に、関連会社に就職してステップアップできる等、不正請求が疑われる記述は避けましょう
・毎年、不自然なほど大量の就職者を出している場合は、その根拠が説明できるようにしましょう
「就労移行支援体制加算」の3年間複数回の取得禁止のルールを知らないと、たとえ不正の意図がなかったとしても不正請求を疑われてしまう事態になりました。
実際に就職させる程の実力がある事業所と、人工的に就職させて加算を狙う事業所の境界線をしっかり引くことが、事業所側に求められております。
事業所内部の体制管理や広報の方法など、再検討することが重要です。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
より細かく、慎重に、「就労移行支援体制加算」の不正請求を疑われない体制作りが可能ですが、
ご興味ある方は、弊社の顧問契約をご検討ください。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
まとめ

就労継続支援A型B型の「就労移行支援体制加算」の新しいルールについて詳しく分かりました。ありがとうございます。
「就労移行支援体制加算」の不正請求を疑われないよう対策を立てたいと思います。
令和6年の報酬改定では、「就労移行支援体制加算」を同一利用者に対して、3年間に限って複数回算定できない仕組みになりました。
令和7年1月発表のQ &AVOL.7では、3年間複数回ルールの禁止が、同法人の別事業所ばかりでなく、別法人別事業所まで及ぶことが明示されました。 それにより「就労移行支援体制加算」の不正請求が疑われないよう、事業所側で努力しないと、最悪の場合、多額の返金が求められる事態になってしまいます。
ルールを守って適切に「就労移行支援体制加算」を算定することで、自治体や利用者さんから信頼される組織を作ってください。
戸根行政書士事務所からのお知らせ
<常勤換算について>
・【必読】常勤換算の計算総まとめ!減算にならないためのポイント
・【基本】常勤換算について徹底解説!計算方法/注意点/よくある質問まで
・【必見】利用者数の計算の仕方のポイント!人員配置の注意点まとめ
・【まとめ】グループホームの人員配置の計算とは?初歩から注意点まで解説
・【必見】サービス管理責任者の兼務を徹底解説!間違えやすい点も説明
<減算について>
・【基本】人員欠如の減算とは?計算方法や注意点も解説
・【詳解】人員欠如の減算:基準や緊急対応・防止策をご説明
・【詳解】サービス管理責任者欠如減算と個別支援計画未作成減算とは?
<事業所管理の健全化に努める>
・【注意】利用者紹介のために紹介料を払う?利益供与の問題点と対策
・【基本】土曜日開業の注意点とは?人員配置等の問題を解説
・【必読】常勤換算の計算総まとめ!減算にならないためのポイント
・【必見】サービス管理責任者の兼務を徹底解説!間違えやすい点も説明
・【必見】就労支援事業会計とは?会計区分や按分処理のポイント解説
・【注意】就労支援事業の積立金とは?余剰金を発生させない会計処理
・【注意】サービス管理責任者の更新研修の条件とは?
・【基本】サービス管理責任者の実務経験おすすめルートとは?
・【基本】「一体型」と「多機能型」の違いとは?事業拡大のチャンス!
・【大注目】令和5年サービス管理責任者の実務経験が6ヶ月に変更!
・【大注目】令和5年サービス管理責任者不在の猶予期間が2年に!
・【注意】利用者の契約終了の注意点とは?解雇や助成金の関係解説
<工賃上昇のための体制づくり>
・【高収入】施設外就労支援の注意点とは?基本から間違えやすいミスまで説明
・【推奨】就労移行連携加算とは?オススメ活用事例あり
・【注目】就労移行支援体制加算とは?オススメ活用事例あり
・【注目】就労継続支援事業所に計画相談支援事業所を併設して収益アップ!
<工賃支払いを適正に管理する>
・【基本】就労継続支援B型:工賃支払いの注意点は?月ごとの手続き解説
<現状に応じた適切な事業所体制を作る>
・【基本】平均工賃月額の計算の仕方は?解説と注意点とは
・【重度】「重度者支援体制加算」とは?よくある間違いも解説
<工賃支払以外の参加・共感型の新体制を目指す>
・【令和3年】ピアサポート体制・実施加算とは?オススメ活用事例あり
・【令和3年】地域協働加算とは?オススメ活用事例あり
<スコア表についての解説>
・【基本】スコア表(I)の解説!「労働時間」の要件と根拠資料は?
・【基本】スコア表(II)の解説!「生産活動」の要件と根拠資料は?
・【基本】スコア表(III)の解説!「多様な働き方」の要件と根拠資料は?
・【基本】スコア表(IV)の解説!「支援力の向上」の要件と根拠資料は?
・【基本】スコア表(V)の解説!「地域連携活動」の要件と根拠資料は?
・【注意】自己評価未公表減算」とは?公表時の注意点を解説
・【令和6年度】スコアの得点維持と生産活動会計のポイント解説
<処遇改善加算を適正に取得する>
・【基本】福祉・介護職員処遇改善加算とは?条件・注意点を解説
・【基本】福祉・介護職員「特定」処遇改善加算とは?条件・注意点を解説
・【注意】処遇改善加算・特定処遇改善加算の対象職種とは?注意点も徹底解説
・【注意】処遇改善キャリアパス要件を満たすとは?記述例・失敗例あり
・【基本】賃金改善の方法をわかりやすく解説:トラブル防止の注意点もあり
<事業所管理の健全化に努める>
・【注意】利用者紹介のために紹介料を払う?利益供与の問題と対策
・【基本】土曜日開業の注意点とは?人員配置等の問題を解説
・【必読】常勤換算の計算総まとめ!減算にならないためのポイント
・【必見】サービス管理責任者の兼務を徹底解説!間違えやすい点も説明
・【義務化】虐待防止委員会とは?運営規程の書き方から記録書類まで解説
・【義務化】身体拘束適正化委員会と「身体拘束廃止未実施減算」とは
・【最新】就労継続支援A型から就労継続支援B型に移行する際の注意点とは
・【最新】一般就労をしながら就労継続支援A型B型を利用できる条件について
・【最新】一般就労をしながら就労継続支援A型B型を経ても「就労移行支援体制加算」を取る!
<ここが知りたい!実地指導対策:就労継続支援A型編>
・実地指導、ここがチェックされる①!間違えやすいポイント解説
・実地指導、ここがチェックされる②!間違えやすいポイント解説
<ここが知りたい!実地指導対策:就労継続支援B型編>
・実地指導、ここがチェックされる①!間違えやすいポイント解説
<年度ごとの義務化への対応>
・【令和3年度】障害福祉のハラスメント防止の対策とは?運営規程の変更案
・【令和4年度】虐待防止委員会とは?運営規程の書き方から記録書類まで解説
・【令和5年度】身体拘束適正化委員会と「身体拘束廃止未実施減算」とは
・【令和6年度】感染対策委員会とは?運営規定の書き方から記録書類まで
・【令和6年度】業務継続計画(BCP)とは?書き方から研修・訓練実施方法まで
・【令和6年度】社会保険適用拡大と就労継続支援A型の今後の戦略とは
・【令和6年度】就労移行支援体制加算の複数回算定の規制について

