★★★記事執筆者のご紹介★★★
この記事は障害福祉事業専門で、国家資格者である行政書士の戸根裕士が作成しております。多数の顧問先様との仕事から得られた、実務に役立つ注意点をまとめました。
戸根行政書士事務所のプロフィールはこちらですので、よろしければ弊社の支援方針や独自の強みなどご覧ください。
就労継続支援A型事業所を運営していますが、一般就労をしながら同時に通所できると聞きました。けれども一般就労しながら就労継続支援A型B型の支給決定を受けて、更に「就労移行支援体制加算」を取る条件が複雑でよく分かりません。
そこでお尋ねしたいのですが、副業の就労継続支援でも「就労移行支援体制加算」を取得できる条件や事例について、詳しく教えていただけますでしょうか?
令和6年度の報酬改定により、就労継続支援A型B型の支援を受けながら一般就労できる可能性が広がりました。
ただし新しいルールなので、市区町村担当者も知っていないこともあり、またローカルルールも多く難しいのが現状です。
この記事では事業者様の理解の一助になるように、以下の内容を説明いたします。
- 一般就労をしながら就労継続支援A型B型に通所できる条件がわかります
- 上記の例外的な受給決定でも「就労移行支援体制加算」を取れる条件がわかります
- 上記の例外的な加算取得の注意点がわかります
目次
【R6】副業の就労継続支援ABで「就労移行支援体制加算」を算定する注意点とは?
令和6年度の報酬改定より、障害者が一般就労をしながら同時に、就労継続支援A型B型のサービス利用を受け、A型B型の利用者になる可能性(以下のパターン1〜3)が広がり、それぞれに「就労移行支援体制加算」を算定することができます。
<パターン1:労働時間延長支援型>
目的:労働時間を延長する目的で、円滑に一般就労に移行するために情報共有や生活相談を行う
条件1:週10時間以上20時間未満から段階的に労働時間を上げる
条件2:以前から就労継続支援を利用していた
条件3:企業が就労継続支援の利用を認める
条件4:市町村が労働時間延長のために利用が必要と認める
条件5:利用期間が原則3〜6ヶ月(最長で1年間)
<パターン2:復職支援型>
目的:復職に必要な生活リズムの確立、体力の回復や就労施設との連携を行う
条件1:企業や医療機関による復職支援では復職が困難であること
条件2:本人が希望し、主治医が復職のために就労継続支援のサービスを必要とすると認める
条件3:市町村が復職のために就労継続支援を利用することが効果的と認める
条件4:利用期間が企業の定める休職期間の終了まで(最長で2年間)
<パターン3:就労継続支援短時間型>
目的:週10時間未満の一般就労をする障害者の就労環境が安定するための支援
条件1:週10時間未満の非常勤労働者(※フリーランスや個人事業主も対象になる可能性があります)
条件2:企業が就労継続支援の利用を認める
条件3:市町村が就労継続支援の利用が必要と認める
条件4:利用期間の定めはない
(加算名) | (条件1) | (条件2) | (備考1) | (備考2) |
就労移行支援体制加算 | 就労継続支援を経て一般就労 | 一般就労してから半年間の勤続実績が必要 | 一般就労して後に退職しても1ヶ月以内に復職すれば勤続していたものとみなします | 加算対象の一般就労は労働形態を問いません(パートでも可) |
※パターン1〜3の副業型の就労継続支援と「就労移行支援体制加算」の注意点
一般就労してから「6ヶ月間」という期間の数え方が異なります。つまり当該の障害者は既に一般就職しているので、いつから「6ヶ月間」をカウントするのかという基準が異なることになります。
一般就労をしながら、同時に就労継続支援サービスを受けられる概要と「就労移行支援体制加算」についてわかりました。
3パターンもありそれぞれ特徴的ですが、一般就労と就労継続支援を同時にして「就労移行支援体制加算」を算定する場合、どのような点に注意して活用すればよろしいでしょうか?
副業型の就労継続支援A型B型で「就労移行支援体制加算」を算定する場合、いつから「6ヶ月」の就労定着を数えるのかという起点の判断がです。
上記のパターン1〜3ごとに「就労移行支援体制加算」の算定根拠となる就労定着の開始点は異なるので注意が必要です。
以下では一般就労と同時に就労継続支援を行う場合の注意点や「就労移行支援体制加算」活用方法をわかりやすく説明いたします。
注意点:算定要件「6ヶ月の就労定着実績」がいつの時点から開始するか
令和6年度の報酬改定により、例外的に、一般就労をしながら就労継続支援A型B型に通うことが出来るようになりましたが、「就労移行支援体制加算」を算定するには、その算定要件となる「6ヶ月の就労定着実績」をパターンごとに正確に把握することが大切になります。
<パターン1:労働時間延長支援型の必要書類>
・「6ヶ月の就労定着実績」の開始時点は、就労継続支援A型のサービス提供を終了した翌日から開始いたします(R6.12.31.就A終わり→R7.6.30.で半年→R8.4.1.より加算算定)。
・就労継続支援A型のサービス提供後に離職しても1ヶ月以内に再就職すれば「6ヶ月の就労定着実績」のカウントは途切れません。
<パターン2:復職支援型の必要書類>
・「6ヶ月の就労定着実績」の開始時点は、企業に復職した日を1日目として開始いたします(R6.10.31.復職→R7.3.31.で半年→R7.4.1.より加算算定)。
・就労継続支援A型のサービス提供後に離職しても1ヶ月以内に再就職すれば「6ヶ月の就労定着実績」のカウントは途切れません。
<パターン3:就労継続支援短時間型の必要書類>
・そもそも就労条件は変化しないので「就労移行支援体制加算」の対象になりません。
一般就労と同時に就労継続支援A型B型を利用する場合、パターン1と2では「就労移行支援体制加算」の算定タイミングの違いを理解する必要があります。
またパターン3では、現在並行して勤務している企業では「就労移行支援体制加算」の対象にならないのでご注意ください。
更に「6ヶ月の就労定着実績」の開始時点によって、加算算定が開始する年度が異なることに気をつけましょう。
今できること:活用事例を知って手続きの事前準備を!
一般就労をしながら、同時に就労継続支援A型B型を利用する場合は、更に「就労移行支援体制加算」を目指そうとすると、事前からパターン1(労働時間延長支援型)とパターン2(復職型)の特性を理解して、準備を行うことが大切です。
<パターン1:「労働時間延長支援型」の就労準備>
・週10時間以上の障害者の雇用は法定雇用率に算定できるので、定着と安定を目指す
・就労継続支援事業所は労働時間の延長のために何ができるか、勤務先やご本人と相談します
・日常を安定させる生活相談援助を行うことが多いです
・場合によっては訪問看護事業所と連携いたします
<パターン2:「復職支援型」の就労準備>
・本人の特技ややりがいを感じる仕事に少しでもついてもらいます
・就労継続支援事業所はご本人の能力や可能性について把握します
・必要なスキルアップのための職業訓練を行うことが多いです
・場合によっては訪問看護事業所と連携いたします
障害者雇用の経験が少ない中小企業においては、パターン1の「労働時間延長支援型」を活用して、就労継続支援事業所の助言と支援があると安心できます。
またパターン2の「復職支援型」も休職の理由と、障害との関係をしっかり把握して本人の支援をすれば、比較的、職場への復帰は可能性が高いです。
いずれにせよ本人の就労への意欲と疾患のコントロールが重要になるので、本人を支える支援者間の連携が大切です。
まとめ
令和6年度からの、一般就労をしながら同時に就労継続支援A型B型を利用する方法について詳しく分かりました。ありがとうございます。
「就労移行支援体制加算」の算定を視野に入れて、本人の希望の実現のために出来ることを再検討いたします。
一般就労しながら就労継続支援A型B型が利用できることは、障害者の社会参加の可能性を広げまし、事業所にとっても「就労移行支援体制加算」を算定するチャンスが生まれます。
そのために本人の就労意欲を高める支援を心がけて、安心して就労に戻れる環境づくりをいたしましょう。 またパターンごとに、「就労移行支援体制加算」の算定要件となる「6ヶ月の就労定着実績」の開始時点を理解することも大切です。
一般就労をしながら就労継続支援A型B型を利用できる可能性を広げて、自治体や利用者さんから信頼される組織を作ってください。
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