障がい者グループホームを運営していますが、利用者さんが今後長期的に帰宅することになりそうなので、「長期帰宅時支援加算」の取得を検討しています。ただ「長期帰宅時支援加算」の取得要件もはっきりせず、請求時に間違えてしまわないか不安です。
そこで共同生活援助、グループホームの「長期帰宅時支援加算」について取得条件から活用方法まで詳しく教えていただけますでしょうか?
障がい者グループホームの「長期帰宅時支援加算」は、長期間に渡って帰宅する利用者さんの、追加の支援や連絡調整の手間を支援いたします。
ただ「長期帰宅時支援加算」の請求は特に日数計算が間違えやすく、本体報酬の算定と混同していると実地指導の時にトラブルになります。
この記事では事業者様の理解の一助になるように以下の内容を説明いたします。
- 「長期帰宅時支援加算」の取得条件がわかります
- 「長期帰宅時支援加算」の間違えやすいポイントがわかります
- 「長期帰宅時支援加算」の活用方法がわかります
目次
「長期帰宅時支援加算」とは?取得条件や間違えやすいポイントを解説
障害福祉事業の障がい者グループホームでは、利用者の帰宅期間が3日以上の「家族等への」帰省に伴って、家族等と連絡調整を行ったり、交通手段の確保を行ったりした場合に「長期帰宅時支援加算」を取得することができます(※3ヶ月間のみ)。
(グループホームの種類) | (単位) |
介護サービス包括型 | 40単位/日 |
日中サービス型 | 50単位/日 |
外部サービス利用型 | 25単位/日 |
<「長期帰宅時支援加算」の請求時の注意点>
・体験利用をしている場合で、生活訓練と同一敷地内のGH利用者はできません
・帰宅時に基本報酬単位の請求を行うことはできません
・初日と帰宅日は基本報酬単位の請求ができます
・友人宅への宿泊は加算対象になりません
障がい者グループホームの「長期帰宅時支援加算」について理解いたしました。
ただ「長期帰宅時支援加算」は一見すると取得が簡単そうに見えますが、どのようなポイントに注意をすれば実地指導の時にトラブル回避できますか?
障がい者グループホームの「長期帰宅時支援加算」では取得条件に細かい条件が少ないです。
しかし「長期帰宅時支援加算」は実地指導でトラブルになることも少なくなく、また「帰宅時支援加算」とどちらを取れば良いのか分かりにくいです。
以下では「帰宅時支援加算」の取得時の注意点についてわかりやすく説明いたします。
注意点1:記録書類を保存しておく
障がい者グループホームで「長期帰宅時支援加算」を取得する際は、相談/連絡調整した内容がわかるように、また帰省日数が明確になるような記録整備をいたしましょう。
<帰宅時支援の記録に記載するポイント>
・個別支援計画に帰宅の必要性と支援内容を記しておく
・家族への連絡内容や日常生活における注意点、また緊急時の連絡先を伝えておく
・定期的に家族から帰宅時の様子を伺い、今後の支援計画に活かす
・グループホームから帰省先への交通手段の行き帰りを確保し、できれば交通案内をプリントして渡す
・何日にグループホームを出て、何日に帰ってきたのかを記す
「長期帰宅時支援加算」を算定するにあたって、日常的に記しているサービス提供記録でその根拠資料にしてしまう間違いが多いです。
「帰宅時支援加算」はあくまでも連絡調整や交通手段の確保をする必要があり、その内容が記録されていないといけません。
特にご家族が事前に知らない場合もあり、前もって計画を立てて家族への説明もしっかりと行いましょう。
注意点2:帰宅期間を正確に数える
障がい者グループホームで「長期帰宅時支援加算」を算定して請求する期間、外泊の初日と最終日を除く外泊期間が2日を超える日数を算定することができます。
<帰宅期間を数える注意点について>
・継続して外泊している者は、外泊した初日から起算して3ヶ月間のみ算定できる(=1回の外泊で月をまたぐ場合、加算を算定し始まる月を含め3ヶ月間)
・3ヶ月間を算定してGHに戻ってきても、再度「長期帰宅時支援加算」は利用できる
・1回の外泊で月をまたぐ場合、2ヶ月目以降の月の2日目までは算定できない
(パターン) | 27日 | 28日 | 29日 | 30日 | 1 日 | 2日 | 3日 | 4日 | 5日 |
1 | GH出 | × | × | ○ | GH帰 | - | - | - | - |
2 | GH出 | × | × | ○ | × | × | ○ | ○ | GH帰 |
「長期帰宅時支援加算」の取得のよくある間違いは、3ヶ月間の算定期間の計算についてです。
帰宅したその日から3ヶ月分の日数を数えた日までではなく、帰宅した日の属する月から、その月を含めて3ヶ月しか算定できません。
つまり月の下旬に帰宅した場合、3ヶ月フルで「長期帰宅時支援加算」を算定できるわけではないので注意いたしましょう。
注意点3:「帰宅時支援加算」との関係の理解
障がい者グループホームで「長期帰宅時支援加算」を算定する場合、別で「帰宅時支援加算」を算定していると同時に「長期帰宅時支援加算」も算定することはできません。
<「帰宅時支援加算」との関係の注意点>
・「帰宅時支援加算」を算定する月には、「長期帰宅時支援加算」は算定できない
・最初の1ヶ月目で「帰宅時支援加算」を算定した場合、1回の外泊における2ヶ月目以降は「長期帰宅時支援加算」は算定することができる
<「長期帰宅時支援加算」 or 「帰宅時支援加算」?>
「帰宅時支援加算」の単位(7日以上:374単位)を考えると、介護サービス包括型では10日以上(40単位 × 10日 > 374単位)、日中サービス支援型では8日以上(50単位 × 8日 > 374単位)の期間に帰宅していれば「長期帰宅時支援加算」の方が収益があがります。
計画的な帰宅でない限り、「帰宅時支援加算」を取得した流れで「長期帰宅時支援加算」を取得することは、よくあります。
ただし「帰宅時支援加算」の記録の中で、長期的な帰宅時支援が必要であり、かつ可能である理由を明記しておいてください。
他にも「長期帰宅時支援加算」は「長期入院時支援加算」と同一日の算定をすることはできません。
「長期帰宅時支援加算」の活用方法とは
障がい者グループホームの「長期帰宅時支援加算」は、一時的に帰省した利用者が、再度グループホームの支援を受けやすいよう準備する手間の報酬を付与するものであり、加算を算定して収益安定や改善する性質ではありません。
<「長期帰宅時支援加算」の活用例>
・グループホームに戻る気がない方にも継続的に支援する
・精神不安定な時期に家族と共にいて体調の安定を目指す
・グループホームの近所の建て替えなど騒音が煩くて気になるから離す
・長期的な休暇を設定して孤独感を減らす
<長期の帰宅時の注意点について>
・長期帰宅者の代わりに別の利用者を入れない
・長期帰宅者の荷物/私物等を勝手に動かさない
・長期帰宅者に代理受領通知書は渡す
・受給者証の期限を逸しないようにする
・個別支援計画は更新する
「長期帰宅時支援加算」の報酬単位は介護サービス包括型ですと、1日約400円、月に1万2千円程度になり通常の支援と大きな差があります。
だからと言って「長期帰宅時支援加算」の対象者をグループホームから退所させてはならず、活用意味は、最長でも3ヶ月の後の必要な支援を見据えて継続的にサポートいたしましょう
グループホームのスケジュールや利用者さんの状態を見て、長期的に帰宅させる必要がある場合に活用いたしましょう。
まとめ
障がい者グループホームに適用される「長期帰宅時支援加算」について詳しく分かりました。ありがとうございます。
きちんと個別支援計画の中で帰宅時の支援の計画を立ててから、必要な書類を残し、日数計算も間違えず加算の請求をしたいと思います。
「長期帰宅時支援加算」はやむをえず帰宅が必要な利用者さんがいれば、帰宅日数に応じて算定いたしましょう。
「長期帰宅時支援加算」は利用者さんがグループホームに戻ってきても継続的に支援するための準備の費用にあたります。特にグループホームの受給者証の更新の期限にはお気をつけください。
利用者さんの生活援助を継続するために追加で負担になる業務とその人件費を加算を取得して埋め合わせ、ぜひ継続して利用してもらえるグループホームの体制を作ってください。
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