★★★記事執筆者のご紹介★★★
この記事は障害福祉事業専門で、国家資格者である行政書士の戸根裕士が作成しております。多数の顧問先様との仕事から得られた、実務に役立つ注意点をまとめました。
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事業所ごとの常勤時間の設定に関して、原則は32時間以上ですが、特例を使えば30時間以上に短縮できると聞きました。ただその30時間以上になる特例の詳細が分からず心配です。
そこでお尋ねしたいのですが、令和6年から常勤時間の設定を30時間以上に短縮するルールが、どのようになっているか詳しく教えていただけますでしょうか?
事業所ごとに前年度平均に基づき必要なスタッフ数を配置しないといけないので、その配置の根拠となる常勤換算計算と常勤換算設定は運営でとても大切です。
一般的には常勤時間は短い方が有利ですが、30時間に短縮するためには特別な根拠資料も揃えないといけません。
この記事では事業者様の理解の一助になるように以下の内容を説明いたします。
- 令和6年度からの常勤換算を30時間以上にする新ルールがわかります
- 常勤時間を30時間以上にするための根拠書類がわかります
- 常勤時間を30時間以上にするデメリットやデメリットがわかります
目次
【R6障害福祉】常勤換算を30時間以上にする設定とは?条件とメリット等を解説
障害福祉事業を経営するために理解必須な「常勤換算方法」ですが、普通は32時間以上の設定が必要ですが、特別な場合に限りその下限が短縮され30時間以上の設定でも可能になります。
<なぜ「常勤換算方法」を知る必要があるのか>
前年度平均利用者数に対して、当該年度に置くべき職員配置を検討するために「常勤換算方法」は必須です。 もし置くべき職員配置を見誤って欠如している状態であれば、売上を減らされてしまいます(=減算)。
(常勤時間の設定の種類) | (必要な人員配置の常勤換算数)※前年度15人/6:1配置 | (必要な週勤務時間) |
40時間 | 2.5 | 100時間 |
35時間 | 2.5 | 87.5時間 |
32.5時間 | 2.5 | 81.25時間 |
<常勤時間を「30時間以上」にできる特例について>
パターン1:妊娠中、出産後1年以内の女性労働者
パターン2:育児や介護に伴う短時間勤務の労働者
パターン3:治療のために通院や療養が必要な労働者(R6new!)
令和6年度の「常勤換算方法」のための常勤時間設定ルールの概要についてわかりました。
常勤時間を30時間程度に設定した方が有利な場合もあると思いますが、どのような点に注意して、常勤時間の特例を活用すればよろしいでしょうか?
常勤時間の設定は、月から金曜の5連勤を前提にするので、5で割れる数字を使う場合が多いです。
特例で30時間にすれば1日6時間となり、人件費も削減できますが、運用のための資料を揃えないといけません。
以下では令和6年度以降の、「常勤時間を30時間にするルール」の注意点と戦略をわかりやすく説明いたします。
常勤時間を30時間にする根拠資料とは
障害福祉事業で常勤時間を「30時間以上」という枠で短縮するには、対象労働者と協議して労務関係の書類を適切に保存しておく必要があります。
<パターン1:妊娠中、出産後1年以内の女性労働者>
・労働条件の緩和や休憩方法や作業内容について、主治医や助産師からの指導がわかる書類
☝︎「母性健康管理指導事項連絡カード」を使用すると確実です
・会社に対して、主治医等から行われた指導を伝える書面
<パターン2:育児や介護に伴う短時間勤務の労働者>
・出生証明書や、要介護2以上を証明する医師の診断書
・会社に対して、育児や介護による短時間勤務の希望を伝える書面
<パターン3:治療のために通院や療養が必要な労働者>
・治療のために労働配慮が必要なことを指示した医師の診断書
・会社に対して、通院等による短時間勤務の希望を伝える書面
☝︎「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」の様式を使用すると確実です
常勤時間を30時間以上に短縮する特例を使用するには、口頭による申し出だけではなく、その根拠となる医師の診断書等をしっかり集めることが大切です。
また具体的な短縮措置について、労働者にもわかりやすいように、事前に就業規則に整理しておくと無難です。
就業規則で定める内容によっては地域の自治体の助成金等もあるので活用してみましょう。
常勤時間を30時間以上にするメリットやデメリットについて
障害福祉事業の運営に欠かせない常勤換算方法について、事業所ごとの常勤時間を30時間以上に短縮すれば良いこともある反面、事業所運営に支障をきたすデメリットもあると理解しておくことが大切です。
<常勤時間を「30時間以上」に短縮するメリット>
・新しいサビ管や児発管を探す必要がなくなります
・離職リスクを下げられ職場環境をよく保つことができます
・場合によっては人件費の削減ができます
<常勤時間を「30時間以上」に短縮するメリット>
・短縮して労働量が減った分、他の労働者の仕事が増える可能性があります
・配置が欲しい時に対象者を置けない不自由さがあります
・場合によっては労務手続きの負担が増えます
突き詰めれば常勤時間を「30時間以上」に短縮することは、職場環境を良くして定着率を高めることに役に立ちます。
サビ管や児発管のように、常勤配置が必須で替が効かない職種は、積極的に活用していきましょう。
また比較的若年のフタッフが多い児発放デイでは、スタッフが自分のキャリアを考える上でも安心材料になります。
まとめ
常勤換算方法における「常勤時間を30時間以上に短縮する新ルール」について詳しく分かりました。ありがとうございます。
常勤時間を30時間にしても運営できる仕組みづくりと事業拡大の戦略を再検討いたします。
常勤時間を30時間以上に短縮することは、会社の収支に直接影響することは少ないです。
就業規則を整理して、短時間労働でも働きやすい体制をつくれば、職場定着率が上がり経営は安定します(=人材紹介への手数料が減ります)。 そのために常勤時間の30時間特例を適用するには、医師の診断書等を揃えておく必要があるのでご注意ください。
育児や介護で短時間労働を余儀なくされる職員にも配慮した規則を整え、自治体や利用者さんから信頼される組織を作ってください。
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