★★★記事執筆者のご紹介★★★
この記事は障害福祉事業専門で、国家資格者である行政書士の戸根裕士が作成しております。多数の顧問先様との仕事から得られた、実務に役立つ注意点をまとめました。
戸根行政書士事務所のプロフィールはこちらですので、よろしければ弊社の支援方針や独自の強みなどご覧ください。
障害福祉事業を運営していて、処遇改善加算のために「福祉専門職員配置等加算」を算定しています。けれども職種兼務の職員がいる場合、「福祉専門職員配置等加算」を算定できるか複雑でよく分かりません。
そこでお尋ねしたいのですが、複数の職務兼務の職員がいても「福祉専門職員配置等加算」を算定できるか、詳しく教えていただけますでしょうか?
「福祉専門職員配置等加算」は、福祉専門の職員配置を評価することに加えて、上位の処遇改善加算を算定するためにも役立ちます。
ただし人手不足で複数の職種を兼務することが多い昨今、「福祉専門職員配置等加算」の算定間違いも多いです。
この記事では事業者様の理解の一助になるように、以下の内容を説明いたします。
- 「福祉専門職員配置等加算」の算定要件の概要がわかります
- 複数職務の兼務や多機能型の「福祉専門職員配置等加算」の算定要件がわかります
- 「福祉専門職員配置等加算」に関する間違えやすい箇所がわかります
目次
【注意】福祉専門職員配置等加算の要件は?職員の兼務や多機能型の注意点を解説
障害福祉事業は福祉の専門的な職員を一定条件で配置することで「福祉専門職員配置等加算」を算定することができますが、多機能型の事業所や該当職員が他職種と兼務する場合は注意が必要です。
(加算名) | (単位) | (条件) |
福祉専門職員配置等加算 I | 15単位/日 (GHは10単位/日) | 指定基準の直接支援に関する全常勤職員(※2)の中の「有資格者(※1)の割合」が35%以上(頭数) |
福祉専門職員配置等加算 II | 10単位/日 (GHは7単位/日) | 指定基準の直接支援に関する全常勤職員の中の「有資格者の割合」が20%以上(頭数) |
福祉専門職員配置等加算 III | 6単位/日 (GHは4単位/日) | 1:指定基準の直接支援に関する常勤・非常勤全職員の中で、「常勤職員の割合」が75%以上(常勤換算) 2:指定基準の直接支援に関する常勤職員の中で、「勤続年数3年以上(※3)の常勤職員」が30%以上(頭数) |
※2 「常勤職員」とは正規非正規雇用の別は関係なく、「常勤時間配置されているか」で判断します
※3 「3年以上」には「同法人内の別の福祉事業」や「非常勤だった勤務期間」も算入いたします。直接支援の期間のみで、合併や事業継承があっても算入できます。ただしグループ法人は認められません(厚生労働省 平成 21 年度障害福祉サービス報酬改定に係るQ&A(VOL.3)問1−2より)。また育児休職期間も3年間の期間に算入できます(厚生労働省 平成 21 年度障害福祉サービス報酬改定に係るQ&A(VOL.1)問1ー7ー2)
<「福祉専門職員配置等加算」のサービス別の注意点>
・令和6年度より「生活介護」はIかIIを算定していてもIIIを同時に取ることができます。
・「就労継続支援A型B型」と「就労移行」は、有資格者に「作業療法士」を含めます。
・「児発」と「放デイ」は有資格者に保育士を含みません。
・「児発」と「放デイ」はI又はIIの「直接支援員」として児童指導員のみが該当します
※「福祉専門職員配置等加算」の多機能型の特別ルール
・多機能型全サービスの直接処遇職員数を合わせて要件を計算します(=配置割合は事業所全体で判断します:厚生労働省平成 21 年度障害福祉サービス報酬改定に係るQ&A(VOL.2)問1)
・加算要件を満たせば、多機能型全サービスの利用者に算定できます
障害福祉事業の「福祉専門職員配置等加算」のパターン毎の概要についてわかりました。
しかし実際の事業所の現場では職員が複数の職務を兼務することも多いのですが、職員兼務を前提として「福祉専門職員配置等加算」を算定する場合、どのような点に注意して活用すればよろしいでしょうか?
職員兼務を前提として「福祉専門職員配置等加算」を算定する場合、IかIIかIIIか、又はどの職種と兼務するかを確認することが大切です。
更に兼務するにあたっても、何時間をどの職種に配置しているかまで整理することが重要です。
以下では職員兼務を前提にした「福祉専門職員配置等加算」の活用方法をわかりやすく説明いたします。
注意点:職員兼務を前提にした「福祉専門職員配置等加算」のパターン別攻略法
障害福祉事業で一般的な「福祉専門職員配置等加算」を、複数の職務兼務する職員で算定する場合、単独事業所兼務か、複数事業所兼務かのパターンに分けて、それぞれの勤務時間数や勤務状況を確認することが大切です。
<単独事業所の職員兼務を前提にした「福祉専門職員配置等加算」のルール>
・複数の直接支援員の兼務は問題となりませんが、注意が必要なのは「管理者兼務」と「サビ管兼務」の場合です。
・管理者が同時並行的兼務を行う場合において、常勤の直接支援員として扱うことができます(厚生労働省 平成 21 年度障害福祉サービス報酬改定に係るQ&A(VOL.3)問1−4より)。
・↑より、勤務体制一覧表は管理者8直接支援職員8と記載しておくことが大切です。
・常勤配置のサビ管は直接支援との兼務が認められていないので、直接支援の常勤職員としては認められません。
・ただし非常勤の2人目サビ管の場合はIIIの常勤換算の分母に入れることができます(厚生労働省 平成 21 年度障害福祉サービス報酬改定に係るQ&A(VOL.1)問1ー6)
<複数事業所の職員兼務を前提にした「福祉専門職員配置等加算」のルール>
・複数事業所を兼務する常勤職員は、1週間の勤務時間2分の1超の勤務している方で常勤1人として数える
・IIIの1のように常勤換算数で判断する場合は、両方で分母と分子に時間数を入れて計算する
例1:移行30h,B10h | 例2:移行20h,B20h | 例3:移行30h,生介10h(サビ管) | |
福祉専門職員配置等加算 I | 移行で常勤職員とみなす。 | 移行かBのどちらかのみ、常勤職員とみなす。 | 移行で常勤職員とみなす。 |
福祉専門職員配置等加算 II | 移行で常勤職員とみなす。 | 移行かBのどちらかのみ、常勤職員とみなす。 | 移行で常勤職員とみなす。 |
福祉専門職員配置等加算 IIIの1 | 両方で分母と分子に時間数を入れる | 両方で分母と分子に時間数を入れる。 | 移行で分母と分子に時間数を入れる。 |
「福祉専門職員配置等加算」を単独事業所で算定する場合、管理者兼務の職員がいれば勤務体制一覧表と日報の書き方を「同時並行的職務」とすることが大切です。
複数事業所の場合はそれぞれのサービスごとに従事した時間数で「福祉専門職員配置等加算」の算定方法が変わるので注意しましょう。
ただし多機能型で複数サービスの事業全体で加算算定要件を判断するので、事業全体のシフトに注意さえしていれば安心です。
今できること:「福祉専門職員配置等加算」の算定ミスを無くすために
障害福祉事業で「福祉専門職員配置等加算」を算定することは少なくありませんが、よくある加算算定要件のミスとしては、「福祉専門職員配置等加算」のIIIの1の要件(常勤換算75%以上)を知らない内に満たしていないが多くありますので注意が必要です。
※「福祉専門職員配置等加算」IIIの注意事例
事例1:「パートで常勤配置していた職員の欠勤が続き、常勤換算0.9になる」
事例2:「常勤職員が月途中で突然退職する」
事例3:「前年度平均が想定以上に伸びた場合にパート職員を急増する」
「福祉専門職員配置等加算」IやIIは常勤職員の頭数で判断するので、大幅な職員移動がない限り、比較的安心して毎月算定することができます。
ただしIIIの1はパート職員や欠勤時間数で、加算算定が左右されるので要注意です。
IIIの1は単位数も大きくないので、「現在は算定できるけれど毎月確認が不安」という場合は、加算算定を敢えて外すのも一つの作戦です。
まとめ
障害福祉事業の「福祉専門職員配置等加算」について詳しく分かりました。ありがとうございます。
特に職種兼務を前提にした「福祉専門職員配置等加算」の算定には注意いたします。
「福祉専門職員配置等加算」は福祉職員の配置の評価に加えて、処遇改善加算Iの算定のためにも必要です。
ただし、多機能型や複数事業所兼務、更に単独事業所内の兼務でも、算定要件が異なってくるのでご注意ください。 もし算定要件を満たし続けることが難しい場合は、速やかに加算を外す届出を出すことも戦略ですのでご検討ください。
ルールを守って適切に「福祉専門職員配置等加算」を算定することで、自治体や利用者さんから信頼される組織を作ってください。
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