
★★★記事執筆者のご紹介★★★
この記事は障害福祉事業専門で、国家資格者である行政書士の戸根裕士が作成しております。多数の顧問先様との仕事から得られた、実務に役立つ注意点をまとめました。
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障害者グループホーム(共同生活援助)を運営していますが、夜間支援等体制加算の複数人配置人員配が複雑でわかりません。特に小数点の扱い方は、様々なパターンがあって混乱してしまいます。
そこでお尋ねしたいのですが、障害者グループホームの夜間支援等体制加算の複数人配置の扱いについて、詳しく教えていただけますでしょうか?
障害者グループホーム(共同生活援助)の人員配置は、場面ごとで常勤換算のルールが変わるので複雑な制度になっています。
特に夜間支援等体制加算の複数人配置は独自のルールがあり、間違えると減算や返金の可能性もあるので要注意です。
この記事では事業者様の理解の一助になるように以下の内容を説明いたします。
- 夜間支援等体制加算の複数人配置の常勤換算方法がわかります
- 夜間支援等体制加算の複数人配置の小数点の扱いについてわかります
- 複数のルールが組み合わさった、加算算定時の計算方法の注意点がわかります
(パターン) | (小数点の扱い方) |
世話人、生活支援員の常勤換算 | 小数点第二位を切り下げ |
前年度平均利用者数 | 小数点第二位を切り上げ |
夜間支援等体制加算の利用人数 | 小数点第一位を四捨五入 |
人員配置体制加算の特定従業者数換算方法 | 小数点第二位を切り上げ |
目次
【共同生活援助】夜間支援等体制加算(I)の複数人配置の注意点!間違えると多額の返戻注意

障害者グループホーム(共同生活援助)の夜間支援等体制加算(I)の常勤換算の計算は、障害福祉には珍しく小数点第一位を四捨五入ですが、前年度平均利用者の計算(小数点第二位を切り上げ)と夜間利用者の計算(小数点第一位を四捨五入)が混ざっているので、計算過程の取り扱いに注意が必要です。
<夜間支援従事者の複数人配置のタイミング>
・開所して1年経過して、利用者が増え、夜間支援等体制加算の対象利用者数が増える
・区分が高く、手厚い支援が必要な利用者が複数名、入居することになった
<厚生労働省の提示:夜間支援従事者の複数人配置の計算方法>
例)5人定員、前年度延べ利用者1,570人、開所日数365日
→1,570 ÷ 365 = 4.4人(前年度平均利用者数の計算)
→小数点第一位四捨五入のため4人(夜間利用者の計算)
<1:厚生労働省の事例提示のポイント>
・まず平均利用者数を算出するために、第二位を切り上げします。それから、第一位を四捨五入します。
・つまり、1,570 ÷ 365 = 4.301…をそのまま、第一位を四捨五入しないということです。
・例えば、1,607÷ 365 = 4.402…をそのまま、第一位を四捨五入すると4人(間違い)になりますが、実際は4.402…→4.5人→5人(正解)になります。
<2:複数人の夜間支援従事者配置の計算のポイント>
・まず平均利用者数を算出するために、第二位を切り上げします。それから、それぞれの従事者の「実際支援人数」で按分して、第一位を四捨五入します。
例)5人定員、前年度延べ利用者1,607人、開所日数365日、Aさん3人、Bさん2人
1,607÷ 365 = 4.402…
→ 4.5人(第二位切り上げ) になります(=プロセス1)。
→ 5人(第一位四捨五入) になります(=プロセス2)。
・重要なポイントは、複数人の従事者による支援人数の按分をプロセス1、もしくはプロセス2のどちらで実行するかです。
障害者グループホーム(共同生活援助)の夜間支援等体制加算(I)の常勤換算の計算についてわかりました。
ただ、夜間支援等体制加算(I)で複数人配置の計算の注意点が分からないので、どのようなポイントに注意し、どのようトラブル対策が有効か教えてもらえるでしょうか?
一つの共同生活住居で利用者が多くなってきた時、夜間支援等体制加算(I)の単位が落ちる傾向にあるのので、夜間の複数人配置を検討することは大切です。
もし小数点の把握を間違えて、不適切な常勤換算の配置をした場合、加算の返金や減算の可能性も出てきます。
以下では、共同生活援助で一般的な「夜間支援等体制加算の複数人配置の計算の注意点をわかりやすく説明いたします。
注意1:複数人配置の計算方法を指定権者に確認

障害者グループホーム(共同生活援助)の夜間支援等体制加算の複数人配置の計算は、上記で説明した通り、プロセス1か、もしくはプロセス2で計算するかで、加算単位が大きく異なりますが、どちらかを採用するルールがないので必ず指定権者に確認いたしましょう。
<複数人の夜間支援従事者配置の計算のポイント>
・まず平均利用者数を算出するために、第二位を切り上げします。それから、それぞれの従事者の「実際支援人数」で按分して、第一位を四捨五入します。
例)5人定員、前年度延べ利用者1,570人、開所日数365日、Aさん3人、Bさん2人
1,570÷ 365 = 4.301…
→ 4.4人(第二位切り上げ) になります(=プロセス1)。
→ 4人(第一位四捨五入) になります(=プロセス2)。
・重要なポイントは、複数人の従事者による支援人数の按分をプロセス1、もしくはプロセス2のどちらで実行するかです。
プロセス1 | プロセス2 | |
複数人配置の按分基準 | 第二位切り上げ時点(=4.4) | 第一位四捨五入時点(=4) |
Aさん(5人中3人)の対象数 | 4.4 * 3 / 5 = 2.64 ≒ 3 | 4 * 3 / 5 = 2.4 ≒ 2 |
夜間支援等体制加算のカテゴリー | 3人 | 2人 |
Bさん(5人中2人)の対象数 | 4.4 * 2 / 5 = 1.76 ≒ 2 | 4 * 2 / 5 = 1.6 ≒ 2 |
夜間支援等体制加算のカテゴリー | 2人 | 2人 |
<複数人配置の計算プロセスの2パターンについて>
・上記の表より分かる通り、プロセス2の方が、Aさん担当の利用者3人の夜間支援等体制加算(I)が「利用者数2人」の高い単位になります。
・3人が区分3であった場合、1人あたりの単位差は187単位、3人では561単位の差が生まれます。
・つまり1単位11円だとすれば、1日で561単位×11円=6,171円、30日にして185,310円の差が生まれます。
共同生活援助の夜間支援等体制加算(I)の複数人配置は、計算方法の違いだけで、これだけ大きく収益が変わってしまいます。
逆を言えば、間違えた計算のまま、夜間支援等体制加算を算定していると、多額の返戻の可能性も出てくるということです。
細かい論点ですが、どちらの計算方法が採用されるか、指定権者に慎重に、詳細に確認されることをお勧めいたします。
注意2:複数人配置の算定根拠の資料を残す

障害者グループホーム(共同生活援助)の夜間支援等体制加算の複数人配置の根拠資料は、どの従業員がどの利用者さんをトータルで何人支援したかという記録が必要な上、割り当ても区分等を踏まえて検討することが大切です。
<夜間支援等体制加算:複数人配置の根拠資料>
・複数人の夜間支援員が、どの利用者さんを支援したか記録します。
・各々の夜間支援員が支援する利用者さんが重なっていてはいけません。
⇨Aさんは利用者a,b,cさん、Bさんはc,d,eさんというような重複は認められません。
・複数人の夜間支援員は、全員22時から5時までの勤務時間になります。
⇨Aさんは22~2時、Bさんは2~5時というような分割は認められません。
・複数人の夜間支援員の休憩時間は、重ならないように設定した方が良いです。
※どの支援員がどの利用者を扱うかという設定について
・複数人の夜間支援員ごとに、加算根拠となる対象利用者数が異なる場合、利用者数が少ない(=単位が高い)支援員に、区分が高い(=支援が難しい)利用者を当てる方が合理的です。
・複数人の夜間支援員への利用者さんの振り分けは、支援内容の難しさや時間数などを根拠に分けましょう。
・介護ではないので同性介護の原則はありませんが、ある程度、配慮した方がトラブルが少ないです。
・可能であれば個別支援計画の記載内容も複数人配置が前提の内容にしておいた方が無難です。
夜間支援等体制加算の複数人配置の根拠資料が無く、2人いるから利用者も按分したという理由で加算算定しているケースが散見されます。
夜間支援員を複数人配置して、支援員ごとに加算単位が異なる場合、特に誰が区分何の誰を支援したか明確にしておきましょう。
こうした支援員への利用者さんの配分は、支援の課題や区分や障害の程度を踏まえて総合的に判断してください。
まとめ

夜間支援等体制加算の複数人配置について詳しく分かりました。ありがとうございます。
令和6年度報酬改定以降の複雑な人員配置に早く対応したいと思います。
共同生活援助の人員配置の常勤換算は複雑で、場面ごとで小数点の扱いが異なることに注意が必要です。
夜間支援等体制加算の複数人配置のように、小数点の取り扱いだけで、加算の可否や返金の可能性も出てくるのでご注意ください。 また夜間支援員への利用者さんの割り当ても、誰に区分何の利用者さんを支援させているか、しっかり根拠資料を残しておくことが大切です。
しっかりと令和6年度の障害者グループホーム(共同生活援助)の制度変更に順応して、自治体や利用者さんから信頼される組織を作ってください。
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