障害者グループホームを運営していますが、そろそろ実地指導が来そうで心配です。度重なる報酬改定により実地指導の確認ポイントも変わっていると聞きました。
そこで最近の障害者グループホームの実地指導の傾向や間違えやすいポイントを、詳しく教えていただけますでしょうか?
実地指導の通知が来た時、どの障害者グループホームである共同生活住居の事業所の中でも実地指導対策は気になるポイントかと思います。
特に障害者グループホームは利用者との金銭のやりとりも高額で、従業員の配置も複雑なので実地指導でトラブルが多いと聞きます。
この記事では事業者様の理解の一助になるように以下の内容を説明いたします。
- 障害者グループホームの実地指導の間違えるポイントがわかります
- 障害者グループホームの実地指導の事前対策のポイントがわかります
- 障害者グループホームの実地指導の書類整備のポイントがわかります
目次
実地指導、ここがチェックされる①!間違えやすいポイント解説
障害者グループホーム(共同生活住居)は、「適正にサービスを提供し請求業務を行っているか」自治体に、実地指導として定期的にチェックされます。
<実地指導の基本的なチェックポイント>
1 人員基準に関する事項:適正に利用者数を計算し従業員を配置できているか等
2 運営体制に関する事項:運営規程/重説や個別支援計画が適正に整備されているか等
3 報酬請求に関する事項:支援の実態に合わせて請求をしているか等
※一般的な管理体制への指摘事項の例
・管理者がモニタリングしてはいけない
・健康診断は結果も準備する
・契約内容報告書は変更があった場合も提出する
・修正テープでの修正は認められない
・避難訓練は年に2回行う
・重説は2種類(ルビ版・拡大版等)用意して欲しい
障害者グループホーム(共同生活住居)の実地指導の概要は、パターンに分けていただいたのでわかりました。
ただ実際に実地指導の時に何か指摘されて報酬の返還など命じられるのが怖いのですが、障害者グループホームの実地指導は特にどのような点に気をつければ良いでしょうか?
障害福祉サービスは全ての事業で実地指導が行われますが、障害者グループホームならではのチェックポイントもあります。
また障害者グループホームの加算の要件は複雑なものが多いので、サービス提供記録の記録や実態に合わせた金銭授受の明細書の確認は必須です。
以下では障害者グループホームの実地指導の、間違えやすいポイントをわかりやすく説明いたします。
ポイント1:利用料等費用の受取を適正にする
障害者グループホーム(共同生活住居)は利用料の他に家賃や生活費を利用者から受領するので、受領額も他のサービスと比べると大きく、また項目も多岐に渡るので、受領額やその項目を合理的根拠を持って適正に設定しておく必要があります。
<GHの金銭の受領の間違えやすいポイント>
・月途中に入居の際に家賃を日割りで受け取っていない
・礼金や敷金を受け取っている
・預り金の生産をせずに返金していない
・通信費や食費などを合理性なく適正に按分できていない
・利用者さんの同意なく金銭を預かっている
・代理受領通知書や領収書を発行していない
・入院時や帰省時に費用がかかっていない料金を請求している
・入院時や帰省時の費用請求に生活保護課と調整していない
障害者グループホームの利用料の設定で特に難しいのは、生活保護受給者を受け入れる際の生活保護課との調整です。
生活保護の方の利用者負担分は全て生活保護費の範囲内から支出されるので、金額や支出理由が自治体の承認を得られるものでないといけません。
特に長期入院の場合はどれくらいの期間まで生活保護の家賃扶助が受けられるか自治体によって異なるので注意いたしましょう。
ポイント2:従業員の勤務体制を適正にする
障害者グループホーム(共同生活住居)は複数の共同生活住居という基本住居がある他、勤務体制や形態がバラバラなので、従業員の時間数と形態と配置場所を適正に管理していないと実地指導でトラブルになります。
<GHの従業員の配置の間違えやすいポイント>
・管理者兼世話人のうちの世話人部分の配置住居を明確にしていない
・サービス管理責任者が非常勤の場合に配置時間が少なすぎる
・人員配置の計算の基礎である「前年度平均利用者数」の計算を間違えている
・出勤簿にハンコがない
・面談日やサービス記録の担当者とシフト表の配置が違っている
・他の障害福祉サービスの職員を兼務している場合に三者兼務になっている
・日中勤務と夜間勤務の1週間の合計時間が常勤40時間を超えている
障害者グループホームで意外と計算が難しいのは生活支援員の必要配置数です。
グループホーム利用者の障害区分が頻繁に変わることがあり、その都度、区分対象日数に応じて生活支援員の必要配置数を計算しないといけません。
他にも複数の共同生活住居がある場合に利用者が別の共同生活住居に転居すれば、その移動が各住居ごとの人員配置の計算に影響を及ぼすので注意いたしましょう。
ポイント3:加算を適正に取得する
障害者グループホーム(共同生活住居)では、基本報酬の単位だけでは事業継続の採算が取れないので、夜間支援等体制加算をはじめ様々な加算を取得しますが、その加算の取得の要件が適正か厳しくみられる傾向にあります。
<GHの夜間支援等体制加算の間違えやすいポイント>
・夜間支援員の勤務時間と休憩時間と勤務内容を記録していない
・夜間支援等体制加算の必要がない利用者を加算対象としている
・夜間支援等体制加算の算定区分である利用者数の計算を間違える(※特に開業から半年以上)
・夜間支援等体制加算の取得理由を個別支援計画に位置付けていない
・夜間支援員の共同生活住居ごとのサービス提供記録がない
・夜間支援員の巡回記録がない
・夜間支援等体制加算2の場合は宿直の届出を労基に出していない
<GHのその他加算の間違えやすいポイント>
・長期入院時支援特別加算の一週間に1度の訪問支援記録がない
・長期入院時支援特別加算の算定日を間違えている
・日中支援加算の算定要件である日数の計算が間違えている
・日中支援加算IIの条件である通所活動の実態がない
・帰宅時支援加算のサービス実績記録票の記載がない
・長期帰宅時支援加算の支援記録がない
・医療連携体制加算VIIの条件である日々のバイタルチェックの記録がない
・各種加算の個別支援計画への位置付けがない
障害者グループホームの収益安定のために夜間支援等体制等加算は必須であり、その算定要件を間違えていると多額の返金の可能性があるので注意です。
その他、各種加算は全て個別支援計画への位置付けが必要になりますので、サービス管理責任者が常駐でなくてもしっかり連絡いたしましょう。
一枚のサービス提供記録の中に加算の要件である支援を書き込んでも構いませんが、どれがどの加算対象になるか説明できるように整理しておけば安心です。
ポイント4:令和4年度の義務化の規定に対応する
障害者グループホーム(共同生活住居)の事業所は令和4年度より虐待と身体拘束適正化の委員会の設置、そしてハラスメント対策が義務化されたのに伴い、就Aの実地指導でも委員会の開催の実態や体制の整備については入念にチェックされる傾向になります。
<令和4年度の義務化の規定について>
【1】虐待防止委員会とは?運営規程の書き方から記録書類まで解説
【2】身体拘束適正化委員会と「身体拘束廃止未実施減算」とは
【3】障害福祉のハラスメント防止の対策とは?
※身体拘束適正化委員会等の扱いについて
・委員会の結果は従業員に通知いたしましょう(例:議事録に署名欄を設ける)
・委員会の指針に構成員の記載をいたしましょう
・行動を抑制することも身体拘束になるので協議しましょう(例:道を塞ぐ)
虐待や身体拘束の規程は令和4年度から義務化されたにもかかわらず、運営規程等の変更していない事業所があるのでご注意ください。
また身体拘束適正化の未実施は令和5年度より減算の対象になるので要注意です。
委員会の組織は必ずしも事業所内部に限定することはないので外部の方々も巻き込み適正化に努めましょう。
まとめ
障害者グループホームの実地指導の間違えやすいポイントついて詳しく分かりました。ありがとうございます。
夜間支援等体制加算や長期入院時支援加算の書類に不備がありそうなので至急確認し、対応を協議したいと思います。
近年の障害者グループホームの実地指導でよく聞くのは、GHの夜間支援等体制加算などの根拠資料が揃っておらず、個別支援計画に位置付けられていないことです。
また利用者さんへの家賃や諸費用の請求が適切ではなく、不当な多額の金銭を受け取っている場合はトラブルになります。 グループホームへの生活保護の方の受け入れは、生活保護課との調整もあり時間がかかり、入院時や帰省時など役所との連携が欠かせません。
障害者グループホームの事業を安定的に運営していくには実地指導を切り抜けることが大切なので、しっかりと自治体や利用者さんから信頼される組織を作ってください。
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