障がい者グループホームを経営しているのですが、利用者さんから通院に付き合って欲しいと言われることが多々あります。
このような場合にスタッフに通院に同行させても問題ないでしょうか?
通院時の支援は基本的に共同生活援助というグループホームのサービスとは異なります。
気をつける点やスタッフ配置の方法を理解しておかないと監査指導の時にトラブルになる可能性があります。
本日はそうしたグループホームの通院時の支援に関する注意点や解決策をお話しいたします
- グループホーム利用者の通院時の支援方法がわかります
- グループホーム利用者の通院時の支援の注意点がわかります
- グループホーム利用者の通院時の支援の解決策がわかります
目次
利用者の通院の支援はどうすればいい?
グループホームの利用者の通院を支援するには、スタッフの確保・十分な時間の確保・詳細な記録が必要になります。
<通院が必要な利用者かどうかは事前に把握!>
入居時に計画相談事業所やご家族からご利用者様の体調のことを綿密に伺い、今後通院支援が必要になる可能性があるかどうか調べておきましょう。
これまでグループホームの利用者さんが通院される時は、ご家族と連絡を取り合ってスタッフにお願いして何とか対応してきました。
違法ではないと思うのですが、グループホームの体制として通院支援を継続的に行うと大変です。利用者さんの通院支援はどうすればいいでしょうか?
通院時の支援をグループホームで行うときは、スタッフの配置や支援時間の管理に注意を払う必要があります。
またグループホームのスタッフではない別の制度や人材に頼るという解決策も考慮いたしましょう。
別のスタッフの配置が必要
グループホームの利用者さんの通院を支援する際は、グループホームの人員配置基準とは別のスタッフの配置が必要になります。
<別のスタッフの配置の例>
・夕方からシフトのスタッフに日中の早い時間からシフトに入ってもらう
・非番のスタッフに連絡し、日中の早い時間からシフトに入ってもらう
・午前からのスタッフに日中の時間までシフトに入ってもらう
グループホームのスタッフで通院支援をするには最低でも1人対1人の対応が必要なため、通常の配置+αの人出が求められます(※自閉症の方は2人必要なこともあります)。
スタッフの勤務時間の変更や時間外労働をすることになり、労働環境と人件費が懸念されます。
また通院回数が多い方はその分だけ追加スタッフを配置する負担も増えるので課題になります。
対応策1:通院介助を使う
どうしてもグループホームのスタッフで通院支援を行うスタッフが足りなく、また負担になってくる場合は、「通院等介助」という介護サービスを利用するよう支援してください。
<通院介助とは?>
ヘルパーさんにより、利用者さんが通院するための移動を介助するサービスです。
※利用のためには自治体に介護保険の適用の申請をする必要があります。
注意点はあくまでも移動のためのサービスであり、医師による面談での立ち会いなどは含まれていない点です。
また介護保険の適用の申請をする作業も必要で、すぐに利用できず、誰でも使えるわけではない点もお気をつけください。
スタッフの勤務時間の変更や時間外労働をすることになり、労働環境と人件費の加重が懸念されます。
また利用者さんと関係を築けていないヘルパーさんが担当すると通院自体を拒否なさる可能性もあるので、結局グループホームのスタッフが対応する事例が多いです。
対応策2:成年後見制度の利用
グループホームの職員で日中の利用者の通院を支援することが難しい場合は、利用者さんに成年後見制度を利用してもらうことも対応策の一つです。
<成年後見制度とは?>
認知症,知的障害,精神障害などの理由で判断能力の不十分な方々に対して,不動産や預貯金などの財産の管理,身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約の締結などを支援する制度です
注意点は成年後見制度を利用するにも本人もしくはご家族による家庭裁判所への申し立てが必要であり、利用まで時間がかかってしまう点です。
さらに第三者の専門職に後見人を依頼すると、月々の報酬が発生し、利用者さんの負担が増えることになります。
ただ生活保護の方に対しては自治体により報酬助成がもらえるケースがあるので、自治体に問い合わせて聞いていただければと思います。
対応策3:訪問看護の利用
グループホームの利用者さんが通院支援を希望される場合、逆に訪問看護を利用してグループホームの施設へ医師や看護師に来てもらうことも対策の一つと考えられます。
<訪問看護とは?>
地域の訪問看護ステーションから、看護師や理学療法士・作業療法士等がその方が生活する場所へ訪問し、医療的ケアを提供することです。
ただ注意点は訪問看護の制度も介護保険や医療保険の枠組みの中にあり自治体への申請や医師の診断が必要になります。
しかもデメリットとして利用回数が限定されているなど柔軟に対応してもらえない可能性があります。
利用者さんが緊急の医療ケアを必要とされていないなら、グループホームで契約を結んだ訪問看護の方の来訪まで待つことも効果があるでしょう。
こうしたグループホームと医療機関の連携を促進する加算もありますのでご利用ください。
利用者の通院支援をする注意点とは?
ここまでの説明でグループホームの利用者様が通院する際の支援のポイントと対応策を一通り分かっていただけたかと思います。
<まとめ>
人員配置の基準とは別にスタッフを配置する
・対応策1:通院介助の介護サービス
・対応策2:成年後見制度
・対応策3:訪問看護のサービス
それではそのような利用者さんの通院支援の対応策を行うときに、どのような点を気をつければ良いでしょうか?
小規模のグループホームなので、スタッフや時間の管理など専門家でない者でもわかるようにご説明いただければ幸いです。
今まで家族とチームワークを組んで何とか乗り切ってきたケースも多いかと思いますが、労務や経営管理の観点から見ると危うい点が少なくありません。
これまで多くのグループホームの事業者さんと付き合ってきて現状を見てきた経験から通院支援の注意点をご説明いたします。
時間外賃金と勤務時間超過
グループホームの利用者さんの通院支援に自社のスタッフを配置する場合、雇用契約書によっては時間外労働になり、割増賃金が発生する点にご注意ください。
<時間外労働の割増賃金とは?>
時間外労働に対する割増賃金は、通常の賃金の2割5分以上となります。例えば、通常1時間当たり1,000円で働く労働者の場合、時間外労働1時間につき、割増賃金を含め1,250円以上支払う必要があります。
グループホームの利用者さんの通院は、待ち時間が多い上に治療によっては拒否して納得してもらうまで時間がかかるとか、そもそも受け入れてくれる病院を探すのにも膨大な時間がかかります。
その間に時間外のスタッフが支援にあたれば、割増賃金を払う必要があり、頻繁にこうした事態になると経営を圧迫いたします。
また状況によっては労働環境基準法の規定時間を超過する場合がありますので、その点にもご注意ください。
通院介助の利用の難しさ
グループホームのスタッフによる利用者の通院支援が難しい場合、対応策として介護サービスの「通院介助」の利用を挙げましたが、現実には中々難しい面もあります。
<通院介助を利用する難しさ>
・公共交通機関が充実していない地域では、通院のためにタクシーを利用することは入居者の負担が大きい
・月に 2 回までという制限がある
グループホームの利用者さんの通院のために通院介助を使うことは、地域差や利用者さんの病状の重さによって効果が変わります。
介護サービスですので一部利用者さんの負担にもなり、経済的な面も配慮しなくてはなりません。
人によってはそもそも介護サービスの申請が認められないケースもあるのでご注意ください。
入院すると基本報酬がなくなる
グループホームの利用者さんの通院支援をして、仮に施設に入院されることになった場合、その日以降は基本的に退院の日までグループホームの基本報酬がなくなってしまいます。
<入院時は加算で対応?>
入院時のグループホームの利用者さんを支援することへの「入院時支援特別加算」や「長期入院時支援特別加算」などの制度があります。
※しかし精神科の場合は長時間の付き添いを求められることもあり、実態は加算だけで人件費を補うことは難しく、法人の持ち出しが多い現状です。
利用者さんが入院された場合、入居者の退院後の生活を考えれば入院期間が長引いても、契約を解除することは難しいです。
退院されても通院は続くことが見込まれるので、入院されている間にご家族と話し合って成年後見や通院介助の利用をご検討ください。
まとめ
障がい者グループホームで職員を1人体制でしていたので、通院支援をする時は困っていました。よくわかりました。ありがとうございます。
訪問看護も回数に制限があり、どうしても必要な時は夜間や早朝にホームの職員が医療ケアを行うことがありました。安定的に医療的ケアを提供できる体制を目指します。
利用者さんの通院支援をする際にグループホームのスタッフは、入居者の日々の情報を的確に伝え、医療情報も集約して管理する重要な立場になります。
気をつける点やスタッフ配置の方法を理解しておかないと監査指導の時にトラブルになる可能性があります。
看護師などとの連携のためにも利用者の体調変化には十分お気をつけください。
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