障がい者グループホームを運営していて、「夜間支援等体制加算」を取得しています。利用者数によって単位が変わりますが、その利用者数の計算がよくわかりません。
そこで請求の単位も間違えず、実地指導も無事に終わるように、障害者グループホームの「夜間支援等体制加算」の計算方法を詳しく教えていただけますでしょうか?
障がい者グループホームの多くは「夜間支援等体制加算」を取得しており、年度ごとや事業所の追加ごとに正確な計算が求められています。
ただ実地指導の時に「夜間支援等体制加算」の計算方法が間違えておりトラブルになることをよく聞きます。
この記事では事業者様の理解の一助になるように以下の内容を説明いたします。
- 「夜間支援等体制加算」の利用者数の計算方法がわかります
- 「夜間支援等体制加算」の1人配置か2人配置のどちらが有利かわかります
- 「夜間支援等体制加算」の(I)か(IV)のどちらか有利かわかります
目次
【GH】「夜間支援等体制加算」の利用者数の計算とは?
障害者グループホーム(共同生活援助)の「夜間支援等体制加算」(I〜VI)は、グループホームで夜間の連絡・支援体制が確保される場合に算定されます。
(区分) | (加算単位数) | (要件) |
I | 利用者の数/支援区分に応じ、1日につき所定単位を加算 | 夜勤スタッフにより夜間及び深夜の時間帯を通じて「必要な支援」を提供できる体制を確保 |
II | 利用者の数に応じ、1日につき所定単位を加算 | 宿直スタッフにより夜間及び深夜の時間帯を通じて「定期的な巡回/緊急時の支援の提供」を確保 |
III | 10単位/日 | 夜間及び深夜の時間帯を通じて常時の連絡体制又は防災体制を確保 |
IV | 利用者の数に応じ、1日につき所定単位を加算 | Iに加えて夜勤スタッフを加配し、巡回させることで夜間及び深夜の時間帯を通じて「必要な介護等」を提供できる体制を確保 |
V | 利用者の数に応じ、1日につき所定単位を加算 | Iに加えて夜勤スタッフを加配し、巡回させることで夜間及び深夜の一部の時間帯に「必要な介護等」を提供できる体制を確保 |
VI | 利用者の数に応じ、1日につき所定単位を加算 | Iに加えて宿直スタッフを加配し、巡回させることで夜間及び深夜の時間帯を通じて「定期的な巡回/緊急時の支援の提供」を提供できる体制を確保 |
<「夜間支援等体制加算」の算定のポイント>
・利用者数を正しく計算し、正確に加算の単位を請求する
・夜勤スタッフの勤務時間、勤務状況の記録を残す
・夜勤スタッフの勤務時間を含めた一週間の総時間数が常勤を超えていないか注意する
・夜間支援の必要性を個別支援計画に記載する
(対象者) | (利用者2人以下) | (利用者数3人) | (利用者数4人) |
区分4以上 | 672単位 | 448単位 | 336単位 |
区分3 | 560単位 | 373単位 | 290単位 |
区分2以下 | 448単位 | 299単位 | 224単位 |
障がい者グループホームの「夜間支援等体制加算」について理解いたしました。
「夜間支援等体制」は区分を伴う利用者数によって単位が変わりますが、どのような計算方法を行えば「夜間支援等体制加算」を適正に請求できますか?
障がい者グループホームの「夜間支援等体制加算」は、収益を安定させる上で重要な加算です。
しかし「夜間支援等体制加算」は計算方法も工夫が必要で、また人数配置によって収益向上に変化があります。
以下では「夜間支援等体制加算」の取得時の注意点についてわかりやすく説明いたします。
「夜間支援等体制加算」の利用者数の計算方法とは
障がい者グループホームの「夜間支援等体制加算」の単位を決める「利用者数」とは、1人の夜間支援従事者が支援を行う人数であり、その数は夜間支援を行う共同生活住居の利用者数の前年度平均数になります。
<「夜間支援等体制加算」の利用者数の計算のポイント>
・共同生活住居ごとに利用者人数を計算する(→2住居ならそれぞれの人数の合計が算定基準になる)
・利用者人数は実人数ではなく、前年度平均の数である(→開業直後なら見做しの9割)
<「夜間支援等体制加算」の利用者数の事例>
5人定員の共同生活住居; 前年度利用者数の延べ人数1,570人; 前年度開所日数365日
→ 1,570 ÷ 365 = 4.4人
→小数点第一位を四捨五入のため4人の利用者数で加算を算定する。
よくある間違いに、前年度の利用者の頭数で「夜間支援等体制加算」を算定することがあります。
延べ回数と開所日数で算出するので、日々の記録は慎重にして、特に帰省や入院日数のカウントに注意いたしましょう。
開業直後ならみなしの9割人数での配置ですが、半年経てば半年間の平均で算定できますので届出を忘れないようにいたしましょう。
「夜間支援等体制加算」を2人配置する場合の最適配置とは
障がい者グループホームの夜間支援に関して2人の従業員を配置すれば、夜間支援は手厚くなりますが、「夜間支援等体制加算」の算定基準となる「利用者数」の計算方法も変わってきますのでご注意ください。
<「夜間支援等体制加算」を2人以上配置するポイント>
・共同生活住居ごとに配置する場合は、それぞれの共同生活住居の利用者数で計算します
・1共同生活住居に2人配置する場合は、その共同生活住居の利用者数を按分いたします
共同生活住居ごとに夜間支援員を配置する際の注意点は、従たる事業所(新しいGH)を追加した際に、時期によって人数計算が変わることです。
共同生活住居の定員が同じであっても、新規設立の場合は9割のみなしの人数で加算を算定するので、GHごとの夜間支援者数の計算に注意いたしましょう。
特に開業から半年後は、みなしの人数よりも利用者数が減る傾向がある、つまり加算額が増えるので、再計算して届出をして収益をアップいたしましょう。
夜間従業者1人の配置 or 2人の配置のどちらが収益性が高いか
障がい者グループホームの「夜間支援等体制加算」は、1人の配置だと算定人数は増えますが、各々の単位数は低くなり、他方、2人にすれば人数が減り各々の単位数が高くなりますが、その分の人件費がかかります。
<「夜間支援等体制加算」の最適人数をめぐるポイント>
・1人配置でも2人配置でも、事業所に残る利益は殆ど変わらないように設計されています
・それゆえ配置人数の最適化は、利用者さんの現状を鑑みて手厚い支援の必要性でご判断ください
・事業所収益に変わりはありませんが、2人配置だと人員管理の負担が大きくなることがデメリットです
(区分3) | (人数) | (合計加算額) | (人件費) | (利益) | |
利用者数6 | 1,870円/人 | 6人 | 11,220円 | 7,000円 | 4,220円 |
(区分3) | (人数) | (合計加算額) | (人件費) | (利益) | |
利用者数3 | 3,730円/人 | 3人 | 11,190円 | 7,000円 | 4,190円 |
利用者数3 | 3,730円/人 | 3人 | 11,190円 | 7,000円 | 4,190円 |
上記の例は利用者数を6人と3人(区分3の限定)で計算しましたが、他の人数や区分でも加算額の収益性は変わりません。
つまり配置人数によって収益性が変わるのではないので、支援の必要があれば人員を追加して配置しても利益の面ではデメリットはありません
ただし2人を配置すれば、労務管理や給与計算等の事務的な負担が増えることにはご注意いたしましょう。
「夜間支援等体制加算」(I)と(IV)or (I)の2人配置のどちらが収益性が高いか
障がい者グループホームの夜間支援に関して2人の夜勤従業員を配置する点では「夜間支援等体制加算」の(I)も(IV)も変わりありませんが、(I)と(IV)の組み合わせ配置は一つの共同生活住居で利用者数12人以上の場合なら効率よく、それ以外は(I)を2人配置の方が収益性が高いです。
<「夜間支援等体制加算」(IV)の損益分岐点>
「夜間支援等体制加算」(IV)は区分関係なく、合計利用者数に応じて算定されますので15人以上から1人増えるごとに単位数が上がります。そして夜勤職員の人件費が7,000円とすると、損益分岐点は利用者数12人になります。
(15人以下) | (人数) | (合計加算額) | (人件費) | (利益) | |
利用者数12人 | 600円/人 | 12人 | 7,200円 | 7,000円 | 200円 |
利用者数11人 | 600円/人 | 11人 | 6,600円 | 7,000円 | △400円 |
つまり利用者数が12人以上になれば、(I)と(IV)をそれぞれ一人ずつ配置しても、(I)を2人配置しても収益性に差はありません。
ただ(I)と(IV)の組み合わせは、どちらかの休憩時間に必ず他方の従業員が勤務しないといけないので、空白のない手厚い支援が可能になるでしょう。
ただし(I)を2人配置した場合は、(IV)を算定することができないのでご注意ください。
まとめ
障がい者グループホームの「夜間支援等体制加算」の計算方法と収益化戦略について詳しく分かりました。ありがとうございます。
まずはしっかりと利用者数計算を行い、利用者さんの状態をチェックして最適な配置をして「夜間支援等体制加算」を取得いたします。
「夜間支援等体制加算」は共同生活住居ごとに、前年度の利用人数を正確に計算することがポイントです。
「夜間支援等体制加算」を使って1人配置か、もしくは2人配置をするかは収益面で大差なく、支援の実情に合わせて選択してください。ただ「夜間支援等体制加算」の(IV)を取得する場合は利用者数が12人以上になることが、収益面で目安です。
正確に前年度の利用人数を計算し、支援に必要な夜勤職員を配置して、地域社会や関係機関からも信頼されるグループホームの体制を作ってみてはいかがでしょうか。
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