障がい者の就労継続支援事業所を運営していますが、サービス管理責任者が突然辞めて、他に資格者もいないので困っています。そんな時にサービス管理責任者に着任するための実務経験(OJT)が6ヶ月になると聞きました。
そこで障害福祉事業のサービス管理責任者の実務経験(OJT)が6ヶ月に短縮される条件等を詳しく教えていただけますでしょうか?
これまで障がい者福祉事業のサービス管理責任者に就任するために、基礎研修を受けた後に2年間の実務経験(OJT)が必要でした。
しかし令和5年の制度改定により、サービス管理責任者に必要な実務経験(OJT)が2年間から6ヶ月に短縮し、障害福祉事業の経営ルールが大きく変更されます。
この記事では事業者様の理解の一助になるように以下の内容を説明いたします。
※以下に該当される方を配置している事業所様は要注意です
・2人目のサビ管を配している
・「やむをえない事由」としてサビ管の代わりを配置している
・令和3年度までの基礎研修修了者をサビ管のみなし配置をしている
- サビ管の実務経験が6ヶ月に短縮されるポイントがわかります
- サビ管の制度改訂による事業経営のポイントがわかります
- サビ管の制度改訂による事業経営の注意点がわかります
★★★記事執筆者のご紹介★★★
この記事は障害福祉事業専門で、国家資格者である行政書士の戸根裕士が作成しております。多数の顧問先様との仕事から得られた、実務に役立つ注意点をまとめました。
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目次
【令和5年】令和5年サービス管理責任者のOJTが6ヶ月に変更!
障害福祉事業で配置が必要なサービス管理責任者は、基礎研修を修了後に「2年間」の実務経験(OJT)を経て、実践研修を修了してサビ管の配置が可能になりますが、これから説明する条件を満たせば「2年間」が「6ヶ月」になりサビ管配置が以前より容易になりました。
<サービス管理責任者に必要な条件のまとめ>
1 実務経験年数:保有資格や担当業務により変動します。一般的には3年から8年です。
2 相談支援従事者初任者研修:2日間の研修です
3 サービス管理責任者基礎研修:各々の必要な実務研修の2年前から受講できます
4 サービス管理責任者実践研修:基礎研修の修了後に2年の実務経験(OJT)で受講できます(→令和5年の制度改定で6ヶ月の実務経験(OJT)で受講できる)
障がい者事業のサービス管理責任者の配置条件や制度変更の概略について理解いたしました。
そこで詳細にサービス管理責任者の実務経験(OJT)が減るための条件や、その制度改正による事業経営の変化のポイントなど教えていただけるでしょうか?
令和5年のサービス管理責任者の制度変更によって障害福祉事業の経営のルールは大きく変わります。
ただ制度変更の主眼であるOJTの実務経験年数の短縮は細かい条件が付されているのでご注意ください。
以下ではサビ管の制度改正の条件と事業所経営のポイントについてわかりやすく説明いたします。
サビ管の実務経験が「2年」から「6ヶ月」になる条件
障害福祉事業でサービス管理責任者として登録できるのは、基礎研修と初任者研修を受講した後に「2年」の実務経験(OJT)が必要でしたが、令和5年から制度が変わり、以下の条件を満たせば「6ヶ月」の実務経験(OJT)で実践研修を受けてサビ管就任できるようになりました。
<「6ヶ月」の実務経験で認められる条件>
1:基礎研修受講時にサビ管配置に必要な実務経験を満たしていること(※3~8年etc)
2:2人目のサビ管として原案まで作成している or やむを得ない事由で配置されている or 基礎研修修了者をみなし配置している
3:指定権者に届出をする(※実践研修を受講する時まで)
※「6ヶ月」の実務経験(OJT)の起算点
サービス管理責任者の基礎研修と相談支援従事者初任者研修の両方を修了して修了証の交付を受けた時点から起算されます。
※「6ヶ月」の実務経験(OJT)の内容について
個別支援計画の作成を少なくとも10回以上行う必要があります。
<解説:「1:サビ管配置に必要な実務経験」とは>
サビ管基礎研修を受講するには、必ずしも「サビ管配置に必要な実務経験」を満たしている必要はなく、その2年前から受講可能です。例えば、ヘルパー2級保持者なら5年の実務経験が必要ですが、その2年前の3年目から基礎研修を受講できます。
ただし「6ヶ月」の短縮の特例では基礎研修の受講時に、上記の例で言うと5年の実務経験が必要ということです。
※必要な実務経験マイナス2年で基礎研修を受けた場合
マイナス2年の実務経験で基礎研修を受けた場合、その後に資格等を取得し2年待たずにサビ管に必要な実務経験を得ても、6ヶ月ではなく2年間の実務経験(OJT)が必要になります。
例:直接支援で実務経験が8年必要な者が6年目の時点で基礎研修を修了し、その6ヶ月後にヘルパー2級を取り、必要な実務経験が8年から5年に変わり既に年数を満たしていても、2年の実務経験(OJT)が必要です。
<解説:「2:2人目のサビ管として原案まで作成している」とは>
サビ管基礎研修を修了すれば2人目のサビ管として配置することが可能になります。ただし個別支援計画を作成することは認められておらず、あくまで原案の作成までに留まります。よって2人目のサビ管はサビ管の配置基準を満たす要員ではありません。
つまり「6ヶ月」の短縮の特例では、2人目のサビ管見習いとして6ヶ月勤務すればサビ管として扱えるということです。
<解説:「2:やむを得ない事由で配置されている」とは>
やむを得ない事由でサビ管が不在になり、代わりの経験者をサビ管として期間限定(2年間)で配置している場合にあたります。この制度も令和5年の制度改定で変更になりましたので詳しくは以下の解説をご覧ください。
・【大注目】令和5年サービス管理責任者不在の猶予期間が2年に!
令和5年度のサビ管の制度改定は画期的であり、実務経験さえあれば年度内に基礎研修から実践研修まで受けることができ、1年以内に新しいサビ管を配置することができます。
ただし各々に必要な実務経験の2年前に基礎研修を受けた場合は、この制度変更の6ヶ月のルールは使えず従来通りの2年間の実務経験(OJT)が必要になります。
つまり実務経験無しからサビ管を目指す方には令和5年度のサビ管の制度の改定はあまり関係ないとも言えます。
サビ管制度改定による事業所経営のポイント1:サビ管減算のリスク低下
障がい福祉サービスの令和5年のサービス管理責任者の制度改定によって、基礎研修から経てから必要な実務経験(OJT)が「6ヶ月」になることにより、その結果、サービス管理責任者欠如減算が適用される可能性が大幅に下がりました。
<ポイント1:突然サビ管が辞めても大丈夫>
サビ管が不在になっても、必要な実務経験がある従業員がいれば2年間のみなし配置になるので、その2年の期間中に「6ヶ月の実務経験(OJT)→実践研修」の過程を十分に経ることができます。
<ポイント2:自社内の従業者の実務経験の確認をする>
従業員のこれまでの実務経験年数を正確に確認しておくことが要点です。特に他社から転職した場合、それまでの実務経験証明書が揃っているか必ず確認いたしましょう。もし現在手元に実務経験証明書がない場合、すぐに前職に依頼するなど対策は早めに打ちましょう。
<ポイント3:ヘルパー2級の研修の受講を奨励する>
無資格者でもヘルパー2級の研修を修了すれば実務経験は5年に短縮されます。ヘルパー2級の研修は比較的容易で短時間なのでおすすめです。処遇改善計画の研修等の要件にも加えることができます。
障害福祉事業の多くでサービス管理責任が不在になれば、減算の適用という形で事業所の収益が下がります。
ただ減算の適用はサビ管が不在になって翌月末までに新しいサビ管を探せばいいので猶予もあります。
そのような減算にならないために事前からサビ管候補を着実に準備しておきましょう。
サビ管制度改定による事業所経営のポイント2:サビ管採用コストの削除
障がい福祉サービスの令和5年のサービス管理責任者の制度改定によって、基礎研修から経てから必要な実務経験(OJT)が「6ヶ月」になることにより、その結果、サービス管理責任者を新たに採用するコストが不要になりました。
<ポイント1:容易に自社内からサビ管を準備できる>
実務経験を経ている職員をとりあえず基礎研修だけ受けさせておけば、事業拡大で新しいサビ管を必要とする時に有利です。6ヶ月だけサビ管2人目として配置しておけば、自社内からサビ管を配置できて採用コスト(紹介料/広告料等)が必要ではなくなります。ただし必要な実務経験がない段階で基礎研修を受けないようにしてください。
<ポイント2:自社内の従業者の実務経験の確認をする>
従業員のこれまでの実務経験年数を正確に確認しておくことが要点です。特に「1年」とみなすには180日以上の労働実績が必要になります。パート職員の場合、勤務日数と照らして、配置に必要な「実務経験年数」を割り出しておきましょう。
<ポイント3:ヘルパー2級の研修の受講を奨励する>
無資格者でもヘルパー2級の研修を修了すれば実務経験は5年に短縮されます。ヘルパー2級の研修は比較的容易で短時間なのでおすすめです。処遇改善計画の研修等の要件にも加えることができます。
サービス管理責任者の配置の実務経験(OJT)が6ヶ月と短縮されたので、外部からではなく自社内で研修等を受けてもらってサビ管の配置が可能になりました。
これまではサビ管の求人は見つかりにくく、給与も他と比べて高いので事業所経営の課題でした。
しかし令和5年の制度変更により、外部から雇い入れる必要が減れば、サビ管の求人も賃金の基準が安くなったり募集が集まりやすかったりする傾向も出てくるでしょう。
サビ管制度改定による事業所の「経営戦略」まとめ
障がい福祉サービスの令和5年のサービス管理責任者の制度改定に基づく事業所の経営戦略の要点は、従業員のサビ管基礎研修を受けるタイミングの管理と、サビ管の必要実務経験に関する資格取得のタイミングのコントールです。
<ポイント1:従業員のサビ管に必要な実務経験年数の2年前かどうか>
実務経験年数の2年前になっても基礎研修を受講していない場合は、1年半前を超えるとあえて基礎研修を受けず、必要な実務経験年数を満たしてから「6ヶ月」の特例を使った方が時間は短いです。他方、実務経験年数の2年前以上になると資格等を取得しなければ、「6ヶ月」の特例はあまり関係ありません。
<ポイント2:必要な実務経験年数が変化する資格取得は早期にする>
実務経験年数が短縮する資格を取得してから基礎研修を受講いたしましょう。もし基礎研修終了後に資格を取得しても、その短縮された資格による実務経験年数は適用されません。
例:実務経験年数8年必要な人が6年目で基礎研修を受講し、その後にヘルパー2級(※5年の実務経験年数になる)を取得しても、6年目の時点から「6ヶ月」の実務経験(OJT)ではなく8年目までの2年間の実務経験が必要になります。
<ポイント3:相談支援従事者初任者研修の講義部分は早期に受講する>
相談従事者初任者研修講義部分の受講開始時は、実務経験年数を満たした時点と先後を問わないので先に受講できるなら受講しておきましょう。
令和5年のサービス管理責任者の制度改定によって、これまで以上に従業員の実務経験年数と資格取得のタイミングが重要になってきました。
先のサビ管変更または増員のタイミングを目指して、事前からしっかり研修受講や資格取得のタイミングを準備していきましょう。
サービス管理責任者になるハードルが下がったからこそ、早期に対策を取って事業拡大のチャンスを狙いましょう。
サビ管制度改定による事業所の「採用戦略」まとめ
障がい福祉サービスの令和5年のサービス管理責任者の制度改定に基づく事業所の「採用戦略の要点」は、前職が老人関係の施設や学校/保育園であれば実務経験を既に満たしている可能性が高い、つまり実務経験年数が6ヶ月と短くなりやすい点です。
<ポイント1:老人関係施設で働いていたらチャンス>
老人福祉施設や介護老人保健施設で働いていた方は、基礎研修を未受講でも実務経験は8年以上になっていることが多いです。障害者施設で雇用した際はすぐに基礎研修を受講してもらうようにいたしましょう。
<ポイント2:学校等施設で働いていれば可能性あり>
児童発達支援管理責任者になるには、学校等の施設で働いていたキャリアがあれば自然と実務経験の8年を超えている可能性が高いです。こちらも実務経験証明書さえ確認できれば基礎研修を受講してもらいましょう。
例:実務経験年数8年必要な人が6年目で基礎研修を受講し、その後にヘルパー2級(※5年の実務経験年数になる)を取得しても、6年目の時点から「6ヶ月」の実務経験(OJT)ではなく8年目までの2年間の実務経験が必要になります。
令和5年のサービス管理責任者の制度改定によって、これまで以上にどのようなキャリアの方を職員として採用するかが問われます。
基礎研修を受けていなくても実務経験さえ満たしている方を探し出せば、次のサビ管を短期間で育成することができます。
サービス管理責任者になるハードルが下がったからこそ、早期に対策を取って事業拡大のチャンスを狙いましょう。
まとめ
障がい者福祉事業の令和5年のサービス管理責任者の制度改定について詳しく分かりました。ありがとうございます。
まずは従業員の実務経験年数をしっかりと把握して、サビ管の人事のトラブルがあっても対処できるよう準備していきたいと思います。
令和5年のサービス管理責任者の制度改定により、実務経験年数の把握とその年数に達した職員の処遇が一層重要になりました。
特に必要な実務経験年数に達した職員にはすべからく基礎研修を受講してもらい、サビ管不在のトラブルの対処を事前に行っておきましょう。無資格者の場合は前もってヘルパー2級の研修を修了しておかれることをお勧めいたします。
しっかりとサービス管理責任者の配置の要件を守り、地域社会や関係機関からも信頼される事業拡大を行なってはいかがでしょうか。
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